ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:4E/あかいひと
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納得はできない、赦されない。
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「───と、言うわけだ」
「なーにがと言うわけだなんだよこの新婚総督。はぜろ、そしてもげろ」
「お前なんかあたり強くねぇか!?」
結局新婚総督アザゼルは、単に駒王町にいる神器保持者にコナを掛けしたいだけだった……………訂正、コナを掛けるためにしたっぱから仕事ぶんどって此処に来たらしい。仕事しろ総督。
というわけで、ギャー助のことはみんなに任せて、俺は総督を元我が家へと案内し、対応することに。リビングで顔付き合わせてお茶すすりつつ、ジト目で総督を睨む。
「はぁ…サボってる様に見えるけどな、これでも結構色んなことに追われてんだぜ?」
「いや分かりますけど。本当に分かりますけど。過去にスペースコロニーの艦長と大企業の支社長押し付けられたことありましたからね、トップであることの苦労はなんとなく分かりますけど。……………くたばれミュラー夫婦、何故ただの脳筋傭兵に任せやがった」
正直なところ、師匠が秘書として手伝ってくれなけりゃ寿命で死ぬ前に過労死してたわ……………すまんなぁ師匠、自分のお店のこともあったろうに。
「なんか、スペースコロニーとか聴くと本当にお前らが異世界人なんだなって理解させられちまうぜ。あのヴァーリですら、宇宙船はないのか? みたいなこと言ってたしな」
「そりゃあ、こちらで言うならばSFスペースファンタジー世界でしたもの」
まあ同じ太陽系に人が住める星が3つあったから、それらを行き来するためにそういう技術が生活レベルで普及しもするさ。
「非常に興味をそそられる世界、技術だが……………惜しむらくは、こっちに来てる二人が揃いも揃って脳筋だからな……………」
「うん、否定はしないけど資材あれば宇宙戦艦建造できる程度にはそのあたりに明るいですよ、俺」
「流石に嘘じゃないのか? あのヴァーリが認めるレベルの傭兵なんだろうお前。や、武器は自作するとは聞いていたが」
あ、なんかうれしい。あいつほどの剣士にそう言って貰えるのはやはり自信になる。まあそうでなくともグラール最強の自負はあるけどな! まあ、最盛期のイーサンとかと競えなかったのは残念だけど。あいつら、全盛期はどれだけ強かったんだ……………。
「嘘じゃないんですよねーこれが。まあ、いいですけどね。こっちでエンジニアするとかもなさそうですし、技術革命とか柄じゃないし。そもそも、俺らが元々いたところは魔力、光力みたいなのが普及している、それをベースにした技術ですし、なんでもかんでもこっちにコンバートできませんよ」
まあもっとも、冥界などでやるなら話は変わってくるけれど…………。それに、グラールの科学力とこっちの人外達の科学力、言うほど離れてないし。むしろ分野ごとに見れば何個か抜かれてるし。
『補足する形で言わせてもらう。少なくとも技術者としての相棒は、本職と言っても過言ではないぞアザゼル。何せ、籠手を……………今は軍手だが、それを解析し、手のつけることが出来なかった部分に手を加え、設計し、武器として出力させるといった離れ業を成し遂げてるわけだからな』
「あーあれな? や、気合いでツインセイバーは出せたけれど他のは出せなかったし、じゃあ他の武器も出せるようにしようと思って調べてみたら、手付かずの神器内の可能性の塊、俺は便宜上メモリって呼んでるけど、そのメモリが変化したものだって分かったんで、グラール製フォトン武器参考にして核にあたるリアクターみたいなのに設計し直して、元々形のない籠手や鎧がどうやって実際に其処に在るものとして具現してるかを調べて、判明した理論に加えて亜空間干渉による具現化理論使って補強しつつ武器の外装を自由に変化させられるようにしただけじゃん。こんなん多少武器設計できて神器に深く接続できたら誰でもできるよ真面目に」
「…………………………!」
『な?』
な? ってなんだ。な?って。総督もなんか絶句してるし。
「………なるほど、独力で辿り着いたとしたら、大したもんだ」
「や、流石に独力じゃねーっす。残留思念の皆とかドライグとかの助力ないと無理でしたっす」
『知識を与えただけだがな』
「いや、大事なことじゃん。知らないことはできるようにならないじゃん」
知らないことはできない。知ったことすら身に付けるのにめっさ努力しなきゃだし。
「なあお前、雇われる気はないか? 具体的には神器研究のアドバイザーとして」
「なにいってんすか神器研究の第一人者が」
「データが取れなきゃなんにもできねぇんだよ!」
お、おう。どうした総督。そんな宝の持ち腐れを見てられないといった雰囲気で叫ばれても。
「というか、データ取れないとか言いつつ、神器保持者かき集めてんでしょう? まだ足りないってのか」
俺が知ってる限りでも神滅具持ち二人もいるのに、それでデータ足りないとか。
「その神滅具持ち、俺の娘の方。それで察しろ」
「ヴァーリ……………あっ」
そうだった、あいつ『白龍皇の光翼』を飛行ユニットとかほざいてやがったな。……………なるほどなぁ、そりゃ苦労するわ。
無論、なにもやってこなかったわけじゃないだろうけど、調査するにしても手の全く入ってない魔境と、整地された環境ならば、明らか後者の方が楽だよな。ヴァーリの光翼は、手付かず同然だろうし、データ取れんわな。禁手すらしてなさそうだし。
「とは言っても、寧ろ神滅具のデータが必要になることはあまりないのでは? そもそも『赤龍帝の籠手』は契約封印型の神器と基本的に違いはないです。神滅具だからなのか、聖書の神のシステムがボロボロだからなのかはわからないですけど、ちょっと抜け穴的に魔改造し易いぐらいですし。あとそれは、『白龍皇の光翼』にも言えることなのは俺以上にご存知の筈でしょう?」
まあ、それでもあると無いのとではかなり変わってくるのは、一時期研究の方もかじったことのある身として分からんでもない話だ。シンプルな神器とはいえ、バグや例外多すぎのクソ仕様がデフォルトの神滅具の一つだし、此処から重要な事実が判明するってのは充分あるだろう。ま、その筋の専門家という訳でもないので俺には見えてこないけれど。
ちなみに契約封印系の神器は、何かしらの生物を封印したモノを指す。俺の元『赤龍帝の籠手』やヴァーリの『白龍皇の光翼』、元ちゃんの『
「確かにその通りなんだが、今俺が着手している『弩級の魔物を核にした契約封印系人工神器』を完成させるには、まだ足りないものが多すぎる」
「弩級の……………うん、ちょっと詳しく」
「断る、一枚噛んでくれるってんなら構わないが」
ぐぬぅ、すげぇ気になる……………。内容的にはドライグの封印を解く、重要な足掛かりになるのは間違いないだろうからなぁ……………。
『(相棒……………)』
いつまでも、俺の相棒が封じられたままなのは嫌だ。これが出会った当初のドライグならともかく、幾らか丸くなった彼なら解いても問題ないように思う……………周りの心情や色んな体裁は兎も角として。なにより現実世界で戦えない。それは困る、大いに困る。
そりゃ多少は自分で手懸かりを掴むために研究してるさ。でもやはり本職じゃないのに加え、圧倒的データ不足がネックだ。俺には手のつけられないブラックボックスも多いため、このままでは100年掛けても終わらない。
だが…………なんというか、
いや、わかってんだよ? 別にこのアザゼルという堕天使が殊更に悪いヤツだとは思わん。なんならいいヤツとも言っても良いかもしんない。あの
だが、堕天使は
別に、人間殺すことをとやかく言えるような立場ではない。前世含めりゃ、俺の手は真っ赤を通り越して赤黒いし。その事に関しては思うことはあれど間違ったこととは思っていない、傭兵って金積まれたらそういうお仕事もやらんといかんでね。
だけど、俺が手にかけてきたのは
さて、その俺のなかでの自分ルールに則ると……………例えば危険な神器を持ってるからといって、なにもしてないヤツを殺すのはアウトだ。
客観的に見りゃ、間違った判断じゃないとは思うぜ? 無自覚に核爆レベルのを持ち歩いてるヤツを見て、殺してどうにかなるならそうしてしまう方が手っ取り早いし、安全だ。非人道的でも、そういった泥を呑み込むことは、生きていくなかで時として必要である。
だが、それでも
まあ、それを言うなら悪魔や天使だって、全員が全員ではないだろうけど似たようなことはやってると思うけどね。それでもこう、特に堕天使にそういう反応してしまうのは……………実際に殺されそうになり、友達を殺されたから、なんだろう。目に見える形で、実感する形で、そのやり方を見せつけられたから。レイナーレ一派が過激なだけとは言えないだろう、堕天使全体でそういうことをやって来た記録はある様だし。
別に、だから手助けしないとか、見殺しにするとか、そういうことはまた別のプライドが許さないし、そこまで嫌ってない。けれど『神器』に関しては、ちょっと躊躇ってしまう。そんなことは起こり得ないし起こさせないと思っても、更なる被害者を産むかもしれない可能性がちらつくためだ。
……………そうだな、直接バカ二人とアーシアに謝るまでは保留、というのが妥当なところかな。
仮面を被る、覚らせないように。
「ぐぬぬ……………なんか此処でホイホイ着いてくと負けた気分になるから、保留です保留。整理が付いたら考えますよ」
「おう、いつでも歓迎するからな!」
ええ……………『こちらも』、いつでも歓迎していますので。
ちょっと堕天使への対応が雑な理由がここでした。
ちなみに現在の三大勢力人外に対する対応の差は、
悪魔>堕天使>天使
悪魔が一番いいのはリアスの対応がよかったため。
堕天使は本編の通りなのと、ナギヴァーリがいるため。
天使の扱いの悪さは、アーシアの件と聖剣シスターズへの扱いとか諸々。