ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman   作:4E/あかいひと

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ふふふ、こんなすぐに更新するとは夢にも思うまい……………!


その11-回想×説明×号泣

◆◆◆

 

 

昔話をしよう。いや、別に大した話ではない。一人の人間が、女みたいなナリをした吸血鬼と出会ってしまった話だ。

 

なんてことはない、その吸血鬼……正確には半吸血鬼は死にかけていたのだ。この手の類いの話にはありがちな、ヴァンパイア・ハンターに襲われた結果だ。

 

吸血鬼は言った、『死にたくない、まだ死ねないのだ』と。

 

俺はそれに対して言葉を返さず、ただ手首を掻き切って血を垂れ流したのだった……………。

 

 

◆◆◆

 

 

「でも、限り無く死に傾いたこいつを救うには、血を何リットルか垂れ流すだけではどうにもならなくて、結局命まで吸われてようやっと何とかなったんですよねぇ」

 

「懐かしいですねぇ…………何年前のことでしょうか?」

 

「さらっと言ってるけれど、つまり貴方死んだってことなのではなくて!?」

 

あ、突っ込んじゃう? そこ突っ込んじゃう?

 

「まあ、死んだとも生きてたとも言い難い状態にはなりましたね。吸血鬼は、血を介して命と魂のやり取りをする種族ですから、俺の命や魂まで、まるっとギャスパーに吸われて、その体の中でしばらく滞留することになったんですよ」

 

「僕自身の命を賄うにはあまりにも力強い命と魂、しかし手放してしまうと双方ともに即座に死んでしまうという、奇妙な共生状態に陥ってしまったのです」

 

先生の血が、僕と相性良すぎたのも原因の一つですねー、と呑気に笑うギャスパーを見てちょっとイラッとしたのでデコピン。頭蓋骨陥没させる勢いでやったのに、赤く腫れただけだった。チッ。

 

「そ、そうなの。……………それだと、イッセーの身体の方がもぬけの殻になったのではないかしら? というかそもそも、吸血鬼になったりアンデッドになったりするものではなくて?」

 

「うぅ……痛い……………えっと、先生は別種の闇に対する抵抗値が非常に高いです。悪魔の駒での反応を覚えていますか?」

 

「……………ああ、成る程」

 

「それに、先生もどちらかと言うと自分に染める側、体質的な観点からも侵食する側です。寧ろ、僕の方が喰われかけてもおかしくない状態でした」

 

「凄く納得したわ」

 

……………えっと、それは初耳だったんだけど。あとなんで納得するのだ。

 

「……………まあその辺りのことはともかく、身体を腐らせないためにドライグが神器の中で俺の身体を保存したことで事なきを得ました」

 

余談だが、神器が魂と結び付くという仕様の関係で、軍手もギャスパーに取り込まれてしまったのは少し驚きだった。なお、適合とか同意とかの兼ね合いで、吸血鬼なら神器保持者からいくらでも吸い取ることが可能というわけではないらしい。また、あまりに魂を吸い過ぎると自分との境界が曖昧になって自己崩壊の元になるため、基本的には命だけを吸い取ってポイらしい。人間を食糧程度にしか思ってない吸血鬼だからこそなのだろうか?

 

「んで、一ヶ月ほど……………ギャスパーの本体が回復するまで、共生を続けることになりました」

 

「その際、今まで制御できなかった自分の力との付き合い方、その他諸々を教えてもらっていたんです。『先生』という呼び方は、その時のものですね」

 

「なんかもう……………色々と納得したわ……………通りで……………」

 

「待てやお嬢。こいつの強さに関しては散々口出しましたし俺のせいでいいです。だがニートに関しては管轄外だ。というか基本的に俺は勤勉をよしとするタイプなので」

 

全くもって風評被害甚だしい。俺をなんだと思ってるのだ。

というわけで、ギャスパーを睨む。

 

「それは、そのぉ…………ひうっ、ごめんなさぁい!」

 

いや、怯えられても分からんぞ。

 

「まあいいわ、どうせイッセーのせいだもの。この世界での理不尽な現象は貴方のせいよどうせ」

 

「非常に解せぬ」

 

「で、それはそうと貴方たちのことだから、何事もなく一ヶ月を過ごせたわけじゃないのよね?」

 

決めつけはよくないと思いマース! 実際いろいろありましたけれどね!

 

「まず、先生の血のせいで余計に広がった器と力の制御、僕の恩人だった友達を助けるためにルーマニアで大暴れ、友達から抜き取られてしまった聖杯を巡る戦争、エジプトで待ち構えていた一連の騒動の黒幕の討伐……………ぐらいですかね?」

 

「情報量多すぎて処理できないのだけれど!? 何故だか久し振りだわこの理不尽に胃を痛める感覚!」

 

いやしかし、一切の虚飾はないのだから仕方がない。

 

「明かされる出生の謎、主人公みたいに土壇場で覚醒……………などなど、一ヶ月の間、日刊の少年漫画の様でしたよ……………」

 

「そうです、それですよ!」

 

ビシィ! とギャスパーは俺を指さして言う。

 

「あの一ヶ月で、僕は一生分働きました! 文字通り命を削って頑張りました! だからもう、残りの悪魔生はぐうたらして生きていたいんですぅ! 働くのやだァ!」

 

「「…………………………」」

 

成る程、あまりにも密度の濃い一ヶ月を過ごしたせいで、こいつは燃え付き症候群になってしまったようだ。……………これ、監督不行き届きに入る? あ、入りますかそうですか。

 

「…………ちなみに、お嬢はギャスパーとどこで知り合ったんですか?」

 

「…………散歩をしていたら、若干灰になって死にかけてるその子に出会ったのよ」

 

「いやぁ、あのときは一日中公園で太陽が昇って沈むのを眺めるのがマイブームだったんですぅ……えへへ」

 

えへへじゃねぇ。いくらデイライトウォーカー、真祖に近い吸血鬼とは言え、日に当たり過ぎたら死ぬだろうお前。…………いや、『アイツ』がそれを許すとは思えんからまだ何とかなる範疇だったのだろうか?

 

「太陽っていいですよねぇ、眺めてポカポカ陽気に当たってると、食べることすら億劫に成る程に穏やかな気持ちになれて……………」

 

「ごめんなさいお嬢、俺のせいとは言い切れないけれど監督不行き届きだわこれ」

 

…………うぅん、頭が痛いなぁ! あの頃のギャスパーは、ちょっと人見知りの真面目な男の娘だったのになぁ!

 

「というか、お前の神器で食べることすら億劫になるって、ちょっとひく」

 

「えっと、確かこの子の神器って、『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』だったわよね? 視界の範囲内のモノを少しの間止めるだけで、ギャスパー自身が動かなければならないわけだし、怠惰が極まればそうもなるのではないかしら?」

 

……………ほー? お前、説明してないと?

 

「ヒィィィィ!? 先生、落ち着いて、落ち着いてェ!! 暴力は何も生みません!」

 

「お前の反省は産み出せるぞ畜生がッ! なァんで伝えてねぇーんだよ!!? あ''あ''ん!?」

 

「だ、だって口止めされてたし………」

 

「本音は?」

 

「種が割れると快適ネトゲ生活が終わりを告げるからですぅぅぅぅ!」

 

ダメだこの吸血鬼、早くなんとかしないと。

 

「……………えっと、別の神器なのかしら?」

 

「別物になった、が正しいでしょう。確かにこのグータラは停止邪眼の持ち主で合ってますし、今もその能力を持ってるはずだ。……………問題は、神器が別な方向に派生させた能力。俺と共生した結果でしょうが、停止邪眼は亜種へと進化しちまったのですよ」

 

これについては、俺も正直やっちまった自覚がある。余計な助言をするんじゃなかったと。

 

「命名は俺、亜種神器『過程殺すは深淵覗く魔神眼(プロセス・キリング・バロール・アイ)』……………こいつが心の底からしたいこと、そして自分が知覚できる範囲内において、且つこいつが30分で片を付けられる行動に関してなら、その結果だけが残るという、凄まじい能力ですよ」

 

「……………???」

 

簡単な例を挙げると……………その辺に落ちてるゴミを見つけて、こいつが嫌がらずに捨てようと思えたら、そのゴミは『ギャスパーに拾われてゴミ箱に捨てられた』という過程をすっ飛ばしてゴミ箱に移動するんですよ。

 

「……………なるほど、だから今までの私達は知覚することなくこの子に部屋から叩き出されていたのね」

 

「ええ、本来の停止邪眼の能力もありますし、自分の領域から誰かを叩き出すなんて、赤子の手を捻るよりも簡単でしょう」

 

「うぅ……それももう、叶わなくなりましたけれど」

 

「それは、イッセーがいるからかしら?」

 

「そうとも言えますが、厳密には違いますぅ……………」

 

両目に涙を溜めながら、意気消沈といった風にギャスパーは言った。

 

「過程を消し飛ばして結果だけ残すこの能力は、自分にできることでなければ使えません。……………イッセー先生の登場、そして先生による訓練を経て、僕の停止邪眼では、皆さんを止めることができなくなりました。……そうならないために、訓練も過程を消し飛ばして繰り返していたんですけれどねぇ」

 

「なんだこの図らずも生徒の不始末を片付けた感」

 

「まだマイナス側だけれどね。まあ、貸しは無しにしておくわ」

 

へぇへぇ、お優しいことで。

 

……………っと、そうなると少し聞きたいことがある。

 

「おいギャスパー。お前は怠惰にクズになったけれど、その心まで堕ちてはいないと判断して質問する。…………フェニックス家とのいざこざの時、どうして出てこなかった?」

 

「建前としては、こういう騒動では僕の解放許可が下りない為。本音としては、貴方がいる以上僕は邪魔でしたから。結果だけを残してしまう僕は、皆の経験、糧すらも奪ってしまうことになります」

 

先生がいなければ……………あらゆる制限を無視して消し飛ばしていたと、真剣な顔付きになった生徒が言う。

 

「下らない理由で死にかけている、明らかに厄介事の塊でしかない僕にちゃんとした居場所を与えてくれた主人、リアス・グレモリー様にはこれ以上ない感謝をしています。そして、こんなグータラでも根気よく話しかけてくれる眷属の皆さんにも。だから部長の為ならば、多少は働けますし、主と眷属の危機ならば、ルールを無視してでも立ち上がるつもりでした。……………引きこもってるのも、別に無意味にやっていたわけじゃないです。確かに、怠惰を貪りたいが故にこうした形をとっていることは否定できませんけれど、僕の存在が一種の壁として、皆さんの成長に寄与できていた筈です」

 

「……………最低限は腐ってなくて安心したよ」

 

「あ、あはは…………あの男みたいに腐ったら、自分で心臓を杭で貫いています」

 

冗談めかして言っているが、目が笑ってない。まあそれもそうか、こいつにとってあの男…………彼の友達を使ってあることを企んでいたあのどうしようもない男の様にはなりたくないか。

 

「ともかく、お久しぶりです先生」

 

「おう、元気そうでなによりだ」

 

ちょっと……………いやかなり、ニートになってる教え子を見て悲しくなったけれど。幸い更正させる時間はある。今はその喜びに浸ってもいいだろう……………。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、まずペナルティとしてネットとパソコン禁止な?」

 

「HEEEEYYYY!! あァァァんまりだァァアァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 




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