ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:4E/あかいひと
「待たせたなイッセー……どうした、何故頬が腫れている?」
「ん? いや、御宅のお父上に殴られてこうなった」
急襲のアザゼル新婚総督との対談の結果は1発殴られるという結果になった。まったく、殴ることはないだろう殴ることは。
「……まさか、また『娘はやらん』とか世迷言を…………?」
「待て待て待て、その構えたスティールハーツを置くんだヴァーリちゃん。今回は至って真面目な話であり、さらに言うと落ち度は俺にしかないから」
なお、本人にとっては
「そうなのか?」
「ええ、そうですとも。まあ話の内容は言えんが、特に問題は無いさ」
それで、外に待たせているだろう悪魔さんは放置で良いのかな?
「あ、済まない。よし、入ってきていいぞ」
そう言って、開いた扉から入ってきたのは……………………
「ありがとうヴァーリ、失礼します」
…………超絶美少年だった。
え、ちょ、え!? なんだこの少女漫画の世界から飛び出してきた王子様系美少年は!? 肌(一般的な範疇で)白ッ!? 線細ッ!? 声も爽やかとかマジかよ!? オマケにサラサラ金髪の碧眼でとか、お前もうおとぎ話の世界に行けってレベルだぞ!? 同種の存在に木場がいるが、それ以上にキラキラしてんぞ!? 服装が白いスーツに所々ベルトの様な物が巻きついているという異様な意匠をしているが、良い感じにキマってるのが悔しい!
ぐっ……いっちゃあアレだが、俺もそれなりに自分の見た目には自信があった。眼光鋭いクール系不気味ちっくオッドアイ幽霊青年的にカッコいいとか思ったこともあった。しかし、これは…………負け、た。
思わず膝を付く、いや別に俺イッケメーン! とか、世界で一番とか思ってるわけじゃないが、なんというかこの…………敗北感しか降ってこないこの状況は何さ!?
「え、どうしたの!? 大丈夫ですか!?」
「え、あ、ああどうも…………」
思わず崩れ落ちた俺に、すぐさま心配して手を差し伸べるとか性格までイケメンかよ死ぬわ。
「あ、あのヴァーリちゃん。この王子様何者なのさ?」
「王子様…………王子様? 別にこいつは王族というわけではないぞ」
「あ、お前に聞いた俺がバカだったわ、済まん」
「むっ、無知だと馬鹿にしたな? 確かに知らないが、ニュアンスは分かったぞ。つまり、『なんでこんなに見た目が良い人間が存在しているのか』ということだろう?」
「お見事」
いやでも、ヴァーリが少女漫画とか読んでたりしたら爆笑を通り越して恐怖すら感じるし、馬鹿にしたわけではないんだが。
「そ、そんな……褒められても何も出ませんよ」
「流石イケメン、謙虚も標準装備ってか…………」
なお、俺は謙虚なんて単語は宇宙の彼方に投げ捨てましたので。
「……とりあえず、自己紹介でもしたらどうだ?」
「あ、そうですね。初めまして、僕の名前は『リチャード・トゥイラー』。気軽に『リック』と呼んでください」
「よろしくリック。俺は兵藤一誠、イッセーと呼んでくれ」
「よろしくお願いしますイッセー。お噂かねがね。1度会ってみたかったので、とても嬉しいです」
噂……俺の噂……なんだろう、ロクなもんじゃない気がするのは。
「なんでも、赤龍帝なのに白龍皇であるヴァーリさんの婿なのだとか。剛毅なお方だと伺っています」
「ブッ!!?」
思わず噎せた。不意打ち過ぎてヤバい。何回も咳き込んで息を整えた後、現況であろう奴に殺気を向けた。
「どーゆーこったヴァァァアアアアリィィィイイイイッッッ!!!!?」
「外堀は埋めるものだと母とお義母さまが言っていたのでな」
「今度はそっちか!!」
クソ、手がつけられないぞこの白龍皇!! と、とりあえず訂正しなければ…………
「あー、あのなリック。俺はこいつの婿でも、ましてや恋人でもない。現状ではまだ判断の難しい関係性だ」
「そうなのですか。ダメですよヴァーリ、嘘はいけません」
「嘘のつもりはない。いずれ本当にしてしまえばいいのだから」
やだカッコいいセリフ。でもそれ暴論だからな?
「あ、そうだ。僕、初対面の人にはまず聞くことがあるんです!」
と、話の流れを断ち切る様に、リックがパン! と手を叩き、言った。
「イッセーはドSですか? それともドMですか?」
空気が凍った。
「あー、うーん。ごめんリック、どうも耳の調子が悪いみたいだ。もう一度言ってくれ」
「君はドS? それともドM?」
「聞き間違いじゃなかったよクソがッ!!!」
え、なになんなの!? 初対面で聞くことがそれ!? い、いやまて落ち着け兵藤一誠……冷静に、冷静になれ。これは場を和ますウィットなジョークなんだ。和ますどころか凍りついているけど気にしてはいけない…………いけないんだ…………!
「あ、あのなリック、そういうのは…その…」
「あ、そういうことですか。ごめんなさい」
「いや、分かってくれたら別に、」
「人に物を尋ねる時は、まず自分から、ですよね!」
「ちげぇ!? いやあってるけど!!」
いや、これガチで聞いてたみたいだ!? え、この美少年なんなのさ!!
「僕はね、恥ずかしいことに…………ふふっ、超ドMでね」
「う、うわぁ…………」
思わずドン引きしてしまう。なるほど、その拘束具みたいな意匠の服は、自分を締め付けるためのものだったのですね知りたくなかったなぁ!
と、冷めた視線をぶつけると、急に悶え始めたリック。え、いやまさか。
「あ、ああいいっ! その視線、堪らなくきもち…………あっ」
「今すぐシャワー浴びてきやがれこのド変態が!!!」
なにが、とは言わないが…………どこかに到達してしまった奴に、悦ぶんだろうなぁと思いつつも、拳をプレゼントしつつ部屋から叩き出した。
「……ヴァーリ、あれなに?」
「超ドMのド変態、だ」
「あんなのが王子様系イケメンとか、神は死んだ」
いや、元々死んでましたね。
「それにしてもイッセー、なんであいつをシャワーを浴びる様に促したのだ?」
「いや、知らなくていいからな。知らなくていいからな。お前は天然可愛いままでいてくれ…………」
「……??」
いや、いずれは避けられないのかもしれないが…………せめて今だけは、せめて、せめて…………。
◇◇◇
「いやぁ、流石赤龍帝の拳。衝撃が全身を駆け巡った瞬間もう一回イッ」
「黙れ、そして席に着けド変態」
「ああ、僕初対面の人にもう罵倒されちゃってる!」
…………ああ、処置無しとはこのことを言うのか。
「ついでに、礼儀として言うなら俺はSとMを行ったり来たりしてる気がする」
「え、答えてくれた!? でもなんで?」
「SはMを兼ね、MはSを兼ねる…………と、それは冗談として。単純に鍛えてる時は身体に掛かる負荷が心地良くなってくるからな。正直、多少Mっ気が無けりゃ耐えられんだろ。で、戦ってる時は体質上打たれ弱くてどうしても攻めに回らにゃならん。そもそも性格的に守りには向いていない。そういう意味で行ったり来たり、だ。普段の生活だとよー分からん。その道のプロじゃないし」
とりあえず、丁寧に答える。この手の輩は厳しくしたり痛めつけると付け上がるからな、丁寧な対応をすることで欲望の発露を抑える様に行動すべし。
「成る程成る程…………ありがとうございますイッセー。最初から真面目に答えてくれたのは君が初めてです」
「だろうな。言っちゃアレだが俺もイロモノ枠らしいし」
と、落ち着いたところでそろそろ本題に入ろう。
「そう言えば、リックは悪魔だと聞いたんだが」
「あ、実はそうなんですよ。と言っても、転生悪魔なんですけどね」
そう言ってバサリと広げる一対の黒翼。うん、確かに悪魔だ。
「僕は元々、アメリカにいた人間でした。昔ちょっとした騒動で親を失い、病に侵され、妹共々あとは野たれ死ぬしかない、というところで勧誘を受け、一緒に悪魔に転生しました。一応はクリスチャンだったのですが、当時はもう神なんて信じれませんでしたからね。救われるなら、悪魔の手だって…………という心境です」
「それは…………」
なんというか…………率直に言って不幸だな。
「ですが、主人はとてもいい方でした。人間の時の僕達には望めなかった、教育の場を設けてくれたり、生き抜くために必要な力を身につける機会を与えてくれたり。主人も元々転生悪魔だったらしく、とても親身になってくれました」
「成る程ねぇ」
しかし、逆に気になるのが…どうしてそんないい主人がいたのにもかかわらず、こうしてグリゴリにいるのか。
「ふふっ、言いたいことは分かります。主人の下、順調に研鑽を積んでいった僕達なのですが…………主人が、謀殺されてしまったのですよ」
「……………!」
え、想像以上に話が重いんだけど。
「他の下僕悪魔の方々も、主人同様に殺されてしまいました。僕と妹は、わざと生かされ、『主人殺しのはぐれ悪魔』の汚名を被せられ、お尋ね者に。追っ手から逃げ、行く先々の土地を管理している悪魔から逃げ、悪魔祓いから逃げ…………もう、どうしようも無くなった時に、今度はグリゴリの堕天使に拾われました。そういった経緯を経て、僕は今ここにいるのですよ」
「苦労してんなぁ…………同情しちまうぜ」
「あ、苦労に関してはむしろバッチコイです。ただ、妹巻き込むのがノーサンキューってだけなのです」
「ブレないなド変態!?」
しかしまあ、不幸系ドMって中々珍しいっていうかなんていうか…………うん、需要あるんだろうか?
「ん? ということは妹さんは…………」
「いえ、妹は此処には居ません。信頼の置ける相手のところに預けていますので。グリゴリが危険だとは思いませんが、なにが起こるかわかりませんし。堕天使としても、必要だったのは僕と、その中身ですからね」
「あ、つまりは」
「ええ、僕は神器保持者ですね」
そういってこいつは右腕を突き出し、袖をまくった。…………傷や痣、痕があるのはつっこまないようにしよう。
「変身」
『
ボイスチェンジャーを通した様な、甲高い声が響く。これは…………『着替える』を意味する漢語だったか。
変化はすぐに訪れた、捲られた腕から毛が生え、骨太になり、瞬く間に獣の腕と化した。色合いと見た目から察するに…………これは虎か?
「これが僕の神器『
「へぇ……?」
見ただけでわかる…………これは強い。俺の戦闘狂としての勘が、声高に叫んでいる。
そして改めて眼前の男を見る。線が細い弱々しい見た目をしているが、強者が纏う独特の圧を発している。これは何も精神的なものではなく、筋力があるものは見た目と熱で、魔法に精通しているものは魔力の質で、などなど。何かしらの形で、それを感じ取れる。
そういえば、細くはあったが見えた腕も筋肉は付いていた。遅筋ではなく速筋、ということか。
今すぐ斬りつければ、済し崩し的に戦えないだろうか、という欲が腕を動かし掛け…………止めた。戦いたいが、今ではない。いずれ、その時は来るはずだ。それは俺が『龍』で、こいつが『虎』故に。だよな、ドライグ?
『(ああ、龍と虎は切り離せぬ関係。無論龍の方が強いが、『竜虎相搏つ』とは言うからな。龍の方が強いが!)』
そんなに強調するかよ。いやまあ、ドラゴンは力の象徴だし、その辺りのプライドは分からんでもない。
「見せてくれてありがとう。お礼、と言ってはおかしくなるが、折角だし俺のも見る?」
「わぁ、いいんですか!? そしてそのまま殴ってください! 僕、神滅具に殴られるのが夢なんです!」
「あ、やめるわ」
「嘘ですごめんなさいっ!」
…………とりあえず、会ったのは儚い王子様系ドMイケメンだった。
◇◇◇
「さてイッセー」
少しの間談笑を楽しみ、しかし奴に任務があるとかで終わったその後。ヴァーリは真剣な表情で俺を見た。
「あの男、どう見る?」
「嘘
「つまり?」
「
かつてのヴァーリ、つまりナギサと、それに憑いていた旧文明人の精神体の男は、『復活させないために、ダークファルスの欠片を集めるのを協力してほしい』と言ってきた。その言葉に嘘は無かった。ただ、集めきった欠片がダークファルスとなって復活することと、復活する前に自分を殺させることを言わなかったが。さらにワイナールに関しては、自分にダークファルスの欠片を集めてナギサのスケープゴートになる計画を進めていた…………俺や仲間、更には依代たるナギサをも欺いて。
つまり、何が言いたいかというと…………
「アレは、何をしてもやり遂げたいことがある、死人の目だ。しかも、笑顔で応対してる様に見えて、こっちに全く視線を合わせなかった。不自然に見えない様に工夫は為されてたが、1回も合わないとなると流石におかしい。余程のコミュ障でもない限り、な」
「そうか、やはりそうか。私も、そう感じていた」
そう言って、ナギサはとある写真を差し出してきた。隠し撮りらしいそれは、風景のピントは合っていないが、しかしその目的と思われる人物達は、小さく、しかしピントが合った状態で写っていた。これは、リックと…………堕天使?
「此処に写ってる堕天使は、元『神の子を見張る者』でな。ウチから逃げたと聞いた」
「なんか真剣に話し合ってますよー…………的なのだけど、つまり?」
「この堕天使、件のテロ組織に属している、と」
「…………おっと、キナ臭くなってきたぞー?」
成る程、お嬢が俺の方に投げた理由も分かる。と思わず天を仰いでしまった。どうにも、ドラゴンに平穏とは訪れんものらしい。
それにしても、新婚総督に『 』って言われるとは思わんかったわ。マジ笑えねーwww
空欄が分かった方はエスパーだと思う。
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