ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:4E/あかいひと
同士サーゼクス並びにお付きのグレイフィアさんが寮を出て数日。というかへばってたせいで来てたのかすら分からなかったよグレイフィアさん。ごめんなさいグレイフィアさん。
…………と、それはともかく、何日もお邪魔するのは申し訳ないとのことで、翌日からは別個で宿泊施設を借りて駒王町に滞在するとのこと。なんでもいろいろ下見をしたいとかなんとか。魔王は大変だねぇ。まあ基本的には俺には関係ないことだからノータッチだけど。下手に関わって面倒なことになるのは避けたいのだ。
まあ寮にはいなくとも近くにはいるので1週間ほど魔王様が近くにいる生活が続いたわけだが…………実は今からの話でそれはあまり関係がなく。
「と、いうわけでプール開きよ」
食堂の机。父さん母さんは寮長室にいるため不在だが、それ以外の全員がその席についていた。
というか、プール開き?
「それってこの間まで表の部活動の時間中プール掃除させられてたのと関係があるんですかいお嬢?」
「……あ、イッセーには伝え忘れていたかもしれないわね。ソーナ……生徒会からの依頼だったのよ。明日の日曜日、プールを自由に使ってもよい、という条件で引き受けたの。だから明日は水着を持ってプールに集合よ!」
「は、はぁ」
プール、と聞いてあまり心が踊らないのは俺だけなんだろう。女性陣は今年の水着お披露目会になるから楽しみなようで、木場はよー分からんが楽しみっぽそうだし、バカ2人は久し振りに顔がエロ根性でマックスになってる。でも仕方ないぞ、前世で1年間艦長やらされてたコロニーに、プールなんてめじゃないビーチがあったのだから。結構な頻度で視察してたからむしろ仕事場なイメージですらある。
ともかく、そんなこんなで解散し自室なう。一応学校指定の海パンをクローゼットの中から掘り起こし、ふと昔のことを思い出す。
「……………………」
『どうした相棒?』
「んにゃ。なんでもねーよ」
在りし日の…………というやつである。あの時は俺とエミリアとユートとルミアとシズルとナギサと…………ワイナールがいたか。
懐かしいなぁ……ナギサ>(超えられない壁)>エミリア>ルミアだったこともそうだが、ビーチバレーでナギサが寸打かましてボールを破裂させるという暴挙に…………平和なビーチだった。
『お前もそうだが、記憶の中の白龍皇の前世と今世も見た目が変わらんのだな…………人間にしては些か魂が強過ぎはしないか?』
「知らん知らん、俺の管轄外だ」
そう言えばヴァーリ、明日暇なのだろうか。誘っとかないと後がうるさそうだ…………新婚提督が。誘ったら誘ったでうるさそうだが、それならヤツが喜んでくれる方がいい気がする。
『…相棒、自分で墓穴掘ってどうするんだ』
「墓穴?」
『…………いや、なんでもない』
なんなんだろう。まあ、気にしたらいけない気がするからスルーだが。
「よし、とにかく電話してみよう」
心なしかテンションが上がった状態で、俺はスマホの画面に指を滑らせた。
◇◇◇
というわけで当日。ゾロゾロと学校行くのも風情がない、とのことで全員がそれぞれのタイミングで寮を出た。
…………そして、男性陣がプールサイドに先にスタンバッているのは、準備が楽だからという理由だけではないのだろう。
「イッセー、俺生きててよかったよ。部長達の水着姿を拝めるなんて…………」
「涙を流して喜ぶんじゃない圭太。落ち着け落ち着け」
「んだよ、枯れてんのかお前…………いや、そうか。うんうん、俺は分かってるぞ」
何を勝手に納得してんだ…………というツッコミはしたら負けな気がするのでしない。最近こういうニヨニヨした目線を向けられて辟易している。
「この日のために、カメラのメンテナンスは欠かしてこなかった…………」
「Yesロリータ、」
「Noタッチ。紳士の約束を破る愚か者ではないさ」
普段こそ紳士的な振る舞いになった塔矢だが、こういう時は昔の変態紳士の顔を出すから怖くなる。…………これでもまだ昔ほど露骨じゃないことを喜ぶべきなんだが、なぁ。
「……なんというか、すごいね2人とも」
「木場、言葉を選ばなくていい。こういう時は『バカ』と指をさして笑え」
「なにおうこのムッツリ! どーせ脳内であーんなことやこーんなことを!」
「案外普通を装ってるヤツほど…………という事例は枚挙に暇がない。俺の眼鏡は木場もその匂いがすると告げている」
「男のロマンは鍛えられない、と教えたのはどこの誰だっけ?」
「「すみませんでしたッ!」」
「あははは……」
苦笑する木場。しかし、このやり取りを楽しんでいるのは気のせいじゃないだろう。自分の気持ちにケリをつけてから、幾分か余裕が出てきたように思える。俺としても本当に良かったと言葉を贈りたい。まあだからといってこいつらのアホウな行動に付き合わせるつもりはないがな!
「それにしても…………イッセー君の肌、本当に白いんだね」
「その言い方ヤメロ! 薄い本が厚くなるぞ、下手すると!」
言ってることになに一つ偽りはないが、言ってる奴と言われてる奴が問題だ。奴らにネタを与えてはならない。それはこの場の共通認識だ。
まあそれはともかく、俺の肌は病人も逃げ出すほどの青白さであるのは確かにその通りである。毎年プール授業が始まるたびに、この肌は異様に目立ち、注目を集める。
アルビノ…………というだけでは説明がつかないのだが、それでも表向きはそういうことで。
「ちなみに直射日光にやたら弱いです。今日も日焼け止め代わりの日光反射幕をうすーく張ってます」
「ああ、だから魔力を感じたのか」
「そこは普通のアルビノと同じなのだな」
「色白も大変だねぇ」
完全に他人事な3人だが、実際他人事だろう。俺だって前世でデューマンなるまでは日焼け止めクリームなんて滅多に触らなかった。
そんな感じで駄弁っていると、俺の耳が更衣室の出口から聞こえてきた声を捉える。どうやら女子達の準備は済んだらしい。
「おい、お前らお待ちかねのお嬢達の登場だぞ」
「「ッ!!」」
俺の一言で、バカ2人が殺気にも似た気配を漂わせながら目を凝らし、カメラを構えた。
そして─────
「待たせたわね、4人とも」
「お待たせいたしました」
「ゴブフォァア!!?」
「圭太────ッ!!?」
「凄い、ヒトは鼻血で空が飛べるんだ!?」
「ボケてる場合か木場ァ!? クソ、準備した輸血パックが無駄にならなかったことを喜ぶべきか悲しむべきか…………!!」
…………うん、まあ刺激は強かったね。部長と朱乃さんの水着。
まず部長のは赤のビキニ。字面だけだと大したことないが、本人の暴力的な大きさの胸部と布面積のせいで確かに凄い破壊力。南半球がほんの少しこんにちわしてるのも、圭太がやられた要因だろう。
対する朱乃さんのも色違いの同じタイプ。白いのにやらしいとは、今吹っ飛んだ圭太の辞世の言葉である。死んでないけど。
「くっ、ロリコンの俺をも屈服一歩手前に追い込むか…………いやマジ新たな扉を開きかけた」
「そんなお前にお知らせだ。あっちを見ろ」
「なに…………ゴブフォァア!!?」
「今度はツイスト!?」
俺が手を向けた方向にいたのは、小猫ちゃん、アーシア、エーナの小さい衆である。由緒正しいスクール水着を着用し、ウチの妹衆にはさらに胸元に『あーしあ』『えーな』と名前付き。特にそういうことを思わない奴らにとっては癒し以外の何物でもないだろう。が、ロリコンにとっては…………である。南無南無。
「というわけでお嬢達、今から赤いの掃除するんでもう少しお待ちをー」
「…………え、ええ」
いやぁ、ギャグパートは本当に平和だねぇ。
◇◇◇
そんなわけで気を取り直して。綺麗になったプールにて、各々は各々の思うようにプールを楽しみ始めた。
お嬢と朱乃さんは優雅に泳いだりプールサイドで横になったり、スク水衆は圭太監修のスイミング教室で練習を。意外なことに小猫ちゃん泳げなかったのね。いや、猫だがそうなのか?
ちなみに圭太と塔矢は役割分担をしたようだ。自分達の好みの方へと寄ると眼福どころではないので、正反対のを相手にしつつ、後で互いに戦利品を渡せるように時折写真を撮っている。許可はみんなから撮ってるらしいので、節度を守って今日の光景を写真に残している。顔が少しだらしないのは仕方ないだろう。
そして、木場と俺は何故か競泳と洒落込んでいた。挑発するように飛込み台を親指でさされたので、思わず乗った。短距離では負け無しだが、長距離になると途端に負けが混むのはデューマンであるからだと信じたい。
で、流石に泳ぎ疲れたのでプールサイドで休憩。日陰にて水分補給である。なんだかんだ楽しんでんなぁ俺。
「しかし、あいつはまだ来ないのかね…………」
と、口にしたところで、俺の後ろに誰かが立った。まあ、そういうことなのかと察して首だけ後ろに向ける。
そこにはやはり、水着姿のヴァーリが。
「待たせたな、イッセー。義父を説得するのに時間がかかった」
「一日掛かりかよ…………っと、それにしてもだ」
白のビキニに青いフリルのようなものが紐になってる水着。胸元の青薔薇の飾りが嫌に印象的である。
んでもって、いつかの6人と1人で行ったクラッド6のビーチの時と、同じそれである。
「あー…………ごほん。『……ってあれ、なにここ!? どういうこと!? ナギサちゃん、どうして水着なの!?』…………と、言ってみる」
「『あ、あんまり見るな! 寄るな!』…………と、返せばいいのか?」
そう言って、ヴァーリは俺の隣に座る。
「昨日の電話で、あの時のことを思い出した。大方、私を誘ったのもそういうことなのだろう?」
「まーね。向こうでは死人の俺には分からんが…………元気にしてるのかねぇ?」
「そうであると、いいんだがな」
そこまでして、後回しにした言葉を口に出す。あまり飾った言い回しはできないので簡潔に。
「あの時も言ったかもだが、似合ってると思うぜ」
「称賛の言葉、素直に受け取ろう。…………まあ、これは色々と思い入れがあるからな」
そして、沈黙。重苦しくはないそれは、別に嫌いではない。しばらくの間、目の前のプールを見ながら、多分お互いにどこか別の風景を見ていた。
「…………そういえば、聞き辛いから聞いてなかったけど」
「なんだ?」
「
多分言わなくても分かるだろう。
いつ、どうやって死んだのか。
本人が納得してない終わりではなかったのはなんとなくわかるから聞けるようなもので、本来聞いてはいけない話題ですらある。
でも、聞いておかなければならない。そんな直感が頭を過ぎった。
「…………発端は、貴方の死だ」
「あん?」
「それを皮切りに、デューマン達が何の前触れもなく急激に弱り、そこから1週間もぜずに死んでいく、という現象が発生した。…………デューマンの遺伝子、その大元であるダーク・ファルスが封印されたため、というのが大きな要因らしい」
…………思わぬところで、自分の死の真相が明かされた気分だ。いや、俺の場合それだけじゃないだろうけど。
「それじゃあ、お前も?」
「いや、私はその『突発性衰弱症候群』と名付けられたその病によっては死んでいない。まあ、深く関係はあるが…………」
深く関係はある。でも、その病では死んでない。
どういうことなのか…………答えが朧げな輪郭がじわじわとはっきりしていくのを感じながら、答えを明確にするために先を促した。
「全てのデューマンに、突然死の危険がある。そこでエミリアを中心として、様々な学者、医者が対処する方法はないのかと研究を始めた。…………しばらくの間は、全く進展が見られなかったのだがな」
「…………分かった、もう言わなくていい。済まなかった」
「いや、謝ることではない。いずれ、話そうと思っていたことだ」
そして誤解のないように言うが、と前置きして、彼女はどこか儚げな笑顔を浮かべて言った。
「私が、望んだことだった。仲間の反対を押し切り、最後まで首を縦に振らなかったエミリアと喧嘩して…………。それでも、なんとか分かってもらえて。ヤケになったわけではないのだと。誰かの未来を繋ぐためなのだと」
「…………はぁ。俺のこと、言えた口かよ」
「少なくとも、隠しはしなかったぞ」
「五十歩百歩だ、バーカ」
いつの間にか現れた彼女に皆が気がつくまで、それまでの間だけ…………俺たちは、『ショウ』と『ナギサ』だった。