ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman   作:4E/あかいひと

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さあ新章突入でございます!


第4章-添龍の被虐怒虎
その1-邂逅×堕天×微笑


人生なんて、ロクなもんじゃなかった。

 

第二の生なんて、自分の命ですらなかった。

 

俺の命なんて軽いもので、気が抜ければすぐに消えてしまう。

 

「だが、その理不尽さが…………堪らなく愛おしい」

 

もっと、もっと俺に、『理不尽(いかり)』をくれ。

 

[ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman]

[第4章-添龍の被虐怒虎]

 

 

◇◇◇

 

 

早朝の4:30。俺は近所の公園で無限の龍神化(ウロボロス・セカンド)をマイナーチェンジすることでデメリットをなるべく抑えた新技『赤龍帝の無限光(ブーステッド・ギア・リミットバースト)』の練習をしていた。

いつもなら寮の地下、訓練場でやるんだが…………まあ気分転換も悪くないと思うんだ。

 

あと、最近になって俺は魔法に手を出した。フォトン版魔法であるテクニックが使えるから必要ないと思ってたが、最低限の人払いぐらいは覚えとかないと思ったためである。今回わざわざ早朝とは言え公園で練習しているのは、人払いの魔法の練習も兼ねている。

 

「セット」

『Set:Ranger!!』

 

無限煌も無限光もやってることは変わらない。4つの戦闘タイプの1つを選択し、それに合わせた攻撃ができるようになる。シンプルで使いやすい能力だ。反面、次の攻撃方法がバレやすかったり、セットするのに隙が出るなどの弱点も孕んでるが。…………いや、無限煌の方なら如何に読まれようとそれらをぶち抜くことは容易いのだけど。無限の龍神化は伊達じゃない。

 

とりあえず、セットしたところで周囲に的が浮かび、動き始めたを確認。

 

「シュート」

 

腕を構え、空間把握だけで的に照準を合わせる。とはいえチャージによるブラスト技ならともかく、レンジャーの射撃に腕から炎を射出する必要はないけどな。

 

ドンッ!!

 

50はある的、その全てが同時に爆破。撃ち漏らしなし、クリア。

 

「うーん、頭痛い。動く的相手だとここら辺が限界かな」

『座標を爆破する射撃なのに、腕を構える必要はあるのか?』

「意識を射撃に傾けるルーティーンかな。あとは、腕を構えること自体がフェイクにもなる」

『…………[かっこいいじゃん]』

「…………ッ!?」

『…なぁ相棒』

「聞くな、聞いてくれるな」

 

嘘はついてない。ただ、構えた方がかっこいいじゃん…………。

 

『まぁ、文句は言わん。だが、程々にせんとお前…………あの連中に』

「やめろ、やめてくれ! 俺にあの名前を聴かせるなァァァァァアアアアアアアッ!!!!」

 

しらねぇよやめてくれよなんか非公認ファンクラブができてるなんてしらねぇし教祖みたいなことになってるなんて本当に知らないんだってぇ…………!!!!

 

「ま、まあいい。このぐらいならまだ大丈夫大丈夫…………」

 

と、ここで人払いし、誰も入ってこれないように結界を張った筈の公園に、俺以外の誰かが侵入してきた。

 

「おう、精が出るな」

「あ、おじさんちーっす」

 

最近知り合った、よくこの辺りに出没する、ちょいワル系イケメンダンディのおっさんだった。今日も着崩したその黒スーツ姿がカッコいいですね。

 

雰囲気から此方側だとは思ってたけど、なんでこのタイミングでバラすように現れたのかねぇ?

 

「どうしたんですおじさん。今は持ち合わせも何もないので茶店で駄弁ったりできないんですけど」

『いや、此の期に及んでその対応か相棒!?』

「はっはっは。いやなに、今日は長々と話すつもりはないからよ」

 

そう言って、バサリとおじさんの背中から黒い翼が…………六対。

俺も負けじと、龍帝の翼を広げる。

 

「まあなんだ、お前はいいヤツなんだろう。こんな怪しさ満点の俺相手でも色々付き合ってくれたしよ。ついでに、未だかつてない進化を見せる『赤龍帝の籠手』……いや、『赤龍帝の軍手』も興味深い。一介の神器研究者として素直に尊敬するぜ」

「は、はぁ。恐縮です」

「…………だが」

 

ここでおじさんは、嫉妬とも殺気ともつかぬ恐ろしいオーラを放ちながら、言った。

 

 

 

 

「ウチの義娘(ヴァーリ)はやらん」

 

 

 

 

……………………ああ。

 

「……堕天使だとは思ってましたが、噂の新婚総督アザゼル様でしたか」

「噂になってねぇよ!? つかなんだその新婚総督って!?」

「いや、以前のあだ名が未婚総督だったらしいので、今から噂にすることにしました」

「ふざけるなよオイ!?」

「あとヴァーリのお父さん。娘の教育ちゃんとしてください。悪いお友達のせいで色々汚され始めてますよ心臓に悪いです」

「あー……一応対策は打ってるんだが、暖簾に腕押しでな…………って、お前が言うな」

 

ええ、ええ。全くです。アプローチ受けてる俺が言っちゃあいかんわなぁ。

 

「…………ともかく、俺は今すぐヴァーリとどうこうなるつもりはないです」

「ほう、『今すぐはない』ってことは『いずれは』という宣戦布告か?」

「拳ポキポキ言わせながら凄まないでください…………」

 

ほんと、どうしましょうかね…………いや、ヴァーリのことは大好きと言っても間違いじゃないが、恋愛方面のそれなのかどうなのかが自分でもよー分からん上に、好きな理由が今のところ『ナギサ』だったからなわけで………今のあいつを見てやらにゃ、答えすら出せない。

 

「というわけで、今すぐ答えを出すのは不誠実。でも、あんまり待たせるのはそれはそれで不誠実。というわけで近いうちに答えを出すためにも、ヴァーリとはよろしくやっていきたいと思います。その結果、ボコボコにされることは覚悟の上です。ほら、どうあがいても、おじさんからはボコボコにされるでしょう?」

「そこまで腹括られるとつまんねぇな…………いや、言った内容に嘘はねぇがよ」

 

そう言うと、おじさんは殺気を霧散させつつ頭の後ろをガシガシとかき始めた。

 

「いや、な。そういうことに丸切り興味のなかったあいつが急にあんなことになったから焦ってよ。俺も人のこと言えないから、義娘の恋愛事情には口は出さないでおこうと思ったんだが…………いざそうなってみると、だな」

「お気持ち、凄くわかります」

 

前世で妹分に彼氏が出来た時の俺とそいつの義父であるクラウチの狼狽え様は凄まじかった。俺も俺で人の恋愛事情に口出しできる人間ではなかったけど、つまりはそういうことで。

 

「自分を棚に上げてでも、不安になって口出ししたくなるんですよね…………凄くわかります」

「…………お前、高校生だよな?」

「およ、ヴァーリと同じで俺も前世持ちなんですよ? それらしい言葉に反応がなかったから知っているものだと思ってましたが」

「いや、分かってはいたが…………」

「というわけで、その辺りの理解はあるんで、覚悟はできてます。ばっちこいです」

「…………ハァ。なんか、毒気を抜かれた気分だ」

「あははは」

 

それ狙いでしたとは言えません。言えませんが、取り付く島もないよりかは幾らかマシでしょうよ。

 

「あ、それとお礼を言いたかったのですよ、アザゼル総督。いえ、ヴァーリのお父さん」

「お礼?」

「前世でも、今世でも、真っ当とは言えない生い立ちの彼女が、今普通に生きていられるのは、貴方のお陰でしょう。だから、有難うございます」

 

詳しくは知らない。詳しくは知らないのだが…………彼女自身も嫌う前世の苗字『ハウザー』。グラールにてSEED事変を引き起こした『カール・フリードリヒ・ハウザー』の縁者であるその名前の示す意味と、ナギサの『最初から自分はデューマン』だったという発言は、どう考えても…………である。

 

「使命の為に生きて、そして使命の為に自分を殺す覚悟をしていた彼女が、自分の幸せも考えれる様になっています。それは、とても喜ばしいことだと思うのです」

「馬鹿野郎。それはお前もどっこいどっこいだって聞いたんだがな」

 

…………チッ。ヴァーリの奴、俺のこと話しやがったか。あまり広めたい話でもないんだけどな。

 

そんな感じで若干落ち込んでると、おじさんが咳払いをして口を開いた。

 

「ま、そこ関してはお互い様だと思うぜ? 多少は不本意だが、あいつの理解者が現れたことに関して、安心した。しかもそいつが、ヴァーリに真摯に向き合おうとしてくれてるのなら、及第点ぐらいはくれてやってもいいしよ」

 

『あ、でもあいつのダチとしての及第点だからな!』って焦って言う、堕天使なパパさんを見て、落ち込んだ気持ちが上向き、苦笑が漏れてしまう。

 

「……チッ、笑うんじゃねえよ」

「いえ、ウチの親も似た様なことをヴァーリに言ってましたので。大事にされてることが再確認できて嬉しくなったんですよ」

 

…………さて、ひとしきり笑ったところで一息。

 

「で、結局この町に来たのは、それを言うためだけですか?」

「いや、下見を兼ねた散策だ。あと、お前含めた神器持ち達の神器を見ておきたかったからってトコだな。聞くところによると、レア物が多いらしいからな」

「……神器マニアだと聞いてはいましたが。それだけのために敵地に潜り込みますか」

「もう少しでそれもなくなるんだ、少しぐらいフライングしても構わねえだろ?」

「…………それが組織のトップでなければですがね、新婚総督」

 

堕天使ってのはフリーダムなんだなぁと思った、ある朝の日のことでありました。

 

 

◇◇◇

 

 

「…………とまあ、そんなこともありましたので。この駒王学園が三大勢力会談の開催地になるのは間違いなさそうですよ」

 

場所は変わり、放課後のオカ研部室。部室にいるのは、お嬢、副部長、俺の3名で、残りはおそらくどこかで訓練してるんだろうなぁって感じ。

で、俺は自分が弄られるタネに関しては隠しつつ、今朝あったことの報告をしていた。

 

「……そう、頭の痛い話ね」

 

数日前からグレモリー眷属の、ハゲとメガネはとあるイケメン中年に喚ばれ続けたらしい。で、相手の正体に勘付いたハゲとメガネがお嬢に報告。そこでお嬢が集め得る限りの情報を集め、『三大勢力会談の開催地が駒王学園になる』という答えを出したわけで。お嬢本人が嘘じゃねーの? とビクビクしていたら、俺がそれを裏付ける今朝の出来事を告げ口。

 

結果、頭を抱えるお嬢の図である。

 

「……ふふっ。最近ね、お腹どころか頭も痛くなってきたの。ふふっ」

「部長、元気をお出しください。こちら、カモミールティーです。精神を落ち着ける効能があるとか」

 

と、ここでウチの副部長である姫島先輩がお嬢にお茶を出していた。

 

「ありがと朱乃…………貴女が私の女王で本当に良かったわ」

「…………リアス」

 

やべえ、お嬢かなり弱ってやがる。……ちょっと自重しよ。

 

「…………あ、そう言えば、生徒会の方に提出しなければならない書類があったわ」

「こちらに」

「あら、もう済ませておいてくれたのね。ありがとう。お茶を飲んだら行ってくるわね」

 

そう言うや否や、優雅に、しかし手早くお茶を飲んだお嬢は、できるキャリアウーマンの様に颯爽と部屋を飛び出していった。…………忙しないねぇ。

 

「…………なんかごめんなさい、副部長にも迷惑かけてる様で。いや、今回は俺のせいではないですけど、胃痛の原因俺ですし」

「今更な気もしますし、愚痴も増えたので確かに迷惑と言えば迷惑なのかもしれませんが。でも、今のリアスは以前よりもっと生き生きとしています。それはおそらく、貴方のおかげですわイッセーくん」

「ですか。お嬢の右腕の貴女に言われるのなら、悪い気はしません」

 

と、ここで。

俺は何気にこの先輩と2人きりになるのは初めてだということに、ソファーに沈み込んだ段階で気が付いた。

 

「そう言えば副部長。何気に2人きりは初めてですね」

「言われてみれば、ですわね」

 

基本的に学年違うし、こっちは悪魔ではないのだから、接点は少ない。同じ理由で塔城チャンもそんな感じなわけで。あ、お嬢との接点が多いのは友人だからってね。

 

そんなこんなで、いつの間にか淹れてもらった紅茶にお礼を言いつつ、雑談に興じていたわけなんですが。

 

「…………そう言えば、ですけど」

「?」

 

あまり深くはつっこまなかったけれど、確か先輩ってハーフの堕天使なんだよな。ここのところ堕天使と関わる機会が多くてふと思い出してしまった。

 

「不躾な質問なんで、答えたくなければ答えなくてもいいんですけど、先輩って半分堕天使じゃないですか。どうして、お嬢の眷属に?」

 

そう言うと、先輩は複雑な感情を滲ませた苦笑いを浮かべながら、遠い昔を思い出す様に目を細めた。

 

「……簡単にいってしまえば、家出。もう少し詳しく言えば、ある人達を探すために、でした」

「…………?」

 

なんだろう、少し引っかかるが…………とりあえずそれは無視しておこう。

 

「私の父は、名の知れた堕天使なのですが、その父と喧嘩をしてしまいまして…………そして、何も知らない私は軽い気持ちで家出をしてしまったのです。そのついでに、父が不在の時に私と母を助けてくれた恩人を探そうとして」

「おぅ…………それはまた」

「しかし、私は半分は堕天使。母も裏で名の知れた家の娘。無防備にも1人になれば忌み子として襲われるのは自明の理。その時に助けてくれたのが、」

「お嬢、というわけですか?」

「いえ、確かにリアスも助けてくれましたが…………もっと後の話なのです」

 

ありゃ、そりゃ意外。あ、でもある人達って言ってたから、そう言うことなのか?

 

「私と同い年ぐらいの、飢えた獣を思わせる少年でした。彼が、私に襲いかかる大人達から守ってくれて」

 

そう言う彼女の目は、どっかの白龍皇を彷彿とさせるものであり…………ぶっちゃけると恋する乙女でした。

 

「でも、ずっと守ってくれていたわけではなかったんですね」

「ええ。彼の方も、何か目的があって行動していたみたいで。引き止めることなど、できませんでした」

 

で、そのあとは飢えて本当に死んじまったところを、悪魔に転生することで生きながらえて、ってことなのか。

 

「私が悪魔側に付くことになり、様々な取引がなされた様です。そのお陰で私は命を狙われることなく、頻繁に家に帰ることこそ叶いませんが、父と母とも家族を続けていられています」

「ふぇ……波瀾万丈だったんですね」

 

とはいえ、誰だ先輩の一番最初の恩人。そいつが素性知らせておけばこんなことにならんかったのでは?

 

「ふふっ、ブーメランってご存知ですかイッセーくん?」

「? この話と関係が?」

「ふふふふふ」

 

…………なんだろう、凄いSっぽく意味ありげに微笑まれてるんだけど。凄く怖い。

 

「あと、どちらにせよ素性を知ることは叶わなかったでしょうね。私と母を助けてくれた男の子は、そのあと勘違いされた父に追いかけ回されて、そのまま逃げてしまったのですから」

「あちゃー、もしかして喧嘩の原因ってそれですか?」

「うふふ、ええ」

 

しかし、それなら仕方ないよなその恩人さんもねー。

そんなことを思いながら、お嬢が戻ってくるまでの間、俺たちは雑談を続けるのだった。

 

 

 

 

 

『…………相棒、流石に気が付こうぜ』

 

 

 

 

 




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