ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:4E/あかいひと
まあその所為で低評価ついちゃったけど(てへ
◆◆◆
「…………ふむ」
「どうされましたか、閣下」
「我にすら届かぬ『悪』と見做し、放置した異界の暗黒神のことだが……あの判断は、間違いではなかった様だ」
「と、言いますと」
「我が候補として観察していた1人、兵藤一誠に、彼奴の端末がぶつかった。…………まだ、粗削りだ。しかし、遠くない内に、真の意味で完成するだろう」
「それは、実に喜ばしいことでございますね。なにせ、我らの悲願は…………」
「しかし、兵藤一誠だけが届き得ると決めつけるのは早計だ。超越者も、我が見逃した孫のこともある。我は待とう。今までも、そうしてきたのだからな」
「ふふっ…………貴方程貪欲に、『英雄』を求める方は存在しないでしょう」
「ねぇ、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー閣下。己という『悪』を打ち倒す、『英雄』を求める真なる魔王…………」
◆◆◆
「…………落ち着いた?」
グスグスと泣いていたナギサを、半ば抱きしめながら頭を撫で続けること20分。ようやっと落ち着いたらしい彼女に声をかけると、小さく頷く。
目を擦り、残った涙を拭った彼女は身体を起こす。
「済まない、見苦しい所を見せてしまった」
「謝んな、こっちの立つ瀬がなくなる」
とりあえず、少しは回復した身体に喝を入れて起き上がり、フラつきながらも立つ。
「改めて…………久しぶり、ナギサ。お前も、こっちの世界に転生しちまったのか」
しかも転生先が白龍皇とは、中々笑えない運命の悪戯じゃないか。
「ああ、久しぶりだショウ。複雑なところもあるが…………もう一度、会えて嬉しい」
そう言ってもじっと頬を染められると…………なんというか、照れるな。思わず俺もそっぽを向いて無意味に頬を掻いちまう。
「言いたいことが、たくさんあったんだ。…………何度も後悔した。せめて、せめてただ一言、『希望を与えてくれて、ありがとう』と言いたかった。…………本当、どうしてくれる。なんで礼すら言わせずに先立ったんだ」
「うぐっ…………いや、でもなぁ」
「いやもでもも無い。まあ、幸いにして私達にはまたチャンスが与えられた。ならば、私はそれを有意義に活用するまで」
そう言ってグッ! と握り拳を作る彼女は『こいつ、本当にあのナギサなんだろうか』と思える程に年相応の女の子っぽく見えた。あの触れれば切れちゃう様なオーラはどうした。
「先ずは…………貴方に責任を取ってもらうところから始めようか」
「…………へ?」
え、いや。俺何かしたっけ……心当たりが無いんすけど。そんな上目遣いで見られると心当たり無いのに頷きそうになる。
「え、いや、え? いや、忘れてたら本当にごめんなさいなんだけど、本当に心当たりが」
「…………ふむ。こうすれば大体の男は身に覚えの無いことでも取ってくれると黒歌から教わったのだが」
「…………(ビキビキ」
あンの駄猫がァァァァァアアアアアアアッッッ!!!!! (ワイナールの所為で)純粋だったナギサを、何故そっち方面で染めやがったァァァァァアアアアアアアッッッ!!!!!
次会ったらぶっ飛ばす、絶対。今決めた、うんあの駄猫ぶっ飛ばす。
「しかし、本当に責任取ってもらいたいところもあるのだぞ? 『まだ世界には楽しいことがたくさんだ。知らぬまま、逝かせる訳にもいくまいし』と言ってくれたではないか」
「…………あー、うん」
そのこと自体は忘れたわけではない。寧ろ、ダークファルス・ディオスを封印した後で、彼女を連れ回してグラールの至る所に観光に行ったのだ。S級ツアーガイドたる俺の解説付きでな。
しかし、しかしながら…………ショウ・ウォーカーの故郷である『惑星パルム』に関しては、最後まで案内することが叶わなかった。その前に、死んじまったからな。俺の、非常に心残りだったことの一つである。
「もう、約束の続きを行うのは、不可能だろう。ならば、この世界でも、楽しいことを知っていきたい。願わくば、貴方と共に」
「……………………」
本当、どうしちゃったんだろうこの娘。あの物騒な、『女版ショウ・ウォーカー』とも言われたこいつが、見るだけで幸せになる様な柔らかい笑顔を見せるなんて。
それはそうと…………
「……その言い方は勘違い起こしそうになるから止めてください。でもま、いいでしょう。不肖このショウ・ウォーカー改めて、兵藤一誠。その責任に対して全力で応えていこうではありませんか」
そう言うと、少し不機嫌そうに顔を歪めた…………と思いきや、直様俺の右手を両手で包み込んで、
「ああ、よろしく頼む」
そう、言った。
◇◇◇
「さて、再開の会話はここまでにして…………そろそろ次のことを話さねばな」
「ああうん、そだね。めちゃくちゃ気になってることあるし」
特にその光翼とか光翼とか光翼とか。
「まず、改めて自己紹介せねばなるまい。私の名前はヴァーリ・ルシファー。……聞いて分かる通り、旧魔王の子孫だ」
「…………Oh」
まさか、予想外のところからクレイモアぶつけられた気分だ。なんだその爆弾発言。
「まあ、私は本来の父の顔を知らぬのだがな。どうやら母が私を身籠った段階で、ルシファーの元を追われたらしい」
「んー…………神器持ちってことを考えると、お母様は人間?」
「その通り。そうして産まれた私は…………」
バサリ、と空気を叩く音共に、ナギサ……改め、ヴァーリの背中から翼が複数現れる。
「ハーフデビル、というわけだ」
「なんと、まぁ…………冗談みたいな組み合わせだなぁ」
真の魔王ルシファーの血統のハーフデビルで、神滅具持ち? ちょっと理解の範疇を超えてる。
つか、こんなことありえんのかよドライグ?
『(理論上は、な。本当に冗談みたいな存在だ今代の白龍皇は。お前と前世を共有するに飽き足らず、ルシファーの血族とは…………)』
…………もし、これで中身がナギサで無かったらと思うとゾッとする。本当に、殺されてたかもしれん。
「しかし、初っ端から波瀾万丈だな…………その、お母様は無事なのか?」
「幸い追われてしまった母は、程なくして『
「ふぅん。まあ、不幸中の幸いってことなのね…………あ、クロちゃんの名前が出てきたのも、そう言うことだったのか」
ちなみに義父が堕天使総督とかスルー不可避である。どう反応せいと。
「そして、ご存知の通り…………私は今代の白龍皇。神器自体には、産まれてすぐ、目覚めた様なものだ」
「あ、そこは一緒だな」
懐かしいあの頃である。まだドライグも俺に毒されて無かった頃とも言い換えよう。で、今の落ち着き様から察するに、俺と同じ、覇に囚われた残留思念の先輩達をぶっ飛ばして目を覚まさせたのだろう。他の奴なら未だしも、彼女ならば不可能ではない。
と、ここで一言も音声を発していなかったドライグが、かなり不機嫌そうな声を上げた。
『…………おい、白いの。いつまで黙りこくっているつもりだ。先程の暴言、幾ら温厚になった俺とて、到底見逃せるものではないぞ』
「……何? 何を言ったのだアルビオン?」
『…………五月蝿い。貴様には分かるまい、この俺の悲しみが』
あ、ようやっと声が聞こえてきたね白龍皇アルビオン。しかし、どうやら思いっきり恨み節である。…………いやまあ、本来の二天龍の仲ならばこれが普通か。でも、それとも違う気がするのよなぁ。
「一体どうしたというのだアルビオン。貴方は、今までのしがらみをなくした状態で、もう一度ドライグと戦いたいと言っていたではないか」
『ほぉ。嬉しいこと言ってくれんじゃねぇか。…………の、割にはおかしなことになってるが』
『……………………』
と、ここで俺は何かを察した。否、察してしまった。
「……なぁヴァーリ。『白龍皇の光翼』って、どんな神器なんだ?」
「ん? ああ、飛行ユニット兼精神鍛錬の神器だろう?」
「『……………………』」
その答えに、思わず絶句する俺とドライグ。
「せ、精神鍛錬ってのは?」
「ふむ、『赤龍帝の籠手』とは違うのかもしれんが、白龍皇の光翼の中には先代白龍皇達の残留思念が残っていてな。よく精神世界で手合わせをしてくれるのだ」
「ち、ちなみにその白龍皇達、光翼の他の能力を使わなかったか?」
「ああ、確か『半減』と『吸収』だな。だが、そんなもの使わなくても、私は翼の機能があれば十分だ」
『そ、そんなもの…………』
こ、これはなんというか…………ヴァーリ、いやナギサが戦闘者としてハイスペックだからこそ起きた弊害なのだろう。
『あ、あのなアルビオン…………』
『黙れドライグッ!!! 貴様には分かるまい、この俺の悲しみが…………ッ!!! どれだけ、神器の能力の素晴らしさを説こうとも、『私には必要ない』と一刀両断される俺の悲しみが…………ッ!!! 貴様の相方はいいよな、神器のスペックをフルで活用するに飽き足らず、『無限の龍神化』などという素晴らしい領域まで進めているものな!!!!』
もう、泣きそうである。アルビオンが不憫だ。
「で、でもよ白龍皇アルビオン。ナギサ……じゃなくて、ヴァーリが今代のになったことが、本気で嫌なわけじゃないだろう?」
『…………無論だ、ヴァーリと故郷を共にする今代の赤龍帝よ。覇の理に惑わされていた我々の目を覚まさせてくれたのは、他ならぬヴァーリなのだからな。感謝しているし、光翼を宿してくれたことを、あの神にだって感謝した』
「じゃ、じゃあさ」
『なればこそ、この差が納得がいかんのだッ!!!! 畜生、今ばかりは毒が封じられている現状が恨めしい…………ッ!!!!』
「す、すまないアルビオン。だが、私は剣を振るしか能の無い女だ。だから…………その、能力に関して言えば、相性が悪い」
『グゥォォオオオオ……!!!』
やめたげてよぉ!! 光翼が直視できないのっ!! というか申し訳なさそうにしつつ、さらっとトドメ刺したなヴァーリ!!?
『お、落ち着けアルビオン。まだ希望はある。なんなら、我が相棒:兵藤一誠からアドバイスをもらうのも手だぞ』
『ヴァーリと同郷の、同じレベルでおかしいだろう今代の赤龍帝の手を借りろと言うか!!!』
「おい、サラッとひでぇこと言うんじゃねぇよ」
『否定はできん……!』
「おいドライグ」
テメェまでこんな…………つか、
「俺とヴァーリ…………というか、ショウとナギサは、そんなにおかしいか?」
「双方多少腕が立つ程度だと思うのだが…………」
『『いや、お前らおかしいからな!!?』』
二天龍に揃って突っ込まれた。
『…………アルビオン。今なら俺たち、分かり合えるかもしれん。何時間でも付き合ってやる。思ってること、ここで吐き出していけ』
『済まん…………済まんドライグ…………恩にきる…………ッ』
そうして、宿主を置いてけぼりにしたまま、二天龍達は涙交じりの声で叫び合うのだった。
「「…………解せぬ」」
◇◇◇
とりあえず、形はともかく和解したことはいいことだ。アルビオンの方も、なんとか精神の平衡を取り戻したようで。
「お、お互いの現在の状況がわかったところで…………一つ言わなきゃいけないことがあるんだけど」
「ああ、言わなくても分かる。ダークファルスのことだろう?」
和やかムードで談笑していた二天龍達も、その内容と俺たちの心を読み取ったのか、一気に真剣なそれに切り替わった。
「こっちでは、大体のことを把握している。今この場で話すにしては、機密が多い故、すぐにでも別の機会を設けて話し合いたいと思う」
「そうか。ありがたい」
「それにしても…………」
と、ヴァーリは、誰かを悼むように空を見上げる。
「……今回私が、この駒王町にやってきたのは、SEEDに侵食され、乱心した『神の子を見張る者』幹部、コカビエルの討伐、だった」
「…………」
「面倒を、たくさん見てもらったよ。私や一誠と似て、戦いに命を懸けているヒトだった。本来ならば、この様なことをするとは思えなかったのだが」
「…………仕方の無いことだ。と、割り切りたくはねぇが。SEEDに侵食されて完全に自我を保てる奴は、本物の狂人ぐらいのものだ。済まんな」
「……いや、貴方が倒さなければ、私がその首に手をかけていただろう」
お互い、SEED………ダークファルスに人生を左右されたからなのか。多分、この星の誰よりも、彼の無念に関しては理解できる。そんな感じだ。
「さて、そろそろ時間だ。早いうちに戻らないと、みんなが心配する」
「あ、こっちもそうだな」
今頃戦々恐々と寮で待たせてると思うと、申し訳ない。
「ああ、最後に一つ言っておきたかったんだ」
「ん?」
ここで、ヴァーリが俺を引き寄せて、耳元で囁いた。
「(別に、勘違いしてくれても良かったんだぞ)」
…………!!?
「ちょ、それって─────」
問いただそうと開きかけた口が…………柔らかい何かで塞がれた。気がつけば、白い頬を真っ赤に染めたヴァーリが、キ、キキキキキキキキ…………
「…………んっ。それでは、また近いうちにな」
「……………あ。うん。またね」
拝啓前世のみんな。
ナギサが、とんでもないことになっちゃった。
「………………兄に、女の影ッ!!!!?」
なんだかんだで第3章も終わりが見えてきたよ…………ここまでお付き合いくださった方、本当にありがとう御座います。
こんな、テンプレオリ主の作品ではありますが、これからもどうぞよろしくお願いします。
というわけで、感想批評駄目だし、よろしくお願いします!