ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:4E/あかいひと
その1-訓練×訓練×訓練
間違え続けた生前。やさぐれた現在。半ば諦観に支配された時に、お前は現れた。
似た様な境遇。似た様な性格。だが、『運命』に歪みに歪まされたお前は、どうしようもなく『善人』だった。
「だから俺は、貴様の『運命』をどうにかしたい」
そう思っても、構わんだろう。
なぁ、
[ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman]
[第2章-不死の炎翼]
◇◇◇
「ッ、ラァッ!!!!」
迫り来るフォトン弾を、己の体で増幅させたフォトン弾で相殺。そのまま距離を詰めて渾身の一撃をぶちかます。
「─────甘い」
対する相手は、その一撃を片手で軽く受け止め、なんでもないかの様に俺を空中に放り出す。
前後不覚…………人間に近い俺は、少し『飛行』という物にまだ慣れきっていない。
だから、そんな無防備な状態を、さらなるフォトン弾で追撃されるのは自明の理であり。
「──────ッッッ!!!」
そんな
バンッ!! と空気が弾ける音。一定以上の速度で走ればぶつかる空気の壁。それと似た様なことを脚でやり、足の裏で空気の壁…………否、足場を蹴ることで空中での高速回避を行った。人外に片足突っ込んでないとできない技だが…………元よりまともな人間でなし。その上半分はドラゴンだ。この様な芸当も可能である。
「…………甘いのは、我か」
流石の相手も、想定外の動きを見せる俺に焦りを見せたのか…………今度は向こうの方から接近する。
地面を蹴る際に、小規模なクレーターが発生していた時点で、その速度は推して知るべし。俺の視覚では捉えきれない速度だ。
しかし、敢えて言おう。
『だからどうした』
視覚で捉えきれないのなら他のもので捉えればいい。
空気の流れを触覚で感じ、足りない部分を第六感で補い、足りない能力は倍加によって押し上げる。
突き出される拳。フォトンの盾と共に迎撃する掌。あまりにも自分の体が脆いので、先ほどの相手の様に受け止めることはできない。
が、
「ッ!! コレは…………拘束!!?」
フォトンの盾は砕け、その砕けた破片から相手を縛る鎖が現れる。…………まあこんな玩具で、完全に封じられるとは思っていない。精々刹那にも満たない時間しか止められない。
しかしソレが生死を分けるこの場において、十分過ぎる程効力を発揮するのも事実。
「─────ッ!!!!」
声にならない叫び声で、右の剣で斬り払う。空間ごと裂かれた相手も、流石にコレはさらなる隙を生み出さざるを得なかった。
其処からはこちらの独壇場。元より専門は『斬る』こと。刃を、刀を、剣を持ってさえいれば、己は最強である。
「イチッ!! ニィッ!! サンッ!!」
横一閃、返す刀でもう一度。そして斬り上げで空に飛ばす。
連続して放たれる斬撃に、意識を持っていかれた相手は、目を閉じたまま。しかし、見逃すことはありえない。
跳び上がり、構える。いつかの誰かに教わった、必殺技。
「重ね刃ッッッ!!!!」
同じ場所に、同じ斬撃を、同時に幾重にも斬り重ねる技。ただの縦回転斬りを昇華させた、一振りで起こす奇跡。
必殺技の名に恥じぬ威力を以って、相手は見事に両断され、爆発四散。
とりあえず…………勝った。
◇◇◇
「兄、お疲れ。1/10、クリア」
なんてことはない。俺が今先程まで相手にしてたのは、永那の1/10の力を持った分身。しかも永那から切り離されてる時点でもう無限ではないので、精々『めちゃくちゃ強い人型ドラゴン』程度の相手でしかなかった。
…………というか妹そのものが相手だったら、流石の俺も自重するよ?
「兄、おかしい。1/10でも、魔王圧倒」
「え、そうなの?」
前世経験で語るのもアレだが、俺に『重ね刃』を伝授してくれたあいつぐらいなら、普通に永那1/10を倒せそうである。
「…………グラール、魔境」
『確かに、記憶を覗く限りでは魔境と言わざるをえないだろうな』
「ひでぇ」
第1の故郷を魔境と言われて、少々涙目な俺である。
そんな感じでヨヨヨと泣いていると、我が家の地下にあるこの訓練ルームのドアが、ブシューッと開く。
「お兄ちゃんにエーナ、そろそろ休憩ですよ!」
入ってきたのは我が家の新しい妹。兵藤アーシアちゃんである。オラそこ、違和感Maxとか言わねーの。
「りょーかい。丁度キリがいいところだしな」
「お菓子、お菓子」
トテトテと走り、アーシアに抱きつくエーナ。
そんなエーナを、よろめきつつも抱きとめるアーシア。
そんな2人を眺めて、『平和だなあ』と感想を漏らす俺。
新しい形で始まったNew兵藤家だが、とてもいい感じのスタートを切れていた。
◇◇◇
「とまあそんな感じだ」
「朝からエーナちゃんとバトルとか羨ましす」
「…………まあ、今の俺たちでは1/10ですらいいようにあしらわれるけどな」
そんなこんなで学校へ登校中。話題が朝の訓練の内容とか、健全な男子高校生的に間違ってる気がしないでもないが。
「こっちは朝の走り込みと筋トレだからなぁ。いや、基礎能力アップは確かに目下の課題なんだけど」
「基本実戦で鍛えた俺たちからすれば、精神的にもキツい苦行としか言いようが…………」
「まあ、その後の朱乃センパイの持ってきてくれたお茶に癒されたけどな」
「小猫ちゃんのタオルにも…………いかんせんオカ研の部員は、目の保養になり過ぎて困る」
うわ、久々に見たなこいつらのエロい想像してる時のだらしねぇ顔。薄まったとは言え、元々アレだけのエロ小僧だったわけだし、仕方ねぇって言えば仕方ねぇのかもだが。
「ホイホイしっかりしろ。そっち側逝ってると引き戻すために『地獄の1週間』繰り返すぞ」
「「ッッッ!!!!!」」
その一言に、ビックーンッ!! と動きを止めた2人を見てケラケラと笑いながら続けて言葉を重ねる。
「アレを思えば、どんなことも楽に思える。だろ?」
「自分でやっといてよく言うぜ…………」
「2度と、味わいたくはないものだ…………」
ふっふっふ。同盟軍仕込みの訓練は伊達ではないのだよ。正確には同盟軍の教導官だった師匠仕込みだけど。
「あ、そう言えば一つ、気になることがあったんだけどよ」
「「?」」
圭太の突然な発言に、俺と塔矢は頭に疑問符を浮かべる。
「最近、なんか部長が元気ないんだよな。お前ら、なんか知らねぇ?」
「言われてみれば、だが。思い当たるのは何処ぞの誰かのやらかすことに胃を痛めてるぐらいか?」
「悪かったなぁ胃痛の原因で」
「いや、違うと思う。部長、胃が痛い時はなんか食いしばった表情なんだけど、最近のはなんてーの、こう…………思いつめた表情してんだよな」
「よく見てるんだなぁ圭太。でも、そうなるとお前ら以上には接点のない俺には分からんな」
「ふむ…………それとなく聞き出す必要があるか」
ここにいる面子は、程度の差こそあれ、オカルト研究部の部長、グレモリー家の跡継ぎであるリアス・グレモリーに対して恩義を感じている。
だから、彼女がなにか思いつめているのであれば、力になりたいと思うのは、自然な流れであった。
「じゃ、今日の放課後の部活は、VR訓練をやめてお嬢に探りをいれてみるってことで?」
「そうすっか。じゃ、俺は話しやすい様にケーキの準備しとくか」
「ふむ、部室に紅茶の備蓄はあったか…………」
何の気なしに始まった『お嬢の本音を聞き出そう作戦』であったのだが…………この時の俺らは間違ってもそんなことを思わないだろう。まさか、あんなことになるなんて。