ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:4E/あかいひと
事件のオチ。
まあ勝手に動き回ったことでお嬢には凄く怒られたが、まあこれがきっかけで戦争が起こらないことは分かりきっていたので反省はしているが後悔はしていない。
まあ、そんなことよりも重要なこと。
兵藤家にて起こった、一大事。
『つーわけでアーシアちゃん。心配の種は消えてしまったワケだが』
『え…………え!? た、確かイッセーさんって、人間では…………』
『はっはっは! ただの人間じゃないんだなぁこれが。っと、それよりも、だ』
家族の見守るリビングの中、俺はアーシアちゃんと話し合いをしていた。
『たしかに、堕天使共はぶっ飛ばした。でも、これでアーシアちゃんの居場所も、なくなってしまったわけだ』
『そ、そうですね…………』
『で、ここで幾つか提案があるんだけど』
指を3本立てながら、説明を開始。
『まず一つ目。俺の知り合いの悪魔さんに頼んで、この街での居場所を確保する。悪魔、と言っても悪いヒトではない。とはいえアーシアちゃんはシスターさんだ、嫌煙する気持ちもあるだろうから快くオススメはできない』
ちなみに、いいヒトとは言え高確率でアーシアちゃんを眷属にしかねんので、かなり言うのかどうかを迷った案である。
『二つ目。俺ら兵藤家による圧力を以って、教会でのアーシアちゃんの居場所を確保した上で、シスターとして復職する。…………個人的には凄くオススメできない案だ。方々にコネはあるし、圧力は掛けられるんだけど、アーシアちゃんがその後、周りの空気に押し潰されかねない。アーシアちゃんは、それすらも『神の与えた試練』って、好意的にとっちゃうのかもしれないけど、君と知り合ってしまった俺らからすれば、死地に友人を送り込むようで気がひける』
なお、もしこの案を決行することになれば、イリナちゃんの協力はひっすである。悪魔にも堕天使にも教会にもコネがある一般人って珍しいよね!!
『そして最後、君をウチの養子にする』
『…………え?』
『君をウチの養子にする。正直、突飛な案に思えるかもだが、ウチは少々特殊な家でね。ウチの一家だけで世界の全てを相手にできるメンツが揃っているんだなコレが。君を迫害した教会から、守ってやることはできる。無論、他のところからでもね』
実際、父さんも母さんも規格外になってきたし、妹様に関しては言わずもがな、である。そして俺は天下に悪名轟かす赤龍帝だ。
『君は、十分頑張ったと思うよアーシアちゃん…………君はもう幸せになるべきだ。俺らでは力不足かもしれないけど、ね』
そう言うと、アーシアちゃんは俯いて、ポツリと言う。
『……いいんで、しょうか? 私みたいな、ダメダメなシスターが』
『良いも悪いもあるかよ。というか、俺はアーシアちゃんのことをダメダメだとは到底思えないぜ?』
『……私、捨てられたから家族がどんなものかも分かりません。何を話したら、何をしたらいいかもわからないですし、世間知らずですし…………』
『心配無用。我、最初は分からなかった』
思わぬところで、妹様の手助けが。
『我、昔は独り。今はもう、家族がいる』
『……………………』
『家族ができて、色んなものを、我は得た。頼りになる父、優しい母、最強の兄、『兵藤永那』という名前、毎日の暖かい食事、何気ない会話、繋いだ手、抱きしめられた腕から伝わる温もり…………他にも、たくさん。独りでは決して得ることのできない、語りきれない程のものを得た』
無表情で、無感情な彼女はもういない。
誰かと共に過ごすことの素晴らしさを語る龍神は、とてもいい笑顔を浮かべていた。
『だから今度は、我が与える番。アーシア、独りぼっちのアーシア。我の、我の姉に、なってくれ』
そう言って、トテトテとエーナは走って、アーシアちゃんに抱きついた。
『本当に…………本当にいいんですか…………? 私が、誰かのお姉ちゃんなんて…………』
『大丈夫、アーシアがいい』
その後のことは、必要以上に語るまい。
「私が出なくても、なんとかなったわね。全く、ウチの娘は最強ね」
「その娘も、今日から増えるわけだ。父さん、もっと頑張らないと」
「妹が増えるか…………なんかこう、感慨深いものがあるな」
泣きじゃくる『姉』と、抱き締める『妹』。
我が家の『姉妹』を眺めながら、俺たちは笑顔をこぼした。
◇◇◇
……………………まあ、それで終わるならこの話は美談で終わったのだけど。
「というわけでお嬢。哀れな哀れな協力者に、何卒力を貸してくれませんかね?」
「却下よッ!!! 眷属でもない子を、無闇に裏口入学させるのは厳しいのよッ!!!」
この街での1番の権力者であり、俺の協力者リアス・グレモリー嬢に力を貸してもらわないと、アーシアは結構離れた学校に入れるしかなくなる。それは避けたいのでこうやって話をつけようとしたのだが…………むう、あまりうまくはいかないもので。
「それに、私達は悪魔よ? そのアーシアって子が私達でも同情しちゃうような子なのは話に聞いてるけど…………あまり表立って悪魔がシスターの手助けをするのは、難しいの」
とはいえヒトの良いことで俺の中では有名なお嬢。立場故に表立って肩入れできないことが歯痒い様子。
「では、こうしましょう。アーシアに転入試験のチャンスを。この程度なら、問題はないでしょう? ああ、急だと訝しがるヒトもいそうでしょうし、夏休み明け、9月からの新学期に合わせて転入する形でいかがでしょう?」
「ふむ…………その位なら、大丈夫ね。じゃあ、こちらの方で手続きはしておくわ」
「ありがとうございますお嬢! じゃ、ここは悪魔らしく、代わりになんでも言うことを一つ、聞きましょうか!」
対価なしに、悪魔は動かせない。
まあそれとは別に、このヒトには恩もあるので、できる範囲であればなんでもしてやろうかな、と思っていたり。
「赤龍帝のソレは魅力的ね。まあ今すぐには思いつかないから、『貸し1』程度でいいわ」
「了解です」
…………なんだろう、近いうちに突飛な形でその貸し1が取り立てられそうな気がしたんだけど。
「(まあ、いいか)」
それは、その時に考えればいいか。
「ああそうそう。イッセー、一つ聞きたいことがあるのだけど」
「なんなりと」
そこでお嬢、新聞の切り抜きを一つ見せてきた。
えっと、何々…………『怪奇現象、再び』。
「……………………」
「例の河川敷、また見事に抉れていたみたいね」
「へ、へへ、へぇ? そ、そそそんな奇妙なここ事も、あああるもんですね?」
っべー! マジっべー! 直すの忘れてたけど、あそこ昨日俺とエーナとアーシアで遊んだところじゃないか! まあ確かに? ちょっと危険な兄妹喧嘩になりましたけど?
「少ぉし、オハナシ、してくれないかしら?」
「…………ヘイ」
オカルト研究部の奥にドナドナされながら、俺はしばらく口が聞けなくなるだろうなと確信した。
◇◇◇
心のどこかで願っていた非日常。
…………なんとなく分かっている。俺はこれから否応無しに、危険な戦いへと巻き込まれていくことだろう。それがドラゴンを宿した者の宿命であり、『俺』の宿命なのだ。
だからと言って、立ち止まるわけにいかない。俺が止まれば、周りに火花が飛んでいく。
だから俺は強くなろう。自分にも、周りにも、理不尽が及ばないように強くなろう。
「ただいまー」
「「おかえりイッセー」」
「兄、おかえり」
「お、おかえりなさい、お兄ちゃん」
「「邪魔してるぞイッセー」」
まずは、家族を護れるくらいに。
[第1章-闇夜の幕開け End]
◇◇◇
『闇を殺せると思っていたのか?』
『闇を封じられると思っていたのか?』
『ありえない!』
『ありえない!!』
『ありえない!!!』
『光在るところに、我在り!』
『我は……闇は、永遠に消えんッ!!!』
『ショウ・ウォーカー……貴様という『光』を消すまでは…………!!!』
よし、第1章終了!