ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:4E/あかいひと
というわけでレッドゾーンです。更新が遅れて申し訳ありませんでした。
家に連れてきて、まず俺がしたことはアーシアちゃんを母さんに任せたこと。誰も居なけりゃ俺が彼女本人の口から色々聞いたのだろうが、母さんがいるのなら母さんに任せた方がいい。理由は似たような状況で本当のことをゲロった過去の経験だ。
んでまあ、当初の予定通り…………
「ってなことがあってだな。そこんとこどうなのよ、イリナちゃん?」
『…………返す言葉は、ないわ』
唯一の天界勢力とのパイプであるイリナちゃんに、確認の電話をしていたわけだが。
『言い訳するようで嫌なんだけど、今のこっち側が抱えている事情から、どうしても彼女は追放されなくてはいけなかった。…………我が身可愛さで、私達は彼女を見捨てたのよ』
「そっちの事情…………だと?」
『説明は…………できない。いくらイッセーくんだからと言って、教えることはできないわ。そも、私がこのことを知ることができたのだって、シスター・アーシアの一件があってこそだったの』
…………推測するに、天界勢力にとって、アーシアちゃんは不都合な存在になってしまったということか。
『…………本当、笑えるわ。『彼女は、悪魔に惑わされた被害者だ。彼女こそ、我々が手を差し伸べるべき存在なのでは』って息巻いて問い詰めたのに…………返ってきた返答は、想像を絶する内容よ。久々に、自分の無力を悔やんだ』
「…………そっか」
まあでもひとまず、イリナちゃんが人間的に腐ったわけじゃなさそうで安心した。
『ねぇイッセーくん。私がこんなことを言うのは筋違いなのかもしれない。けれど彼女のことを、お願いしてもいいかな?』
「あたぼうよ。ダチの頼みな上に、『兵藤一誠』という人間としても、この件は見過ごせねぇ」
『…………ありがとうイッセーくん。あなたに、主の御導きがありますよう』
もっとも、笑えない皮肉だけれどね。と言い残して、通話は途切れた。
「……………………」
『…………思うところでも、あるのか相棒?』
「いや、結局どこで事件が起こったのか聞き損ねた」
『…………嘘付け。とは言わんが、それだけではなかろう?』
いやまあ、そうですが。
「ドライグは、白龍皇と喧嘩してて、そん時に三大勢力に抑えられて、神器に封じられた。だよね?」
『? 今何故その話をするのかは分からんが、その通りだ』
「ということは、その時点では
『……待て相棒。お前、何を考えている!?』
むしろあそこまでヒントを残されたら、その位の想像はしちゃうよ。
「イリナちゃんが最後の言葉を本当に皮肉だと思ってるのだとすれば…………ありえない話じゃないよ。多分、聖書の神は
主が死んでたら、御導きもヘッタクレもねーわな。確かに凄い皮肉だ。
「まあその事実が、アーシアちゃんが追われなければならなくなった理由とどう繋がるのかは分からないんだけどね。まあ、十中八九『アーシア・アルジェントの存在が、神の死亡を悟らせる材料になる』ってなところだろうが」
イリナちゃん、教えられないと言っておきながら、なんだかんだで教えてくれたんだなぁ…………。
「ハァ、なんだって俺の周りにゃこんな世界の危機に直結しそうな厄ネタがゴロゴロ転がってんだよ…………そういう星の下に生まれてきたってか?」
『確かに…………
神サマも星霊サマも、今も昔も俺には優しくないなぁ…………。
「兄、龍神、頼りになる」
『永那、貴様は1歩間違えたら厄ネタの塊だろうが』
「…………ドラゴンは頼りになるってことで」
◇◇◇
「母さん、アーシアちゃんは?」
「泣き疲れて、今は客間で寝ているわ。…………イッセーとは違う意味で、歳不相応よ。周りの大人はなにをしてたのかしら」
…………あー、お母様キレてらっしゃる。
「実体験から言うと、子供が良くも悪くも何かに巻き込まれると、否応無しに精神年齢が引き上げられるからねぇ…………」
俺の巻き込まれたSEED事変は、俺を含めたくさんのそういう子供が量産された。…………なんとも、嫌な話だ。
「聖女として祭り上げられるだけでも、かなりの負担なのにね。担ぎ上げられると、それだけで孤独になるし、神器持ちってのは異端視される」
挙げ句の果てに、迫害だよ。
「寄りかかるだけ寄りかかって、望むものでないから捨てられて…………ねぇイッセー。あの子、なんて言ったと思う?」
…………分からないけど、想像は難くない。
「『きっと、私の祈りが足りなかったんです』『今は、我慢のときなんだと、思うんです。私は…………ダメなシスターですから、主が試練を与えてくださってるんです』」
「……………………ンだよそれ」
ブチリと、頭から聞こえてはならない音がした。
「ねぇイッセー…………こんな子が、笑いながら涙を流して、自分に言い聞かせるように言うのよ。こんなことがあって、いいものなのかしら」
母さんは、ひたすら無表情だ。ただひたすら、感情の発露を抑え込む様に、淡々と口から言葉を発していた。
「いいわきゃ、ねぇだろうが」
気が付けば、軍手が勝手に展開していた。
感情の昂りに合わせて出てきてしまったらしい。
「…………済まん母さん、行ってくるよ。せめて、今ここにいる間だけでもあの娘を安心させないと」
「謝るんじゃないわよ。その代わり、しっかりやってきなさい」
怒りを滾らせ、グローブをはめて玄関を出ると、
「遅いぞイッセー」
「待ちくたびれた」
既に闘志を滾らせている親友共がいた。
「な、なんでお前らが」
「我、呼んだ」
そう言ったのは、家の屋根から飛び降りてきた永那。その顔は、いつかの様に無表情であり…………感情豊かになった彼女のソレは、今となってはどういう意味を持つのかは、説明は要らないだろう。
「つーわけで話は聞かせてもらった、ってわけだ」
「俺たちを放って置いて、何を勝手なことを、と言っておこう」
「…………そりゃすまん」
尤もな小言に謝り、気合いを入れ直す。
「さて、役者が揃ったところで行きますか」
「俺たちの弔合戦……と言うには語弊があるな」
「塔兄、復讐」
「お、流石エーナちゃん。じゃ、俺たちのリベンジマッチと、件のシスターちゃんを救う為、久々に張り切るか」
「全く、昔の俺らが見てたらなんて言うだろうな」
「ハハッ、十中八九羨ましがるだろうな!」
「…………ったく」
まぁ、そうだよな。こいつらだって、やりたいに決まってる。何せ、殺されてるわけだしよ。
でも、この先は戦争である。今まで平穏に暮らしてきた彼らには、その覚悟を問わねばなるまい。
最初に、死ぬ覚悟を。
「ふぅ…………分かってるよなお前ら。ここから先は戦場だ。敵は堕天使に不良神父。悪魔を相手に殺戮を繰り広げてきたその道のプロフェッショナルだ。簡単に、呆気なく殺されるかもしれねぇ。迷いは?」
「「あるわけねぇ」」
次に、殺す覚悟を。
「ならば戦争だ!! 人の命を屁とも思っていないあいつらを、領地に入り込んでふざけたことをしようとしてる悪魔を舐めきったあいつらを、そして龍の逆鱗に触れたあいつらを、血祭りにあげる覚悟はあるか!!!?」
「「勿論だ!!!」」
最後に、人の道を外れる覚悟を。
「例えそれが、命を殺める行為であっても、一生離れることのない罪の意識に苛まれる行為であっても…………人の道を外れる行為であっても、構わないとッ!!!?」
「「もとより悪魔だ、舐めんじゃねぇッ!!!」」
その覚悟に、悲しみを覚えつつも力強く頷き、翼を広げる。
「よろしい、ならば征くぞ!!! 容赦なんて捨ててな!!!」
「「応ッ!!!」」
駒王の空に、3つの影が飛び上がる。
今ここに、復讐劇の火蓋が切って落とされた。
え、イリナちゃんかなり教会の上の方に…………
→何処かの誰かに侵食されたせいなのよ…………。
つか遅過ぎんだけど!?
→本っ当に申し訳ありませんでしたッ!!!(土下座)