ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:4E/あかいひと
その日の悲劇は、ハゲのその一言から始まった始まった。
「イッセーが性転換したら、どんなバケモノ女になるんだろうな?」
オカルト研究部室で、皆思い思いに過ごしていた所に、こんな言葉が放り込まれてしまった為、一瞬空気が凍りついた。
「…………おいコラハゲ。テメェ等々トチ狂ったか」
「純粋な疑問だ。他のみんなは、性転換してもどんな感じになるのか想像つくのに対して、お前だけどーしても思い浮かばん!」
いや、そんなことを言われても…………つか、性転換した俺とか想像したくねェェェエエエエエッッッ!!!!
『ふむ、少々興味深い話だな』
「ドライグ!?」
「確かに、気になるのも無理はないわね」
「あらあら……可愛いといいですわね」
「お嬢に先輩も!?」
「うーん、想像がつかないから逆に気になるのは間違いないね」
「…………女姿のイッセー先輩」
「木場に小猫ちゃんまで!?」
と、というか簡単にそんな性転換なんてできるわけないでしょうが!
「そも、そんな深淵に突っ込まないとできないような所業を、この中の誰かが出来るとは─────」
「できるぞ」
「おいコラメガネェェェエエエエエッッッ!!!!」
あーそうだよな! 母さんの直系の弟子だもんな畜生ッ!!
「というわけで、ていっ」
「あじゃぱーっ!!?」
そうして俺は不安になりつつも、意識を暗闇の方に沈ませていった。
◆◆◆
痛む頭を押さえながら、身体を起こす。
そして『私』は驚愕した。
本当に…………本当に自分の息子が消えていた上に、その…………ムネが、大きく…………って、
「どういうことですの─────ッッッ!!!」
飛び起きて、自分の服に唖然とする。
それもそのはず、私が着ていたのは駒王学園の男子制服。でも今私が纏っているとは…………貴族の女性が着そうな、昏い紅色のフリルだらけのドレス。というかコレ、どっかのデザイナーが女性デューマンに合う服として作った『フロルヴィクトリア』じゃありませんか。帽子こそないものの、間違いありません。
「ど、どういうことですの…………喋り方まで変わってしまって…………皆様どうなされました?」
私が現実に打ちひしがれていますと、部室の空気がまたもや凍りつきました。一体どうしたというのでしょう?
「…………綺麗」
誰かがポツリと、そう零しました。凄く心の折れる一言ではありますが、仕方ないと割り切ります。
「綺麗…………ですか。鏡がないと判別つかないのでなんとも言えないのですが…………」
「ほらよ」
「あら、ありがとう…………って」
一瞬、言葉を失った。
多少つり目気味である以外は、特徴の無さすぎるバランスの取れた美女、とでもいうべきでしょうか。完璧に近づくと個性がなくなる良い例でしょう。…………まあ、それもストレートの髪が銀色で、さらに緑色と紅色のオッドアイで、極め付けに肌が異様に白くなければの話ですが。肌の白さと作り物めいた顔の造形がマッチして、まるでお人形のよう…………うん、綺麗。
…………いや待って、自分のことを綺麗とか、ちょっとないですわよ私ィ…………。
「ひゅー♪ ユウレイ感が増したなお前! なんか廃棄された洋館に化けて出てくる美女幽霊みたいだぞ?」
「どーこの誰が美女ですのッ!!? ぶっ飛ばしますわよこのハゲッ!!!」
「…………ブツブツ…………大丈夫、スタイルは私の方が胸も出てる…………ブツブツ…………」
「…………なんという、敗北感でしょう」
「……………………」
「貴女達も貴女達で打ちひしがれているんじゃありませんの!!! 所詮性転換の代物でありますでしょう!!?」
「あははは…………」
特に小猫ちゃん! その私の胸を見て親の仇みたいに睨むのやめてくださいまし!! 私だって男なのにこんなものが付いて…………悲しいったらありゃしませんわ!!!
「ゴホン! まあとにかく、性転換したイッセーは綺麗ね。暫くそのままで過ごしてみてはどうかしら?」
「お嬢、私に死ねと!!?」
これでは色々と戦うときに苦労して嫌ですのぉ…………。
「特に気にするポイントが其処なのに恐れ入ったわ。まあそこはほら、VRで訓練してきなさい」
「死刑宣告!!?」
…………そんなわけで、私は暫くの間兵藤一誠の名前を封印し、謎の女『シェリー・ウォーカー』として過ごすことになりました…………トホホ。
◆◆◆
1週間過ごした結果。
「お、女の子って…………ここまで疲れる生き物なのですね…………」
色々手間はかかるわお母様は無駄に構ってくるし化粧は面倒だし…………うーん…………。
「でも、潜入捜査で女装することもあるって言ってたろ?」
「アレはベースが男だから気楽で済んだのですわ。ちなみにこの状態で男装する気にはなれませんわよ?」
疲れたとはいえ、慣れてしまった駒王学園の女子制服を纏った私は、現在夜のオカルト研究部に顔を出して、ダレています。うー、もうそろそろ戻ってもいい頃合いでしょう?
「済まんが、2日〜9日のランダムで解ける仕様だ。下手したら、あと2日間は」
「うがーっ! やってられませんの─────ッッッ!!!」
誰か私を殺してッ!!! それができなければ早く戻ってくださいまし私の身体ァ!!!
「あらあら、荒れてますわね。それと部長」
空気が切り替わったの察して、半分おふざけのやり取りを止める。
「はぐれ悪魔討伐依頼が、大公様から来ました。いかがなされます?」
カンッ! と床を鳴らして立ち上がる。
「お嬢、私が行きますわ…………ストレスは溜まるし、血も疼くし、欲を満たさないと、私どうにかなってしまいそうなのです」
「…………そう。なら行ってきなさい」
許可を貰ったところで、私は部室の窓を開けそこに足を掛けつつ、背中から翼を広げて、夜の空へと繰り出しました。
◆◆◆
「美味そうな臭い…………甘い、甘い、女の臭い」
街の外れにある廃屋に反応があったため、そこに降り立ってみたのですが…………廃屋の奥の方は未だ暗闇故、姿は見えません。が、声が少々恐ろしいですわ。
「…………まあ、美味しいでしょうね。なにせ私、ドラゴンですもの。異形にとって、ドラゴンの肉は相当キくそうですし」
世間話でもするかのようにそう返すと、ケタケタとした笑い声と共に、暗闇からその異形は姿を現した。
…………とはいえ、見掛け倒しであることは間違いない。手に持つ長柄の武器も、大したことはありません。
「とりあえず、はぐれ悪魔バイザー、でしたっけ? この街を治める悪魔、リアス・グレモリーの命により、貴女を斬り飛ばしに来ましたわ。まあ、己の欲求の為に主人を殺すようなド屑ですもの、仕方ありませんわよね?」
「小賢しいぃぃいいいっ! 小娘如きがぁぁぁ! その白い肌を、鮮血の赤に染め上げてやるわぁぁぁっ!」
雑魚ほど吠える、とはよく言ったものですわね。まあいいですわ。
「ドライグ、It's show time」
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!!』
身に纏うのは、鎧ではなく私の身に宿るドラゴンの様に、真っ赤な真っ赤なドレス『フロルヴィクトリア』。違う点があるとすれば、ロンググローブと靴に、緑の宝玉が付いていることでしょうか? アクセントとしては悪くなくてよ。
「『
『Gear Armament:Model Scythe!!!!』
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBBBBBBBBBBBBBBBB!!!!!』
この身体に、何故かしっくりと合う大鎌を取り出し、宝玉から狂った様に鳴り響く倍加の音に意識を狂わせ、前を見る。
さあ、どうやって調理してやりましょうか………♡
「見掛け倒し如きでぇぇぇえええっ!!!」
先に動いたのははぐれ悪魔。その腕に持つ武器で、私を叩き潰そうと振り下ろしてきますが、
「斬ッ!」
キィン! と小気味の良い音と共に、左右真っ二つに斬れ、その余波で相手の右腕まで裂いてしまう。
ああ、久しぶりの実戦の空気…………カ・イ・カ・ン♪
「さて、先手はお譲りしましたし、次はこちらから行きますわ」
相手は巨体。動かれると被害が拡大してしまいます。故にまず私がすべきことは、
「切る……伐る……斬るっ!」
「ギ、ギガァァァアアアアアッ!!!?」
その大木の様な太い脚を切り刻んで潰し、機動力を奪う。
次に地味に鬱陶しい蛇の尻尾を斬り潰し、動けなくしてからその巨体を斬り上げる。
宙を舞うはぐれ悪魔は、せめてもの抵抗と、左腕とその得物で一矢報いようとするが、それも鎌で一閃。
「さて、フィナーレと参りましょう。大人しく踊り狂いなさいな」
落ちてくる巨体を、大鎌を振り上げてまた打ち上げ、振り上げたそれを、そのままの速度で回し、さらに振り上げて斬る。
「ギィア、ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!!!!?」
徐々に速度を上げ、おそらく常人には視認できない速度になり始めた頃…………
「ア”ア”ア”ア”ア”ア──────────────────」
事切れたのか、ようやっと聞くに堪えない叫び声がピタリと止み、
「ふうっ」
完全に切り刻んだその周囲に残ったのは。
肉片すら残らない様に斬り刻まれた為に、赤黒い液体しか残らなかった、はぐれ悪魔の成れの果てと、
「…………少々殺り過ぎましたわね」
ストレスに身を任せた結果、とんでもないことをやらかしていた、私自身でありました。
◇◇◇
う、うーん…………頭が痛い。何かあったのかと、身体を起こす。
ここはオカルト研究部室。特に変わったことは…………何故かみんなが心配そうに俺を覗き込んでいたことだ。
「…………えっと、何があったんですか? ちょっと記憶が混濁してて、何が何だか」
「思い出さなくていい…………思い出さなくていいのイッセー…………アレは、悪い夢だったの」
お嬢が、聖母もかくやといった慈愛の表情で俺を抱きしめてくるので、
(気にしないほうが、良いみたいだな)
取り敢えず、考えることをやめた。
『ウフフ。また、ワタクシは現れるかもしれませんわよ、ショウ・ウォーカー?』
『…………な、なんて残留思念を遺して逝ったんだ、性転換した相棒は…………ッ!!!?』
フロルヴィクトリアってなに?
→ファンタシースターポータブル2∞の女性デューマンの初期衣装。フリルだらけで絵師泣かせらしい。