ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman   作:4E/あかいひと

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UA1万超えたぞやったー!!!

というわけでドン!


その2-赤×紅×契約

 

元々、俺はただの子供だった。

少しばかり機械工学に興味があって、機械弄りが趣味な、パルムではよく見かけるありふれた一般家庭に生まれたヒューマンの子供だった。

 

当時実感は無かったが、間違いなくその日々は幸せだった。父さんがいて、母さんがいて、趣味が合う友達がいて。

 

でも、その幸せは全て俺の前で潰れた。

 

空から降ってくる黒い隕石。

潰れる家、燃え盛る周囲、辺りから響く怒号めいた悲鳴。

俺たち家族も、訳も分からずに逃げ始めた。確認を取ろうとも、それどころではなかったのだ。

 

なおも雨のように降り注ぐ黒。運の悪いことに、それは俺の頭上に降ってきて───────

 

『『危ないっ!!』』

 

2人分の声が響くと同時に、俺は突き飛ばされた。

そして見た。俺を圧し潰すハズだった黒が、父さんと母さんを殺す瞬間を。断末魔の声を上げることすら許さず、グチャリと潰された。アレでは、原型すら留めてないだろう。

 

『う、うああ…………うあああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!!!?』

 

悲しみと絶望の怨嗟を、獣のように上げた。

涙を振りまき、みっともなく泣き喚き、叫んだ。

 

ショウ・ウォーカー1度目の『死』。

平穏な日々を過ごしていた子供はもういない。

全てを流し、其処に残されたのは、『復讐』に取り憑かれた、虚ろな虚ろな獣だった。

 

 

◇◇◇

 

 

気がつくと、そこは怪しげな内装の部屋だった。

 

回らない頭を無理矢理回しながら、現状を把握する。

 

ここは、どこだろう? 分からないが、窓枠から察するに駒王学園の旧校舎と推定。

 

気を失う前は、何をしてたんだ……………………ッ!!!

 

『あばよ…………イッセー…………』

『お前とバカやれて…………楽しかった…………』

 

蘇る光景…………圭太と塔矢の死に様。

思わず、跳ねるように身体を起こした。

 

「ッッッ!!!!」

「あら、気が付いたのね」

 

跳び起きた俺に、声をかけてきたのは…………聞いたことはあれど、言葉を交わしたことのない相手。この学校の制服に身を包む、紅い紅い髪の女生徒。

 

「…………リアス・グレモリー先輩」

「ええ。初めまして、兵藤一誠くん」

 

優雅に笑いながら、彼女は挨拶を。

そして俺は、今にも暴走しそうな心を押さえつけて、俺は冷静に頭を回す。

 

[リアス・グレモリー]

駒王学園高等部3年の女子生徒。

オカルト研究部の部長を務める。

 

表向きは。

 

その正体は、魔道書『ゴエティア』に記された72柱の悪魔の一つ…………グレモリー家の次期当主。そして、この駒王町を統べる存在。

 

…………なるほど、ならばこの場所が何処であるかも分かる。

彼女と、彼女の眷属悪魔の隠れ蓑であるオカルト研究部の部室だ。

 

「さて、起きた早々で申し訳ないのだけれど、少しお話をしましょう」

「…………すみません、ここまで運んでいただいてなんですけど、今はそれどころじゃ───────」

 

 

 

 

 

「松田くんと、元浜くんの話だと言っても?」

 

 

 

 

 

思わず、殺気立ってしまった。しかし、このタイミングでその言葉は、逆鱗という言葉では済まされない。

 

「…………気持ちは分かる。大体の話は貴方の相棒に聞かせてもらったわ。その上で、話をしたいのよ」

 

しかし、それを受けて尚、冷や汗こそ流しつつも、先輩は真摯に言葉を続けた。

 

…………というか、相棒?

 

「(ドライグ、お前…………)」

『(出過ぎたマネかもしれんが、状況説明だけはしておいたぞ)』

「(いや、むしろグッジョブだ)」

 

まあ、赤龍帝だということがばれたことは大きいが、この際どうでもいい。

 

「分かりました。すみません、のっけから殺気なんか放って」

「問題ないわ。それに言ったでしょう? 『気持ちは分かるわ』と。そうなることも無理からぬことよ」

 

そして俺は、彼女に促されるままに話し合いのテーブルに着いた。

 

 

◇◇◇

 

 

「まず最初に言うと、貴方は簡易魔法陣で私を呼び出したのよ」

 

簡易魔法陣? 心当たりは…………あ、

 

「……あの怪しげなチラシっすか。マジモンって判断は着いたんで解析用に持って帰ろうとしてたんすけど」

「別に大したものではないわよ。欲を持つ人間が、私や私の眷属を喚ぶ為のものでしかない」

「いや、召喚陣とか普通に凄いと思うんすけど」

 

まあ、それは置いておいて。

 

なるほど、流れは見えた。

2人が死んだ時に、『死んでほしくない』って願いに反応して、あのチラシが起動したんだな。

 

「本来なら、私の眷属が向かうはずだったところ、私が喚び出された。そしてそこで私が見たものは、松田くんと元浜くんの死体と、気絶した貴方だった」

『察することはできても、飲み込むことはできなかっただろうから、ここで俺は一連の流れについて説明した』

「そういうこと。感謝するわ、ドライグ」

『何、相棒の友を蘇生してくれたのだ。このくらい訳無いさ』

「…………えっと、本当にあの『赤き龍の帝王(ウェルシュ・ドラゴン):ドライグ』なのよね? さっきからずっと気になってたんだけれど、私が教えられた貴方と今の貴方が結びつかないのよ」

『証拠の宝玉は見ただろうに。まあ、あの時の俺と今の俺が結びつかないのは致し方ないことではあるが』

 

…………ってちょっと待て。

なんとなく話し始める前から察しはついていたけど。

 

「グレモリー先輩、まさかあの2人を…………」

「ええ。と言っても、人間として蘇生することは叶わなかったけれど。そこは、申し訳ないわね」

「そうですか…………。なんにせよ、恩に着ます。本当にありがとうございました」

 

最悪の事態を免れただけでも、良かった。

 

「それにしてもあの2人、凄い潜在能力を持っているのね。どちらも兵士の駒8個じゃ足りなかったわ」

「そうだったんですか……………………え?」

 

えっと、少しおさらい。

 

爵位持ち悪魔は、確か『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』つーもんを与えられるんだよね。これらはチェスの駒になぞらえて、兵士の駒8個、戦車、騎士、僧侶の駒がそれぞれ2個、女王が1個ずつだったはず。

 

駒の価値とかは今は置いておいてだ。

 

「8個あっても足りないんじゃ、転生させることはできなかったのでは…………」

「そこをどうにかしたのが、貴方の籠手…………いえ、軍手と言った方がいいかしらね」

 

…………そういうことか。

 

『倍加と譲渡なら、封じられた状態の俺でもできた。そもそもコレは元々俺の力である故にな』

 

それで、駒の力を引き上げて無理矢理…………ということか。

 

「幸い、今のところは駒の方にも異常は起きてないわ。…………いえ、この場合異常が起きてないことの方が異常なのかしらね? とにかくあの2人は無事、転生悪魔として生き返った」

 

そうか…………心の底から良かった、とは言えないが、良かったと思う。

噂によると、グレモリーの悪魔は情に厚いと聞く。見たところ、グレモリー先輩もそうなのだろう。だから、あいつらが上司からのパワハラ的な意味で酷い目に遭うことはないはずだ。

しかし、あいつらの同意なしに人外にしてしまったことに関しては…………。その件で責められることとなっても、俺は甘んじて受け留め、償っていかなければ。

 

「ああ、そこの辺りは大丈夫よ。事後承諾になったけれど、2人には話したもの」

「…………え?」

「随分と喜んでたわよ? とはいえまだ触りの部分しか伝えられてないから、後日改めて説明しようと思ってるわ。その時は貴方もいらっしゃいね?」

「え、ええ…………」

 

…………ああ、なんとなく察した。元ちゃんも悪魔だったし、俺もホモサピエンスではないという方向では人外だし、人外に対する抵抗がなかったのな。とは言え後で話と謝罪はしないとだけど。

 

「では最後。今回、意図せずとはいえ貴方は私を喚び出し、私は貴方の願いを叶えた。故にその代価を、貴方は渡す必要がある」

「ええ。どんな代価でも…………それこそ命を差し出しても」

「あ、そこまでは大丈夫よ? こっちとしても、将来有望な眷属が2人も増えたんですもの。だから、形だけって側面が強いわね」

 

あ、そうなんだ。

 

「差し当たっては、赤龍帝を宿した貴方と、お近付きになりたい…………というところでどうかしら?」

「あなた方の協力者として、契約をしようと?」

 

でもそれなら、ぶっちゃけ俺も下僕悪魔にした方が良くね? と思ってしまうわけで。むしろその位なら喜んでなるのに。

 

「本当はそれも考えたのだけれどね」

 

と、ここで先輩は、あるケースを取り出し、そこの中から何かを一つ取り出した。

 

真紅と表現すべき色の、馬をあしらった駒。チェスの騎士の駒。

なるほど、実物は初めて見る。これが、『悪魔の駒』なのか。

 

「少し、持ってみて頂戴」

「あ、はい」

 

テーブルの上に置かれたそれに、言われるまま手を伸ばし、触れた瞬間だった。

 

「ッッッ!!!!?」

 

反発なんて生ぬるいものじゃない。触れた瞬間、弾かれるように俺と駒は吹っ飛んだ。

 

「あ、ごめんなさい! ここまでのことになるとは…………」

「あー、大丈夫です。背中を壁で打っただけなんで」

 

これぞまさに壁ドンってか? 笑えねーよ。

 

「つまり、そういうことなのよ。何が原因か、分からないのだけれど」

「こういうことだったんですね…………」

 

…………触れた瞬間、なんで弾かれたのかが分かってしまった。

 

悪魔の『闇』と、クソ暗黒神の『闇』が拒絶反応を起こした。

そも、『デューマン』という存在が、暗黒神の眷属とも捉えることができる。故に重ねて悪魔の眷属になることができなかった…………そういうことなんだろう。

 

今は、まだ言えないけれど。

 

「さて、そういうことだから、これからよろしくね、兵藤くん」

「ええ。よろしくお願いします、グレモリー先輩」

 

 

 

 

 

これが、これから長く…………本当に長く付き合って(迷惑をかけて)いく悪魔との、初の邂逅だった。

 

 

 

 

 




やはりシリアスを書くのはなれないと思う今日この頃。

あと、クールなリアスさんを拝めるのはおそらくここで最後です。

とまあ、そんなことは置いておいて。

感想、批評、駄目出し、よろしくお願いします。

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