ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman   作:4E/あかいひと

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誰だこのドラゴン…………原作のかわいそうなドラゴンの面影が全くないぞ!!?(困惑)


その5-日曜×家族×無限

異様なことになった幼少期を過ぎ、無事に小学校へと入学した俺、兵藤一誠。

 

小学校ではそれはもう周りの反応はキッチリと別れたものだ。

その1→俺の遊び仲間連中。関係良好。

その2→俺の噂しか知らない連中。ビビられて視線を向けただけで怯えられる。

その3→俺に敵意を持つ奴ら。いわゆる俺を倒してトップになりたい願望持ち。…………えっと、小学生だよなお前ら?

 

一応ふっかけられる喧嘩以外に関しては品行方正で優秀な児童(齢20の上にここでの再スタート分も含まれてるから小学校程度だと優秀でないと色々残念である)なので、時折相手の親御さんと険悪になることはあれど問題はなかった。ふふ、子供同士の喧嘩に親が口出しすんなってんだ。目立つ傷をこさえてるなら未だしもな。

 

そう言えば小学4年までの間に、女の子と女性を取り囲んでリンチしようとしてる奴らとか、猫をいじめてた悪魔っぽい奴をぶっ飛ばしたなぁ…………。

リンチの件に関しては、後悔しとらん。なんかひっそりと建つ一軒家から、なーにやら妙な気配が漂ってたから寄ってみると、大の男十数人が、子供を背にして守る女性に向けて攻撃しようとしてたのだ。女の子の方に堕天使の反応があったが、そうだとしても女子供をリンチするなぞ人間の所業ではない。拳撃フォトンアーツ:ボッガ・ズッパの連打で、全員纏めて星にしてやったとも。…………まあその後大慌てで降りてきた強そうな堕天使に襲撃者と勘違いされて、逃走に明け暮れましたけどね。あんな状況から戦闘に入るのは、流石の俺でも気がひける。

 

猫の件に関しては…………やっちまった感満載である。

冥界や天界なんつーものがあると聴かされて、テンション上がったまま空間を斬り裂いて転がり落ちたところはどこかの領地、どこかの城の中。そこで目にしたのは、否応無しに悪魔に従う猫の妖怪の姿。黒猫ベースであった…………というのは余談。

そこでかくかくしかじかと話を聞き、妹さんを思う姉の言葉に胸を打たれ、ついでにプッチン! と何かの糸が切れて行動開始。その日、そこの領地持ち悪魔はとある人間によって血祭りに上げられた。その際軽い演出でシズルの真似(中身はカムハーン)をして周囲に知らしめた為、間違いなく人間の仕業だと処理されただろう。それに乗じて、あの黒猫さんも上手いことやったはず。

…………だが、冥界相手に喧嘩を売ったとも言えるこの行動。後で少しだけブルってしまった。

 

あと学校に通い始めてから、父さんが自分を鍛え始めた。なんでも、俺が危ないことばっかしてるから、俺を止めつつも敵から守れる程度には強くなりたいとか。

その気持ちに思わず号泣しちゃった俺は、それとなーく父さんに助言を出しつつ一緒に鍛えたり、休日キャッチボールの代わりに手合わせをしたりしている。そのあと、拳骨と共に怒られつつも母さんに手当てをしてもらうのが今の兵藤家の日常だ。

…………てかダディ、なんでアンタ制限してるとは言え俺とまともに戦り合えるのさ? かっこいいとーちゃん見れて嬉しい反面、驚愕だ。そのうち悪魔を素手で倒しそうである。

 

そんなこんなで本日は日曜日!

今日も今日とて父さんと共にとある公園で拳を構え合う。

 

「さてと、かかっておいでよ父さんっ!!!」

「その言葉、後悔するなよ我が息子っ!!!」

 

流石に俺の得意な刃物を扱うわけにはいかないが、近接戦闘は俺の領分。戦闘者としての自負もあるから、負けてやるつもりはないのだ。

 

そんな思考をしている内に最初の一撃。3メートルはあった筈の距離をほとんど一瞬で詰めて俺の下に潜り込む父さんは、必殺級のアッパーをかましてくる。

それをギリギリで体を逸らし回避、そのままバク転を利用して距離を取りつつ体勢を整え、反撃に転じようとする。

が、父さんは俺にその余裕を与えることはせず、開いた距離をまた詰めて連打を開始する。

 

「ッッッ!!!」

「ッ!! ッ!!?」

 

一撃一撃が鋭く、気が抜けて当たろうものなら確実に落とされる。言葉を発する余裕なんて、あるわけがない。

…………このまま、いいように遊ばれるのは勘弁だ。負けん気が強いとも言う。

よって俺は、

 

「ッ…………ラァッ!!!!」

 

受け流す技術を応用、飛んでくる拳に手を添えてあらぬ方向に向かわせ、体勢を狂わせる。

 

「クッ…………!!?」

 

不恰好な体勢。しかし闘志は衰えず、片方の腕からもう1発拳が飛んでくる。

が、やはりその鋭さは無く、先程よりも簡単に左手で払い除け、体を捻りタメの体勢に移る。

 

「ウラァッ!!!」

「グッ!!? …………ガ、ハ」

 

己から放たれた拳は、父さんの腹部を打ち抜く。デューマンの一撃の重さは伊達ではない。苦悶の表情を浮かべ、父さんは膝をついた。

 

「…………ク、ハハ、ハ。また負けてしまったな」

「ハァ……ハァ……コッチも今日こそ負けるかと思ったよ」

 

デューマンの弱点はその虚弱さに在り。持久戦に耐えられない。

今回の手合わせ、すぐに決着し、消化試合とも受け取れるがそれは違う。そうでもしないと、兵藤一誠に勝ち目はないから、短期で決着させるしか道はない。故に見た目以上に、競った勝負だった。

 

「さて、この後は公園移動してバスケしようぜ父さん!」

「お、いいな。…………ただ、休憩だけはさせてくれ」

「…………うん、なんかごめん」

 

 

◇◇◇

 

 

俺は、舐めきっていたと思わざるを得なかった。

父さんと一緒に家路につく途中、俺は前方に其れを見た。

 

ゴスロリファッションに身を包む女の子…………見てくれだけは。

 

異常……極めて異常……この俺が…………かつて『グラール最強』とまで言われたこの俺が、相手の強さの底を見ることができないでいる。

 

今までそれができなかったのは、カムハーン、星霊ヤオロズ様、ダーク・ファルス。

 

つまり、それ級の相手だと言うこと。

 

舐めていた…………全盛期の身体能力を越え始めてから、どんなことがあっても問題はないだろうとタカを括っていた。

 

今…………今この場で襲撃されたら、俺は父さんを守ることができない。

 

冷や汗を押し殺し、努めて平静を装って俺は口を開く。

 

「あっ、やべ。父さん、忘れ物しちまった」

「ん? なら一緒に取りに戻るか」

「いいっていいって。もう11歳だから、1人でそのぐらいはできるぜ。だから父さんは先に帰ってて」

「お前を1人にすると不安で仕方ないんだがな…………まあいい、信用しておこう」

 

もし傷なんてこさえて帰ってきたら、覚悟しておけ、と恐ろしいことを言いつつ、父さんは先に帰っていった。

 

父さん母さんごめん、もしかしたら生きて帰れるか分からない。

 

『相棒、そこまで悲壮感を漂わせる必要はないかと思うが…………』

 

や、でもこれは流石に死を覚悟しないと──────

 

「…………」

「うわっ!!?」

 

突如目と鼻の先に現れた件の少女。

軽くトラウマも刺激されていたこともあって、みっともなく尻餅をつく。

 

そんな俺を見下ろす少女の目の色に、侮蔑の色はなく。何処までも沈んでいく深淵の様な黒一色だった。

 

コレは……ダメだ。今の俺では、相討ちに持っていくことしかできない。

格上相手に戦い慣れてたけれど、こいつは別格過ぎる。

 

そんな思考に陥りながら、地に付けた手に、分からないように魔力と光力を纏わせながら戦闘態勢に入ろうとしていると……………………

 

「…………ん」

「…………へ?」

 

女の子が、手を差し出してきた。

 

…………えっと、どういうことだろうか?

 

『全く…………だからそこまで悲壮感を漂わせる必要はないと言ったのだ。其奴に、少なくとも今の相棒を害するつもりはない』

「肯定」

 

キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!?

…………ごほん。

 

取り敢えず差し出された手を握り、立ち上がって相棒に尋ねることにしよう。

 

「…………もしかして、相棒はこの子のこと知ってんの?」

『うむ。お前にも話したこともあるぞ?』

 

…………へ?

 

無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン):オーフィス。こいつの名前だ』

「…………あのー、俺お前からじーさんの姿してるって聞いてたんだけど」

『こいつにとって姿なんてすぐに変えられるものでしかないさ。確かに俺もこういった姿になっているとは意外だが、そう驚くことでもない』

「…………そんなものなのねー」

 

てか成る程、アレだけ俺がビビったのも納得だ。

何せ、世界最強の一角、無限を司る龍神、最盛期のドライグすら勝ち目のなかったドラゴン。今の俺じゃあ、確かに勝てねーわマジで。

 

『しかしオーフィスよ。見た所目的があって俺たちの前に現れた様だが…………どういうことだ?』

「我、ドライグに会いに来た」

 

んん? 相棒に会いに来たのか。まあ同じドラゴン同士、積もる話でもあるのかしらん?

 

『オーフィスよ、相棒が何か勘違いを起こしているようだ。今代の赤龍帝であるこいつの名前は兵藤一誠。イッセーと、そう呼んでやれ』

「わかった。我、イッセーに会いに来た」

 

え、この場でのドライグって俺のことだったの? まあ赤龍帝だから納得っちゃあ納得なんだが。あと、なんで無限の龍神がこんな俺に会いに来てんのかって話だよ。

 

「異界の英霊、存在しない種族、異常な力、変化を遂げた籠手…………我、グレートレッドに、届き得る存在」

「…………!」

 

グレートレッド…………真なる赫龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)。ドライグの話だと、コイツと並んで最強の一角、次元の狭間に住む、夢幻を司るドラゴン。…………そして、オーフィスが次元の狭間に帰る上での障害。

 

察しの悪い俺でも気が付く。このドラゴン、協力者でも集めてんのか?

 

『…………オーフィスよ。未だに貴様はグレートレッドを倒そうと、』

「存在意義」

『…………まあ、其処に口出しはしないが』

 

うわー、ドライグが久しぶりに呆れてやがる…………昔は俺のやることなすこと全てに呆れていたというのに。こいつも毒されたのね、俺に。

 

『しかしオーフィスよ。貴様、後のことは考えておるのか?』

「?」

『ふむ、考えてなかったようだな。俺が講釈たれるのもどうかと思うが、一応聞いておけ』

 

一息置いて、相棒は語り出した。

 

『俺は白いのとの喧嘩に、生きてる間も、この身を堕とされてからも代理戦争という形で、明け暮れていた。だが、その先のことについて考えることはなかった。何せ俺たちは封じられたのだからな。宿る存在がいる限り、俺たちの戦いは終わることはない。…………と、思考停止していた』

 

…………ん?

 

『よくよく考えれば分かることだ。貴様みたいな無限でもない限り、あらゆる全ては皆、限界を背負って存在している。…………いずれは封じられた俺も、ゆっくりとはいえ摩耗して消えていくのだろう』

 

……………………。

 

『そういった思考に至ると、彼奴との確執がどうでもよくなってしまったのだ。考えても見ろ、不毛ではないか。この身が朽ちるまで宿敵と殺し合うのだ、虚し過ぎると言う他ない。無論、この戦闘狂に触発された故、どちらが上か戦いたい気持ちも無いわけではないがな』

 

…………相棒、お前そんなこと考えてたのか。

 

『無限の龍神オーフィスよ、俺は問う。貴様、あの何もない次元の狭間に帰ったとして、何を為すつもりだ? 目の覚めた俺から言わせるなら、彼処でただただ彷徨い続けるだけだと言うのなら…………つまらんな』

「…………なら、ドライグ。何を為す?」

『俺か?』

 

まあそう返されるわな。俺もそこのところ気になるし。

 

『そうだな…………俺はな、何かを育てるという行為が、意外にも気に入った』

「「…………!!?」」

 

え、うっそマジで!? どんな心境の変化ですかいな!!?

 

『直接世界には干渉できないこの身だ。相棒の様に世界最強を目指すことは今は(・・)できん。しかし、それまでの間に宿主を最強にすることは、できるのではないか?』

 

…………!

 

『考えて見ろ、俺の教えを受けた宿主が、最強に手を掛ける姿を。…………面白くは、ないか?』

 

瞬間、俺の脳裏に獰猛に口の端を吊り上げて笑う、ドライグの姿が映った。多分、本当に今こんな風に笑ってるのだと思う。

 

『その過程で封印も解く。そして己も鍛える。最後には…………己と共に最強と為った者と、本当の最強を決める。とっても、とっても…………とっても楽しいに違いないッッッ!!!!!』

 

ククッ…………クハハハッッッ!!!!

結局それか!!! でもいいねいいね最ッ高だねぇッッッ!!!!

 

「…………我、理解不能」

『だろうな。と言うより、コレは例の一つでしかない。貴様の答えは、貴様が出すしかない』

 

しかし、と言ってドライグは続ける。

 

『困ったら、この兵藤一誠と過ごすがいい。何せ俺達を思考停止に追い込んでいた『覇』を斬り払ったのはこの男だ。そうでなくとも、常識が通用しない此奴を見ているのは、退屈しないぞ?』

「…………検討。感謝、ドライグ」

 

オーフィスは、ドライグに感謝を述べた後、俺に視線を向けて、

 

「また会おう、イッセー」

 

そう言い残し、消えた。

 

…………人生初の最強との邂逅は、俺を奮い立たせるものだった。

 

 

◇◇◇

 

 

…………また会うのはまだまだ先だと思ってたんだが。

 

「イッセー、帰宅」

「おうイッセー。なんだお前こんな可愛いガールフレンドがいたのか。父さんびっくりだぞ!」

「せっかくだから夕御飯でもどう? って話をしていたところなのよ」

 

玄関で、持っていた荷物をドサリと落とす。

 

「…………おい相棒」

『…………正直、すまんかった相棒』

 

この後、オーフィスが孤児設定であることになり、ウチで預かることになるのは余談である。

 

……………………どうしてこうなった!!!?

 


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