ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:4E/あかいひと
アレからさらに1年…………ようやっと身体をある程度動かせる歳になった。
と言っても、得物を振り回すどころか満足に動き回ることなんざできねーが。
『おーい!! ようやっとSランクミッション解放されたぜ!!』
『あー? お前おっせーじゃん。俺なんかとっくに解放されてるっての』
喜ばしいことか、両親は良い人だっただけでなく、心の方もそれなりに強い人だったらしい。見た目が気味の悪い俺のことでかなりの迷惑を被っているはずなのだが、捨てることはおろか、八つ当たりすらしないのだ。仮にその様なことが起こったとしても、俺のせいだから甘んじて受け止めようと思っていたのになぁ…………この恩は、いずれ立派になった時に返そう。うん、決定事項だ。
『へぇー、グラールってところはオシャレな服も多かったのね』
『稀に妙なの混じってるけどね』
それにしても、子供というのは存外暇な生き物で。身体どころか脳味噌も未熟だからか、少し多く動いたり、モノについて理解を深めたり知識を身につけると、すぐに眠くなる。まあ神器の意識領域の中にいてつまらないことはないからいいんだけど。
『うめー! ここのプリンちょーうめー!』
『チョットでかいのがアレだけどな』
正気に戻った先輩方は、俺にあてられたのかなんなのかは分からないが、俺との訓練とは別枠でバトり始めるようになった。なんでも、戦いたくて仕様がないとのこと。その気持ちは分かるので、俺も嬉々として先輩方と刃を交えてる。
『ハッハー!! リゾートエリアの浜辺は最高だぜェ!!』
『アレ、偽物らしいわよ? 全く、これだから未来系異世界は…………』
そういえば使い所のなかった魔力だけど、魔法使いの先輩方に手解きを受けて、魔法が使えるようになった。そもそも、魔力を保有し、それを行使できるのは悪魔だけらしいが、何故か魔力を抱えていた俺の為に、先輩方が色々と知恵を絞ってくれたのだ。教えてもらったのは基礎と応用で、その後は自分の型にあった魔法を構築していけばいいとのこと。付け加えてフォトンと扱いが似てるから、そういう風な魔法、魔術、魔力運用をしていけばいいってさ。魔法だから秘伝みたいなのがあるんじゃないかって思ったんだけど、『ンなモン
『今宵のコクイントウ・ホオズキは血に飢えている…………』
『そんなことよりこのオパオパを見てくれ。こいつをどう思う?』
………………………………。
『ん? どうした後輩?』
『何やら疲れた顔をしているな』
『良ければ相談に乗ってあげるわよ?』
…………う、うーん。
「や、特に問題はないんですけどね?」
それにしたって、あなた方順応性たけーなおい。
さて、今までの先輩方の不思議なセリフの数々だが。
現在『
と言うのも、俺の記憶にあるグラールが再現されたものが、そこにあった。
そもそも、先輩方にせがまれてグラールについて教えているときに、亜空間航空の際の副次作用である具現化現象について、根掘り葉掘り聞かれて…………気が付いてたらこうなっていた。
俺の記憶を基点としている為か、中々に精度の高い…………てか本物まんまのグラール太陽系が再現されてしまったことはもう笑ってしまうしかないくらいだ。魔法って恐ろしい。
…………その所為で、ドライグの居場所が限られてしまったことはスルーで。大丈夫だドライグ。俺はお前のことも考えてる。
(なら良いんだがな…………)
ま、こうやって思念を飛ばせる程度にはまだ落ち着いてるからそこまで心配してないけど。
『それにしても、だ』
「んん?」
『俺らが組み直した具現化現象発生理論…………基点の記憶があやふやだとちゃんと具現化しないはずなんだが…………そんな曖昧な再現場所があんまり見当たらないのは何故だ?』
…………んん?
「そんなの、大抵のことは理解してたからに決まってんじゃん」
『…………は?』
や、だって傭兵稼業だけじゃどーにもならない時期もあったから、片っ端から資格とっていろんな職を転々としてたからなぁ。
「グラールの地理とかもしっかりしてんのは、ツアーガイドの資格を取るために色々回ったし、傭兵稼業の一環で秘境にも足を運んだし、人には言えない怪しいバイトで何処ぞの私有地にも忍び込んだこともある!」
『……………………』
まー流石に同盟軍とかガルム社とかグラール教団とかの深ーいところは分からん。惑星モトゥブに関しては、とあるローグス組織と繋がりがあったから、暗部についても網羅してっけどな。
『ぶ、武具に関してはどうなんだ? これらだって、仕組みを理解していなければ…………』
「ふっふっふ! 戦闘狂がただ単に剣を振り回して暴れるだけのバカだと思うなよ!!」
戦うことに必要なら、どんな知識でも仕入れてたぜ! つか、武器に関しては作って売りに出せるぐらいには造詣は深いぞ! なんせガルム社やヨウメイ社に招かれて武器設計を依頼されたこともあっぞ!
『こ、此処クラッド6がやたら完成度の高い再現がなされてるのは…………』
「あー…………それな。俺の上司が嫌だってんのに俺に所属してた会社の幹部社員の身分押し付けやがった上に、此処の管理者兼艦長を任されたんだよ…………なんで俺がリゾートエリアで催すイベントの企画なんぞ…………」
や、挑戦的な目で見られたらそりゃ負けた気分になるから本気でやりましたけど!? 部下についた奴らには申し訳なかったけどね!
なんでクラウチにやらせなかったんだウルスラさんはよ!! しかもそのまま退職って形で逃げやがるし、何故かリトルウィングだけじゃなくてスカイクラッド社の方でも幹部社員になってるし!? や、クラウチにその余裕はなかったけどね!? あの事件の後めっちゃ増えたウチの社員の面倒見てたら、そりゃリトルウィングの業務だけでいっぱいいっぱいにもなるわな!!
『…………ハイスペック過ぎないか、後輩?』
「え、こんなん追い込まれたら先輩でもできますよ? なんなら経験してみます?」
『え、遠慮しておこう』
…………? 変なの。
◇◇◇
てなわけで意識領域では、基本的に向こうでは第2の我が家であるクラッド6にて過ごすことの多くなった俺。様子を見にリゾートエリアで放たれている原生生物をぶっ飛ばしてるドライグのところにも行くけどね。
で、まるきり環境の変わった筈の先輩方の適応力の高さに頭を悩ませることも増えた。おい赤龍帝、それでいいのか?
『いいんじゃないか? 戦えれば』
『そうそう、戦えればそれでよし』
『つか、むしろこっちの方が戦う環境的には整ってるし』
「ああ、それを言われたらその通りだわ」
場所も、武器も、何もかもが揃ってるこの世界なら、確かに適応もしたくなるわな。俺、反省。
『てなわけで一戦付き合え後輩!!』
『あ、ずりーぞテメー!!』
『お前は昨日戦っただろうが!! ここは久しぶりの俺がだな』
「…………うーん」
おかしいですよ、先輩。
『なにがだよ』
「タイマンにこだわる必要、あります?」
『『『!!!』』』
「てか、やったことないっすよね、バトルロワイヤル形式の」
『『『その手があったか!!!』』』
ここで、皆の目が輝き始める。
「ついでに、先輩方全員巻き込みません? その方がもっと楽しいに違いない!!」
『流石は後輩だ!!』
『俺ちょっとパルム方面行った奴ら呼んでくる!!』
『俺はモトゥブ!!』
『じゃあ僕はニューデイズ!!』
「コロニーの方は俺がやっときますんで!!」
げに恐ろしきは戦うことに魅せられた戦闘狂共の行動力よ。其処から1時間も経たずにリゾートエリアに新設された広大バトルフィールドにて全員が待機してるのだから。
「てなわけで!! 第1回赤龍帝最強決定戦、バトルロワイヤルを開催しまーす!!」
『『『『イェーイ!!!』』』
「ルールは簡単! 全員ぶちのめしたら勝ち!!」
『相棒、この場合俺は?』
「面白そうだから参加で」
『ほう、流石は相棒。話が分かるな』
というわけで、
「戦闘開始じゃァァァアアアアアッッッ!!!!」
『『『『ウォォォオオオオオオオオッッッ!!!!』』』』
ギラつく目、放たれる拳、舞い踊る刃、飛び交う魔弾、降り注ぐ炎。
皆が狂った様に闘争に命を燃やす(残留思念だということはスルーで)。
そして、数多の一騎当千の兵が散り、その骸の上に最後まで立っていたのは…………
『ハ、ハハハ…………俺の勝ちだ、相棒共』
満身創痍の、ドライグだった。
やはり二天龍は強過ぎたよ…………。