ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman   作:4E/あかいひと

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この主人公はイッセーのおっぱい欲がそのまま戦闘欲に置き換わったのを想像すると大体あってる…………のかな?



その2-勉強×退屈×先輩方

俺の新しい名前は『兵藤 一誠』…………グラールに則って言うなら『イッセー・ヒョードー』といったところか。よー分からんが、ドライグが言うには良い名前らしい。

 

赤ん坊からリスタートと言うのも、中々苦労することが多い。

 

自身の羞恥心を抉りまくることの連続。付け加えて両親の言葉も分からねーもんだから不安になることも多い。

 

なら何故ドライグとの会話は通じたのか。それは単純にドライグが俺とリンクしているからなのだが。

故に、唯一言葉の通じるドライグに、言葉を教わると言うのも割と自然な流れだろう。

 

「うぐ…………この日本語ってのはメンドクセーな。こんな細かな表現とか要んのかよ…………」

『発音の仕組みは地球上の言語で考えると簡単であるのだがな。難しい言語として数えられるだけのことはある』

 

因みに、元々俺が話してた言葉は、この世界にある『英語』っつー言語に酷似してるらしい。世界的に見た話者はこっちの方が圧倒的に多い為、いずれは完全に身に付ける必要があるだろうとはドライグの弁。

 

「しかしなぁ…………勉強している間が1番暇が紛れているというのがなんとも言えない」

『訓練の間よりもか?』

 

少しムッとした声が響いた。

 

「あー怒んな怒んな。訓練の相手としては、お前は俺の身に余る程素晴らしい存在だよ。でもなぁ…………」

 

武器がないのだ。

俺が、今まで使い慣れてきた武器達が、ないのだ。

 

『無くてもいいんじゃないか? 相棒は無手…………ではなくグローブだけでも相当強いぞ』

「そりゃ武器なくても戦えないとやってらんねーからな、傭兵っつー職業は」

 

実際神器の扱い方は未だマスターしているわけじゃねーからな。そっち方面を頑張っていくのは必須である。

 

因みに、この夢空間にてのみ復活するこの全盛期の身体は、神器の倍加に12回目までは耐えられるようだ。実に4096倍の強さ。武器なんか無くても大抵のヤツ相手なら勝てると思う。

あと倍加した能力を譲渡することも可能みたいで、割と打撃時の威力に譲渡して使っている。

 

神殺しの道具…………神滅具(ロンギヌス)と呼ばれるだけあって、凄い使い勝手の良さと汎用性の高さ、そして力である。これがあったら、SEEDを1カ月で殲滅できていたに違いない。本当、これに封じられてしまう前のドライグはどれだけ強かったのか…………きっと、想像出来ないぐらい強かったのだろう。

 

『ふふん、そうだろうそうだろう』

「器用に照れてんじゃねーよ」

 

でも、やっぱりなんか持ってないと調子が狂う。基本的に刃物握って、いつも斬ってきたからなぁ。

 

付け加えて訓練が無手のみ故に、ワンパターン化が免れない。これでは日本語(新しいこと)を学んでる方が退屈しないに決まってる。訓練に付き合ってくれてるドライグには申し訳ないけどね。

 

「ま、そこは追い追い考えていきましょう。今はやるべきことに集中すべきだ。で、そんなやるべきことに集中するために解消したいと思ってる疑問が一つある」

『…………なんだ?』

 

この世界には神だの天使だの堕天使だの悪魔だのその他諸々人外が集う場所というのは分かった。俺からすれば少々眉唾物な話ではあるが、ヤオロズだったりダーク・ファルスの存在からいくと、あってもおかしかないし。

 

だが、

 

「俺が今デューマンなのは、一体全体どういうこと?」

 

デューマンというのは存在しないと言っていた。

ニューマンもキャストも。

ビーストはなんかそれらしいのがいるらしいけど。

 

だが、つい先日鏡を見て思わず吃驚した。

 

病的なまでの白い肌、黒い右目に禍々しく紅い左目。

 

見てくれこそ赤ん坊だが、間違いなくこれは『デューマン』の特徴そのものだった。

 

『ふむ…………確かに相棒に関しては色々と謎が多過ぎる。だが、相棒がデューマンであることに関しての仮説は一応ある』

「…………教えてくれる?」

『応。相棒は死んだ…………その魂は相棒にとっての異世界である此処に辿り着き、新たに宿る命の魂として組み込まれた。まあ此処に関しては想像の域を出ぬからスルーしても良かろう』

「ふんふん」

『でだ、時として強過ぎる意思というのはあらゆる法則を捻じ曲げる。意思、という訳ではないが、お前のその強過ぎる魂が、肉体まで影響したのでは? と俺は推測する』

 

…………うそん?

 

『身体の方が相棒の魂に耐え切れず、耐え切れる様に造り替えられたとも言い換えようか…………ああ安心しろ。造り替えられたと言っても遺伝子の一部が置き換えられただけだろう。それ以外は相棒の親から受け継がれた身体そのままだ』

 

いや、それも心配だけどさ。

 

『…………? 何か他に不安なことでもあるのか?』

「うーん…………ほら、見た目的に気味悪がられること間違いなしだと思うんだよね…………実際グラールでも怪しがる人多かったし」

 

異端な存在って、良くも悪くも排除される傾向にあるからなぁ…………覚悟しておかないとダメかもしれないなぁ…………。

 

 

◇◇◇

 

 

1年も経てば、日本語も流暢になり、現時点でできる軍手の使い方をマスターするには十分過ぎる時間だった。

 

別に退屈していたわけではない。この頃になってくると夢空間だけではなく現実世界でもある程度動けるようになってくるし、言葉が分かるようになってからは両親に構ってもらえるのがとっても幸せだし。夢空間でだって、ドライグはこの世界の大昔、昔、現在のことをたくさん語ってくれた。

 

しかし…………いやだからこそと言ったらいいのか。

 

「戦闘がワンパターンになるのは拷問だァァァァァアアアアアアア!!!!!」

『いきなり叫ぶな相棒!! 焦るだろうが!!!』

 

夢空間にて、絶叫。

ドライグにつっこまれたが、どうでもいいことである。

 

全盛期の身体は、確かに強い。全盛期なだけあって、ドライグを相手取ってももう負けることはない程度には強い。

しかし…………全盛期で固定している現状では、全く成長しないのだ。自分のことながら、随分つまらないモノになっちまったもんだ。コレが、戦闘がワンパターンになってる要因の一つ。

 

もう一つの要因は…………手合わせする相手がドライグしか居ないということ。彼も手を替え品を替え、いろんな状況における戦闘をやってくれたんだけど…………限界というのは、やはり存在するわけで。

 

「無手なのもキツい!! 斬りたい斬りたい斬りたーい!!」

『貴様は駄々っ子か!!? …………いや、身体の方はそうかもしれぬが』

 

まあ武器のことに関しては完全にどうしようもないことだけどさ。

 

「なあ、誰か居ないのか? 例えば過去の使い手の魂とか」

『…………残留思念ならな』

 

え、マジで? じゃあ行こう!

 

『待て待て待て待て‼︎ 少しは話を聞いて行け‼︎』

「んだよ?」

『いいか? この神器に残された過去の赤龍帝だった者の残留思念は、『覇』に取り憑かれてまともな対応はできん』

 

しーつもーん! 『覇』ってなんですか?

 

『…………しまった、その話をしていなかった』

 

 

話を聞くこと数分。

 

要は、『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』っつーイカれた力に取り憑かれて死んでった輩の残留思念が居るんだな?

 

『要約し過ぎではあるが…………そういうことだ』

 

なら話は簡単だ。

 

「ぶっ飛ばす」

『待て待て‼︎ 如何にお前が強かろうが、未だ禁手に至れていない相棒が敵う相手では…………!!』

「じゃあほっとけってか? 冗談じゃねえ! グラールじゃ、そんな破壊に取り憑かれたような輩に破滅一歩手前まで追いやられたんだぞ‼︎ オマケに力に呑まれるだ!!? 力を持つ者が1番やっちゃあいけねえことだろうがよ‼︎ 力は、正しく振るうから肯定されるもんだろうがよ‼︎ 違うかよ、『赤き龍(ウェルシュ・ドラゴン):ドライグ』!!!?」

『……………………』

 

思うところがあったのか、ドライグは黙り込んだ。

 

「悪いけど、俺は行くからな」

 

そうして、俺は夢空間の深淵へと足を向けた。

 

 

◇◇◇

 

 

暗く染まった底に居たのは、赤い鎧を纏った人間達。力だけは感じるのに、どこか虚ろだ。

 

フォトンは使えない。

ドライグ曰く、魔力は大量にあるらしいのだが、使い方が分からない。

武器も無い。

あるのは『赤龍帝の軍手』のみ。

 

でも、充分だ。

 

「俺は今代の赤龍帝『兵藤一誠』…………てめーらを、ぶっ飛ばしに来た」

 

俺の言葉に、周りが殺気立つ。

 

それらを受け流しながら腕を構え、準備を整えた。

 

「行くぜッ‼︎」

『Boost!』

 

開始の合図は、最初の倍加の掛け声。

 

周りからは壊れたように『Boost』という音声が響き渡る。

これがドライグの言っていた待機時間無しに無限倍加ができるという『禁手:赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』か。

 

飛んでくるのは拳と光弾。

光弾は避け、拳は受け流す。

 

相手を人間と思えば苦戦するだろうが、人型の人外だと思えば対処は比較的簡単だ。

人間は、その身体能力だけではどうしても人外には敵わない。しかし戦えないわけではない。

まず、当たらなければその力も無為と化す。更に、避けられない攻撃も、受け流してしまえば被害も消耗も少ない。

日本語で『柔よく剛を制す』と言うんだっけか?

 

拳を受け流し、できるなら同士打ちを誘発させ、雨の様に降ってくる光弾はその全てを見切って回避。

 

チマチマした戦い方だが、これしか方法がない。

しかし確実で堅実なその戦い方で、1人、また1人と戦闘継続不可能にしていくことができた。

 

そうこうしているうちに、12回の倍加が終了。

 

「一発喰らえ‼︎」

『Explosion!!』

 

懐に潜り込み、心の臓をめがけて拳を突き出す。

 

只々一発殴るだけではただの4096倍だ…………こいつらの倍加には勝てない。

 

が、人間の体には自壊しない様にリミッターがかけられている。一瞬そのリミッターを外してやれば、想像以上の威力を叩き出す。火事場の馬鹿力を自分の意識下でやってると言い換えよう。扱いをしくじれば一気に自壊するが、これまた便利な技術である。

 

予想通り俺の拳は鎧を貫き、中身を殴りつけた。心臓の位置を打たれた相手は、ぐらりと墜ちる。

 

『Reset』

 

溜めた力が一気に消える。

『Explosion』は、倍加した力を安定させることができるが、しばらくするとその力を失ってしまう。…………まあ2^12を超えたら俺の身体の方が保たないからこれでいいんだが。デューマンの弱点である、防御面の異常な脆さのせいだ。

 

あとは、これを繰り返せばなんとかなる。

しかし、人外が相手だと思っていた為、見誤ってしまった。

 

「グッッ!!!?」

 

急に腹に一発入れられる。

 

「ガハ…………まさか、速度に倍加!?」

 

限度を超えれば、受け流したり、避けたりできないと判断したのだろう…………その通りだった。

 

相手は力に取り憑かれようと、人間だったということを忘れた、俺のミス。

 

見えないし追いつけないから、何もできない。

 

「ぐっ…………ガハッ!!」

 

後は集団リンチの様相。

倍加もまともに使えない上に、ダメージを蓄積していき、身体も思うように動かすことが困難になってきている。

 

「ぐっ…………クソッタレ…………‼︎」

 

此処で、くたばるつもりは…………!

 

 

 

 

『ならば、『覇』を求めよ』

 

 

 

 

「…………は?」

 

突如として響く、低い声。

気付けば、周りの鎧達が動きを止めていた。

 

『くたばりたくないのだろう? ならば力を求めればいい』

『闘争が好きなのだろう? ならば力を以って暴れ回ればいい』

 

『『『『覇』を求めるがよい』』』

 

虚ろで、低い声は、俺に受け入れろと言ってくる。

 

「そうだな…………俺も…………」

 

周囲のオーラが深く黒に染まってゆく。

 

 

 

 

「とか言うとでも思ったかバーカ!!!」

 

 

 

 

『『『…………は?』』』

 

フラフラだけどさ…………格好つかないけど、これだけはな!

 

「俺は意味の無い暴力の様な力が嫌いでな……………………昔、その暴力によって全てを失ったんだよ」

 

全ての始まり…………『SEED襲来』。そこで俺は、親も、家も、友も、何もかも奪われた。

 

「だから剣を握り、鍛えて、食い扶持稼いで!! 2度と大切なヒトやモノを亡くさせないために頑張ってきた!!」

 

しかし、そんな中で俺が戦闘に適性があり、戦うことが嫌いでないことに戸惑った。究極的には、これもまた暴力だったから。

 

「暴力を生み出す存在は、俺から家族を奪っていったあのクソ暗黒物質と同じだ…………そんな存在には堕ちたくなかった!!」

 

だから、俺は自分なりの戦う理由を求めた!

 

「護りたいから戦う! 手合わせする相手と共に研鑽していく為に戦う! 己の限界を超えるために戦う! 未知なる存在へ辿り着くために戦う! 血や涙を流させる戦争ではない! 己や周りを未来に導く手段として! 俺は戦う!!!」

 

だから!!

 

「そんな暴力、要らないんだよこの野郎!!!」

『クッ…………口先だけのガキがァァァァアアアア!!!!』

 

暴走したかのように、周りから力が溢れる。

 

「畜生…………このままだとヤベェぞ」

 

10歳にも満たないウチに死んじまう。

 

「武器があれば…………………あ?」

 

よーく思い出せー…………俺が元々持っていた神器はなんだっけ?

 

『赤龍帝の[籠手]』だ。

 

で、今俺の手が纏ってるのは?

 

『赤龍帝の[軍手]』だ。

 

つまりは、気合次第でどうとでもなるということか。

 

「…………来やがれ」

 

今まで、立ち塞がる障害は斬り払って来たんだ。

 

「来やがれ、」

 

この程度の障害なら、斬り潰せる!!

 

「来やがれ、ツインセイバーッ!!!」

『Gear Armament:Model Twin Saber!!!!』

 

俺の叫びに合わせて、グローブの宝玉が光り出す。

 

「ッ!!」

『『『ッ!!?』』』

 

そして、宝玉から何かが飛び出す。

慌てて掴んだソレは、色こそ赤いものの、俺が使い慣れてきた得物(ツインセイバー)其の物だった。

 

名前を付けるなら…………

 

「『赤龍帝の双剣(ブーステッド・ギア・ツインセイバー)』ってところか…………」

 

久々に握る剣の重みが、俺に自信を与えてくれる。

これなら、いける。

 

『た、たかが武器を持ったくらいで、我らが倒せるとでも…………!?』

「そいつはどうか…………なッ!!!」

『Liberation:Physical Boost!!!』

『Physical Boost Steartup!!!!』

『Boost!!』

 

鎧を斬り裂き、柄で首を打つことで意識を刈り取る。

 

Physical•••つまりは身体能力面のみの強化。

 

魔力が使えない故に、そっちの方向の倍加は無意味と判断した俺が、どうにかして身体能力のみの倍加に絞ろうと試行錯誤を繰り返していた能力…………だったのだが、今まで上手くいったことはなかった。

 

しかし、ツインセイバーの登場と共にその能力は完成した。

 

『Boost!!』

 

1秒毎とまではいかないが、強化対象を絞ることで半分の時間に短縮。

身体能力のみに絞った倍加で、心なしか安定しているような気がする。

 

フォトンアーツは使えない。武器にリアクターは付いてない。でも、動きは魂が憶えてる!!

 

「《アサルトクラッシュ》!!」

 

斬りつけ、斬り払い、バク宙して体勢を整えて突進。

慣れた動きで、数多の鎧を斬り潰していく。

 

「さぁ次ィ!!!」

 

徐々に上がる己の速度。着いていけるどころか鎧共を突き離す程の速さ。

倍加だけじゃない…………経験が、自負が、俺の背中を押す!!

 

『何故だ!? ただ形態の違うだけの亜種な筈だ!! 禁手の鎧に勝てるわけが…………!!』

「そりゃあ…………意地ってモンがあってな!!」

 

暴力装置に負けてやる程、俺のプライドは低かねーよ!!!

 

『何なのだ…………何なのだ貴様はァァァァアアアア!!!!』

 

最後の1人が、常人には目にも留まらぬであろう速さで近接してくる。

嗚呼、凄い。でも、それだけに惜しい。

 

「俺は…………」

『Explosion!!!』

 

幾度目かの倍加、そして停止。

身体能力の倍加は、脳の思考速度も含まれていたようで、ゆっくりと…………世界がゆっくりと流れていく。

そんな中で、拳の一撃を左のセイバーで逸らすことは、息をするよりも簡単だった。

 

驚愕に息を飲む鎧。そして、大振りのパンチを放った後という致命的なまでの体勢の悪さに、絶望の色が見え隠れする。

 

後はもう簡単だ。

 

「ただの戦闘狂:兵藤一誠だ、憶えておけッ!!!!」

 

右のセイバーで袈裟斬りにすると共に、宣言した。

 

 

◇◇◇

 

 

『…………ハッ!?』

「よ、お目覚めかい先輩共」

 

あのまま放って置くのもどうかと思ったから、皆が起きるまで待っていた。

いつの間にか鎧も無くなって素顔が見えてることはスルーで。

 

いやーそれにしても途中までは無理ゲーチックだったよなー。よく勝てたよ俺。凄い凄い。

 

『…………負けたのか、我々は』

「そ。途中激ピンチだったけど、俺が勝ったよ。力に呑まれた暴力装置が、戦闘を愛してるといっても過言じゃない戦闘狂に負けると思うな」

 

ま、それはそれとして。

本来の目的を思い出してみよう。

 

「なあ先輩方、俺ってまだ転生したばっかで、この中でしか戦えないんだけどさ、定期的に相手してくんない?」

『『『なっ…………!?』』』

 

いや、そこまで驚かなくても。

 

「ここのところ、発狂しそうだったんだよなー、ドライグとしか戦えなかったから。でもほら、ここには特訓相手がたくさんいるっ」

 

いつだったか、ドライグが『ここは夢であって夢にあらず』とか意味深なこと言ってたから、無駄にはならないと思うんだ。

 

『フフッ……そうね、面白いわ貴方』

 

そんな風に、軽く熱っぽくなっていた僕の側に、1人の女性がやって来た。

 

「えっと、アンタは?」

『貴方の先輩のうちの1人、エルシャよ。よろしくね』

「OK分かった。よろしく頼むぜエルシャ先輩」

 

なんとなく、この人は話が分かりそう。そんな気がした。

 

『皆…………彼の頼み、受けてあげましょう』

 

先輩方に、緊張が走る。

 

『ここまで規格外な赤龍帝、見たことないわ。イメージだけとはいえ、禁手化もせずに私達を斬り伏せたのよ。『覇』なんてものに頼らない、純粋な力を手に入れるに違いない…………私は、それを見てみたいわ』

 

ちょ、そ、それは買い被り過ぎないだろうか? 今回勝てたのもまぐれ臭いし。

 

『成る程…………』

『確かに…………』

『俺達の成し得なかったもの…………それを見てみたい』

『俺もだ!』

『思い出したぜ…………ただひたすらに強くなりたいとがむしゃらになったあの時を!!』

 

気付けば周りの闇は晴れ、先輩方の表情は獰猛な笑顔に。この笑顔と同じ種類のを、俺は頻繁に目にしていた。…………鏡に映った、戦う直前の俺の顔。強者を求め、互いに研鑽し、高め合わんと欲する、戦闘狂の顔である。

 

「そうだよ………それだよ先輩方!!」

 

どうやら、俺の目論見は成功した。

 

「では、これからご指導の程よろしくお願いします先輩方!!!!」

『『『おうッ!!!!』』』

 

 

 

 

 

 

『…………おーい。俺のこと忘れてないか、相棒?』

 

 

 

 

 


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