ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:4E/あかいひと
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IF-もしも戦闘狂が、不死鳥の三男坊に転生したら-
『生まれ変わりというのは、本当にあったらしい』
齢にして2つの頃に、階段で転げて頭を打った衝撃で前世の記憶…………此処ではない何処かにて、世界を2度救った英雄:ショウ・ウォーカーの記憶が戻ってしまった俺の最初の感想である。
『悪魔なんて、マジで存在したんだ』
教育を受け始めるようになってから知らされた『悪魔』や悪魔である己のことを聞いてしまった俺の、感心と共に出た感想である。
『貴族ってのは…………随分生き辛い生き物なんだな』
悪さをしたわけでもないのに頭を下げさせられることを親から強制された俺の、落胆と共に出たため息だ。
そして、
「……………………つまんねー」
そこそこいい歳(貴族的観点)になっても身を固めず、眷属集めなんて全くせず、レーティングゲームにも精を出さず、名門貴族の三男坊としては落第点もいいところである元ショウ・ウォーカー…………現ライザー・フェニックスは、冥界のどこかにある俺名義の山にある小屋にて、絶望したように呟くのだった。
◇◇◇
IF-もしも戦闘狂が、不死鳥の三男坊に転生したら?-
◇◇◇
『ライザー・フェニックス』
周囲からの評価は、[ダメ悪魔]。
家柄良し。本人のスペックもそれに見合った以上の高さ。顔も遊んでそうに見えるがイケメン。
だと言うのに、それらを全て台無しにさせるかのような、やる気のなさ。
能力ある眷属を集める必要がある今の悪魔の現状において、そんなものに興味はないと言わんばかりに自分の駒を放り出すライザー。
レーティングゲーム(チェスを模した戦争ゲーム)での成績が己の地位を左右するというのに、一時期親の眷属を借りてやってみたものの、数ヶ月で飽いてしまったライザー。
昨今貴族悪魔で問題視されている純血悪魔の少なさについて、『ンなもん俺らに押し付けんじゃねぇ』と顔とスペックは良いためそれなりに舞い込んでくるお見合い全てを蹴るライザー。
無責任なその有様は、周囲から侮蔑と嘲笑の対象となっていた。
「どーして俺ァ、こんな生き辛い場所に生まれ変わってしまったかねぇ…………」
眷属集めに精を出さないのは、アクセサリー感覚で自分の眷属を見せびらかす輩を見ていて嫌悪感を抱いたから。
本来なら心踊るはずの戦いの場:レーティングゲームが詰まらなくなったのは、家同士の関係上負けてやらなければならない勝負が多過ぎる為、気持ちよく戦えない舞台に殺意が芽生えた為。
身を固めても良い歳になってもお見合いを全て蹴り続ける理由は、前世での感覚と、『純血悪魔増やしたいんなら、下級悪魔相手でもいいじゃねーか無駄にプライド肥大させやがって』という、切羽詰まったこの状況に於いて未だに建前を重んじる貴族悪魔の在り方への反抗心がある為。
そういう現状を変える気があれば、『この悪魔社会を変えてやる!』となったのだろうが…………前世の彼は戦闘狂の傭兵で、せいぜい企業の幹部社員のポジションでヒーヒー言っていた程度の、余り上に立つ器ではないため、そういった気は起きなかった。
故に、退屈。
故に、生き辛い。
自業自得と言うなかれ。
彼なりの現状への抵抗や改革の試みは既に行った…………のだが、彼の親や兄たちが家の外に出る前に圧し潰しただけ。
現状…………フェニックス家にとって都合のいい現状を破壊し兼ねないライザーの行動は、許容できるものではなかったのだ。
そんな彼は、この悪魔社会と実家に絶望した。故に、無い知恵振り絞って行動し始めることも、もう無い。
気分は既に世捨て人。もう冥界において何の興味も持てない彼は、幸せな前世を思い出しながら…………これから永く永ーく続くであろう悪魔生をどうするか、無駄に余った時間を使って考えていた。
のだが、
『Prrrrrrrrr!!』
小屋に設置された、電話っぽい何かが鳴る。
「…………チッ。どーせまたお見合いだろ」
とはいえ無視するわけにもいかんので、ライザーは受話器を取る。
「はいもしもし? お見合いならお断りだからなお父様」
『相手を確認する前に決めつけるなライザー』
「ハン! どーせ此処に掛けてくるのはお父様とお母様とお兄様しかいねーよ。レイヴェルは直接来るし」
どういうわけか、自分に懐く妹を思い浮かべて多少悪くなった気分をマシにしたところで、彼はようやく話を聞く体制を作る。
「で、やっぱりお見合いなんだろお父様?」
『…………まあそうだが。しかし今回ばかりは蹴るわけにはいかんぞ』
「は?」
『今回の相手はリアス・グレモリー嬢…………現魔王の1人を輩出したあのグレモリー家の後継だ』
「…………うげぇ」
幸か不幸か、フェニックス家の今の冥界での立ち位置は非常に高く、ライザーも多少の罪悪感はあれど遠慮なく縁談を蹴ってこれたが、今回ばかりは相手が悪過ぎた。
『別に確実に婿入りしてこいとは言わん。お前に言うのは無駄だろうからな。だが、お前の行動で我がフェニックス家が窮地に陥ることはあってはならん。それは、お前も分かっているだろう?』
「…………チッ」
別にフェニックス家がどうなろうが、ライザーは知ったことではなかった。むしろそういった柵から解放される分清々するだろう。
だが妹であるレイヴェルのことを思うと、潰れてくれるのは勘弁である為、渋々と従うしかないのだった。
「話するだけだからな」
『ああ、それ以上は求めん』
親子の会話にしては、無駄に冷めきった会話を、受話器を置くという形でぶった切った彼は、酷く疲れた顔をして小屋に置いてあるソファーに沈み込む。
「…………とりあえず、後で訓練だけしとくか」
精神的に疲れた後は、どうしても訓練で憂さ晴らしをしたくなるライザーだった。
…………そんな彼の腐った現状は、まさかまさかの今回の縁談で砕かれることとなる。
◇◇◇
顔合わせ、空虚な賛辞の送り合い、後は若い2人で。
見合いの場としてセッティングされた向こうさんの家で、内心面倒なことを…………と思いつつ口を開く。
「えーっと、一応俺の噂は聞いてると思うけど…………」
「ええ、存じ上げておりますわ、ライザー・フェニックス殿。その件に関しては、申し訳ありませんわ」
「…………ん?」
目の前に座る赤髪の美少女……リアス・グレモリー嬢の思わぬ言葉に、少し間抜けた声が漏れてしまった。
「間違いなく、貴方は乗り気にならないと分かっていたはずなのですが、お父様とお母様が、そちらと勝手に話を進めてしまった様で」
「あー…………そうなんだ。やっぱり名門とは言え後継は先が目に見える形で欲しいのかねぇ。っと、口が過ぎましたね。申し訳ない」
なんとなく、目の前の女の子の雰囲気が俺と似てるもんで、本心がポロっと零れ落ちてしまった。
「いえ、お気遣いなく。…………別にこれは、ライザー殿が嫌いというわけではないということを留意した上で聞いてもらいたいのですが、私も乗り気ではない…………どころか、嫌だったので」
「…………へぇ?」
雰囲気が似てると思ったのは、勘違いではなさそうだ。
実に興味深いことを言う彼女に、先を促す。
「別に、後継として婿を迎えることに異はないのです。兄が魔王になってグレモリー家を継げなくなった以上、私には私を産んでくれた家を守る責任がある。ですが、それは私が認めた相手とも、思うのです。我儘だとは思いますが」
「まあ、だろうね」
「そして何より…………親の敷いたレールの上を走るだけの悪魔には、なりたくなかった。それだけです」
ああ、成る程。そりゃ親にあてがわれただけの俺とどうこうにはなりたかねぇわな。
「じゃ、お互いラッキーってわけだ。今回はご縁がなかったということで」
「そうですね」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「…………あの、これなんの沈黙?」
「…………いえ、特には」
いや、そう言いつつめっちゃ聞きたそうなことがある顔してますけどね貴女! まあ、聞きたいことは分かるけどさ。
「ハァ…………聞きたいならズバッと聞いてくれた方が助かるんですけど」
「あ、ああいえ別にそんなつもりは」
「や、いいけどさ。俺の場合は、この悪魔社会の現状におけるしみったれた反抗心からくる抵抗とも言えない抵抗だよ」
本音で話す機会が少なかったからか、久々に胸の内をポロリと零す機会を得たことで、俺の口はこれでもかと言うくらい声を吐き出した。
そして、締めくくるようにこう口にした。
「…………ハァ。昔はそれでも現状打破の為に頑張ろうとしたんだけど、フェニックス家そのものに止められちゃってね。今じゃこんなダメ悪魔さ」
「……………………」
「ま、悪魔社会を見限った俺からすれば、もうどうでもいいことさ。時期に潰れるだろうってことすらもね」
さてと。今回ばかりはお父様にはお礼を言わないとダメかな。本音でボロボロ喋る機会を作ってくれたことに。や、リアス嬢からすれば傍迷惑極まりないだろうけど。
「…………少しいいですか、ライザー殿?」
「ん、なんでしょ?」
「やはり、此処は婚約という形で話を着けませんか?」
おっとぉ!? まさかの前言撤回ですかお嬢様!? 同情なら勘弁願うぜ!?
「いえ、そういうわけではありません。案外、私とライザー殿の利害が一致しそうなので。悪く言えば、貴方には利用価値が」
「頗る悪い言い方だね。でも俺は嫌いじゃないよ」
「ふふっ。理由を説明するなら、私としても先程ライザー殿が仰ったことについて考えなかったわけではないのです。ですが、グレモリー家としてはそちらと同じように現状に満足している。…………さらなる発展を望む私としては、目障りなのですよ」
わぉ、黒い!!
「ですが、それも私が正式にグレモリーを継ぐことになれば些細なこと。その為には
「ふむ…………そこに愛がなくとも?」
「そもそも、貴族に生まれた時点で諦めはついてますし…………何も、そこから愛が生まれない可能性が無いわけではありません」
「ハッ! 言うねぇ!」
なんだか、楽しくなってきたぞ。
「既に、ライザー殿は私個人の中での最初の基準を満たしているので、とっても都合がいいです。そしておそらくそちらにとっても…………」
「ああ、とても都合がいい。どんな風に動いても上からの抑圧が少ない地盤があるのは、いくらオマケとは言え都合が良すぎる」
だがしかし、それだけで決めてしまうのはなんだか間違いなくな気がしなくもない。
「だからこその婚約なのですよ。なんとかすれば、反故にできるギリギリのラインで留めておく。これならば、双方家の方から小言も言われないでしょう」
「ほー…………。なんつーか、黒いねぇリアス嬢?」
「悪魔にとって、最高の褒め言葉ですわライザー殿」
まあでも、こういうのも悪くないかもしれない。
「じゃあこれから婚約者として、よろしく頼むぜ
「ふふっ、こちらこそよろしくお願いするわ
仮面夫婦ならぬ仮面婚約者となったこの2人が、冥界の頂点に君臨するのは、そこまで遠くない未来のことだった。
というわけでやさぐれウォーカーでした。
(リアスさんも改変されてるとか言っちゃダメ)
ちなみに後はウォーカーin曹操とか、ウォーカーinリゼヴィムとか、ウォーカーinフリードとか妄想してたり。まあ需要はないだろうから書かないけれど。