癒術師も異世界から来るそうですよ?   作:夜明けの月

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さてさて、三話目ですね。

今回はいつも通りの文字数ですので前よりか長いです。

それでは本編をお楽しみください。


唐突に外道はエンカウントする、ということもあるよね?

一通り十六夜達は弄り尽くし、私はモフりまくったので満足して黒ウサギ弄りをやめた。

 

「あ、ありえないのですよ…まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況をいうに違いないのデス」

 

「うわ〜モフモフだ〜」

 

黒ウサギは半ば本気の涙を浮かべている。詩音はそれに抱きつきウサ耳を触りまくっている。

 

「ひゃ!?ちょそこはやめてください!」

 

「んにゃ〜やめらんないね!だって触り心地いいんだもん♪」

 

「おい水無月、その辺にしとけ。話が聞けねえ」

 

暴走し始めようとした詩音を十六夜が制する。詩音は口を尖らせるがそれに従い渋々黒ウサギから離れる。

 

「コホン……、それではいいですか御四人様。定例文で言いますよ?言いますよ?さあ、言いm

 

 

 

(ものすごく面倒というか既に読んだことがあるかもですので割愛)

 

 

 

話が終わり、三人と二匹は黒ウサギにコミュニティへと連れて行ってもらっていた。

 

「ジン坊ちゃーん!新しい方を連れてきましたよー!」

 

「おかえり黒ウサギ。そちらの女性三人が?」

 

「Yes!こちらの御四人方がーーー」

 

黒ウサギはクルリと振り返りカチンと固まる。そう、一人足りない。

 

「あれー!?もう一人は………?」

 

「あ、十六夜君のこと?彼なら『ちょっと世界の果てを見てくるぜ』とか言って駆け出していったわよ」

 

あっちの方に、と指さすのは断崖絶壁だった方向。そして硬直から治った黒ウサギはウサ耳を逆立てて三人に問う。

 

「な、なんで止めてくれなかったんですか!?」

 

「『止めてくれるなよ』と言われたから」

 

「どうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」

 

「『黒ウサギには言うなよ』と言われたから」

 

「ならどうして何も音がしなかったのですか!?」

 

「フェルンの力使って黒ウサギに音が聞こえないようにしていたから」

 

「最後のはいいとして言うのが実は面倒くさかっただけでしょう!?」

 

「「「うん」」」

 

ガクリと前のめりにうなだれる黒ウサギ。

 

「た、大変です!"世界の果て"にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が」

 

「幻獣?」

 

「ワウ?」

 

「は、はい。ギフトを持った獣を指す意味で、特に"世界の果て"付近には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ちできません」

 

「あら、それは残念。ということは彼はもうゲームオーバー?」

 

「ゲーム参加前にゲームオーバー?………斬新?」

 

「ふざけている場合ではありません!」

 

ジンは必死に二人にことの重大さを訴える。だが二人は方をすくめるだけである。

 

「ワォン♪(そうだ、"世界の果て"に行こう)」

 

「こらフェルン!あんたは絶対に行くな!何があっても行くな!」

 

詩音は嬉々として"世界の果て"へと行こうとするフェルンを全力で止めていた。

 

「ジン坊ちゃん、申し訳ありませんが御三人様のご案内をよろしくお願いします」

 

「黒ウサギはどうするの?」

 

「問題日を捕まえに参ります。ついでにーーー"箱庭の貴族"と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります」

 

黒ウサギは怒りのオーラを全身から噴出させ、髪を淡い緋色に染める。

 

「一刻ほどで戻ります。皆さんはその間にゆっくりと箱庭ライフを御堪能くださいませ!」

 

そう言って黒ウサギは全力で跳躍し、弾丸のように飛び去る。

 

「………箱庭の兎は随分早く跳べるのね」

 

「ウサギたちは箱庭の創始者の眷属ですから」

 

そう、と空返事をする飛鳥。飛鳥はジンに向き直り、

 

「黒ウサギもああ言ってたことだし、先に箱庭に入りましょう。エスコートは貴方がしてくださるのかしら?」

 

「え、あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩者ですがよろしくお願いします。三人の名前は?」

 

「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」

 

「春日部耀。で、そこで狼に………なんで押さえつけられているの?」

 

「た、助けて〜!」

 

淡々と自己紹介をしていく中、なぜか詩音はフェルンに地面に押さえつけられていた。身動きが取れないようで詩音は涙目である。

 

「水無月さんが立てないから退いてあげて」

 

「ワウ?」

 

「…………?」

 

お互い首をかしげる耀とフェルン。フェルンが首を傾げて押さえつける力が弱まった隙に詩音は立ち上がる。

 

「……………フェルン後でお話ね」

 

詩音はフェルンを見下ろして笑いながら言う。だけど、目が笑っていない。

 

「わ、ワウ………」

 

「それで貴女は?」

 

「水無月詩音だよ。よろしくねジン!」

 

そうして一行は自己紹介を済ませて箱庭の外門をくぐるのだった。

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

箱庭の中に入った後、四人はとある店に入り飛鳥、耀、ジンはお互いの事について話し合っていた。詩音はというと、

 

「……………」

 

無言でサンドウィッチを頬張っていた。そして話しつつもモグモグと食べる詩音を横目で見る飛鳥と耀とジン。

 

「………ねえジン君」

 

「………なんでしょう?」

 

「この可愛らしい生き物は何かしら……?」

 

「僕が聞きたいくらいです」

 

飛鳥にはサンドウィッチを頬張る詩音が小動物に見えたらしい。ジンと飛鳥は詩音のその姿に癒され、耀にいたっては背後からそーっと近寄っている。そして背後から抱きつく。

 

「………!?」

 

抱きつかれて食べるのをやめて咄嗟に背後を向く詩音。

 

「な、何?どしたの耀ちゃん?」

 

「ねえ、お持ち帰りしていい?」

 

「ふぇ!?お、お持ち帰り!?」

 

だが次の瞬間、その和んだ空間は突然の来訪者によって崩される。

 

「おんやぁ?誰かと思えば東区画の最底辺コミュ二ティ"名無しの権兵衛"のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」

 

品のない高ぶった声が聞こえ、その方向には二メートルを超えるピチピチのタキシードで身を包む変な男がいた。

 

「あの……どちら様?」

 

「おっと失礼。私は箱庭上層を陣取るk「水無月さん、そこの変な人(・・・)は放っておいて私たちとお話しましょう」

 

「ふぇ?」

 

「うん、久遠さんの言う通り。あの変な物体(・・・・)は放っておいて話そう。水無月さんや久遠さんの事知りたいし」

 

「春日部さん、私の事は飛鳥でいいわよ」

 

「あ……私の事詩音って呼んでいい……よ?」

 

飛鳥は微笑みながら、詩音は頰を少し赤くし俯きながら言う。

 

「じゃあ私の事は耀でいい。よろしく二人とも」

 

「ええよろしく」

 

「う、うん……」

 

三人が微笑ましい雰囲気を出す。ジンとその他の周りの人はそれを温かい目で見守っている。そして状況を読み込めていない人が一人。

 

「え……いやあの……「そうだ詩音、詩音はどんな世界でいたの?私知りたいな」

 

「それもそうね。詩音さん、教えてくださる?」

 

「え、あ〜、話してもいいけど……聞いてもあんまり面白くないよ?」

 

「いいのよ。私は詩音さんや耀さんと仲良くなりたいんだもの」

 

「うん、私も飛鳥や詩音と仲良くなりたい」

 

「そ、そうなんだ。じゃあ、話そうかな………」

 

飛鳥と耀にそう言われて嬉しいのか、顔を赤くしニヤける詩音。

 

「じゃあ、まずは「話を聞けや小娘共ォ!!」

 

微笑ましい光景をぶっ壊したのはタキシードを着たさっきまでハブられていた男だった。

 

「五月蝿いわよ変人。私たちは今交友を深めようとしているの。邪魔しないでくれるかしら?」

 

「……変な物質のくせに話しかけてこないで。虫唾が走る」

 

飛鳥と耀は男を睨む。それを見ていたジンは冷や汗をかきつつその光景を見守っている。だが、睨みにひるむ事なくタキシードの男は言う。

 

「誰が変人だと!?俺にはガルド=ガスパーという名前があるんだよ!!」

 

「はいはい。それで何の用かしら変人のガルドさん?」

 

「用件があるなら早くして。ないならどっか行って。目障り」

 

「この……いい加減にしろや小娘共ォ!!!」

 

その瞬間、ガルドの姿が豹変する。巨躯を包むタキシードは膨張するように後背筋で弾け飛び、体毛は変色して黒と黄色のストライプの模様が浮かび上がる。その見た目は虎と人間を掛け合わせたかのように思われるものだった。

 

「テメェらどういうつもりでこの俺を無視してくれてんだああ!?俺の上に誰がいるのかわかってんだろうなァ!?箱庭第六六六外門を守る魔王が俺の後身人だぞ!!その態度は俺に喧嘩を売ってるって判断してもいいんだよなァ!?」

 

「別に、そう思ってくれても構わないけれど。あなたのような外道に構っている暇はないもの。ねえ二人共」

 

「うん。こんなの生きてる方がおかしい」

 

「というか心がドス黒いね君。もしかして過去に殺しでも犯したのかな?」

 

「ああそうだ!俺はギフトゲームの対戦相手のコミュニティから女子供を攫って脅迫したのさ。これで俺はコミュニティを大きくしていった」

 

「ふーん。で、その人達は?」

 

「はっ、殺したに決まってるだろうが!ギャアギャア五月蝿ぇから全員殺したよ!」

 

「へー。でさ、それ口外してよかったの?」

 

詩音が何気無い顔でそう言うとハッと何かに気づくガルド。

 

「絵に描いたような外道ね」

 

「最低、クズ、馬鹿、間抜け、死ね」

 

飛鳥は軽蔑の目でガルドを見て、耀にいたっては死んだような目でガルドを蔑む。

 

「テメェら、あれを聞いたからには生きて返さねえぞ……覚悟はいいんだろうなァ小娘共ォ!!!!」

 

ガルドは三人に襲いかかる。最初にその中でも一番ひ弱そうな詩音に飛びかかる。

 

「はぁ………ランス、やっちゃって」

 

「承りました詩音様」

 

淡々と詩音がそう言うとガルドの目の前に白い鎧で身を包む青年が立っていた。

 

その青年は飛びかかるガルド腕を掴み飛んできた方向へと投げる。ガルドは容易に投げられ尻餅をつく。そして、尻餅をついたガルドに青年は剣を突きつける。

 

「あなたのような外道は初めて見ましたよ。それで詩音様、どうしましょう」

 

「そうだね……。ジン何かない?手っ取り早くそこの訳のわからない奴を懲らしめる方法」

 

「あります。この箱庭ならではの方法ですが」

 

「あ、ギフトゲームって奴か!」

 

「そうです」

 

黒ウサギの話を思い出してそう言う詩音に肯定するジン。

 

「それじゃあさ、なんか気に食わないからあんたとゲームする。仮に私たちが勝ったらあなたは箱庭を出て行く。でも私たちが負けたら、そうだね………私があなたの奴隷になるってのはどうかな?」

 

詩音はガルドにそう提案する。

 

「ちょっと待ちなさい!私たちが勝った場合はいいわ。でもなぜ負けた場合詩音さんが奴隷になるのよ!?」

 

「え?ダメかな?」

 

「ダメ、絶対にダメ」

 

「いや、負けなきゃいいだけの話じゃん。ね、フェルン」

 

「ワォン!」

 

飛鳥と耀から抗議の声が上がるがさっきの提案を変更する気はない詩音。だが、ガルドも納得がいかなかったらしく、

 

「なんだと!?巫山戯るな!!誰が貴様らの提案をーーーー!?」

 

不満の声が上がったがそれもすぐに言葉を詰まらせる。原因はというと、

 

「お前に詩音様の提案を否定する権利などないぞ外道。お前は黙って従っていればいいのだ」

 

青年の殺気のこもった目によって言葉を詰まらせていた。

 

「それでは明日ゲーム開始ね。楽しみにしてるよ虎さん♪」

 

楽しそうに詩音はそう言った。こうして翌日にガルドの追放と詩音の奴隷化をかけたギフトゲームが行われることになった。

 

 

 




さて、どうでしたか?

完璧に無視されるガルドを書いてみたかった(笑)

それでは今回はこの辺で。

ここまで読んでくださりありがとうございました!次回もお楽しみに!

感想、評価、誤字脱字の指摘、駄目出し等もよろしくお願いします。


次回予告

詩音の独断で決まったガルドとのギフトゲーム。

そのギフトゲームに備えて一行はギフト鑑定をしてもらうことに。

だがその目的地でも色々問題があってーーー!?

「和装ロリは変態だそうですよ」

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