癒術師も異世界から来るそうですよ?   作:夜明けの月

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blizさんとのコラボ最終回です!
では、お楽しみください!


癒術師と冬の体現者、激突そして別れの時

"季節の支配者"とのゲームが終了した翌日、"ノーネーム"の一同は居間でグータラしていた。

 

「そういやそろそろだっけ?吹雪達が帰るのって」

 

「ああ。今日の夕方辺りかな」

 

「それまでどうするー?することは全てした気がするんだけどなー……」

 

詩音は頭を抱えて唸る。床に突っ伏している千斗が何か思いついたかのように起き上がった。

 

「あ、そうだ。決闘しよう」

 

「「は……?」」

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

「なんでこんなことに………?」

 

「俺が聞きてえよ……」

 

詩音達は千斗の提案によって手合わせをすることになった。その理由はというと、

 

『別分岐の奴との手合わせとか面白ゲフンゲフン楽しそうじゃないか』

 

『言い直せてない!!』

 

ということだった。

 

「でも、どうするの?玲華ちゃんと楓ちゃんはやる気ないんだよね?」

 

「わざわざ疲れることしたくない」

 

「お姉ちゃんがやらないなら私もやらない〜」

 

「じゃあ、吹雪は?」

 

「ん?面白そうならなんでもいいが」

 

「うん、聞く人間違えてた」

 

詩音は痛そうに頭を押さえる。この中で常識人はほとんど、いや全然いないのだ。強いて挙げるなら詩音(天然などの属性は除く)と真尋なのだが、

 

「真尋は賛成しちゃったしなぁ……」

 

そう、真尋は千斗の案を真っ先に賛成した人なのだ。その理由は、

 

『別にいいんじゃない?僕が苦労しないならそれで』

 

ただ面倒ごとを避けたいだけだった。現に手合わせには参加しないと宣言している。

 

「で、言い出しっぺの千斗は?」

 

「頑張れシイー」

 

「観戦する気満々かよ!!」

 

拳を突き上げて言う千斗にすぐさまツッコむ詩音。

 

「つーことは詩音とやればいいのか?」

 

「えー、私ー………?」

 

「まあ、いいんじゃねえの?それに、俺もお前の実力は気になってたんだよな。何かを秘めてるというか、なんとなくだが」

 

「……………はぁ、分かったよ。それじゃあ黒ウサギよろしく」

 

「はいな!それでは今から吹雪さんと詩音さんの手合わせを始めます!」

 

そう宣言すると、詩音と吹雪の目の前に"契約書類"が現れる。

 

『ギフトゲーム名 氷雪の奇跡と癒心の心得

 

・プレイヤー一覧 水無月 詩音

       白銀 吹雪

 

・勝利条件 敵プレイヤーの打倒。

 

・ゲームルール

*殺害禁止

*攻撃を受けた場合は、傷などではなくフィードバックが生じる。

*勝者は、敗者になんでも一つだけ命令できる。なお、敗者はそれを断ることはできない。

*使えるギフトは一つだけ。

*武具などの使用は無制限。

 

上記を尊重し、我々はゲームを行います。

        "     "印』

 

「なにこれ!?なんで命令権一回とかついてるの!?」

 

「いや、その方が面白いかと思いまして」

 

「この駄ウサギ!負けられないじゃんか!」

 

「誰が駄ウサギですかこの天然様!」

 

"契約書類"の内容に文句がある詩音は、黒ウサギと言い合いを始める。

 

「あのさ、始めていいか?」

 

「ああもういいよ!どうにでもなれ!」

 

「よし、それじゃあせーのっ!」

 

詩音がヤケクソ気味に叫ぶと吹雪が何かを放り投げる。それは放物線を描き、詩音の元へと落ちていく。

 

「………っ!」

 

ハッとして何かに気づいた詩音は、弓をギフトカードから取り出して矢を放つ。矢は、吹雪が放り投げた何かの真ん中を居抜く。すると次の瞬間、爆音が鳴り響く。

 

「やっぱり持ってたか、雪爆弾」

 

「流石に分かるか。まあ別にいいか。ストックはまだまだあるし」

 

ニヤァと嫌な笑みを浮かべて雪玉を取り出す吹雪。詩音の背中を嫌な汗が伝う。

 

詩音は悟った。このゲームは一筋縄でいかないなんてものじゃない。縄で縛られた挙句、火災現場(既に火の手が全体に行き渡っている)ところから逃げ出すぐらいに苦戦するだろうな、と。

 

「とりあえず百連発逝っとくか!」

 

「全部撃ち落とす!」

 

こうして射撃大会は幕を開けた。………ギフトゲームはどこに行った?

 

「気にすんなって」

 

「ていうか吹雪、いつもと戦い方一緒じゃん」

 

「ブレないね〜」

 

「いや、いつもやってんなら少しはなんか言ってやれよ」

 

そんな風に爆音が響いている間も呑気に言い合う観客たち。

 

「だって言っても無駄だし」

 

「場合によってはもっとえげつない戦法使ってるけどね〜」

 

呑気に言ってる場合ですか黄咲姉妹。

 

「詩音、強く生きて」

 

真尋は目を閉じてそんなことを言う。

 

「詩音さん、死なないように頑張りなさい」

 

「詩音、幸運を祈る」

 

飛鳥さん、耀さん、それ案に死ぬ可能性があるってことになるんじゃ………。

 

「「大丈夫だ、問題なんて多分詩音が吹き飛ばしてくれるさ!」」

 

千斗君と十六夜君に限ってはフラグ乱立させてますよね!?

 

「「「「気にするな」」」」

 

………もうやだこの人たち。

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

一時間それを続けたところで吹雪の手榴弾のストックが尽きた。

 

「チッ、もうねえのか」

 

「なく、なって……もらわな、きゃ困、る………」

 

肩で息をしながらボヤく詩音。現在、どちらかというと詩音が劣勢である。

 

「よし作ろう」

 

「させるかっ!」

 

させまいと矢を放つ詩音。吹雪に隙を作らせないように、間隔を空けずに放つが、吹雪はこれを難なくかわす。

 

「思ったんだが、お前ギフトを二つぐらい使ってないか?弓はいいとして、疲労回復やら治癒やらに使ってたやつと、その矢を生み出してる魔術的なものとの二つ」

 

「残念だけどこれ一つのギフトなんだよね。"癒術師"ってギフトは弱い魔法も使えるようになるんだよ。魔術と比べて精密さや火力とかは確実に劣るけどね」

 

「なるほど。矢を作る程度はできると……。まあそれはいいか」

 

「吹雪ー、そろそろ真面目に戦いなさいよー」

 

「頑張れ〜」

 

「………分かってるよ。まあ防戦一方ってのも嫌なんでそろそろ反撃行くぞ」

 

先ほどまでバックステップでかわしていた吹雪は、地面を蹴り、前進する。ギフトカードから剣を二本取り出して、詩音が放つ矢を切り捨てていく。

 

「終わりだ」

 

「"天恵浄化 ー護りの鈴の音ー(パーフィケイト・ガーディアルベル)"」

 

「んな!?」

 

吹雪が斬りかかろうとした時、詩音は瞬時に左手を突き出してそう叫んでいた。すると、凛と響く鈴の音とともに波紋のようなものが現れる。それによって、剣が阻まれる。

 

「ナイス切り返しだシイ」

 

「でも、あれってそこまで防御力なかったよね」

 

「「「詰んだな/わね/ね」」」

 

「そこ詰んだって言うな!」

 

千斗は褒めたのだが、他の全員は褒めるどころか詰んだと宣言しているほどである。

 

「くそッ、これが癒術師ってか」

 

「使い方間違ってるけどね」

 

「じゃあ本物の使い方ってもんを見せて欲しいものだ」

 

「残念ながら今は無理ってちょっと待って!いきなり力入れたら………!」

 

「話に集中してちゃ、勝てるもんも勝てねえぜ!」

 

吹雪は波紋に阻まれていた剣を振り下ろす。すると、波紋は消え去り詩音は後ろに飛ばされる。

 

「きゃっ!」

 

「さて、そろそろ終わりといくか」

 

吹雪は、槍を取り出す。アッシュを葬り去ったあの槍だ。

 

「うげっ!それ使うの!?」

 

「使えるもんは使わないとな。まあせいぜい耐えて見せやがれ、"氷星の軌跡 ―氷槍―(アイスミーティアー モデル・グングニル)"!」

 

吹雪が放った槍は、冷気を纏って詩音の元へと直進する。そのまま詩音に当たるーーーーーーーはずだった。

 

「"全て無へと帰しましょう。その力が私に牙を剥いたなら、それを無にしましょう。もし、貴方の心が黒に染まるなら、それを無へと帰しましょう"」

 

詩音は地面に座り直して紡ぐ。

 

「"貴方の心が黒でなく、その力が間違った方へと使われたなら、それを矯正しましょう。その力が、他が為に使われるように願い、紡ぎましょう『天恵浄化(パーフィケイト)』」

 

紡ぎ終わると、詩音に向かって飛んでいた槍は、先端から光の粒子となって消え始め、詩音の元に着く頃にはキレイさっぱり無くなっていた。

 

「ふぅ、なんとかなった……」

 

「おいおい、流石に洒落になんねえぞ………」

 

詩音はホッと息を吐き、吹雪は驚愕する。それを見ていた十六夜達も驚きを隠せなかった。

 

「嘘っ!?吹雪のアレを消したの!?」

 

「わー!詩音ちゃん凄い〜!」

 

「おいおい、流石にありゃやばいだろ……」

 

「詩音、流石」

 

「ええ、そうね。流石は詩音さんね」

 

「凄いのですよ!」

 

そう驚愕したり褒めたりしているが、詩音のことをよく知る真尋と千斗は冷や汗をかいていた。

 

「なぁ、あれってさ」

 

「うん、多分」

 

「「確か使ったら一定時間動けなくなるはずなんじゃなかったっけ?」」

 

その次の瞬間、詩音の動きが止まり、そして地面に倒れる。

 

「あ………忘れ、てた………」

 

「「またか!!」」

 

「……なんか歯切れ悪いけど、これで終了か」

 

詩音と吹雪の手合わせは、詩音の自滅ということで幕を閉じた。

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

手合わせが終わってから詩音は吹雪の命令を受けた。その内容は、『今まで自分がしたことない服装をしろ』とのことだった。

 

詩音の持っている服に来たことのないものはなかったので、黒ウサギから服を借りた。その結果、服装は白のフリフリのメイド服となっている。

 

「く、屈辱………」

 

顔を真っ赤にしてそう言う詩音。それを見て頷く吹雪。

 

「うん、こんな使用人がいたら普通にいいな」

 

「詩音ちゃん可愛い!」

 

「可愛い〜。似合ってるよ〜」

 

目を輝かせながら玲華は詩音に飛びつき、楓はそれを笑顔で見守っている。

 

他はというと、

 

「「(お持ち帰りしたい………)」」

 

などと、危ない感じがすることを考えていたり、

 

「ヤハハ、似合ってるじゃねえか」

 

普通に褒めていたり、

 

「うん、やっぱり何でも似合うなシイは」

 

頷いて自慢げに言っていたり、

 

「今までそんな格好してこなかったから新鮮だね」

 

普通に感想を述べていたりしていた。

 

すると突然、吹雪達三人の姿が透け始めた。

 

「お、戻るらしいな」

 

「えー!もっと詩音ちゃんといたい!」

 

「駄々こねるな」

 

「そうだよお姉ちゃん〜」

 

詩音から玲華を引っぺがす二人。詩音は三人に向かって言った。

 

「楽しかったよ。まあ、苦労したこともあったけど……」

 

「だな。以外と楽しかった」

 

「また来たらいいよ。今度はゆっくりしたいけどね」

 

「うん、そうするよ〜」

 

「菓子ばっか食いすぎんなよ」

 

「分かってるって」

 

「じゃあな詩音(癒術師)。また会おうぜ」

 

「じゃあね吹雪(冬の体現者)。また会おうね」

 

そう言葉を交わして、吹雪達は自分達の世界へと帰って行った。

 

 




blizさん、コラボありがとうございました!

詩音「なんでメイド服……」

自分で選んだんでしょう?

詩音「そりゃそうだけど……」

ということで次回からは本編に戻りたいと思います。
第2章突入ですかね。

詩音「だね。それじゃあ締めようか」

あと、今回は次回予告なしです。
それでは、次回もお楽しみに!

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