癒術師も異世界から来るそうですよ?   作:夜明けの月

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一年も開けてすみませんでした!本当にすみません!
ネタ不足とかではないんです。ちょっとこれからの方針を練り直していたところでして……。とりあえず更新は再開いたしますので、お待たせしてしまった皆様、本当に申し訳ありません。
これからもよろしくお願いします。

ということで、本編へどうぞ。
※今回、久しぶりにこれを書いたので、文章が多少おかしい可能性があります。





激怒黒兎 vs 湖の騎士

出店や展示物などで賑わう大通りを、真尋は人の合間を駆け抜けていく。一心不乱に、そして何かから逃げるように。

 

そしてその後からは、

 

「待つのですよぉぉぉぉぉおおお!!!」

 

髪を緋色にし、憤怒の形相で爆走する黒ウサギがいた。

忌々しそうに後ろを見ると、走る速度を上げてどうにか逃げ切ろうと計るが、それに合わせたかのように黒ウサギも走る速度を上げる。

 

「ああ、もう鬱陶しい!!」

 

「そう思うならさっさと捕まってくれませんか!」

 

「それとこれとは別だね。残念ながら、今捕まるわけにはいかないんだよね」

 

「そうですか。ならば、実力行使あるのみなのです!!」

 

一際強く踏み込み、屋根の上まで飛び上がる黒ウサギ。嫌な予感を覚えた真尋は、急ブレーキをかけて細い路地へと逃げ込む。それを見逃さなかった黒ウサギは、屋根の上から真尋を追従する。

真尋は路地から出ると、右足裏に光を収束させ、それを爆発させた勢いに身を任せて急加速する。

それを読んでいた黒ウサギは、真尋同様速度を上げ、追従し続ける。

 

「(あぁもう………しぶといなぁ。逃げておきたいけど、これ以上このままにしても拉致があかないし………。仕方ないか………)」

 

真尋は先ほどと同様に足裏に光を収縮させ爆発、その威力を利用して黒ウサギ同様、民家の屋根へと降り立つ。

黒ウサギは予想もされない行動をされたので、急ブレーキををかけて止まる。

二人は通りを挟んで民家の屋根上で対峙する。

 

「おや、どうしたのです?もしかして諦めて投降して下さるのですか?」

 

「そんなわけないでしょ。このままじゃ埒があかないから、手っ取り早く済ませる方法を思いついたんだよ」

 

「そんな方法があるのです?」

 

「まあね。それに、ギャラリーをこんなに集めたのに無視ってのも気がひけるし」

 

「は?………………え!?」

 

真尋が眼下に視線を向けると、そこには大通りに引けを取らないほどの人が群がっており、黒ウサギと真尋を見ていた。

全く意識してなかったのか、黒ウサギは真尋の視線に誘導されるように視線を移すと、一瞬動きが止まったが、すぐさま目を見開いて驚く。

 

「な、なななな……………!?」

 

「あんだけ走り回って注目されないとでも思ったの?」

 

「そ、それはそうですが………!でも、このギャラリーをどうするつもりです?」

 

「こうするのさ」

 

真尋は右手を前にかざす。すると、虚空から羊皮紙が現れる。そこにはこう記されていた。

 

 

『ギフトゲーム名 "月の兎と湖の騎士"

 

・プレイヤー一覧

蒼井 真尋

黒ウサギ

 

・勝利条件 先に相手の体に触れる。

 

・勝利報酬 勝者は敗者に三つ、なんでも好きなことを命令できる。(命令拒否不可)

 

上記を尊重し、ゲームを開始します。

"  "印』

 

「ギフトゲーム、ですか?」

 

「そう。これなら対等かつ、手っ取り早く決着が着くってわけ」

 

真尋は目の前に現れた羊皮紙をヒラヒラと煽りながら得意顔で言う。

黒ウサギは得意げにニヤリと笑い、真尋を煽る。

 

「へぇ、いいんですかぁ?さっき逃げきれなかったくせにそんなに余裕で」

 

「そっちこそ、見失わないのが精一杯って様子だったじゃないか。そんなに余裕こいてたら足元救われるよ?」

 

「ほぉ〜、この黒ウサギが本気を出せばすぐに追いつけるので手加減していただけですよ?それを全力だと勘違いしてしまうあたり、やはりこれは黒ウサギに勝機があると思えますねぇ〜」

 

「それはそれは、素晴らしい慢心のようで。本気を出せば追いつける、なんて言ってる人は本気出したとしても遅いのに変わりはないし、追いつけないと言う事実は不変なんだよ?そこら辺弁えたほうがいいんじゃない?」

 

「いえいえ、何をおっしゃるかと思えば。この"箱庭の貴族"と謳われたこの私が、あの天然お馬鹿様に手を焼いているようなしがない騎士一人に負けると?冗談もほどほどにしてくださいよ〜。まだ他の嘘の方が笑えますよ?」

 

「そっちこそご冗談を。仮にも"湖の騎士"のこの僕が、たかがお馬鹿で振り回されることしかできない能天気ウサギに負けるって?それこそ他のジョークの方が笑えるね」

 

「「………………………………」」

 

過激な言い争いの末、二人は相対する敵を睨みつける。

 

「鈍足鎧騎士」

 

「ノロマウサギ」

 

「「よしその喧嘩買った!!!」」

 

双方ともにこめかみに青筋を立てながら屋根を蹴り、駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒ウサギと真尋の間で戦いの火蓋が切って落とされた頃、十六夜とユウは相変わらず空き地で相対しながら話していた。

 

「要するに全ての元凶が癒術師にあるのは大まかに理解はした。だが、それとお前が協力してほしいことへの関係が理解できない。どう考えても言わなくていい事実だったように思えたが?」

 

「早めに話しておいたところで何か支障が出るわけでもないから。別に話しても問題はないのさ」

 

「…………じゃあ、俺があいつに言っちまうってことは予想しなかったのか?」

 

「詩音を信頼している君に話せるとは思わないけどね。それに彼女、君の命の恩人なんだろう?そんな人の心を不安定にするようなことは言わないと僕は踏んだわけさ」

 

「俺はそんなんじゃねえが……。まあいい。で、俺に協力してほしいことってなんだ?」

 

十六夜が一旦話を切り、もともと呼び出されていた理由の一つを問う。

すると、ユウの若干軽かった雰囲気が一気に引き締まる。

 

「そうだね………。簡単なことなんだけど、君にとっては厳しいかもだね」

 

「さっさと言え。決めるのは俺だ」

 

「だね。僕のいう協力っていうのは、君には詩音を守ってほしい、ということだけさ」

 

「…………は?」

 

あまりにも拍子抜けの内容に、十六夜の動きが完全にフリーズする。

人気のないところに呼び出され、最初は重要な話かと思えば、後に話されたのはいたって簡単で単純なこと。

流石の十六夜ですら固まってしまっていた。

 

「い、いやちょっと待て。こんなところに呼び出しといて、そんなことか?」

 

「うん、僕が頼みたいことはこれだけだからね」

 

「………流石に高笑いもできやしねぇ。一体全体何が狙いだ?」

 

「別に?これといった狙いはないよ。ただ、詩音を守ってほしい、それだけの事(・・・・・・)さ」

 

そう微笑むユウを十六夜は半眼で睨みつける。

これは何か裏がある、と。雰囲気からしてろくなことを考えてないだろう、と。

今のところは要注意人物と断定して、十六夜はその要求に首を縦に振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小賢しい!さっさと捕まりなさい!」

 

「死んでも嫌だね!もう一度言う、絶対に嫌だ!!」

 

黒ウサギと真尋の鬼ごっこはさっきよりも一層激しさを増していた。

追っては追われ、追っては追われの繰り返しで、一向に決着がつきそうになかった。

 

「(このままじゃ泥沼だな………。さして遮蔽物もないし、どこにどう逃げてもバレるなこれ)」

 

「(て早く終わらせたいのですが………、やはりそうはさせてくれませんよね。ですが、これでおしまいです!)」

 

黒ウサギは内心でほくそ笑むと、民家の屋根に穴を開ける程の力で屋根を蹴り、加速する。

高速で迫る黒ウサギをいなすように身を翻そうとするが、

 

「やばっ!?」

 

足がもつれ、その場でよろけてしまう。

だが、黒ウサギが跳んだ直線上からはズレており、急加速した黒ウサギは止まれるわけもなく、真尋を通り過ぎたところで止まる。

その隙に真尋は立て直し、黒ウサギと逆の方向へ駆ける。真尋を捕まえ損ねた黒ウサギもすぐさま立て直して追う。

 

「あーもう、鬱陶しい!!」

 

「ならば早く捕まってください!」

 

「だから、嫌だって言ってるだろう!?」

 

「そう言うから追いかけてるんじゃないですか!!」

 

「そっちが諦めればいいだろ!」

 

「それは黒ウサギの沽券とプライド、そしてあの悪ふざけに対する怒りに対する冒涜なのですよ!!」

 

「あれは十六夜達が勝手にーーー」

 

「問答無用!!」

 

「って聞く気なしかよ!!」

 

舌打ちをし、真尋は走りながら周りを見渡す。

その視界の端に大きな時計塔のようなものが映る。

 

「(………あれなら)」

 

すぐさま方向転換し、時計塔に向かい、真尋はその死角に回り込む。

黒ウサギはその後を追うが、先程死角だった場所にはいるはずの真尋はいない。

 

「う、上ですか!?」

 

すぐさま上を向くが、そこには真尋はいなかった。

黒ウサギが真尋を探している間、真尋は黒ウサギからまたもや死角になる方向に走っていた。再度、黒ウサギが等の反対側を見なければ見つからないように。

だが、

 

「(そういえば、貴種のウサギ……『箱庭の貴族』って耳もいいんだったよね………)」

 

いい作戦かと思ったが、完全に付け焼き刃だと理解した真尋は、とりあえず距離を置こうと大通りを民家の屋根を蹴って、飛び越える。

真尋が向かいの民家に着地した時、それは起こった。

 

 

突如として時計塔が崩れ始めた。

 

 

「……………………え?」

 

斬られる音も、爆破されたような音もなく、ただ緩やかに接着される前の煉瓦に戻るかのように、まるでスローモーションを見ているかのように端から崩れ始める。

 

その端は黒ウサギがいた方向で

 

「黒ウサギッ!!」

 

真尋は民家を壊すぐらいの勢いで蹴って加速する。

すぐさま塔の反対側に辿り着き、呆然と立ち尽くす黒ウサギをタックルでもするかのように抱きしめて瓦礫を避けて近くの通りに着地する。

 

「………危なかった。大丈夫かい、黒ウサギ」

 

「え…………、あ、はい……………」

 

黒ウサギは未だ放心状態で、何が起きたか理解できてないのだろう。

その後、先ほどまで黒ウサギがいた場所に、崩れた塔の一部が降り注ぐ。瓦礫は民家を押しつぶし、大きな土煙をあげる。

判断が遅れてしまっていたら、黒ウサギがあの瓦礫に押しつぶされていたかもしれない。真尋の脳裏にはその光景が容易に浮かんでしまう。

真尋はその光景を振り払うように頭を振る。

 

「(………それにしても、なんでいきなり)」

 

その点が不思議だった真尋は、その塔に近づこうとするがーーーーー

 

「止まれ!貴様ら、そこで何をしている!」

 

怒号にも似た声に止められて、その声がした方に向く。

そこには顔を赤くして怒りを滲ませる赤髪の男と衛兵のような人が数人立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、耀と千斗は白夜叉に提示されたギフトゲームに挑んでいる最中だった。

敵は向かいにいるゴーレムだった。

造物主の戦い、ということで基本的に自らが作ったもので戦いに挑まなくてはならない。

耀はそのゴーレムを空中から蹴ってゴーレムをよろけさせる。

 

「千斗、お願い」

 

「リョーカイ、吹き飛べ土塊!」

 

千斗は白い手袋をつけた右手でゴーレムを殴る。

ゴーレムは吹き飛ぶことはなかったが、千斗が殴った位置は穴が空き、次の瞬間には内部から弾け飛んだ。

 

『勝者、"ノーネーム"所属、春日部耀!』

 

数回聞いた定例文を聞くこともなく、耀と千斗はハイタッチを交わす。

 

「ナイス。あの拳は良かった」

 

「良かったっていうなら少しぐらいニコリと微笑んでくれればいいんだけどよ………まあいいか。とりあえず、これで準決勝にまでいけたな」

 

「大して強い相手がいなかったとも言える」

 

「お前……意外と身内以外には辛辣なのな」

 

「負ける方が悪いと思うの」

 

「勝負の世界ではそうだが、それどこでもいうんじゃねえぞ。敵を作りかねない」

 

「私には千斗がいるし、みんなもいる」

 

「俺の名前を単体で出してくれたことはありがたいが、そういうことは少しぐらい笑って言えっての」

 

「…………………?」

 

「あー、はいはい。もういいから………」

 

千斗と耀がそんなやりとりをしている間に次の準決勝での対戦相手は決まっていた。

 

「"ウィル・オ・ウィスプ"か。そろそろ気合い入れた方がいいな」

 

「なんで?」

 

「勘だよ勘。まぁ、特筆するようなことがないような奴らがいいんだがな」

 

「とりあえず勝つ。で、黒ウサギと仲直りする」

 

「ま、今の所はそれだわな。…………それにしても、あいつらまだ捕まんないのか?」

 

「さぁ………?」

 

二人は白夜叉に指定された宿に向かって、次の相手に対する作戦などを練りながら歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公出てきてなくてすみません……。多分次回は出るかと……。
で、では、次回もお楽しみに!

感想、評価、指摘などもお待ちしております。

次回予告

真尋と黒ウサギが塔の倒壊にあっている頃、詩音は至って平和的に玉藻の前とともに街を歩き回っていた。

そこに、息を切らしていた飛鳥に遭遇する。

「お祭りって必ず何かが起こるよね」


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