癒術師も異世界から来るそうですよ?   作:夜明けの月

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本当に申し訳ありませんでした(土下座)。何言われても返す言葉もありません。

そしてなんと…………、僕は明後日から試験です(涙)。もう……終わっていいよね……始まってないけど。
ではでは、本編へどうぞ。


拭い去ることのできない真実とささやかな願い

コミュニティ"桃源郷"のリーダーであり、癒術師と言った青年、神倉ユウと出会った十六夜は、ユウと共に行動を共にしていた。

 

「んで、どうして一緒に行動する必要があるんだ?」

 

「ちょっと試したいことがあってね。とりあえず、人目につかないところまで移動するよ」

 

そう言って路地裏の方に先導して入っていくユウに疑問符を浮かべながらおとなしくついていく。

 

その間、十六夜はユウを後ろから観察していた。十六夜の知る癒術師である詩音とは雰囲気が全く異なり、詩音が小動物を思わせるなら、ユウは靄にかかった物体を思わせるような正体不明感があった。

 

路地裏を歩くこと数分、二人は空き地のような開けた場所に出た。

 

「さてと、ここなら思う存分できるね」

 

「なんのことだ?というか、どうしてここに俺を連れてきた?」

 

「どうして、ねぇ……そうだなぁ……。癒術師のした()()と僕の力の証明ってところかな」

 

「癒術師の、愚行……?」

 

その言葉に十六夜は耳を疑う。詩音は癒術師は"汚れ"を癒し、悪しきものを祓う者だと聞いた。現に"ノーネーム"の荒廃した大地を緑生い茂る土地へと癒して見せた。だが、ユウはそういったことをした詩音(癒術師)が過ちを犯したと言ったのだ。

 

十六夜は到底信じられなかった。あの鈍臭く、天然で、バカで、能天気で、誰よりも真面目な詩音が愚行を犯したなどとーーー

 

「あ、言い忘れてたけど、愚行をやったのは詩音じゃない。()()()()()()さ」

 

「初代………ってことは、何年も前から癒術師はいたってことなのか!?」

 

「何年も前ってレベルじゃない。多分だけど、癒術が生み出されたのはかの大帝国のブリテン、今で言うイギリスだったらしいよ」

 

「な………ブリテンだと!?」

 

ユウの言葉に声を荒げて驚く十六夜。直後、十六夜の脳内にある疑問が浮かび上がる。何故、何十世紀も前に生まれたものが今もまだ続いているか、ということだった。

 

「………仮にそうだとして、どうしてそんな前から?」

 

「僕らの世界では、大帝国のブリテンで"円卓の騎士"と呼ばれる選ばれた数人に人々が世の平定のために尽力していた。だが、それはいかに兵の力、武力、その他もろもろを行使してもその願いは果たされそうになかった。だが、そこである人が現れた。それが、癒術を生み出した者であり、詩音の先祖でもある」

 

「ちょっと待て!いろいろ突っ込みたいことがある!何故、円卓の騎士が()()()()()()()()苦戦している!?というより、円卓の騎士は伝説上の人物じゃーーー」

 

「何を言っているんだ?君は知ってるはずだろう。詩音は、君たちとは全く関係ない世界から召喚されたこと」

 

「ーーーーっ!?」

 

ユウに指定され、ハッとなって気づく。

 

十六夜と共に箱庭に召喚された飛鳥、耀、詩音はそれぞれ別の世界から召喚されているのだ。

 

つまり、来る前の世界に違いが出てくることもあるということだ。

 

他の世界では存在しない()()()()()がいてもなんら不思議ではないのだ。

 

「話を戻すよ。そこで詩音の先祖は円卓の騎士のうちの二人、ランスロットとモルドレッドにある提案を持ちかけた。『私が戦況を有利に進めるものをお作りいたしましょう。そのために協力していただけませんか?』とね」

 

「…………………なるほどそういうことか。だから真尋の奴はランスロットって役を担わされてたのか。過去にあった物事自体を再現するためにってわけか。でも待ちやがれ。それと愚行となんの関係があるってんだよ?」

 

「質問に質問で返すようで悪いけど、なら何故癒術師だけが"汚れ"を癒せるのかな?それっておかしくない?」

 

質問に質問で返された十六夜は顎に手を当てて考える。

 

詩音は"汚れ"を癒術師以外はどうにもできないと言っていた。それは何故か。

 

だが、いくら考えても回答が思いつく気がしない。

 

「(なら、"汚れ"をパズルに起きかけて考えてみればいい。俺製のパズル誰にも解けず、それはどんな人材でもクリアできない矛盾したパズルだが、俺だけがそれを解けるということにすればいいだろう。その場合、どうして俺が解けるのか。そんなのは簡単だ。製作者である俺だけがそのパズルの構造を細部まで知っ………てーーーー!?)」

 

「その顔は気付いたようだね」

 

してやったりといった風にニヤリと笑うユウ。十六夜は信じられないと言わんばかりに目を見開き拳を戦慄かせる。

 

そして口にする。癒術師が犯した愚行を。

 

「じゃあ……"汚れ"を作ったのは、癒術師なのか……!?」

 

「ああ、それが癒術師の愚行。拭い去ることのできない罪だ」

 

「…………おい、神倉。詳しいこと教えろ。まだ何か知ってるだろう?」

 

「うん、知ってるよ。でも、僕にも協力してほしいけど、いいかな?」

 

「それくらい構わねぇよ」

 

十六夜の返事に満足そうに笑みを浮かべるユウ。愚行についてはある程度把握した十六夜だったが、一つだけ引っかかることがあった。

 

「(なら、どうして千斗の奴はフェンリルなんて役を与えられたんだ?どう考えても関係がなさそうだが……)」

 

そんな疑問だけが十六夜の頭の中をぐるぐると回っていた。その疑問が解決されるのは、そう遅くならないことを十六夜はまだ知らない。

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

峠坂日見華と別れた詩音は、呼び出した玉藻前の尻尾をもふもふしながら思考を巡らせていた。

 

「(ロイズファクトリーの他のメンバー……誰だろう。会ったことないからわかんないけど、ヤバいのは確かだよね)」

 

「おい詩音、何故私は呼び出されたのだ?」

 

「なんか、嫌な予感しかしないから少しだけこの不安感紛らわせて〜」

 

「だからって私の尻尾を触ることになんの意味が「それはただの気分」今すぐ離せ!」

 

「やだ〜!」

 

「いい年して駄々をこねるな!」

 

二人が言い合う光景は、周囲から見れば身なりは違うが姉妹のように見えたらしい。

 

数分間その言い合いを続け、玉藻前は不毛だと判断して言い合いを打ち切る。

 

「で、何か私に用があったんでしょ?」

 

「いや、だから不安だったから紛らわせようと「それだけじゃないでしょう」……あはは、バレてたか」

 

玉藻前に強めに否定され、力なく詩音は笑う。だが、すぐに表情をいつもの状態に戻す。

 

「ちょっとこの街見て回りたいんだ。だから、一緒に行こ?」

 

「最初からそう言いなさい。全く………。別にそれぐらいならいいわよ」

 

「やった!」

 

玉藻前が了承して満面の笑みになる詩音。

 

そして、二人は仲よさそうに手をつないで街の散策を再開する。

 

「私ね、夢だったんだ」

 

「ん、何が?」

 

「こうやって誰かとお祭りに行くこと」

 

「…………そう。よかったわね」

 

「あと、こうやって平穏な日々が過ごせることかな」

 

「うん、まあ平穏ではあるんだけど、黒ウサギのことーーーいや、やっぱりいい」

 

「うん?何か言った?」

 

「別に。ほら、さっさと行くよ」

 

玉藻前が先導するように詩音を引っ張る。詩音はそれに応えるかのように微笑み、ついて行った。

 

 

 

こんな平穏な日々が続きますように。

 

 

 

そう詩音は心の中で願う。だが、その願いはーーー叶うことはなかった。

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

時は詩音が日見華と遭遇する前まで遡る。

 

早々に捕まり、鬼ごっこからリタイアした耀と詩音を展望台からぶん投げたせいで逃げ遅れた千斗は白夜叉の前で正座していた。

 

「いや、それにしても脱退はいささかやりすぎではないかのぉ」

 

「………でもその方が」

 

「確かに、スリルはあって面白いかもしれん。だが、少々やりすぎじゃ。あやつの気持ちも考えよ」

 

「まぁ……、確かにやりすぎた感はあるけどな。マジギレしてたし」

 

白夜叉に指摘され、反省の色が見え始める二人。その様子を見て白夜叉は口角を釣り上げてある一枚の羊皮紙を取り出す。

 

「ならば、これに出て優勝商品を詫びの品にするというのはどうだろうか?」

 

そう言って差し出してきたのはただの羊皮紙ではなく、ギフトゲームの詳細が書かれた"契約書類"だった。

 

『ギフトゲーム名 "造物主達の戦い"

 

・参加資格、及び概要

   ・参加者は創作系のギフトを所持。

   ・サポートとして、一名まで同伴を許可。

   ・決闘内容はその都度変化。

   ・ギフト保持者は創作系のギフト以外の使用を一部禁ず。

 

・授与される恩恵に関して

   ・"階層支配者"の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言できる。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームを開催します。

        "サウザンドアイズ"印

         "サラマンドラ"印』

 

「創作系のギフト?なんだそりゃ」

 

「うむ。人造・霊造・神造・星造を問わず、製作者が存在するギフトのことだ。そのため、おんしの持つ"生命の目録(ゲノム・ツリー)"は技術、美術に優れておる。その木彫りに宿る"恩恵"ならば、力試しとしても勝ち抜けると思うぞ」

 

「そうかな?」

 

「そうとも。幸い、サポート役としてそこで伸びておるジンや千斗もおるだろう」

 

「ちょい待て。質問がある」

 

話がトントン拍子で進んでいたところに千斗は待ったと手を挙げて話を遮る。

 

白夜叉と耀は疑問符を浮かべて首をかしげる。

 

"契約書類"(これ)読んでて思ったんだが、サポート役ってのは創作系ギフト縛りって効くのか?あるとしたら俺は役にはたたねぇぞ?」

 

「おぉ……そうだったのぉ……。確かに、このギフトゲームでは()()()()創作系のギフト以外の使用を禁じておる。それにおんしが持つのは、かの魔狼のギフト。見事に役に立たんな」

 

「だろ?どうすんだ?」

 

「うーむ……いいだしたのは私だしのぉ………。よし分かった。こちらでおんしに相応しい創作系ギフトを用意しよう」

 

「マジで?」

 

「その代わり、貸し与えるだけじゃ。ゲーム後は返却してもらうぞ」

 

「それでも構わねぇよ。んじゃ、いっちょ頑張るとしますかね!」

 

心底楽しみそうな笑顔になる千斗。耀はそれを見て小さい子供みたいだな、と思い、微笑んでいた。

 

 

 




今回で今まで建てた大体のフラグは二章で回収できそうです。
次はいつになるかわかりませんが、待っていただけるとありがたいです。

では、次回もお楽しみに。
感想、評価、指摘、アドバイスなどもお待ちしております。



次回予告

飛鳥と別れた真尋は黒ウサギに追跡されていた。

埒があかないと思った真尋は黒ウサギにある提案をする。

その同時刻、十六夜と共にいる神倉ユウは自分が求めた"協力してほしいこと"を十六夜に告げるのだった。

「激怒黒兎 vs 湖の騎士」

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