とりあえず、遅れてしまって申し訳ありません。
では、本編をお楽しみください。
ハプニングから始まる祭りへの道
街中を歩く幼い少女がいた。俯き、周りを見ようともせず、ただただまっすぐ歩いていた。街に住まう人たちはそれを遠目に見ていた。
「見て……あの子よ、災いの子」
「嘘だろ……あんな幼い子がか?」
「嘘な訳ないだろ。世界中で有名だぞ。あんな分けわからないものを消せる奴だぞ?」
「怖いわねぇ……。あんな子が、そんなものだなんて」
ヒソヒソと話し合い、後ろ指をさすかのように睨めつけていた。その時だった。少女の近くに同じ歳ぐらいの女の子が走って近寄ってくる。
「ねぇ、どうしてそんなにボロボロなの?」
女の子は首を傾げて尋ねる。少女は顔を上げるだけで答えようとはしない。それを答えてはいけないかのように、そして、聞いてくるなと願うように。
「こら!その子に近づいちゃダメって言ったでしょ、瑞希!」
「わっ、お母さん!」
女の子がその母親に連れて行かれると同時に少女が歩き始める。
今日も一人で、たった独りでーーー。
☆★☆★☆★☆
「嫌な夢見たなー………」
詩音は額の汗をぬぐいながら体を起こす。
ペルセウスとのギフトゲームから数週間、"ノーネーム"の面子はいたって平和な生活を送っていた。多少の事件はあったものの、被害は詩音が受けたためそこまで問題はなかったが。
「よし、このままじゃなんだし着替えよ」
そう言って着替え始めた時だった。詩音に当てられていた部屋の扉が勢いよく開け放たれる。
「おい詩音、いい知らせ持ってきてやったぜ!」
「ーーーーーへ?」
扉を開け放ったのは白髪白眼の十六夜だった。
現在十六夜の髪と目は、ロイズファクトリーに囚われていたことにより白く染まっている。
そんな十六夜と、詩音の視線が交錯し、停止する。現在の状況を軽く説明すると、
詩音起床→着替えしようか→十六夜参戦→詩音下着のまま停止(←今ここ)
詩音は先ほどまで平然としていた顔を真っ赤にして涙目になる。そして、
「ぁ、きゃああああああああああーーーー!!」
つんざくような悲鳴をあげる。この悲鳴がコミュニティー全体に響き渡ったのは別の話。
☆★☆★☆★☆
「シイ、そろそろ機嫌直せよ」
「奪われた……私の大事なものが……」
「誤解を招くような言い方すんじゃねぇ!!それとさっき機嫌直ってただろうが!面白いからって演技するんじゃねえ!!」
場所は変わって、いつもの町を歩いている詩音達。どうしてここにいるかというと、十六夜が持ってきた『いい知らせ』が原因だった。
「十六夜の変態、スケベ!!」
「悪かった。というか着替えてると知らなかったんだよ」
「うぅ……」
「「十六夜/君最低……」」
「だから不可抗力だとーーー」
「「で、十六夜感想は?」」
「すごかーーってそういうことじゃなくて、一旦テメェら落ち着きやがれくそったれがぁぁぁぁぁ!!」
と、こんな感じのやりとりがあった後に十六夜がある手紙(意味深)を詩音に渡した。
「おいコラいい度胸じゃねえかこっちきやがれ駄作者」
ごめんなさい本当に止めて原型なくなるから……。
気を取り直して、詩音に渡された手紙は、"火龍誕生祭"の招待状と書かれたものだった。
「なになに……?『様々なギフトゲームを取り揃えており、屋台などの催し物も多々あります。そして、今回参加者を多く募るギフトゲームも開催いたします』?"火龍誕生祭"って何?」
「知らないけど、面白そうだから行こうってことになったんだけど、詩音を残していくのは後でめんど……かわいそうだと思って」
「今面倒って言おうとしたよね真尋?」
「でも、その十六夜がもう消沈気味なんだよなぁ……」
千斗が指差す方向には、地面に蹲って暗い雰囲気をまとっている十六夜がいた。
「俺は悪くねぇ俺は悪くねぇ俺はーーー」
「これどうしようかしら?」
「運んでいく?」
「うーん……」
そんな十六夜を連れて行く方法を考える四人。そんな中、詩音は十六夜の横まで行き提案を持ちかけた。
「十六夜、一つだけ私の言うこと聞いてくれたらさっきの事は全部とはいかないけど、水に流してあげる」
「………その内容は?」
「屋台の食べ物幾つか奢って。それで許してあげない事もない」
「本当だな?」
「私は嘘つかないよ」
「了解だ。いくらでも奢ってやる」
「交渉成立だね。じゃあ行こう」
というようなやりとりがあって、今に至る。
「というかこれどこに行ってるんだ?」
「変態の住処」
「「「なるほど把握した」」」
「白夜叉の扱いがぞんざいになって来たなぁ」
「まああれはそういうもんだからいいんだよ」
そんな話をしていると、六人はいつの間にか変態の住処もとい"サウザンドアイズ"の支店にいた。
そこにはいつも通り外で掃除をしているのか、割烹着を着た女店員がいた。
「………またあなた達ですか」
「なんだその目は。こっちはわざわざ来てやったんだぜ?」
「願い下げです。というより頼んでいませんよ。来いとも一言も告げてませんし」
「つーことで入らせてもらうぜ」
「無理です!というよりどういう経緯で入るということに至ったんですか!?」
「え?さっきのOKって意味じゃないの?」
「あからさまな拒絶だったはずだったんですがそうは捉えなかったんですか!?バカですか!?」
「だってバカだもん」
「……………………っ!!」
千斗と女店員が攻防を繰り広げるが、千斗の自由さに翻弄され現在睨みつけている女店員。それを気にも留めない千斗は奥に進もうとする。
「待ちなさい!今、白夜叉様はいません!ですので今日はおかえりにーーー」
「イヤッホォォォォォォォ!元気にしとったか小童共ォ!」
どこかから聞き覚えのある声が聞こえてきたかと思うと、上空から何かが飛来する。その声に聞き覚えがあったのか、女店員は頭を痛そうに押さえている。
「白夜叉様………」
「くく、超絶美少女の白夜叉様見参じゃ!!」
「ここの店長はぶっ飛んだ現れ方しなければ気が済まんのか」
「………………」
十六夜のごもっともな発言に無言を貫くしかない女店員。斬新な登場の仕方をした
「どうしたおんしら?私に用があったのではないのか?あるなら中に入るが良い。私が許す」
「ちょ、白夜叉様!?」
女店員の驚きは無視するかのように白夜叉は中に入っていく。六人はそれを追うように支店の中へと入っていった。
「ていうかさっきから気になってるんだけど、なんでジンは千斗に引きずられてるの?」
「当然の報い、かな?」
「……?」
☆★☆★☆★☆
一方その頃、"ノーネーム"の本拠では、黒ウサギとメイド服に身を包んだレティシアが畑の有様を見て頭を悩ませていた。
「これはどうしたものか……」
「Yes、少しでも農地が復活すればコミュニティのお財布事情がどうにかなるのですが……」
「詩音が土地を復活させてくれたのはいいのだが、さすがに完全にとはいかなかったか」
詩音が"ノーネーム"に来た初日に本拠の土地を元の状態に戻したのだが、完全に土地が元に戻ったというわけではなかった。詩音がしたのは、『土地を死んでいる状態から生き返らせること』のため、ただ生き返っただけであり、農作物が作れるというほど土壌や成分などはほとんど戻ってはいなかったのだ。
「うーん、詩音さんに頼んでみましょうか」
「まあ、それしか手はあるまい。頼れるものには頼っておかなくては」
そう言って詩音を探しに行こうとした二人を止める声があった。
「黒ウサギのお姉ちゃぁぁぁぁぁぁん、大変なことがーーーー!」
「どうしたんですかリリ?」
走ってきたのは、頭上に狐耳と腰のあたりから狐の尻尾を生やした少女、リリだった。リリはパタパタと尻尾を振りながら黒ウサギに手紙を手渡す。
「あ、飛鳥さん達がこれを黒ウサギのお姉ちゃんにって」
「私にですか?」
そう言って中身を見る黒ウサギ。そこにはこう書かれてあった。
『黒ウサギへ
北側四○○○○○○外門と東の三九九九九九九外門で開催する祭典に参加してきます。あなたも後から必ず来ること。あ、あとレティシアもね。
私達に祭りのことを意図的に黙っていた罰として、今日中に私達を捕まえられなかった場合、
P.S ジン君は道案内に連れて行きます。』
それを読んだ瞬間、口をポカンと開けて呆然とする黒ウサギ。横から覗いていたレティシアはため息を吐き、リリは未だにオロオロしている。
そして三十秒後、黒ウサギはハッとして叫ぶ。
「な、何言っちゃってんですかあの問題児様方ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
☆★☆★☆★☆
詩音達が"サウザンドアイズ"へ到着したと同刻、トリトニスの滝では一人の少年が白い蛇と話していた。
「白雪、ここらあたりは大丈夫?」
『うむ、問題はないぞ。しかし珍しいな。貴様がここまで来るとは』
「北に行くついでだよついで。ここも以前は"汚染"されかかってたし」
白雪と呼ばれた蛇は少年に顔を近づけ、睨みを効かせる。
『また何を企んでおるのだ?北には"汚れ"はおらんだろう?』
「まあそうなんだけど、少しきになることがあってね」
少年は白雪に笑いかけ、頭を撫でる。
「それに、気になる人もいるし」
ボソッと呟くが、白雪には聞こえていなかったのか、撫でられるのが気持ちいいのか目を細めている。
「それじゃあ行くよ。何かあったら白夜叉経由で教えて」
『分かったぞ。気をつけるのだぞユウよ』
「分かってるって」
苦笑を浮かべた少年は、一瞬にしてその場から忽然と消えた。
なんかいつもより駄文な気が……。
詩音「いつも通りじゃん」
あ、あと、この作品での十六夜君が快楽主義ボケ担当→苦労系ツッコミ担当(たまにボケ役)へジョブチェンジしました!
十六夜「嬉しくねぇ………」
詩音「……どんまい」
では、次回もお楽しみに!
次回予告
白夜叉に事情を説明し、無事北側へとたどり着く。
だが、その時彼女らを捉えるべく北側へと向かった黒ウサギも到着し、六人と対峙する。
ここに今、負けたらお仕置きの鬼ごっこが始まる!
「黒兎鬼ごっこはハードな運動」