すみません、今回出来上がりが非常に微妙になっています。ご了承ください。
それでは本編をお楽しみください!
十六夜が行方不明になって二日後、詩音たちは白い宮殿の前にいた。
「ここがゲームエリア………」
「……綺麗なところね」
「でもここに外道がいる」
「よし、潰すか」
「ガウ(賛成)」
「やめろ」
何故ここにいるかというと、真尋が持ってきたゲームへの参加権をルイオスに渡し、ゲームする事が決まったからだ。そしてギフトゲームのエリアはここらしい。
「それで、あの外道はどこなのかしら?」
「確か宮殿の門の前にあるとか言ってたような」
詩音はそう言いながら門の前へと行く。門には"契約書類"が貼り付けられていた。
『ギフトゲーム名 "FAIRYTALE in PERSEUS"
・プレイヤー側コミュニティ " "
・ゲームマスター側コミュニティ "ペルセウス"
・プレイヤー側勝利条件 白亜の宮殿の入り口から入り、最奥までたどり着き、そこで待つルイオス=ペルセウスを打倒する。
・プレイヤー側敗北条件 上記の勝利条件を満たせなくなった場合、またはルールに背いた場合。
ゲームルール
・白亜の宮殿の入り口から入れるのは二名のみ。
・最奥に着くまでに見つかってはいけない。
・プレイヤー側コミュニティのメンバーがゲームマスター側コミュニティに二名以上捕らえられた場合、プレイヤー側コミュニティの負けとなる。
・最奥にたどり着いた者のみ、戦うことが許される。
上記を尊重し、誇りと御旗の下、ギフトゲームを開催します。
"ペルセウス"』
「なんかまた難しそうなんだけど………」
"契約書類"に書かれていた内容を見て項垂れる詩音。他のメンバーも疲れたような顔をする。
「これは面倒ですね……」
「今嘆いたところでこの事実は変わらないわよ。ところで、宮殿の中に入るのは誰にするの?」
「よし、僕が行こう」
「「「却下で」」」
「何で!?」
「「「前にガルドやったじゃん」」」
「そんな理由!?」
大声でツッコむ真尋を放っておいて詩音が名乗り出る。
「なんか嫌な予感がするし、私が行く」
「………大丈夫なの?」
「多分なんとかなるよ」
「そ、それじゃあ僕がお供を」
「フェルン、お願いできる?」
「無視なんだ、無視するんだ!!」
「ワウ(哀れ)」
こうしてゲームは開始した。
☆★☆★☆★☆
白亜の宮殿内。詩音とフェルンは物陰に身を隠して動いていた。
「でもどうしよう……このままじゃいつか見つかるよね」
「ガルゥ」
詩音がそう言うとフェルンが詩音と自分に風を纏わせた。
「これ何?」
「ガウ」
「……?不可視の風?聞いた事ないよそれ」
「ガルゥ!」
「痛っ!いいから行けって乱暴すぎない!?」
「ガウァ!」
「痛いっ!ごめん行くから!」
側から見たら大丈夫か?と思える感じで詩音たちは進んでいった。
☆★☆★☆★☆
白亜の宮殿の最奥では黒ウサギたちが詩音の到着を待っていた。
「ふぁ〜、眠……」
奥から間の抜けた欠伸が聞こえてきた。そこには"ペルセウス"のリーダーであるルイオスとローブを被った人がいた。
「遅えな……もう失格になったんじゃねえの?」
「そんなことない。詩音は必ず来る」
「ハッ、どうだか。それとも、怯えて逃げ出したか?」
ニヤニヤと陰湿な笑みを浮かべて言うルイオス。
「黙れ外道。少しぐらい待っていられないのか?というかお前が英雄とは信じられないな」
横目で真尋がルイオスを睨む。
「何だと?」
「それで英雄を名乗るとはね。全く、恥晒しだよ」
「おいお前、僕をあまり怒らせるなよ」
「はいはい」
真尋は挑発するように適当にルイオスの言うことを聞き流す。するとその時だった。
「はぁはぁ………や、やっと着いた………」
ふと、どこからか声がした。声がした方にいたのはボロボロになっている詩音だった。
「詩音さん!」
「無事だったのですね!」
「どうしたのそれ?」
「ああ、それはね………」
「ガルァ!!」
「痛ぁ!!」
理由を説明しようとした途端、フェルンが詩音の腕に噛み付く。
「こういうこと」
「グルルル」
「痛っ!もうやめ痛ぁ!!ちょ、頭はダメ!!やめてぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
フェルンが頭に噛みつき、痛みで悲鳴に近い叫び声を上げる詩音。
その光景を見て全員が思ったことはただ一つ。
『これで大丈夫なのか?』
"ノーネーム"のメンバーはそう思いながらため息をつくのだった。
☆★☆★☆★☆
「よし、それじゃあ戦おうか」
「ガウ」
「詩音さん詩音さん、仁王立ちでそういうのはいいんですけど、そう言える姿じゃないですよね?」
現在の詩音の姿はというと、身体中に引っ掻かれたり噛まれたりした傷があり、服なんかはもう戦う前からボロボロだ。
「それはフェルンに言って」
「グルゥ」
「とりあえず始めようか」
「そうね。そろそろ外道の調理に入らないと」
「おいおい、ちょっと待て。どうしてお前らが戦おうとしてるんだ?」
ルイオスが呆れたような声で言った。"ノーネーム"のメンバーは頭の上に?を浮かべる。
「お前らだよお前ら。最初からこの最奥にいた奴らだよ」
「それがどうした?」
「"契約書類"をちゃんと読めよ」
「は?」
そう言われて真尋は"契約書類"を取り出し文面を読む。そしてある分に目が留まる。
「くそッ……そういうことか……!」
「どういうことなの?」
「あいつが言っているのは、『どうして最初から最奥にいた奴らが戦おうとしているのか』だった」
「それが何?」
「"契約書類"には勝利条件に『入り口から入って最奥にたどり着き、そこで待つルイオス=ペルセウスを打倒する』とある。これがどういうことか分かる?」
飛鳥と耀は首を傾げる。黒ウサギはハッとしてその問いに答える。
「まさか……入り口から入って最奥に来なかった私たちには………参加権がない……!?」
「御名答。つまりお前らには
それを聞いた真尋は歯噛みする。黒ウサギはオロオロし始める。
「ど、どどどどうしましょう!?」
「どうすれば……どうすれば……!!」
「ハッ、そんなの決まっているだろう?お前らのお仲間が殺され僕の物となるのを見ていればいいのさ。君らに戦いに参加する権利はない」
そう言ってルイオスはブーツから翼を生やして空中に浮く。
「さて始めるか。恒例のセリフは……面倒いからいいや」
「空中に浮くなんてずるい!」
「なんでこの僕が君らのような下等な生き物と同じ土俵で戦わなきゃいけないのさ。そういうのは従者の務めだろう」
ルイオスがそう言うとローブを被っている人が詩音達の前に来る。そしてルイオスは首につけているチョーカーについている丸い何かを外す。
「さあ、奴らに力の差を見せてやれ!生まれ変わったお前の力を!アルゴォール!!」
するとそこからは褐色の光が満ち溢れる。その光が収まるとそこには禍々しい黒い毛の髪、正気を失った目、屈強な体を持った女性がいた。そして詩音達の目の前にいるローブの人はローブを脱ぎ捨てる。するとこそには白髪の学生服を着た、詩音も良く知る人物がいた。
「う、そ…………」
詩音は目を見開き口をパクパクさせる。そこにいたのは紛れもなく詩音の知り合いだった。
「い、十六夜………?」
「くくく、くはははははは!!どうだ!?行方不明だったお仲間と再会できて。くく、こいつは俺の捕虜になった。だからここにいる、そしてお前らと戦うのさ!」
「そ、そんな!」
「残念だがこれは強制なんだよ、お前らが変えられるものじゃない。それに、そのガキにお前ら名無し風情の言葉なんて届くわけねえしな!」
驚愕する"ノーネーム"のメンバーを見て高笑いをするルイオス。だがただ一人、いや一匹だけは十六夜を見ていなかった。
「グルルルルル」
フェルンだけは十六夜には目もくれず高笑いするルイオスを唸りながら睨んでいた。
「さあやれアルゴールに白髪!そいつらをぶっ殺せぇ!」
「GYAAAAAAAaaaaaaaaaa!」
「………」
アルゴールは空中を蹴り詩音の元へと飛び、十六夜は地面を蹴って構える。反応が遅れた詩音はギフトカードから弓を取り出して後ろに飛ぶが、
「距離が……!」
「………!」
十六夜が詩音の目の前まで迫り拳を突き出す。詩音は目を閉じる。だが衝撃がこない。その代わりに、
「ギャウ!」
という鳴き声が聞こえた。
「フェルン!?」
フェルンは詩音を庇い十六夜の拳を受けたのだ。その衝撃でフェルンは壁まで飛ばされ、壁に激突する。
「グ、グルゥ………」
「フェルン大丈夫!?」
「ガルゥ………」
「戦いに集中しろって……フェルンを放って!?そんなのできないよ!」
「ガルゥ!!」
「いいから行けって言われても……そんなの………!」
「ガルァ!!」
「…………………分かった。すぐ終わらせるから休んでて」
詩音はフェルンを撫でて十六夜とアルゴール、そしてルイオスに向き直る。
「私の友達に、よくも手を出してくれたね。覚悟は、出来てるよね!!」
詩音は弓を構えて走り出した。
☆★☆★☆★☆
「はぁ、はぁ………」
「………………」
「GYAAAAAAaaaaaaaaaa!」
「諦めろよ。その二人にここまでやれたんだ。十分だろ?」
あれから数時間が立つが未だ決着がついていない。詩音は二人を相手にしてきたが全く歯が立たなかった。ただやられる一方だった。
「ふ、ざけないで……まだ…終わっ、たわけじゃ………」
「ほとんど無傷のアルゴールと白髪相手にまだやる気か?もうお前は戦える体じゃないだろ?」
詩音の体は傷だらけであり、左腕の骨が戦っている途中で折れていた。そのため右手に持っている弓は途中から使えずにいた。
「そうだ、いい提案がある。お前が僕のコミュニティに来てくれるならお前らの元からの望みであったあの吸血鬼は返そう。どうだ?」
「………それしたら私たちの負けになっちゃうじゃん」
そう、"契約書類"には『プレイヤー側コミュニティのメンバーが捕虜になった場合、プレイヤー側コミュニティの負け』と書いてあるのだ。この場合、詩音がルイオスの提案をのんでしまうと"ノーネーム"の負けが即決定してしまう。
「は?何を言っている。もう負けたも同然なんだからそんなことどうでもいいだろう?そんなことよりも、僕はお前が気に入った。なんなら三食首輪付きでもいいぞ」
「お断り。誰があんたなんかのコミュニティに……」
「そうかい。なら仕方ない。お前ら、手加減しなくていいぞ。その女を殺せ」
ルイオスの命令を聞き、十六夜とアルゴールは詩音に迫る。主人の命令を遂行するために。
「(まだ……まだ終わりたくない……!!)」
詩音は迫る二人をどうにかしようと弓を構えようとするが左手が動かない。動かそうとするたびに激痛が走る。
「(動いて!お願い動いてよ!!)」
だがピクリとも動かない詩音の左腕。詩音は目を瞑って激痛に堪えながらも動かそうとする。
「(お願い…………動いて……)」
そんなことをしているうちに十六夜たちは詩音の目の前まで迫っていた。
「(ごめん、みんな。私、もう………)」
詩音は悔しさのあまり涙を流す。自分の不甲斐なさに腹を立てていた。
「(ごめんね………)」
『どうして謝る?』
そんな時だった。突如、詩音の頭の中に声が響く。
「(自分が……不甲斐ないから……)」
『お前、生きたいか?』
「(…………え?)」
『もし助けてくれる、お前を救える救世主がいたとするなら、お前は生きたいか?そしてあいつらに勝ちたいか?』
その声は淡々とそう告げる。詩音は思い切り目を瞑り思った。
「(……生きたい。私だって生きたい!でも、このままじゃ………)」
「だから俺がいるんだろうがバーカ」
「へ………?」
詩音は素っ頓狂な声を出し目を開ける。そこには十六夜とアルゴールの姿はなかった。二人は詩音の目の前にいる人物に弾き飛ばされたのか、向かいの壁まで吹き飛んでいた。
「全く、美人に涙は似合わないぜ。笑ったほうが断然いいだろ」
白く長い髪に狼の耳を生やして和服を着た少年がそう告げる。
「な、誰だお前!?」
「はぁ?誰って言われてもなぁ……」
詩音は呆然とその姿を見ていた。というより状況が飲み込めていなかった。
「貴方は……一体……」
「かか、驚くのも無理はねえよな。だって十数年後の再会だもんな」
その言葉に詩音は目を見開き驚く。十数年前、詩音は知り合いが二人しかいなかった。しかしその二人はもう死んでいたはずだ。そしてこの間、真尋との再会を果たした。
その"十数年前"という条件に当てはまるのはもう一人しかいない。
「千斗………!」
「覚えてたか。まあそりゃそうだよな」
千斗と呼ばれた少年は頭をガシガシと掻く。そして満面の笑顔で告げた。
「ああそうだ。フェルン改め
詩音はその言葉を聞き涙を流す。小さな嗚咽が戦場に響く。
「すまねえな。もうちょっと早く出て来られればここまで傷つけずに済んだのに」
泣きじゃくる詩音の頭を撫でる千斗。そしてルイオスたちの方へと向く。
「さぁて、よくもシイをここまで傷つけてくれたなクソ英雄」
「な、なんだと!?」
「ここからは俺が相手だ。少しイライラしてるんでな。手加減はできねえから、やられる覚悟しとけよクソ野郎」
途端、千斗の霊格が凄まじい勢いで上がる。その霊格の高さはまるで千斗の怒りを表しているかのように。
「さあ始めようぜ。お前らに見せてやるよ、"全てを食らう狼"金倉千斗様の実力をな!」
……皆さんに謝りたい。十六夜とアルゴールの実力を見せていないのと鬼畜仕様のギフトゲームになってしまったことを。
実力は次回わかるとして、鬼畜仕様はどうやったら直るのだろう……。この件は本当にすみません。おそらくこれずっと続きます。
さて、次回はフェルン改め千斗と詩音がメインです。
それでは次回もお楽しみに!
次回予告
詩音に危機を救った千斗。ルイオスは完全にキレてしまいアルゴールと十六夜に二人を殺すよう命じる
そして千斗はアルゴールと十六夜を相手に苦戦を強いられる。
その時、傷だらけの詩音が取った行動とは!?
「"全てを食らう狼"と"汚れを祓う癒しの力"」