癒術師も異世界から来るそうですよ?   作:夜明けの月

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少し間があいてしまって申し訳ありません。
学校が忙しすぎる……!
そして今回タイトル詐欺になってないか不安です(主に英雄さん(笑)のところ)
それでは本編をお楽しみください!


英雄さん(笑)との取引

「それで、私はなんで引きずられてるのかな?」

 

「ん?なんとなく」

 

目を覚まし、もみくちゃにされた詩音は着替えさせられ、十六夜に首根っこを掴まれ引きずられていた。

 

「今から元仲間を取り戻すための交渉に行くのよ」

 

「なんで私まで?」

 

「すみません。本当は耀さんでも良かったのですが………」

 

「問題発言しかねないから詩音さんにしたって訳」

 

「うん訳わかんない」

 

詩音はガックリ肩を落とし引きずられていく。十六夜、飛鳥、黒ウサギに連れられて着いた場所は"サウザンドアイズ"の支店だった。そこには心底疲れはてたような顔をしている割烹着の女性店員がいた。

 

「お待ちしておりました………」

 

「どしたのその顔?」

 

「中に入れば理由が分かると思いますよ。まあ、私みたいになるかもしれませんがね、ハハ………」

 

やつれた顔で乾いた笑いを浮かべる女性店員。

 

「それじゃあお邪魔するのですよ」

 

「よし行くか」

 

女性店員の忠告を全く気にする気もない黒ウサギと十六夜。女性店員を哀れみの目で見つめる飛鳥と詩音。

 

「………頑張ったのね」

 

「……強く生きて」

 

飛鳥と詩音はそう言って店の中へと入っていった。

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

詩音達が店に入るとガシャァンという何かが勢いよく割れた音がした。音がした部屋へと向かうとそこにいたのは眉間にしわを寄せている白夜叉とチャラそうな男だった。

 

「うわぉ!本物の月の兎じゃないか!」

 

「待っておったぞ小童共。とりあえずこの馬鹿をどうにかしてくれんか?」

 

「馬鹿とはご挨拶だね白夜叉。同じコミュニティの幹部同士仲良くしようじゃないか」

 

「おんしとは仲良くしとうない」

 

その部屋に悪い空気が流れる。どうやら男と白夜叉野中はそこまでいいものではなさそうだった。

 

「それで白夜叉、早速交渉を始めたいんだが」

 

「おおすまんのう。ここは少し散らかってしまったから別の部屋を使うとするかのう」

 

そう言われて部屋を移動する。そんな中詩音はというと、

 

「(なんだろう、この胸騒ぎは)」

 

違和感を覚えていた。この違和感が後に大変なことをなることを詩音はまだ知らない。

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

「嫌だね」

 

「何ですって!?」

 

交渉の結果はNOだった。元仲間の取引には応じてくれないらしい。

 

「どうしてなんだ?」

 

「あれは結構需要があってね。もう取引先が決まってるんだ。箱庭の外の客でね」

 

「ちょっと待ってください!箱庭の外ではレティシア様は………」

 

詩音はあとから聞いたが、元仲間の名前はレティシアといい、吸血鬼らしい。吸血鬼は箱庭の中であれば天幕が太陽の光から守ってくれるが、外ではそうもいかないらしい。

 

「牢獄の中で鎖で繋がれて遊ばれる。これって結構エロくない?」

 

ニヤァと嫌な笑みを浮かべるルイオス。

 

「キモい………」

 

「最低ね。こんなクズ消えればいいのに」

 

「ハッ、名無し風情が僕に口出しすんなよ。なんならどうだ?取引しないか?」

 

「何?」

 

笑みを浮かべてルイオスはある提案をしてくる。

 

「月の兎と交換するならばそっちの要求を呑んでも構わないぞ」

 

「何ですって!?」

 

「ふざけないで!そんな提案のむわけないじゃん!ねえ、黒ウサギ!」

 

「…………………」

 

怒りを露わにする飛鳥と詩音。二人は黒ウサギの方に振り向くが黒ウサギは俯き腕を震わせていた。

 

「……私があなた元へ行けばレティシア様を開放してくれるのですね?」

 

「ちょっと黒ウサギ!?」

 

「ああ、約束する」

 

「…………すみません、一週間ほど考える猶予をください。仲間との話もありますので」

 

黒ウサギは暗い顔でルイオスの提案を呑むような発言をする。

 

「くくく、まあそれぐらいはいいか。なんたって月の兎は自ら豪華に飛び込むんだもんな。誰かのためなら。安心していいぞ。こっちに来た暁には三食首輪付きで楽しませてやーーー」

 

「"黙りなさい"!!!」

 

ガチンッとルイオスの口が閉じる。飛鳥がギフトを使ったのだ。

 

「五月蝿いわよ外道。誰があなたの提案を呑みますか。あなたもあなたよ黒ウサギ。こんなやつの提案のむなんて何を考えているの?」

 

「で、ですがそうでなければレティシア様は………」

 

「だからってこいつの言うこと聞かなくていいじゃん。こんなやつに従っちゃダメだよ」

 

「それに、私のギフトにかかっているようじゃ、そこまでの力は持っていないのでしょうどうせ」

 

「……るせぇ」

 

「?」

 

その次と瞬間、怒号が鳴り響いた。

 

「五月蝿え名無し共ぉ!!こんな手が通じると思うな馬鹿が!!」

 

ルイオスはギフトカードから剣のようなものを取り出し飛鳥に突き付けようとする。

 

「ガルァ!!」

 

詩音のギフトカードの中にいたフェルンが突如出てきて吠える。その途端、ルイオスの動きが止まる。

 

「な……!?動け……ない………!?」

 

「グルルルルル」

 

「こ、の……犬風情がっ!!」

 

ルイオスはフェルンの拘束を破りフェルンに斬りかかる。それを十六夜が間一髪で止める。

 

「おいおい穏やかじゃねえな」

 

「くっ………!」

 

「やめんか小童共。このまま続けるのであれば門前へと放りだすぞ」

 

白夜叉が痺れを切らしたのか眉間にしわを寄せて怒鳴る。両者は離れルイオスは舌打ちする。

 

「とりあえずだ、いい知らせを待っているぞ月の兎」

 

そう言って立ち去るルイオス。交渉は失敗に終わってしまった。

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

結局、詩音たちはその後本拠へと帰り、ジンに全てを話した。するとジンは黒ウサギに反省するように自室謹慎にしてしまったのだ。そしてすぐに交渉から一週間が過ぎてしまった。

 

「飛鳥や耀が黒ウサギのところに行ったし、真尋と十六夜はどっかいったまま帰ってきてないし………私はどうすりゃいいの〜?」

 

悲痛な声とともに頭を抱える詩音。隣にいる玉藻前は詩音を一瞥して言う。

 

「別に、流れに身を任せていればいいんじゃない?下手に動くと大変になることもあるし」

 

「でも」

 

「とりあえず待ちなさい。十六夜達が権利取りに行ってくれてるんだから」

 

「うぅ………」

 

権利とは、"ペルセウス"にギフトゲームを挑むための権利だ。クラーケン、グライアイを倒すことで手に入れられるらしいので十六夜と真尋が手分けして取りに行ったのだ。

 

「だけど帰ってくるの遅くない?そろそろ帰ってこないとおかしいでしょ」

 

「まあそうなんだけれど…………。あ、誰か帰ってきた」

 

玉藻前の狐耳がピンと伸びて何かに反応する。すると本拠の玄関のドアが荒々しく開けられる。

 

「はぁはぁ………十六夜はいるか!!」

 

真尋が険しい顔でそう叫ぶ。

 

「いない、というか帰ってきてないよ」

 

「そうか………くそッ、あいつどこに行ったんだ!?」

 

「どこに、とはどういうことだ?彼奴は権利を取りに行ったのではないのか?」

 

「そうなんだけど………」

 

「何があったの?」

 

詩音がそう聞くと真尋は深呼吸をして落ち着いた口調で話し始める。

 

「実は僕らは出発して別れる時に四日後にある場所で落ち合うはずだったんだ。だけどそこには誰もいなかった。そこにあったのは十六夜がとってきたであろう権利が入った風呂敷だけだった。その後もちろん探したよ。それから三日かけて探したけれど見つからなかった」

 

「だからこんなに遅くなったんだ」

 

「聞いていたからね。黒ウサギがルイオスの元に行くか否かを決めるのが今日までってこと」

 

真尋はそう言って風呂敷包みを二つ持ち上げる。おそらくそれが"ペルセウス"に挑むための権利だろう。

 

「黒ウサギ達に知らせないと……」

 

「私が知らせてこよう。二人は準備をしていて」

 

そう言って玉藻前が走って黒ウサギの自室へと向かう。詩音は手を顎に当て考える。

 

「一体、十六夜はどこに………?」

 

そして"ペルセウス"の本拠へ行く準備が整っても十六夜が帰ってくることはなかった。

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

「くくく、おいこれはどういうことだ?笑が止まらないぞ」

 

「ふふ、契約に沿ったまでよ」

 

"ペルセウス"の本拠の執務室ではルイオスと銀髪の少女が笑っていた。

 

「それにしてもまさかあいつをここまで強化できた挙句、こんな土産まで持って帰ってくるなんて……契約料足りないんじゃないか?」

 

「いえ、足りてるわ。私たちが欲しい物を貰えればそれで十分よ」

 

「だとしても強化したあいつの情報だけでいいのか?なんなら金や他にも色々と渡すが」

 

「いいえ、私たちがお金なんて持っていたところで有り余るだけだわ」

 

「そうか」

 

ルイオスは部屋の中心に佇む人物を見てニヤリと不気味な笑みを浮かべる。

 

そこにいるのは白髪で学生服を着ている少年だった。目は虚ろであり一言も言葉を発しない。

 

「くくく、さあ来い名無し共!貴様らの全て、僕が貰い受けてやる!あははははははは!!」

 

ルイオスは狂ったように笑う。銀髪の少女はクスリと笑う。

 

「見せてもらおうかしら。貴女の癒術師としての力を。そしてこれを目の前にしてどれだけの力が出せるのかを」

 

そして銀髪の少女はそう言い残し虚空へと消えていった。

 

 




どうでしたか?ルイオスが完全な外道と化しました。
今回もギフトゲームが激ムズになりそう。
………タグ追加するか。
行方不明の十六夜はどこに行ったのか、強化してもらった"あいつ"とは、白髪の少年は誰なのか、次回はオリジナル要素たっぷりになりそうです。
それでは次回もお楽しみに!


次回予告

十六夜不在で始まることになった"ペルセウス"とのギフトゲーム。

だがその難易度はガルドの時同様、クリアが難しい物だった。

そして"ノーネーム"のメンバーの前に倒すことのできない敵が現れる。

「こんなの……こんなの嘘だよ!!」

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