僕は死にそうです。睡眠不足、学校、etc...
ということで本編をお楽しみください。
詩音が気を失って数時間後、すべての後処理が終わったランスは詩音が寝ている部屋に来ていた。
詩音は未だすぅすぅと寝息を立てて眠っている。ランスはその傍で椅子に座って佇んでいた。
ランスが座って待つこと数十分、詩音の目が少しずつ開く。
「んぁ…………」
「目が覚めた?」
「ん………ランス?」
詩音は目をこすって眠そうにそう言う。ランスは苦笑いでうんと答えた。
「ここは?」
「本拠の詩音の部屋。ギフトゲームで気を失ったからここに運んだんだけど」
「あ、そうだ。確か私………」
詩音は胸のあたりを手で触る。ガルドに貫かれた場所だ。
「問題なくそこは治ったよ。やっぱり詩音の癒力は異常だね」
「………生まれ持ったんだから仕方ないじゃん」
「でもそれで助かったんだけどね」
「むぅ………」
詩音は頬を膨らませる。ランスはその姿を見て懐かしそうに笑う。
「こうやって対等に話すのはいつぶりかな。ものすごく久しぶりな気がする」
「?何の話?」
「こっちの話」
詩音は小首を傾げる。そしてあるものが詩音の目にとまる。
「あれ?ランスの髪って金色じゃなかった?なのにどうして茶髪に………?それに目も」
「ああこれ?」
詩音はランスの頭を指差していう。詩音が言った通り、ランスの髪は以前とは打って変わり茶髪になり、目の色は白から黒に変わっている。
「これはまあなんというか……呪い、みたいなものだったんだけど……知らないうちに解けててね」
「何、その呪いって?」
「ある種の特典、かな」
「特典?」
詩音はまた小首を傾げる。そして詩音はうーんと唸る。
「えーと、呪いが特典で何かしらしてた間に特典が解けて呪いにってあれ?呪いが特典で解けてってあれ?」
「僕も分からなくなるからやめて」
詩音の頭はショート寸前だった。ランスは苦笑いを浮かべる。
「まあ前からそう言うのを理解するのが難しいことは知ってるからいいんだけど」
「ま、前からって私そんなに頭悪そうに見えるわけ!?」
「もちろん」
「嘘だッ!!」
「ネタ古いよ」
目をくわっと開いていう詩音にランスはツッコむ。
「じゃあ一体全体ランスはなんなの?」
「ん?あえて言えば転生者かな」
「転生者……?」
「そ。一度死んでもう一度前世の記憶を引き継いで生き返った人のことかな。そして僕もその一人ということ」
ここで詩音の頭に新たな疑問が浮かび上がる。ランスは一体誰なのかと。
「僕は君の近くにいた。だけど一度死んでしまったんだ。だけど、神様は僕にもう一度チャンスを与えてくれた。君を守る役割を果たすために新たな姿を、力を与えてくれたんだ。だから僕はここにいる」
ランスは詩音を見据えていった。
「また会えて嬉しいよ詩音」
ランスは優しく詩音に微笑んでそう言った。詩音はその微笑みに見覚えがあった。いや、見覚えがなくてはおかしかったのだ。
「嘘でしょ………。もしかして………」
「改めて自己紹介。ランスロット改め、
「う、嘘………」
「嘘じゃないよ。現に僕はここに存在している」
「ふぇ……」
詩音の瞳から涙が落ちる。一度死んでしまった友人が今ここにいるのだ。
「ごめんね。あの時辛い思いさせて。もうあんな思いはさせないから」
「ふあああぁぁぁぁぁ!」
ベッドの上で涙を流し続ける詩音を真尋は詩音が泣き止むまで頭を撫で続けた。
☆★☆★☆★☆
「落ち着いた?」
「………うん」
目元を赤くした詩音は弱々しく頷く。
「でもどうして最初から招待バラしてくれなかったの?」
「さっき言ったように僕には特典と同時に呪いを神様から貰ったんだ。特典というのは"円卓の騎士"というギフトと僕の持つ剣、"
「じゃあガルドの時のは」
「特典でもらった剣の能力、"浄化の光"を使ったのさ。あれは確実にやられてたからね」
「や、やっぱり………」
詩音は顎に手を当て考える。
「(じゃあやっぱり関与してるのは
「詩音?」
「あ、いやなんでもない!で、特典ってのは分かったけど、呪いって?」
詩音はある予想を頭の隅に追いやり、真尋に問う。
「呪いってのは僕が伝承にあるような"円卓の騎士"を演じさせられていたんだ」
「演じさせられていた?」
「そう。僕がどうにかしようとしてもできないようにされてたんだ」
「でもそれじゃあ今は?なんで普通に喋れてるの?」
詩音は頭上に?を浮かべて問う。呪いが現在も続いているなら"円卓の騎士"を演じさせられているはずだと思ったのだろう。
「呪いはもう消えたからね」
「え?」
「箱庭に召喚されたと同時に呪いの効力が薄れてきてたんだよ。何かしらの力が僕の呪いに効いたんだと思う」
詩音は小首を傾げる。そして答えにたどり着く。だったらもう少し早く正体を明かすことができたのではないかと。
「じゃあなんでこのタイミング?」
「えーと、なんとなく。あと気付いたのはガルドと会った時」
「だったら早く話してよ!」
「は、話すタイミングが見つからなかったんだよ!」
「むぅー」
「そ、そんなに怒らないでよ」
詩音が頬を膨らませて怒る姿を見てあたふたする真尋。
「でもなんで真尋だけ?
「……それは分からない。今千斗がどこにいるのかも、転生したのかも分かっていないんだ」
「そう………」
詩音はその言葉を聞き少し落ち込む。千斗というのは詩音のもう一人の友人、
「でも真尋が生きてたなんて驚きだよ」
「そうだね。さっき泣いてたもんね」
「そ、それは忘れて!」
「やだ」
「あ"?」
「脅しても忘れないよ〜」
「むぅー」
「それさっきもしてたよ?」
「むぅーーーー」
頬を膨らませ続ける詩音を見て真尋はプッと吹き出す。
「何?」
「ふふ、いやなんでも」
「なんなの〜?」
「何でもないよ。あ、そうだ。傷の方はどうなの?」
真尋は詩音に聞く。詩音は胸元を触る。そして服をめくって傷口があった場所を見る。その時瞬時に真尋が後ろを向いたのは言うまでもない。
「ん〜、綺麗さっぱり、とはいかないけど治ってるよ。傷跡は少しあるけど」
「傷跡か……治らない?」
「さあ。いつか消えるでしょ」
詩音はけろっとそういう。
「(普通の女の子なら傷跡とか気にするんじゃないのかな?詩音が普通じゃないのは気づいているけどさ)」
「なんか失礼なこと思われた気がする」
「なんのこと?(なんで考えていることがわかるの!?)」
「エスパーだからね」
「嘘つけ」
詩音はドヤ顔で胸を張る。和んでいた部屋の空気は真尋の次の言葉で一瞬にして変わった。
「それとさっき言ったと思うんだけど、ガルドに関与してたやつのこと」
「ああ、あれのこと?」
「おそらく"汚れ"の仕業じゃないかな?」
「やっぱり真尋もそう思う?」
「ああ。あの力は異常だった。だけど"汚れ"だけじゃない。もう一つ何かあった」
真尋は真剣な顔でそう断言する。
「もう一つ?」
「"汚れ"だけじゃあんな力は出ない。それに"汚れ"というのは力の増幅じゃないだろう?」
"汚れ"とは詩音のいた世界で多くの自然を汚していたものだ。そしてそれは人や動物にも移る。だが移ったところでそこまで影響はないのだが、
「でも"汚れ"と同調しちゃうと一体化して"汚れ"が意志を持つんだよね。そして異常な力が使えるようになると。個人差あるけど」
「そうだけど、今回は違う。"汚れ"が意志を持ってなかった。それに誰が"汚れ"をあの虎に同調させたのか気になる。あれを扱えるのはごく一部だからね」
「もしかして…………"ロイズファクトリー"………」
「かもしれないね」
"ロイズファクトリー"。詩音が知る数少ない"汚れ"を扱う集団である。だが詩音はそれはあり得ないと断言した。
「でもあの人たちはこの箱庭にはいないはずだよ。元いた世界にいた奴らがここに来れるわけない」
「まあそうだね。ちゃんとしたことがわかるまではこの件は保留にしておこう」
詩音はそれを肯定する。そのすぐ後に詩音の部屋に十六夜たちが入ってきて詩音に女性陣(玉藻前除く)が勢いよく抱きついたのは別の話。
☆★☆★☆★☆
元"フォレス・ガロ"本拠。
そこに佇む二人の男女がいた。
「あーあ、あの虎ダメだったか」
「仕方ないんじゃない。あそこまで理性失って肉弾戦してたら」
「ったく、何のために力与えてやったと思ってんだ虎風情が」
白髪の少年はもうそこにはいないガルドに対しての暴言を吐き続ける。銀髪の少女はそれを見てクスリと笑っている。
「んで、次は誰にするんだよ。あの虎でダメなら次は人間か?」
「いいえ、次は少し違った生き物でいきましょう。どうせいるわ。私達を頼る者が、そしてその者が所有する異常な生き物が、ね」
少女は不気味に笑う。少年はそれを見て少し引き気味に答える。
「お、おうそうだな。それにしてもあれだな。お前のその笑みには未だに慣れないな」
「笑うのが下手とでも言いたいの?」
「そんなこと言ってねえ。とりあえずだ、癒術師共に動きがあるまで待機ってことでいいのか?あいつら動かねえと頼る奴らなんて現れねえだろ」
「ええそうね。待っていれば時期に来るわ。それに、彼らに再会する日も近くてよ」
「へえ、そりゃ楽しみだね。それじゃあ行こうかヒミカ」
「ええシュンヤ」
そして二人の男女は虚空へと姿を消した。
どうだったでしょうか?
隠されていたランスの正体。浮上した新たな疑惑。そしてガルドに手を貸した男女とは。いろいろ詰め込みすぎましたかね?
それでは次回もお楽しみに。
次回予告
目を覚ましたことを確認された詩音は十六夜、飛鳥、黒ウサギに連れられ"サウザンドアイズ"へと来る。
そこにいたのはイケメン?系残念男子のルイオス=ペルセウスだった。
呼び出された要件は元同士の取引!?半ば拉致られた詩音は一体どうするのか?
「英雄さん(笑)との取引」