ということで本編をお楽しみください。
詩音は心臓を貫かれた時、飛鳥達は森の中心部あたりにいた。
「ふぅ……ここまで逃げれば大丈夫でしょう」
「ガルゥ……」
「お疲れ様ですフェルン」
「貴方達………どういうことかしら………?」
「なんで詩音を置いてきたの」
息を切らすランスに飛鳥達は尋ねる。
「それが詩音様の命令だからです」
「命令だからって……それで詩音さんの命を失ってもいいっていうの!?」
「詩音様がそれをお望みとあらば」
「ふざけないで………ふざけないで!!これじゃ貴方はあの似非紳士とやっていることが一緒じゃない!」
飛鳥は叫ぶがランスはきょとんとした顔で言った。
「何が一緒なのですか?」
「これで詩音が死んだら貴方はガルドと同じ人殺しってこと」
「……そうですか。ならそれでも構いません」
「!!」
「僕は……詩音様の命令に従うだけです」
その言葉に苛立ちを隠せない二人。しびれを切らしたのか二人は詩音がいる館へと行こうとする。
「呆れた……そんな人だなんて思わなかった」
「行きましょう耀さん。この人と話してても無駄だわ」
「本当に行かれるのですか?」
「ええ」
「では仕方ありませんね」
するとランスは飛鳥と耀の後頭部に手刀をおとす。
「ガッ…………!?」
「な、なにが…………」
「すみません。これ以上は足手まといになると思いこうさせていただきました。納得いただけないとは思います。弁明ならば後でいくらでもしますので」
ランスがそう言い終わると二人は意識を失い地面に倒れようとするが、玉藻前が地面に着く前に二人を受け止める。そしてランスに問う。
「どうしてこんな手荒い真似を?」
「この人たちを巻き込みたくありませんからね。あそこから逃げた理由も知られたくありませんし」
「そうか……まあ気をつけなよ」
「ええ、それではそこのお二人を頼みます。フェルンもお願いしますね」
「ワウ」
そう告げてランスは元いた館に向かって走り出した。
☆★☆★☆★☆
ランスが館へと向かっている時、館では詩音が苦戦を強いられていた。
「くっ………!」
「GAAAAAAAaaaaaaaaa!!」
俊敏に動くガルドに致命傷を負った詩音が追いつけるわけがなかったのだ。
「(このままじゃやられちゃう……!でも、打開策なんてなにも………)」
そう考えている瞬間にガルドは詩音に急接近し、右前足で詩音の体をなぎ払う。詩音はその衝撃で壁に激突する。
「ぐぁ…………!」
先ほどまで収まっていた胸部からの出血がまた始まる。
詩音は"癒術師"というギフトを所持しており、そのギフトは汚れと認識されたもの浄化する他、他人や自身の傷を癒したりなどもできる。だから傷が少しふさがり出血も収まっていたのだ。
「チッ……やぁ!!」
詩音は水で作った矢をガルドの脳天めがけて放つ。だが、いとも容易くかわされる。
「くっ、そ!!」
続けて三つの矢を放つが、先ほどと同様にかわされる。
「(読まれてる………。でもどうしようもーーー)」
その時だった。先ほどガルドが逃げ出さないように閉めた部屋の扉が勢いよく開かれる。そこには白い鎧を身に纏い、息を切らしている青年がいた。
「ラ、ンス………?」
「詩音様!?そのお怪我はどうしたのですか!?」
「なんで……何、で戻ってきたの!?逃げてって……行ったじゃない!!」
詩音がそう叫んだ途端、ガルドが詩音に迫る。だが詩音はそれに気づいていない。ランスはそれに気づき、腰に差していた片手剣を抜いてガルドの爪を弾く。
「くっ!」
「だから、逃げてって!私は大丈夫だから………お願い、だから……逃げて………………!!」
詩音は誰も失いたくないという自分の願いを力を振り絞り叫ぶ。だが、
「嫌です」
ランスはその願いを打ち砕く。
「なんで………なんで………!!」
「僕は前に君に約束を言った。ここにいることで約束を守ることになるんだ」
「え…………?何を………」
「僕はこう言ったはずだ、ああ言った、
『僕が必ず守ると言ったはずだ!!』」
ランスは力強くそういう。詩音の頭にはその声と同時にもう一つの声が響く。それは酷く幼く、そして震えて今にも泣きそうな声だった。
「う……そ……………」
詩音は信じられないという風な顔をする。現実を認識できない、目の前の現実というものを。
「そん、な……だって…………」
「君はここで見ていろ。手負いの君をこれ以上傷つけさせるわけにはいかない。任せろ、
そう言ってランスはガルドを睨む。ガルドは野生の虎と言われても仕方がないほどに理性が崩れていた。
「(これは……大変なことになりそうだな……。でも、負けられないよね)」
ガルドは地面を蹴りランスに急接近するがそれをランスは剣で止める。
「ぐっ……強い!」
少し押されるが力ずくで弾きかえす。そのままの勢いでガルドを押しのけた方へと走り、ガルドの体を斬る。するとそこから鮮血が溢れ出した。
「(!?指定武具と指定ギフトでしか傷つけられないはずーーーもしかして)」
ランスは自分の手に持つ片手剣を見る。見た目はさして普通の剣とは変わらないのだが。
「(これが……指定武具だったのか!?)」
もっと早くに試しておけばと歯噛みするランス。
「(過ぎたことは仕方がない。だけどどうやって倒そうか。奴の動きは早い。でもついていくしかないか)」
ランスは剣を構え、ガルドに斬りかかる。ガルドもそれに反応してかわそうとするが先ほどの傷が痛むのか、速さは先ほどよりも遅くなっていてかろうじてガルドの右前足を斬ることができた。
ガルドはそれによってバランスを崩し床に転がる。
「(今なら……今なら速攻で終わらせられる!)」
ランスは剣を頭上に振り上げる。すると剣が白く輝き始める。
「"我が剣は主人を守護し、世界を拓く。この光は聖なるものである。今聖なる光の導きのままに、汝を滅せよ"」
ランスがそう紡ぐと光が一層強くなると同時に周囲から光が剣に収束されていく。
「"今ここに我が記した物語を運命を、全てを照らす希望の光で満ちたこの剣でーーー刻め!!"」
剣が纏った光は光の柱となって天井を貫く。詩音はそれをただただ見ておくしかなかった。
「GAAAAAAaaaaaaaaaaa!!」
「終われ、虎風情がーーー"
その光の柱はランスが剣をがるどの方向に振り下ろすと同時にガルドに命中する。それはガルドに当たった途端、その光を一層増してガルドを飲み込む。その光は衰えることなく強くなっていく。
そして光が消えた時、ガルドの姿はそこにはなくあるのは消え去った天井と壁、そして荒れ果てた部屋だった。
「はぁはぁ………終わった、か………」
「嘘……あのガルドを、一撃で………」
腰に剣を戻すランスと現在の現状を飲み込めず呆然としている詩音。
「そんな………ランス、貴方何……者……………………」
詩音の視界は突然揺らぎ意識を落とす。地面に倒れる前にランスは詩音を受け止め小さな声で囁くように言った。
「別に、ただの君の傭兵だよ詩音。後、いつか君にこう言いたかった。また会えて嬉しいよ詩音」
ランスはそう言って詩音を抱きかかえて飛鳥たちの元へと戻っていった。
さーて、ランスもチートになっちゃいましたね。強化ガルドを一撃で仕留めましたからね。
次回は……どうなるんだろこれ。
それでは次回もお楽しみに!
次回予告
ガルドとのギフトゲームが終わった詩音たち。
気を失っていた詩音は目覚まし、ランスと2人きりで話がしたいと申し出る。
そしてそこでランスから聞いた真実とはーーー?
「だから君は私の側にいたんだね」