癒術師も異世界から来るそうですよ?   作:夜明けの月

14 / 25
今回は………なんでしょうね。シリアスとコメディ?の比率が3:7いや2:8ぐらいになってます。

それでは本編をお楽しみください。


過去の記憶

"ノーネーム"の本拠に着いた詩音達は黒兎に連れられ枯れ果てた水路にいた。

 

「あ、おかえり黒ウサギ!てかこれは何が起きたの!?」

 

「ジン坊ちゃん……これは詩音さんがやったのですよ」

 

「し、詩音さんが!?」

 

「私、癒術師なので」

 

ふふんと胸を張る詩音。他の子供達はというと、

 

「わーい!!」

 

「突然草が生えた!!」

 

「面白い〜!」

 

驚かずキャーキャーと走り回ったりはしゃいだりしていた。

 

「ほらみんな、新しい人が来たよ!」

 

「え、来たの!?どんな人!?」

 

「カッコいい人?可愛い人?それとも優しい人?」

 

「全てを兼ね備えている人たちなのですよ!」

 

「「「過大評価しすぎ」」」

 

「それは褒め言葉と受け取ればいいの?それともある種の皮肉なのかな?」

 

「褒め言葉です!それでは自己紹介しますのでみんなは並んでくださーい!」

 

黒ウサギの言葉で詩音達の目の前に並ぶ子供達。その目は期待しているのかキラキラしている。

 

「右から逆廻十六夜さん、久遠飛鳥さん、春日部耀さん、水無月詩音さんです」

 

「(うわ、これ全部ガキか………)」

 

「(私やっていけるかしら………)」

 

「(うぅ、子ども多い………)」

 

「よろしくね〜」

 

十六夜、飛鳥、耀の顔は引き攣り、詩音は笑ってそう返した。その顔はいつもより緩んでいる。

 

「それでみんなはこの方達のために「みんな可愛い〜♪」ちょっと詩音さん!?」

 

黒ウサギが話し始めようとした瞬間、詩音が数名の子供達に抱きついた。

 

「動物の耳生えてる子も耳フサフサで可愛いし、こんな可愛い子供達がいるなんて〜。は〜、ここは天国だね〜」

 

満足げに子供達を撫で回す詩音。子供達もそれを嫌がらず、気持よさそうに目を細めたりキャーキャー言って喜んでいる。

 

「な、なんなのですか………?」

 

「多分子供好きなんでしょ、詩音は」

 

そこにはいつの間にか出てきた玉藻前がそういった。今の詩音は誰が見ても極度の子供好きとしか思えない。

 

「実際のところそうなんですよ」

 

「ランスさん」

 

「元の世界でも行った地域の子供達は誰でも愛でてましたから。そのおかげで子供達からはずっと評判が良かったんですよ」

 

ランスは遠い目をしながらそういう。その姿からは何かしらの苦労が見られる。

 

「詩音さん、それぐらいにしてくれませんか?今から少しやることがありますので」

 

「ん?あ、そうなの?分かったよ」

 

「えー」

 

「やだ〜!」

 

「駄々をこねないの。同じコミュニティに所属してるんだからいつでも会えるでしょ?また遊んであげるから」

 

そういって子供達から離れる詩音。黒ウサギはギフトカードから水樹の苗を取り出す。

 

「それではこの水樹の苗を設置したいと思います。十六夜さんは水門を開けていただけますか?」

 

「了解だ」

 

十六夜は水路へと降りて水門を開ける。その間に黒ウサギは水樹の苗を縛っていた紐を解く。すると勢いよく水が溢れ出した。

 

「うわぉ♪この水樹の苗は元気な子ですね♪」

 

「おいちょっと待てやゴラァ!!濡れるなんてお断りだぞ!!」

 

そういって跳躍する十六夜。だがその近くには、

 

「へ……………?」

 

詩音がいた。詩音の足場は崩れ水路へと落ちる。二度目の着水だ。

 

「あ、やべ」

 

「し、詩音様!?」

 

「あらら、詩音ドンマイ」

 

ランスはおどおどして玉藻前に関しては助けることなどを諸々放棄した。詩音が救出されたのはこの五分後だった。

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

「あぅ………また私だけずぶ濡れ………」

 

救出された際、黒ウサギが「湯殿の準備をしてまいりますので少々お待ちください!」と言って飛んで行ったの詩音達は準備が終わるのを待っている。詩音は涙目で服と髪は濡れている。

 

「それで詩音」

 

「何タマモ〜?」

 

「なぜ抱きつくの?服が湿るからやめてほしいんだけど」

 

「慰めてー!」

 

「ちょ、泣きながら抱きついてこないでよ!」

 

そんなことをしていると黒ウサギが息を切らして言ってきた。

 

「ゆ、湯殿の準備ができました……女性の方からどうぞ………」

 

「やっとお風呂に入れる………」

 

「それでは僕らは適当にぶらつきますか」

 

「そうだな」

 

「それでは行きましょうか」

 

「うん」

 

そういって男性陣と女性陣は別れる。

 

「それじゃあ私もそこら辺をぶらつこうかなっておい。詩音離せ」

 

「タマモも一緒に入るの」

 

「嫌だ。なんで私がーーー」

 

「………ダメ?」

 

詩音は玉藻前にそう頼む。玉藻前はたじろぐ。何故そうなったのか。それは詩音による上目遣い+涙目+ほんのり赤く染まった頬による三連コンボを食らったためである。

 

「う、うぐ…………」

 

「ダメなら仕方ないよね………」

 

シュンとして落ち込む詩音。

 

「わ、分かったよ!入ればいいんでしょ入れば!」

 

そうして玉藻前が折れた。可愛らしい女の子があからさまに誰でも落ち込んでいるというのが分かるというのにそれを無視しようものなら良心が痛む程度では済まないだろう。

 

「本当!?」

 

先ほどの暗かった雰囲気は一気に変わる。落ち込んでいたのは玉藻前の言葉によってパァっと笑顔を咲かせる。

 

「う、うん………」

 

「それじゃあ行こ!」

 

「わわ、ちょっと引っ張んないの!」

 

玉藻前は詩音に引っ張られていった。それを見て飛鳥が一言。

 

「あの二人、姉妹みたいね」

 

「詩音が妹の方だと思うけどね」

 

「同感なのです」

 

少し遅れて3人も風呂へと向かった。

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

「わぁ、広い!」

 

「こら、あんまりはしゃぐと転ぶよ」

 

詩音は現在風呂を見て感想を述べる。

 

「だってこんなお風呂はいったことがってわわ!?」

 

「ちょっと詩音!?」

 

「とと、問題ない!」

 

「まったく」

 

玉藻前は痛そうに頭を押さえる。玉藻前は苦労キャラとして覚醒した!

 

「覚醒なんぞしておらんわ!」

 

どこかに突っ込みをしている間に詩音はお湯へと飛び込む。バシャァンという音とともに周りに水しぶきが飛ぶ。

 

「行儀悪いことしない」

 

「一度してみたかったんだもん!」

 

「はいはい」

 

玉藻前が注意すると詩音は頬を膨らませて拗ねようとするが玉藻前はそれをスルーする。その光景を微笑ましく見守る三人。

 

「ちょっと、なんでさっきからあなた達は喋らないの?」

 

「いや、邪魔しちゃ悪いかと……」

 

「は?」

 

「なんでもないのですよ!それではみなさん入りましょう!」

 

そういって全員が湯船に浸かる。三毛猫は桶の中の湯に浸かり、フェルンは湯船に浸かって犬かきをしている。

 

「それではガールズトークをしましょう!」

 

「どうしたの唐突に」

 

「私一度こういうのがしてみたかったのですよ!」

 

ウキャーとはしゃぐ黒ウサギ。やはりそれほど苦労しているのだろう。まったく誰のせいだろうか。

 

「あなたのせいなのですよ!」

 

はいはい話に戻りましょうね。そんな時、耀が言った。

 

「詩音、今日箱庭に入った後言ったよね。私詩音のことが知りたいって」

 

「確かにそうね。ならガールズトークというものをするのだったらこういうのはどう?詩音さんは元の世界に好きな人がいたのかとか」

 

「おお、それいいのですよ!!」

 

「ええ!?」

 

飛鳥の提案に頬を赤くして狼狽える詩音。だが詩音以外はその案に賛成する。

 

「い、いないよそんなの………」

 

「目をそらしながら言っても説得力がないぞ。いたんじゃないか?」

 

「ワフゥ?」

 

「だからいないって!!なんでみんなそんなに疑「なら無理やりにでも効き出すしかないわね」へ?」

 

そう言って飛鳥は詩音に飛びかかった。

 

「ちょ、え!?きゃ!!や、やめて!!」

 

「ふふ、素直に言えばやめてあげましょう」

 

「なら私も」

 

「私もやるのですよ」

 

「さっきのやり返しとしてやるか」

 

「うにゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

風呂場に詩音の断末魔?が響く。結果をいうと詩音が折れた。

 

「はぁはぁはぁ…………」

 

「まったく手を煩わせてくれるわね」

 

「さあ、早く言って。じゃないと………」

 

そう言って手をわきわきする耀。詩音はそれを見て観念したのか下を向く。

 

「い、いた………けど忘れた」

 

「忘れた?どういうこと?」

 

「結構前に、おそらくこの力が目覚めてない子供の頃に仲良くしてくれてたお兄さんがいたんだ。いつも一人だった私を気にかけてくれて、暇があるとどこかに連れて行ってくれてた。だけど」

 

そこで一旦区切り、また喋り始める。

 

「ある時私が連れ去られたんだ。その時助けに来てくれたんだけど、助けてもらった後は会ってなくて………」

 

「それで忘れたの?」

 

「うん………でも言われて嬉しかったこととかは覚えてるんだ。『お前は一人じゃない。もし一人になった時は必ず僕が助けてやる』とか『お前は可愛いんだから自信持て』とか」

 

そういう詩音の顔は完全に緩んでいた。他の人が見ればその人に夢中ということが嫌でも分かる。

 

「好きなのねその人」

 

「多分だけどねを。次会ってみないとわからないよ」

 

「じゃあその他のことを聞かせて。詩音のこと」

 

「じゃあ次は交友関係とかについて聞きたいのですよ!」

 

「交友関係、か………」

 

詩音の顔は先ほどとは違い気が進まないというふうだった。

 

「小さい頃に遊んでくれてた男の子が二人いたんだ。さっき言った人と会うより前のことだよ。その二人の名前は蒼井真尋(あおいまひろ)金倉千斗(かなくらせんと)っていう人なんだけど、いつも三人で行動するぐらいに仲は良かった」

 

「へえ、羨ましいわね」

 

「でも、殺された。私を悪い大人から守るために、自分を身代わりにして」

 

その言葉を聞き瞬間空気が凍る。

 

「う、嘘………」

 

「私も信じたくなかったよ。でもだんだん冷たくなる二人の肌と目を瞑って何も言わないのを見たら流石に諦めがついたよ。それからあの人に会うまでは心を閉ざしてた気がする」

 

詩音の話を聞き場の空気が暗くなる。

 

「ごめんねみんな。こんな空気になって」

 

「いえ、元はと言えば私が聞いたことだから気にしないで」

 

「た、楽しい話をしましょう!暗い空気なんてダメです!」

 

「そうだね」

 

「話題を変えよう。例えば………なんだろう?」

 

「いや知らないよ」

 

そんなこんなでガールズトークは盛り上がったらしい。途中玉藻前が弄られたがそれはまた別の話。

 

 




玉藻前が苦労キャラかつ弄られキャラの仲間入りを果たしました。

いつか番外編であの二人の姉妹のようなやり取りを出したい………。

それでは次回もお楽しみに!


次回予告

ようやく始まる"フォレスガロ"とのギフトゲーム。

だがフィールドの様子がおかしくガルドの様子もおかしい。

そんな中詩音が取った行動とは!?

「ちょっと厳しいかな」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。