ライブラの一員がダンジョンに潜るのは間違っているだろうか   作:空の丼

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一応レオは原作10巻後のレオです。ホワイト、ブラックとは出会ってないです。


ウサギとカメ

 連れてこられた場所は古ぼけた廃教会だった。

 

 これはどういうことだろう。あれかな? ライブラみたいにいろんな抜け道使って入り口がばれないようにしてんのかな? それともファンタジー世界特有の外観は廃墟中は立派な屋敷的な魔法でもかけてあるのかな?

 

 ヘスティア様の方を見るとサッと目をそらされる。

 

「キ、キミには住めば都という諺を贈らせもらうよ……」

 

 どうやらそういうわけでもなく普通の廃教会っぽい。まあ食事と寝床を提供してもらえるだけ文句は言えないけどさ。これは食事も覚悟を決めた方がいいかもしれない。

 

 扉をくぐり中に入るとやっぱり半壊模様。屋根にも結構大きな穴が開いてるんだけどこんなところで寝てるのかな? と思っているとヘスティア様は祭壇の先にある小部屋へ進み一番奥にある本棚をずらす。

 

 すると地下へとのびる階段が!

 

「おお、何か秘密基地みたいですね」

 

「だろう! だろう! レオ君はいい感性をしているよ」

 

 腕を組みながらブンブンと大きく頭を縦に振るヘスティア様。なんとも調子のいい神様だ。

 

「とりあえず、くつろぎたまえよ」

 

「ありがとうございます」

 

 階段を下りると思ったより広い生活感あふれる部屋があった。

 

「なんか普通にいい部屋ですね。外の見かけがあんなんだから、もっとボロボロの場所かと思ってました」

 

「フフン、言っただろう? 住めば都だって! さて、と……ベルく、僕の眷属が返って来る前に聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

 

「はい」

 

「じゃあ聞くよ。キミは一体何を隠しているんだい?」

 

「っ!」

 

「これでも僕は神だから、子供たちが何かを隠していたり嘘をついたりすれば分かるさ。誤解がないように言っておくけど別に僕はキミを責めたりしてるわけじゃない。話したくないならそれでもいい。ただ、レオ君が重たいものを抱えてるように見えたから、さ」

 

 そこにはさっきまでのおちゃらけた態度をとっていた女の子の姿はなく、慈愛の眼差しで僕を包み込む、まさしく神様がいた。

 

「……多分、突拍子もないことを話しますけど信じてくれますか?」

 

「言っただろう? 嘘をつけば分かるって。君が正直に話してくれるのなら信じるよ」

 

 僕はポツポツとヘルサレムズ・ロットの事とここに至るまでの経緯を説明した。その間ヘスティア様は真剣にこちらに耳を傾けてくれた。

 

「異世界か。うん、信じるよ。レオ君は嘘なんかついちゃいない。ただごめんね。僕もそんな話は聞いたことがない。有益そうな情報は持ってないかな」

 

「いえ、信じてくれるだけありがたいっす」

 

「ふむ、しかしこのことはベル君にも隠しておいて方がいいかもね、って、ななななんだいそのサルは!?さっきまでいたかい!?魔物!?」

 

 こちらを見てぎょっとした顔を浮かべるヘスティア様。

 

 見ると僕の肩のうえにソニックが乗っていた。

 

「そっか。もう人目が付く場所じゃないもんな。あー紹介します。僕の友達のソニックです。さっき話したヘルサレムズ・ロットで一緒に生活してる音速猿です」

 

 僕が紹介すると「よろしく」というようにヘスティア様の頭に乗りペシペシとヘスティア様を叩く。

 

「わっ、くすぐったいぞソニック君!」

 

「あはは、音速猿って体が弱いんであんまり人には懐かないんですけどやっぱ神様は違うんですかね?」

 

 ソニックも動物の直感でヘスティア様のことを大丈夫だと判断したのかな?

 

 

 そうこうしていると部屋の入り口が開く音がした。

 

「神様、帰ってきましたー! ただいまー!」

 

 そう言って入ってきたのはまだ15歳位の白髪の少年だった。彼が入ってくるとヘスティア様は顔を輝かせて彼に歩み寄る。

 

「やぁやぁおかえり―! 今日はいつもより早かったね?」

 

「ちょっとダンジョンで死にかけちゃって……」

 

「おいおい、大丈夫かい?君に死なれたら僕はかなりショックだよ。柄にもなく悲しんでしまうかもしれない」

 

 笑いながら死にかけちゃって……、とか言える世界なのかここは、って僕が言えることじゃないか。

 

「大丈夫です。神様を路頭に迷わせることはしませんから」

 

「あっ、言ったなー? なら大船に乗ったつもりでいるから、覚悟しておいてくれよ?」

 

「なんか変な言い方ですね」

 

 二人して笑みを漏らした後、白髪の男の子は僕に気付きそのルベライトの瞳を期待に輝かせる。

 

「えっと、あなたは? もしかして新しい入団者ですか!?」

 

「え?いや、そういうわけじゃなくて……」

 

「こらこらベル君、落ち着くんだ。実は彼はこのオラリオに来たばかりでね、しかもお金もなく路頭に迷いかけてたんだ。だから僕らの部屋を宿として提供してあげてるってわけさ」

 

「あ、そういうことなんですか。すみません早とちりしちゃって」

 

 謝りながら肩を落とす少年。なんか小動物を苛めてるような気分になっちゃうな。

 

「いや、いいよ。ていうかそもそもまだこっちで何をするのかも決めてないんだよねぇ」

 

「そうなんですか?」

 

「うん。なんせ身一つで強引にこっちに連れてこられただけだし……」

 

「た、大変だったんですね」

 

「でもレオ君、君はこの町で何をしていくのかは早く決めた方がいい。僕たちだってファミリアの人間でもない子をずっとここに置いとくわけにもいかないからね。きみが僕らのファミリアに入るというのなら別だけど」

 

 ヘスティア様は真剣な瞳で僕を見る。

 

 確かに彼らだって自分たちの生活がある。ずっとここに置いてもらうわけにもいかない。

 

 だったら冒険者になってダンジョンに潜るのもいいかもしれない。ダンジョンは魔物、いうなれば異形が生まれる場所。そこに行けばヘルサレムズ・ロットにつながる道もあるかもしれない。

 

「冒険者、か……」

 

「それも一つの手だと思うよ? レオ君にも色々な事情があると思うけどこの町で生きていく以上、冒険者になるのが一番手っ取り早い。特に君は現状何も持っていないしね」

 

「僕でも……闘えますか?」

 

「勿論だとも。そのための(ぼく)たちだ。そのための【神の恩恵(ファルナ)】だ。君たち人間には無限の可能性が隠されている。【神の恩恵(ファルナ)】はそれを汲み取り昇華してくれる。誰だって強くなれる可能性があるんだ」

 

 僕は今までの戦いを思い出す。僕は神々の義眼のおかげで【血界の眷属(ブラッドブリード)】に対して名前を暴くという大切な役割をもって戦場に立っている。でも僕自身には闘う力はないし、それどころか自分の身すら守れない。

 

 それが、たとえこの世界でだけだとしても闘うことが出来るというのなら……

 

「なります……冒険者に。僕をこのファミリアに入れてください」

 

「……分かった。君をヘスティアファミリアに歓迎しよう。よろしくね、レオ君」

 

「~~~~~やったー! やりましたね神様! 新しい団員ですよ! えっと、僕の名前はベル・クラネルといいます。ベルって呼んでください!」

 

 よっぽど嬉しかったのか、いままで話を聞いていたベルは満面の笑顔を浮かべ興奮気味に自己紹介をしてくれた。

 

「俺はレオナルド・ウォッチ。レオでいいよ。んでこっちがソニック。よろしくねベル君」

 

「はい! あれ、ソニック? ……うわぁ!? 魔物!?」

 

「音速猿っていう生き物なんだ。ちょっと悪戯好きだけど害はないから大丈夫だよ。でもやっぱそういう反応になっちゃうよね」

 

「全くだよ。いいかいレオ君。ソニック君を絶対僕たち以外に見せちゃだめだよ。特に地上では。神という奴らは面白そうなものが大好きだからね。強引にでも君を自分のファミリアに入れてこようとするかもしれない」

 

「気を付けます」

 

 見るとソニックはベルの周りをチョロチョロして頬を突いたり髪を引っ張ったりして遊んでいる。ハハハ、もう仲良くなったのか。

 

「ちょ、やめ、やめてってばソニック。ちょっとレオさん止めてください~」

 

 まあ、面白いから止めないわけで。ヘスティア様にもベル君にも懐くソニックを見ながら、この人たちは本当にいい人達なんだなとうれしくなる。

 

「ソニック、そろそろやめるんだ」

 

「ンニ!」

 

 僕の言葉に素直に従って肩に戻るソニック。それと同時にヘスティア様がパンッと手を叩く。

 

「よし、それじゃあ夕飯にしようか。今日は露店の売り上げに貢献したということで、大量のじゃが丸くんを頂戴したんだ!夕飯はレオ君の入団祝いも込めてパーティだ!」

 

「神様すごい!」

 

 このあとじゃが丸くんパーティを繰り広げる僕たち三人と一匹。ヘスティアもベル君も本当に優しい人たちで楽しい夕食を僕は過ごせた。

 

 うん、まあ、まさか本当にじゃが丸くんしかなかったのには驚いたけど……。

 

 

 




ベル君とレオ君の自己紹介回でした。全然話進んでないです、はい。
つ、次は進みます!

ウサギとカメなんていう割にダンまちの兎さんは絶対ゴール手前で居眠りなんてしないですよね。

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