ライブラの一員がダンジョンに潜るのは間違っているだろうか 作:空の丼
ちょえっす。レオっす。
バイトと修業を始めて今日で二日目。
そんなに売れてるわけじゃないけど師匠には褒められて結構ご満悦っす。
これも全てはミアハ様というタダでポーションを配りまくってる比較対象がいるおかげだねヒック。
今どこにいるかって?
僕は今とある酒場に来ています。バイトが終わって帰ろうとしているところ、半ベソかいてた主神様にミアハ様共々拉致られたのです。グビグビ。
え? お前未成年じゃないのかって? んなもん知るかボケー!
だってここ異世界だし。普通に未成年っぽい人だってお酒飲んでるし俺だって飲んじゃうもんねっ。
「それでねっ、ベル君のやつ、あろうことかま~たボクの知らない女を引き連れて夜の街へ消えていったんだよ! 浮気だよ、あれは絶対に浮気だ!?」
あーヘスティア様、今日も荒れてますねー。
「浮気、とは穏やかではないな。ベルがそのようなことをする光景を、私は想像できん」
ミアハ様は否定的。
「ボクはこの目で見たんだ! ベル君が女の子と仲良く手を繋いでいるところを! これはもう真っ黒も真っ黒じゃないか!?」
「いや、手を繋いでたくらい可愛いもんじゃないんスか? 家に帰ったら裸の女の人がベッドに寝てたくらいの証拠掴まないと」
「何を言ってるのだレオ!?」
え? 僕何かおかしなこと言いましたか、ミアハ様?
「は、はは裸の女がボクらの愛の巣にィ!? そんなところに出くわしてしまったらボクは『
「ちょ、声が大きいぞヘスティア」
「ていうかミアハ様こそどうなんスか? 聞いてますよ? 師匠というものがありながら他の女の子を誑し込んでるって」
一昨日店番してた時に師匠が愚痴ってた。
「なんだいミアハ。君もそうなのかい? つくづく男ってやつはだらしない奴らだね」
「何の話だ!? 私はそんなことしてないしナァーザともただの家族だぞ!?」
「ダウト」
「ダウト」
この期に及んで誤魔化すとは……。いっそザップさんみたいにオープンになったみたらイヤナイナ。
「でもですよミアハ様? 家族と思って大事にしてるにしてもですよ? 大切に思いすぎて距離を詰めないのもおかしいと思うんですよー?」
「……と言うと?」
「僕も最近離れた場所にいた妹が結婚しましてね。そりゃあトビーさんもいい人だし祝福しましたけど、やっぱりこう、おめでとうって言うだけなのは違うって思ったんですよ」
「何故だ? 喜ばしいことじゃないか」
「これが娘を嫁に出したくないお父さんの気持ちっていうのかなぁ? いくら良い男性を連れて来ても、渡さんぞーっていう気持ちで話を聞かないと逆に失礼なんじゃないかって思いましたよ、うん。だからミアハ様も師匠と距離詰めて独占欲を出してかないと駄目なんです!」
「そ、そういうものなのか……?」
「ボクもベル君に『キミは誰にも渡さないよ』とか言われたいよー!」
僕の話を聞くとミアハ様は手を顎に当ててむーっと何か考え始め、ヘスティア様は自分の腕を体に回してクネクネしていらっしゃる。
「でもベル君はすぐに目移りするからなー。誰にでも無自覚に甘い言葉を囁きそうだ……」
「ヘスティア様、男がだらしないのは仕方ないのかもしれませんよ? どうです? この際一夫多妻制を組み込んでみたら。ザップさん的には色んな女性の家渡り歩くよりか安全らしいですよ」
「誰だいそのザップって奴はっ? ここに呼んでくるんだ! これでもボクは三大処女神の一人だぞっ、じっくり話を聞いてやろうじゃないかぁ!!」
「あー今頃ザップさんどうしてんだろうなー? あれからもう一週間以上経ってるしそろそろまた背中を刺された頃合いかなぁ」
「し、しかしそのザップという子はなにやら穏やかではないではないか。そんな生活をしていてその子は大丈夫なのか……?」
「最近の医療は発達してますし、そう簡単にぽっくりはいかないんじゃないんですか?」
「確かに傷はポーションで癒えるが……」
「そういえばレオ君の方はどうなんだい? 今はミアハの所で働いているんだろう? ダンジョンよりも格段に出会いは多いだろう。良い女の子と知り合ったりしていないのかい?」
「えー? 僕ですか?」
最近出会った女の子といったら、アマゾネス姉妹とエルフ2人組と剣姫さん、『豊饒の女主人』の店員さん達は出会い方最悪な部類だし、あとはエイナさんとナァーザさんかな。
ロキ・ファミリア多くね?
「うーん……皆かわいいんだけど、なんかなー。別の世界線じゃあ好きな子出来たような気がするんですけど……」
P.N.シロさん的な人を。
「ちょっとよく分からないけどかわいい子はいたんだろ!? だったらアタックだ! 他の子に盗られても知らないよっ」
「そんなことよりも僕はヘルサレムズ・ロットに帰りたいれす」
「ふむ、そのヘルサレムズ・ロットというのが君の故郷の名前かい? 聞いたことがないのだが……?」
「えっ知らないんですか!? 今世界の中心はあそこですよ! 今後千年の覇権があそこに懸かってるんすよ!?」
「いやいや本当にどこなのだ!? 世界の中心はオラリオだろう!?」
「ミアハ様はとんだ田舎者ですね。まあ知らない方が幸せなこともありますし、そのまま何も知らずに平和に生きていきましょう」
「レオ、酔いすぎじゃないか……? ヘスティアも何か言ってやってくれ」
「レオ君は今『青の薬舗』で働いているんだから、材料くすねて惚れ薬でも作っちゃいなよっ。そうすりゃ可愛い女の子もイチコロさ!」
「そなたも酔いすぎだぞ!? というか今危険なことを言わなかったかヘスティアよ!?」
「うるさいよミアハ。キミには恋する乙女の気持ちなんて一生分からないさっ」
うーん、ミアハ様は師匠ともっと一緒にいてあげるべきなんだよなぁ。
あれ? 今日ミアハ様が師匠と一緒に過ごせない原因僕らじゃね?
「それよりもベルですよ、ベル。彼は純粋で真っ直ぐなのはいいですけど色んな女の子に好意持たれ過ぎですよ。いつか刺されるんじゃないかって俺不安なんですから」
「そのとーりだレオ君、よく言った! そうなんだよ、ベル君はウサギみたいに可愛いからね、女の子がほっとくわけがない! くそぅ、ベル君はボクのものなんだぞぅ!」
「これこれ。その発言はいくら主神といえど横暴というものだ。ベルは誰のものでもない」
「わかってるさ、そのくらい! ただ言ってみただけさ! いや言ってみたかっただけさ!!」
「本命がアイズさん、対抗ヘスティア様ですかね。大穴は……おっとこれは言っちゃいけないんでした」
「誰だいその大穴はっ? ボクに隠し事なんて許さないぞ!? っていうかなんでボクが対抗なのさっ、なんで本命がヴァレン何某なのさっ!?」
「だってベル君確実にアイズさんに惚れて―――」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!! ベル君ベル君ベル君ベルくーんっ! お願いだからボクの前からいなくならないでおくれ―――!!」
「うっさ」
「こ、これ!? 声がでかいぞヘスティア!」
「君が笑っていてくれればボクは下水道に住み着いたっていいぜ!? それくらい君のことが好きなんだ! ぶっちゃけ同じベッドで寝たいんだギュウギュウしたいんだ君の胸にぐりぐり顔を押し付けたいんだー!! 君が微笑んでくれればボクはパン三個はいけるんだー!」
うわぁ……。
「愛してるよベルくーんっっ!! ……えへへぇ、一度でいいからベル君への想いをぶちまけてみたかったんだー。ふふぅ、すっきりー」
「本人がいなくてよかったな。店主、勘定だ」
「ヘスティア様ズルいですよー。僕も叫びます!」
「こらこら!? やめなさいレオ!!」
「ぶーぶー」
なんでヘスティア様はよくておれはだめなんだー!?
「ミアハー。支払いはどうしたんだーい?」
「うむ。私の全持ちだ」
「おいおい水臭いなー。こういう時は割り勘にしようぜー」
「そうですよー水臭いですよー」
「うむ。そなたら合わせても30ヴァリスしか所持していなかったのだ」
ミアハ様の手押し車に積み込まれ僕らは運ばれていく。
あー、星がすごい勢いでまわってるー……ぐぅ
次の日ヘスティア様と仲良く二日酔いになった僕は特訓とバイトを休むことになった。ヘスティア様はベルがデートに誘ったことで一気に元気になってたけど僕には無理です。
ううぅ、頭痛い。ガンガンする……。昨夜何があったのか全然覚えてないけど、とりあえず考えるのは後にしよう。
ガクッ。
作者は下戸なので、エア飲酒して気分だけは酔っ払い気分で書きました。