「構成を変更して、新曲の追加?」
観艦式に向けて練習を重ねていたある日、構成を担当していた人間が言い出した。
「ええ、せっかく艦娘が全員揃う観艦式だもの、今まである曲だけじゃ勿体無いじゃない!」
「それは分かりますが、それでは艦娘のみんなが大変ではないですか?」
大神が艦娘のことを気遣って構成の人間を思いとどまらせようとする。
しかし、構成のターゲットは艦娘だけではなかった。
「何を言っているの、大神大佐。新曲追加のメインは、あなたよ!! はい、これがその歌詞よ」
「なんですって!?」
慌てて大神は、構成の人間から新たに渡された歌詞カードを見る。
「米田閣下……本気ですか?」
大神の予想通り、それは以前、帝國華撃団のテーマでもあった曲。
ところどころ、今の提督華撃団に合わせて歌詞が変更されているが見間違えようが無い。
『大元帥閣下のご希望だ。曲は勿論分かってるよな、大神?』
と枠外にメモまで付いている、米田たちは本気だ。
思わず天を仰ぐ大神。
「ちょっと見せて、隊長」
「時雨くん?」
横から時雨が大神の手にある歌詞カードを奪う。
大神が取り返そうとするが、その前に時雨は歌詞カードを読み終える。
はい、と時雨は歌詞カードを大神の手に戻す。
「うん、勇ましくてかっこいい歌詞だね。ねぇ隊長、歌ってみてよ」
おまけつきで。
「Wow! 隊長の歌デースか? 聞きたいデース!」
「楽しみにゃしぃ!」
「大神さん、大神さんの歌、私も聞きたいです!!」
自分達の練習をしていた艦娘たちが大神の歌と聞いて集まりだしてきた。
「い、いや、練習していないし……」
「でもメモによると曲は分かってるんだよね、隊長?」
「練習用の音源も用意してきたわ! 大元帥閣下が望んだという歌を聞かせてちょうだい!」
言い逃れようとする大神だったが、時雨と構成の人間が大神の退路を塞ぐ。
そして大神の前には目を輝かせて大神の歌を心待ちにする艦娘たち。
こうなっては言い逃れを続けるより、一曲歌った方が早いだろう。
「分かった分かった、歌うよ。でも、未だ練習してないから失敗しても笑わないでくれよ」
そう言って大神は音源を再生させると歌い始めた。
それは愛と共に正義を示す戦士の歌。
勇ましい歌詞に大神の声がよく合う。
艦娘たちは大神の唄に耳を傾ける。
そして間奏に入るのだが、歌っていくうちにノッてきた大神は、歌詞カードに無いパートの独唱を始めた。
「俺たちは世界の、人々の平和のため戦う!!
たとえ それがどんな絶望にまみれた戦いであっても
俺たちは一歩も引かない! そして絶対に勝つ!!
それが提督華撃団なんだ!!」
「あれ、そんな歌詞あったっけ? なかったよね?」
「あ……」
時雨の呟きで我に帰った大神。
歌が途切れる。
「いや、つい歌ってしまったというか……本番では歌わないよ」
「「「そんなの勿体無いよ!!」」」
勢いで歌ってしまった大神は流石に恥ずかしそうだが、だからこそ大神の本音が聞けた艦娘は嬉しそうな顔をしている。
できれば何度でも聞きたい、と言外に言っている。
「Congratulations! 隊長の歌、とてもよかったデース! 隊長の想いも聞けて大満足デース!」
「金剛さん、人気のあるあなたには新曲二曲に参加してもらうから」
「了解デース! 隊長~、今度は私の歌、聞いて欲しいデース!!」
ついでとばかりに、構成の人間は新曲を歌ってもらう艦娘に声をかけ始める。
「響さん、最近表情が豊かになって人気が更に上がったあなたにも新曲があるわ」
「ハラショー」
「あと新曲用の艦娘特別艦隊として金剛さん以外にも赤城さん、加賀さん、瑞鶴さん、島風さん、吹雪さんで編成を組んでもらいます」
「那珂ちゃんはー!? アイドルの那珂ちゃんには勿論新曲あるんだよね!!」
「……ええ、一応」
「あと吹雪型全員でも歌ってもらうわよ。曲名は特型駆逐艦一番艦の名前を取って『吹雪』!」
「ええ~、そんなの聞いていませんよ~!」
一方そのころ、
『いじょうが、よねださんのおくってきたちょうさけっかです』
『うそ……ここまでとはおもっておりませんでしたわ』
『すみれさんもそうおもいます?』
『ええ、さくらさん。これはいっこくをあらそうじたいです』
『かんかんしきにいくのは、わたしとすみれさんと――』
『まりあさんとかんなさん、あとこうらんがくるよていですわ』
『わたしたちはごにん、たいするかんむすはひゃくにんいじょうですが――』
『ええ、ほんとうのてきはごにん。5たい5ならごかくですわ!』
決戦の日。観艦式は近い。
近いのは大神の命日か。
そして、花組が敵と認識した五人とは?
好感度表参照。
ちなみに追加になった曲は、6曲となります。
曲タイトルは書いてもオッケーか分からないので載せませんが。