第八話 1 再会
「――?」
私が意識を取り戻したとき、そこには舞鶴鎮守府のみんなが傍にいた。
「秋雲――?」
「秋雲、目を覚ましおったか!」
横になったまま周囲に視線を向ける私。
そこには周囲に居た扶桑さんが、陸奥さん、大鳳さんが居た。
それに利根さんたち、飛鷹さんたち、ううん、それだけじゃない。
「秋雲良かったじゃーん!」
「もう、鈴谷。感動の再会シーンなんですから、もっとエレガントに」
「秋雲、目を覚ましたの!?」
「よかったわー、秋雲ー」
いや、球磨型、最上型、陽炎型のみんなも、舞鶴で苦楽を共にしたみんなが涙ぐんだ目で私を見下ろしていた。
その事自体に私は驚いて、ちょっと引き気味になる。
それで初めて自分は簡易ベッドの上にいる事に気がついた。
でも、そんな事に疑問を抱いている場合じゃない。
「ちょっと待って、私、何かしたっけ?」
何でこんな感動的なシーンなの?
なんか私みんなにした?
イタリアンマフィアは殺す相手に最上級のもてなしをするとか、そういう奴なの?
ずっと、私、みんなのえっちいイラストなんて描いてないよ!?
最近の舞鶴じゃ何もする暇も、余裕も与えられなかったよ!?
大体、私――
「あ……」
私――は、
「沈んでたんだっけ……」
暑いくらいなのに、深海の寒さを思い出し震え出す私。
一旦認識しだすと震えが止まらなくなってきちゃった。
みんなに迷惑かけるくらいなのが、いつもの秋雲さんの筈なのに。
こんなに震えてたら、みんなのイラスト描けなくなっちゃう。
「大丈夫です、秋雲。ここは陽光溢れる海の上ですから」
カタカタと震えだした私の身体を不知火姉さんが抱き締める。
「やだな……不知火姉さん。そんな大げさな事しなくたって……」
「秋雲に落ち度なんてありません。こんなときくらい姉を頼ってください」
そういって不知火姉さんは私をもう一度ぎゅっと抱き締める。
ううん、舞鶴のみんなが私に抱きついてくる。
「うん」
気温は日本に居た時よりも遥かに暑いくらいだっていうのに、みんなの体温が暖かくって、私もみんなに抱きついた。
みんなも肌と肌が密着して更に暑いはずなのに、うれしくって仕方がない。
「「「秋雲、おかえり」」」
「うん……」
やがて、私の震えが止まっていく。収まっていく。
自分がここに居るのだと、改めて自覚していく。
そして私は思い出した。
隊長に、深海棲艦に囚われた私が助け出された事を。
そうだ。
舞鶴のみんなは居るけど、隊長が居ないじゃん。
どーして?
「あれ? 隊長は?」
「あー、大神さんね。大神さんは南方海域の攻略中~。有明に戻らずに、ビッグサイトキャノンによる補給砲弾で補給しながら、一気に珊瑚海まで開放するつもりなんだって」
私の疑問に鈴谷が応えてくれる。
いやいや。
私は大きく頭を振る。
ちょっと待て!
なにさ!
なに! その、ビッグサイトキャノンって!?
このネットメインでしか活動できなかったオータムクラウドさまが目標としてた、
舞鶴に居る限り無理かなと思いながら、
でもやっぱり生きてる間に一度は行ってみたいと思ってた聖地!
東京!
有明!
帝國ビッグサイト!
そんなところにキャノン砲があるなんて、秋雲さん、ネットでも一度も聞いた事ないぞ!!
そんなのあったら絶対話題になるに決まってる!
なんじゃそりゃー!
「ん? 秋雲、大神さんの事が心配? そうだよね~、颯爽と敵を一刀両断に切り裂いた後、すっぽんぽんになって現れた秋雲をお姫様抱っこで運んできたからね~。そりゃ、気にもなるか」
「なっ! すっぽんぽん!?」
ちょっ!
この、花も恥らう乙女な秋雲さんの裸、見られちゃったの!?
いや、その話の様子じゃ、肌もペタペタ触られた!?
「いや~、話には聞いていたけど、あれはキツいわ。私だったら、大神さんに責任とってお嫁にとってもらわないと無理だね~」
肩を竦めてため息をつく鈴谷に釣られてみんな笑ってるけど、待ってよ!
「ちょっと、見られたのは私なんだぞ!! どうすればいいのさ?」
「大丈夫よ! 秋雲! 大神さんならきっと責任取ってくれる!!」
そこでにっこり微笑んでも説得力ないよー。
「――!?」
隊長にお姫様抱っこされてた時の事も思い出してきた!
意識が朦朧とした私に外套を巻いて、優しく抱き抱える隊長。
『よかった、秋雲くん』
そう言って自然な笑みを向ける隊長。
う~。
くそう、あのイケメンめ……かっこいいじゃないか。
思い出すだけで、この秋雲さんともあろう者が顔が真っ赤だよ~。
こうなったら隊長のイラスト描いてやる、逆襲にBL描いてやるんだ~!!
「あ、隊長が戻ってきた」
「んなっ!?」
びっくりしてあたふたする私、ああ、もう少し心がまとまってきてから帰ってよー。
「おお! あの姿は巻雲か!?」
利根姉さんが隊長に助け出された巻雲を見つけたらしい。
え? 巻雲も助け出したって言うの?
ってことは珊瑚海奪還完了したって事、ただの一戦で?
「ふふふ、秋雲。その程度で驚いていては、これからやっていけないわよ」
扶桑さんが優しく微笑んでいるけど、だって、舞鶴であんだけヒーコラ言って、やっとだったんだよ?
それが、鎧袖一触って納得できるかー!
そんな感じで私が喚いていると、巻雲たちの声が聞こえてくる。
巻雲はもう意識取り戻したんだ、早いね。
あれ?
ちょっと待って、という事は。
「隊長さま、巻雲、あんなところまで見られてしまっては、もうお嫁にいけません~! こうなっては、隊長さまに身も心も捧げるしかありません!!」
「ええっ、巻雲くん、きみはそれでいいのかい!?」
「夕雲姉さんまで助けていただいて、巻雲にできる事なんてそれしかありません~! こんな幼い巻雲の体ですが、隅から隅までとくと味わってください!」
「うふふふ、そ れ な ら、わたしも。大神さんに尽くさないといけませんね。なんでも言ってくださいね」
「いやいやいや、そんな事しなくて良いから!」
「No! 隊長に味わってもらうのは私の身体って相場が決まっているのデース! 巻雲に夕雲、一時の感情に身をゆだねると後で後悔するのデース!!」
「「「お前が言うな」」」
…………
なんか私の事無為視されてない?
すっぽんぽんの私を見たくせに。
「こらー! この秋雲さんを無視するなー!!」
ベッドを飛び出て、巻雲たちに向かう私を舞鶴のみんなが暖かい視線で見ていた。
その事が嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。
その姿を見て巻雲たちも笑っていた。
今回の導入は混乱する秋雲の視点が言いかなーと思って、敢えて一人称で書いてみました。
け れ ど 、
いつもの倍以上かかったwww
慣れない事はするもんじゃないですね(^^;