次回予告を追加します
昨日の更新時に入れるの忘れてました、すいません。
朝潮と大神の唇が重なる。
大神はその事を認識した瞬間朝潮から離れようとするが、既に朝潮の腕は大神の首に回されており、振りほどかない事には離れることはできない。
そして、どう見ても精神の安定を欠いている朝潮を、力ずくで引き離す事を大神は躊躇った。
「んっ――おおがみ、さん――」
それをよい事に、身体が、心が、求めるまま大神の唇を貪る朝潮。
もうその目には理性の色はない。
「あっ――あさしおくんっ、おちつい――むぐっ!?」
夢の中でそうしたように、大神の口の中へと舌を伸ばし大神とディープキスを交わす。
初めて味わう大神の唾液の味に朝潮の精神は蕩けていく。
そして昨晩から必死に押し留めようとした欲望のまま、大神を求める。
目の前の大神の事しか朝潮には考えられなかった。
だが、大神が朝潮の欲望に答えることはもちろんない。
朝潮がいくら求めようとも、夢のように、そして映画のように、大神が朝潮の胸元や首筋にキスマークをつけることはない。
やがて唇を放し、トロンとした、それでいて不満げな目で大神を見上げる朝潮。
その場を艦娘が目撃していた。
昨日の状況を見て、大神ならば更に早起きして鍛錬するに違いないと予想した艦娘。
そして、それを止めようとした艦娘。
明石と大淀である。
「朝潮っ!? 大神さんに何やってるんですか!?」
「大神さんっ!? 朝潮ちゃんに何やってるんですか!?」
全く正反対の責を問う発言。
この場で正しい状況分析をしていたのは明石のほうであった。
しかし、この場においてどちらかが正しいかなどは大した問題ではない。
明石たちの発言によって我に返り、朝潮は蒼白になりながら大神から離れ後ずさる。
「あさしお……朝潮、こんなつもりでは……」
「朝潮くん、分かってる。だから……」
自分へと伸ばされる大神の手を振り払い、剣道場から駆け出す朝潮。
大神に取り返しのつかないことをしてしまった。
自分は嫌われた。
大神に嫌われたに違いない。
もう、戻れない。
大神の元へは戻れない。
「朝潮くん!!」
大神の声にも応えず、涙を流しながら、朝潮は艤装を展開し有明鎮守府から全力で駆け去った。
それからどれほどの時間が流れたであろうか、朝潮の姿は外洋にあった。
脇目も振らず全速力で駆けたためか、他の艦娘が追いつく気配はない。
周りの一面の海を見渡して、朝潮はようやく歩みを止める。
しかし、朝潮に帰る場所などもうない。
世界の何処にも存在しない。
自分の破廉恥な行動によってなくしてしまった。
目的地を見失い、朝潮は波に揺られ動くことなく漂う。
そして、それは深海棲艦にとって格好の的である。
ぼんやりと漂う朝潮の側面に深海棲艦の潜水艦による雷撃が突き刺さるのだった。
「きゃあーっ!?」
回避行動を一切せず海面を漂っていた朝潮は雷撃を直撃で受け中破させられる。
それだけではない。
爆発の衝撃で海面を転がる朝潮に二射三射と雷撃が突き刺さり、朝潮は大破、いや轟沈寸前となる。
艤装の機能は完全に停止し、もはや朝潮はとどめを刺されるだけの存在でしかない。
「でも、いいのかな。こんな悪い子は沈んでしまっても――」
海面に膝を突く朝潮、だがその表情には諦めの色が漂っている。
最期を受け入れた朝潮に、深海棲艦の、とどめの雷撃が突き刺さる。
「……さようなら、大神さん……」
爆発と共に、艤装を失い、浮力を失い、海の底へと落ちていく朝潮。
沈む海の色は蒼く、水面に浮かぶ太陽がゆっくりと遠のいていく。
怨念が自らの周囲に取り巻いていく。
吐いた息の合間から朝潮を取り込まんとする。
しかし、朝潮は一切抵抗しない。
目を閉じて水底へと沈んでいく。
「いいよ、でも、みんな忘れさせて……」
そう呟こうとして、朝潮はひとつだけ思う。
『あさ……おくん……』
もし『次の』私が、朝潮が大神さんの元に現れるのならこんなダメな子にはなりませんように、と。
『あさしおくん』
やめて、深海棲艦、私は沈むから、あなたたちになるから。
大神さんの声で呼ばないで。
『朝潮くん』
大神さんとの思い出を汚さないで。
「お願い……」
「朝潮くん! 諦めるな!!」
「お……お、がみさん?」
その声が本物だと気付いて目を開ける朝潮。
大神の手がもう少しで朝潮に届きそうなところまで近づいていた。
そして朝潮を抱き締めた。
だが、怨念が朝潮もろとも大神を水底へ引きずり込もうとする。
轟沈した朝潮に浮力は全くなく、二倍以上の重圧が、怨念が光武・海へと負担を与える。
悲鳴を上げる光武・海。
「大神さん、朝潮を離して下さい! もう沈んだ朝潮なんて見捨ててください!!」
「断る! もう犠牲は沢山だ! もう誰も! 死なせない!! 破邪滅却!」
光武・海の機能を浮力に限定させると、大神は二刀を振りかぶり浄雷を、光刃を振るう。
一時的に浄化され、大神の周囲の海域が清められる。
「みんな!」
「了解ネ!」
大神の呼び声にしたがって、艦娘たちからロープが投げ込まれる。
そしてそれを手に取った大神と朝潮は海上へと引き上げられていった。
海面に二人が上がっていたとき既に戦闘は終了していた。
もともと、はぐれ潜水艦が3隻の艦隊。
朝潮のためにと総力で出撃した艦隊の敵ではなかった。
引き上げられ濡れ鼠となった大神の姿を「水も滴るいい男」と笑って評する金剛。
だけれども、朝潮にとっては自分に気を遣い、あえて触れずに居る状態が辛かった。
「朝潮は、隊長を、大神さんを好きになって強くなりたかっただけなのに……」
一人呟く朝潮に、大神たちの視線が向く。
「強くなってもっと大神さんのお役に立ちたかっただけなんです!! なのに! なのに、なんでこんな……」
涙をぽろぽろと流したまま朝潮は大神から離れようとする。
「大神さんを振り回しただけでなく、海の底にまで引きずり込もうとした朝潮なんて……」
だが、大神は朝潮の手を掴んで離さない。
「もう、朝潮は大神さんにも皆さんにも会わせる顔なんてありません! 有明になんて戻れません! だから、だから、大神さん! 朝潮のことは忘れてください! このまま沈めさせてください!! 次の朝潮が……きっと、きっと大神さんのお役に――」
「馬鹿な事を言うな!!」
初めて聞く大神の怒声が朝潮を貫く。
「朝潮くん、今朝君は言ったよね。俺が居なくなったら、嫌だって。それは俺だって同じだ! 君たちが、いや、朝潮くんが沈むところを黙って見ているなんて真っ平御免だ!!」
「でも、朝潮はえっちな……悪い子に……なってしまいました……今朝だって大神さんに、勝手に、キスして……こんな悪い艦娘なんかいない方が……」
自らの罪を懺悔する朝潮。
だが、大神は朝潮を引き寄せると抱き締め、耳元で囁く。
「完全に清廉潔白な人間なんていない、俺だって、艦娘だって同じだよ。誰もがみんな自分の欲望と理性の折り合いをつけて生きている、戦っている。朝潮くん、君は急すぎてそのやり方をよく知らなかっただけなんだ。大丈夫、みんなが教えてくれるよ」
「でも、朝潮、また皆さんに迷惑をかけてしまうかもしれません……」
「そのときは、俺が止める、また受け止めてみせるよ」
しゃくり上げる様に何度も訪ねる朝潮に、言って聞かせるように応える大神。
「大神さんを誘惑してしまうかもしれません……、こんな朝潮が、大神さんの傍にいても……良いんですか?」
「君じゃなきゃダメなんだ。俺にとっての朝潮くんは君以外居ない! だから、お願いだ、朝潮くん! 俺の傍から居なくならないでくれ!!」
「大神さん、おおがみ……さん……うわあぁぁぁぁぁ! あぁぁぁぁぁぁぁ、ごめんなさい、ごめんなさぁぁぁいっ!!」
大神の胸に顔を埋め、大きな泣き声をあげる朝潮。
その朝潮の背中を擦り、泣き止むまで彼女を抱き締める大神。
寝不足と、有明からの逃亡、そして深海棲艦との戦いと極度の緊張を度重なり強いられた朝潮はやがて大神の腕の中で眠りにつく。
朝潮をお姫様抱っこで抱き抱え、有明に帰還せんと振り返る大神を、朝潮救助のため共に出撃した艦娘たちが優しい眼差しで見やる。
その中の金剛が大神の傍に近寄って、微笑みながら大神を見上げる。
「ねえ、隊長? 私が居なくなってもこんな風に追いかけてくれマスか?」
「勿論だ。金剛くんだけじゃない、みんな死なせない、沈ませない、逃がさないよ」
笑いながら冗談交じりに大神が答える。
だが、金剛は笑いながらも少々不満そうな顔をしている。
「むう、その答えは私にとっては100点満点じゃないデース」
「じゃあ、何点なのかな?」
大神の問いに金剛は一転して満面の笑みを浮かべる。
「勿論、『私たち』にとっては120点デース! それでこそ私たちの隊長デース!!」
次回予告
はーい、今回の次回予告は秋雲さんだよ~。
え? お前、まだ居ないだろって?
いーじゃん、そんな細かい事気にしなくたって。
大神さんのお披露目も兼ねて行われることとなった観艦式。
でも私たち小さいから、場所は海の上じゃなくてビッグサイトでやるよ!
日付は夏コミ1日目!
2日目は私たちが題材の薄い本、同人誌もいっぱい出るって言うし楽しみだね!
3日目は残念だけど駆逐艦の参加は禁止だし、2日目だけでも楽しまないと!
……って、私、夏コミ受かってるの!? 沈んでたのに!?
やばい! げ、原稿がー!
隊長~、早く私を深海から助けてよ~!!
次回、艦これ大戦第八話
「艦これ観艦式開催! 夏コミ海域に出撃せよ!!」
次回は帝國ビッグサイトにみんなで勝利を刻むよ!
「隊長! 隊長のせいなんだから、原稿手伝って!!」
朝潮の好感度たるや如何に
追記:
次回メタネタの嵐w
でも、まあ実際に艦娘が居たとして、
企業ブース枠で観艦式ぶち込んだらコミケスタッフ過労死するな、たぶん(^^;;