艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第六話 5 志願

「W島の攻略部隊に志願させてください!」

 

大神の発言に割り込んで発言した艦娘に全艦娘の視線が向けられた。

しかし、その艦娘は怯むことなく手を挙げ、自分の存在をアピールする。

まっすぐに伸びた手が彼女の意志の強固さを示していた。

 

「睦月ちゃん……どうして?」

 

吹雪の発言の通り、穏やかな性格に似あわず、この大海戦に対する積極的な姿勢を示す艦娘。

それは睦月であった。

ただ、そのことを大神はブリーフィング前、正しくは第一次W島攻略戦で轟沈した艦娘の名前を見たときから予想していた。

何故ならそこに書かれていたのは、彼女の姉妹艦である如月だったからだ。

以前大神に懇願したように、睦月は如月を助けたいと思っている。

彼女が沈んだ海域に未だ囚われている可能性がある以上、彼女が出撃したいと言い出す可能性はあると考えていた。

しかし――

 

「睦月くん、すまないが艦隊編成は既に決まっている。W島を直接攻略する艦隊は武蔵くん、長門くん、金剛くん、加賀くん、瑞鶴くん、翔鶴くんと俺の7名になるんだ。今回の攻略において水雷戦隊は用いることはできない」

「おい……それって…………」

「戦艦と正規空母のみの編成ですって……」

「そこまでの敵戦力が予想されるっていうの……」

 

大神の答えに周囲がざわめく。

だが失敗した第一次にてこちらの攻略点として認識されてしまった以上、既に戦力が増強されているのはほぼ確実だ。

故に今回の攻略においては、増強されたであろう敵戦力を正面から撃破できるだけの艦娘が選ばれた。

霊力によるずば抜けた能力補正を受けている響以外の駆逐艦では、恐らく力不足は免れない。

 

「――っ! ……なら、その護衛艦として入れてください!」

「残念だけど護衛艦としての役割は今回必要ないんだ。それは第一段階での潜水艦掃討にて事足りている。だから睦月くんは潜水艦掃討の任についてほしい」

 

睦月は、6駆に並ぶ能力を今は得ている。

だからこその判断だったのだが――

 

「お願いです! W島攻略に参加させてください!」

「間違いなく激戦になる、危険だ!」

 

それでも睦月は一歩も引かない。

 

「それでも構いません! 艦娘ですから!!」

「駆逐艦の睦月くんには正直厳しい戦いになる。それでもかい?」

「足手まといにはなりません!」

 

度重なる大神の確認に対し、確固たる意志を示す。

 

その睦月の様子に、大神は自らが以前言ったことを思い出していた。

山口海軍大臣に対し、艦娘を見捨てておいて艦娘のための華撃団隊長を名乗ることなんてできないと言い放った時のことを。

今は自分が大臣の立場となる時なのだろう。

 

それに一人の願いを踏みにじって、何故、世界中の願いを、幸せを守ることができようか。

 

何より、

 

「お願いします! なんでもしますから、W島攻略に参加させてください! だからお願い、大神さん!!」

 

睦月の覚悟はもう十分過ぎるほど分かった。

案がないわけではない。

ここは、自分が受け入れるべきだろう。

 

「――分かった、睦月くん。君の志願を認めるよ」

「隊長、何を言っているのですか? 現在の攻略艦隊編成に睦月さんと入れ替えられるだけの余裕はありません! 火力も制空も最大限界を持ってあたるべきです!!」

 

大淀の論も当然だ。

睦月と戦艦を替えれば火力不足に陥る。

かと言って、空母と替えれば制空に事欠く可能性がある。

どちらも無暗に削減できるものではない。

 

しかし、大神は答える。

 

「睦月くんは入れ替えではないよ、現在の艦隊に対し更に対陸妖精隊を率いて参加してもらう。つまり、7人の艦娘と俺で一艦隊として行動する!」

「隊長!? それには賛成できません! 艦隊は最大6人の艦娘による艦隊編成です、7名だなんて陣形が崩れる恐れが!!」

 

大淀と大神が論を戦わせる。

 

「大淀くん、君も分かっている筈だ。直接指揮下であれば艦娘7人であっても艦隊としての行動が可能だと」

「可能です……可能ですけど、とても人間業とは思えません! 何より隊長にそこまで負担をかけるわけには!!」

 

泣き叫ぶかのように大淀は言葉を発する。

大井の凶行にて大神が傷つく瞬間を見た大淀にとって、大神は傷つき倒れる人間であるのだ。

大神の限界に気付くことができず、何かあってしまったとしたら悔やんでも悔やみきれない。

 

「大丈夫だ、大淀くん。君は人間業じゃないと言うけど、無理をしているわけじゃない」

 

大淀を落ち着かせようと、大淀の肩に手を置いて宥める大神。

 

「ですけど! もし! もし……」

 

それでも大淀は止まらない、最悪の事態を考えてしまう。

そんな大淀の瞳を覗き込んで大神は再度言葉をかける。

 

「大丈夫だ。約束する、俺は死なない!」

「隊長……」

 

大神の強い調子に呑まれ、何より大神の瞳に覗き込まれて、大淀はコクンと頷く。

 

 

 

見つめあう二人。

 

 

 

「う~、隊長ぅ~! 時間と場所と、何より相手をわきまえてヨ~!」

「Урааааа!」

「頭にきました」

「ふぇぇぇ……睦月の出番……」

 

勿論、眼前でそんなことをされて黙っているような艦娘たちではなかった。

隊長と筆頭秘書艦というだけでも接する機会が多いのに、そんなの冗談ではないとばかりに壇上に登り、二人の空間をぶち壊そうとする艦娘達。

当然の如く、ブリーフィングは一旦中断となるのだった。

 

 

 

その後再開したブリーフィングで最終的に決まった艦隊構成は以下の通りとなる。

 

攻略    大神 武蔵 長門  金剛 加賀 瑞鶴 翔鶴 睦月

 

決戦支援  榛名 比叡 蒼龍  飛龍 電  雷

 

対潜1   神通 暁  叢雲  千歳 祥鳳 那珂

 

対潜2   響  吹雪 千代田 瑞鳳 川内 五十鈴




あれ おかしい 睦月を 大淀が 食った
あれ?



それはともかく、
艦隊編成は攻略wikiを参考にしてますが、話の都合上ちょっといじってます、ご承知置きを。

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