艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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説明回。


第六話 4 作戦会議を終え

「中部太平洋海域の哨戒線を押し上げるためのW島攻略か。近海の海域の確保が南西諸島まで一段落したから、まあ、方向性としては間違っちゃいねーな」

「そうですね。最近は巡回での深海棲艦との遭遇も、基地からの発見連絡もわずかですし」

 

先程まで行われていた作戦会議を終え、会議場で言葉を交わす大神と米田。

会議の内容は太平洋の離島、W島の攻略についてである。

事は艦娘を大幅に動かすこととなる上、攻略後の基地設営なども絡んでくるため、会議は陸軍、海軍、そして華撃団を交えて行われた。

 

「問題は一度失敗している作戦ってことだな、敵戦力の軽視による艦娘の轟沈、痛いな」

「勿論二の轍は踏みません。既に対潜装備の開発は行っていますし、万全の準備をします。あと、自分も出る予定です。もう誰も沈ませはしません」

「ふむ、総司令になってた間に随分揉まれたみてーだな、俺から何か言う必要もないか。まあ敢えて言っておくとしたら、華撃団発足後初の大規模な戦いだ。気張って行けよ」

「初の戦いなどにはおかげさまで慣れていますので、問題ありませんよ」

「こいつ、言うようになったじゃねーか」

 

余ったコーヒーに手を付けながら、昔のように気楽に言葉を交わす二人。

だが、太正会と大元帥の肝いりとはいえ、一介の新人少尉だったものと陸軍大臣が交わす会話内容ではない。

 

一航戦、大和を含む呉の大艦隊を戦力的に劣る艦隊で徹底的かつ一方的に叩きのめし、その上艦娘達を心酔させたという話も軍内では話題となっている。

 

もはや大神を新人と侮る者はいない。

であるからこその、今回のW島攻略作戦なのだ。

 

そんな大神に声をかける者がいた。

 

「大神大佐だね」

「はい、自分が大神です。失礼ですが貴方は……」

 

年齢は30代後半から40代前半、黒髪を軽く伸ばし結わえている。

目には過半の好奇心と僅かばかりの向上心が覗く。

確か今回の会議では発言は殆どしていなかった筈だ。

 

「ああ、すまない。自分は海軍の技術部で大佐を務めている神谷というものだ。噂の特務大佐と一度話したくてね。光武・海の開発にも関わっていたんだよ」

「そうでしたか、光武・海の開発に尽力頂きありがとうございました。ということは山崎少佐とも……」

「ああ、彼が陸軍なのに対して海軍側で音頭を取ったのが自分になるね。最初に図面を見たときは信じられなかったが、光武・海が出してくれたデータによって、工廠での艦娘用新装備の開発に様々な案が出てきている。嬉しい悲鳴というやつだね。ありがとう」

 

そういうと、神谷は片手を差し出した。

勿論断る理由なんてない、大神は神谷と握手を交わす。

 

「こちらこそ、有意な装備があれば艦娘のみんなから少しでも危険を遠くに追いやることができますよ。協力ありがとうございます」

「なるほど、噂通りの人物のようだ。今回の第二次W島攻略でもいい結果が出せることを祈ってる。頑張ってくれ」

「はい!」

 

「自己紹介はもう終わったようだね。大神君、神谷君」

 

そんな二人に山口海軍大臣が声をかける。

 

「山口閣下が帯同なされたのですか?」

「ああ、今後山崎君は光武・海の改良に傾注することになるからね。艦娘用新装備の開発に関わる人物を紹介しておこうと思ったんだよ」

「そうでしたか。では改めまして、今後ともよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いするよ」

 

そう言って大神は神谷達と別れる。

 

「当然のことだが、この戦いの勝利は君たち華撃団にかかっている。よろしく頼むよ、大神君」

「了解しました!」

 

 

 

そして有明鎮守府に戻り、艦娘を集めブリーフィングを行う。

決定された作戦はニ段階に分かれる。

第一段階は進撃路の対潜掃討。

第二段階は潜水艦を掃討した上でのW島の攻略。

当初提案された作戦は第一次と同じく水雷戦隊を主力とする攻略方針の流れだったが、山口が作戦会議において、当然予想される敵航空戦力の存在への懸念について発言。

続いて大神が、未確認であるが陸上型深海棲艦の存在についても警戒を行うべきと発言。

華撃団発足前の最後の作戦においても陸上型深海棲艦の存在によって作戦が失敗に終わったからだ。

それらの検討の結果、二段階に分けての攻略を行うこととなった。

 

「以上が作戦の大枠になるけれど、ここまでで質問はあるかな?」

「はい、出撃する艦隊は何艦隊となるのでしょうか?」

 

朝潮が手を挙げて発言する。

 

「対潜掃討用の艦隊がニ艦隊、W島の攻略艦隊、そしてW島攻略の支援に一艦隊用いる。計四艦隊24隻になるね」

「四艦隊……」

 

この発言だけで艦娘たちの間にどよめきが起きる。

四艦隊といえば、鎮守府・警備府に艦娘が分かれていた際の総戦力に匹敵する数だ。

それを出撃させるのだ、俄かには信じがたい。

 

「作戦日程はどういうふうになってるのー」

「対潜掃討隊は有明鎮守府を出撃、海路に従ってW島を目指す。W島付近での対潜掃討が終了次第、ビッグサイトキャノンにて残る2艦隊を展開して、一気にW島を攻略する。W島での作戦期間は最大3日を予定しているよ」

 

続いての川内の質問に大神が答える。

 

「大神さんはいつから隊の指揮をするの? しないってことはないよね?」

「勿論するよ、ビッグサイトキャノンでの展開後の攻略部隊の指揮を俺が行う。さすがに俺に対潜は難しいからね、そこまでは各艦隊任せになる」

 

さらに愛宕が手を挙げる。

 

「繰り返し出撃しての漸減作戦ではないんですか、大神隊長? 今までの大規模作戦は全部そうだったんですけど」

「今後は漸減作戦は行わない方針だ。今回の成果次第だけど一戦で殲滅するよ」

 

穏やかに答える大神だが、その内容は苛烈だ。

激戦となる予感に艦娘たちは武者震いする。

 

「艦隊編成は決まっているんですか?」

「決めた。勿論、療養中の舞鶴は除く。これから発表するから――」

「隊長、W島の攻略部隊に志願させてください!」

 

大神の発言に割り込んで、そう発言したものがいた。




14春イベント海域スタートです。

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