艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第五話 14.5 経過観察(舞鶴編)

舞鶴の艦娘たちのために奔走する明石。

そして、明石を全面的にサポートするためにスケジュールの見直し、上層部との会合など舞台裏で働き続ける大神。

そんな明石と大神が邂逅出来る時間は僅かしかない。

 

今日はお互いの昼休みの時間をずらして、他の艦娘と会わないようにした上で保険室で話をしていた。

 

「それじゃあ、一部の艦娘については訓練できる程度には回復したと云うことなんだね」

「はい、隼鷹さん、利根さん、鈴谷さん、球磨さん、多摩さんと陽炎さんは元の精神傾向がプラスの方向を向いていましたし、急性に近い状態でしたから。ですけど……」

「分かってる、特に重症の大井くんはともかく、舞鶴の艦娘の復帰はタイミングを合わせた方が良いだろうね。大まかな見立てで良い、どれくらい必要だい?」

「最短で3週間、出来れば1~2月時間をください。可能でしょうか?」

「それについては心配いらない。山口大臣にも、米田閣下にも理解していただいた。舞鶴鎮守府にはちょっと怒られたけど納得してもらった。他の艦娘には君が連絡してくれたから、後は書面上の処理をこちらがやるだけだよ」

 

話の内容は舞鶴の艦娘たちの回復状況について、流石に他の艦娘たちに聞かせて良い話ではないので、こうやって二人で密会する形を取っていた。

二人共、この一週間寝る間を惜しんで働き続けており、明石と大神の目の下には少し隈が出来ていた。

 

「明石くん、睡眠時間は足りているかい? 少し隈が出来てる、君が倒れてしまわないか心配だよ」

「そういう大神さんだって、隈、少し出来てますよ?」

 

お互いの隈を指摘しあい、笑いあう二人。

 

「舞鶴のみんなのためにも、医者の不養生とはならないでくれ、明石くん」

「分かりました。それにしても、こうやって、こっそり二人で会っていると逢引みたいですね」

「ええっ? そういう風に見えるのかな?」

「どうでしょう、金剛さんや鹿島さんに見つかってしまったら、大神さんどう言い訳します?」

 

その言葉と共に、保健室のドアが引き開けられる。

まさか、噂をすれば何とやらか。顔を見合わせる二人。

 

「おおー、居たか明石。一緒に昼食を取りに行かんか?」

 

だがその声は二人が想像していたものとは異なっていた。

大分声に元気を取り戻した利根たちの姿がそこにあった。

 

「ん、隊長なんかと何をやっておるんじゃ、明石?」

 

大神の姿を見ても嫌悪感が先立たない程度には快復したことに、利根は自分では気付いていない。

それは苦痛を伴う期待から解き放たれることで、出た成果の一つである。

 

「いや、寝不足と云うことで少し診断を受けにね、もう終わったよ」

「明石の処方なら間違いはないか。終わったのなら明石を借りていくぞ、よいな、明石」

「ええ、構いませんよ」

 

子供のように信頼しきった様子で明石の腕を引いて、食堂へ向かう利根。

僅かに不満そうな表情をしながらそれに付き従う筑摩たち。

少なくとも明石と舞鶴の艦娘との間には信頼関係が成立している、その事が我が事の様に嬉しい大神だった。

彼女達にこの生活が必要なら、必要なだけ確保するのが隊長としての今の自分の仕事だ。

 

「さて、司令室で続きを頑張るか」

 

明石と違って既に昼食は済ませているし、今の舞鶴の艦娘には自分の姿が見えない方が良いだろう。

保健室を後にして、司令室へと戻る大神であった。

 

 

 

「すまんの、明石」

「え、何のことですか?」

 

保健室を出て食堂に向かう途中、明石の腕を引いていた利根が零す。

 

「我輩たちとてバカではないのじゃ、明石」

「私達がこうやってリラックスして生活できるように、隊長も寝る間を惜しんで働いてくれているんでしょ? 私達の事を心配して」

 

利根に続いて筑摩が話し続ける。

ああやって話し込んでいるところを見れば、何のために寝不足になっているのかなど容易に想像がつく。

 

「それは……」

 

事実であるだけに、明石も咄嗟に否定の言葉が出ない。

 

「それにな、明石、お主隊長の事を慕っておるじゃろ?」

「な――!?」

 

その一言に赤面する明石。

 

「隊長の事を否定するような事を言う時、微かに苦い表情をしておったぞ。明石」

「相手が誰かひとりだけなら気付なかったかもしれないけど、私達全員に似たようなことを言ってるんだもん。流石に気付くよ」

 

利根に引き続き、鈴谷が言葉を続ける。

個人個人で程度の差はあるとは言え、同じような症状なだけに対応も似たところがあるのは、流石にどうしようもない。

けれども、今の彼女達にはストレスとなる心配事を抱かせてはいけない。

 

「それ以上はストップです、言った筈ですよ」

「「何も考えないでリラックスしちゃってください」、じゃろ?」

 

明石とタイミングを合わせて利根が言葉を重ねる。

 

「分かっておる。今だけの話じゃよ、もう忘れるぞ」

「そうそう。それに今の私達、娯楽少ないんだもん。他人の恋の話くらいさせてよ」

「もう……本当にリラックスはしてくださいよ」




現時点で舞鶴組の信頼度が圧倒的に明石>大神なのは仕方がない
しかしこれだと舞鶴組はよっぽど好感度高くならないと、明石に遠慮して身を引いてしまうな

いや、そこで恋心と恩の板ばさみになって苦悩させるのも楽しいか>ドS

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