艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

53 / 227
ご挨拶回。


第五話 8 集結(横須賀編)

乱痴気騒ぎから一夜明けた有明鎮守府。

既に到着した艦娘たちは訓練を再開し、その他の鎮守府からは徐々に艦娘が集い始める。

大神もここ数日のうちに到着する予定となっている艦娘のリストに目を通して、司令室で準備に当たる。

 

先ずその日の午前中に到着したのは、武蔵、曙たちも所属していた横須賀鎮守府。

本来であれば尤も直近の鎮守府であったのだが、上層部のゴタゴタで警備府に一日遅れての到着となった。

 

「武蔵以下。横須賀鎮守府の艦娘計22名、有明鎮守府に着任しました」

「ありがとう、自分もなりたての隊長だけど、君達を歓迎するよ」

 

鎮守府の演習場で一戦交えた武蔵が、彼女達を代表して大神に挨拶する。

 

「少尉。いや、今は特務大佐だったか。本当に私達の隊長になってしまうとはな」

「あの時は必要以上の事を話せずに済まなかったね、武蔵くん」

「いや、確かにこれだけの規模の事を秘密裏にしようとするとなると、情報漏洩には気をつけないといけないな。まあ、済まないと思っているのだったら、また一戦戦いたいものだな」

「そうだね、俺はあのときほど訓練に時間は割けないけど、またやり合おう、武蔵くん」

 

そう云って武蔵と握手を交わす大神。

 

「じゃあ、次にみんなを隊長に紹介しよう」

「そうだね、そうしてもらうと助かるよ」

「先ず、隊長も分かると思うが、7駆の曙、漣、朧、それに潮」

「しばらくぶりね、クソ隊長」

 

いつもの事とは言え、曙のいきなりのクソ呼ばわりに唖然とする艦娘たち。

傍に控える大淀が一言注意しようとするが、大神はそれを手で制する。

 

「ははは、相変わらずだね、曙くん。そういえば、警備府では金剛くんを助けてもらったお礼をちゃんと云ってなかったね、ありがとう」

「べ、べべ、別にそんなの当たり前の事だし……」

 

面と向かって礼を言われた途端、一点して赤面して髪を弄りだす曙。

 

「こ、今度は! クソ隊長に負けないように訓練してきたんだから! 私とも訓練してよね!!」

「分かった、期待しているよ、曙くん」

 

その後、警備府から導入された嬉し恥ずかし特別訓練メニューの存在を知らされ、赤面が限界突破してぶっ倒れることを曙はまだ知らない。

 

「改めまして、漣です、ご主人様」

 

続いて自己紹介する漣。

 

「なんだい、その、ご主人様って? 前まではそう言っていなかったよね?」

「もちろん、大神隊長の事ですよ。大臣に土下座したときの言葉、渥頼のゲスに言ってのけた啖呵。聞いて、漣はティンと来たんです! この人こそ、私のご主人様だって!!」

「別に普通の呼び方でも良いんだよ?」

「いえ! 今言って見て思いました、キタコレって! もう、この呼び方以外ありえません、ご主人様!」

 

後ろに控えるメルとシーが「私達もご主人様って呼ぼうかしら……」といっているのを大神は聞かなかったことにした。

 

「もう、漣も曙もあんまり隊長を困らせちゃダメだよ。いよいよ提督華撃団の始まりなんですね」

「朧くん、宜しく頼むよ」

「はい、隊長は朧が守りぬきます!」

「それはこっちの台詞だよ、朧くん。俺がいる限り、君達艦娘を恣意的に扱うことも、沈めることも絶対にさせないから」

 

俄かに感動した様子の朧達。

 

「潮です……もう下がっても宜しいでしょうか……」

 

潮も赤面している。

 

「潮くんは疲れたのかい? そうだな、少し長くなりそうだから、椅子と飲み物を用意した方が良いかな?」

「い、いえ、そう云うわけではありません。……隊長のお顔を直視できなくて……」

「そうだぞ、隊長。我ら艦娘、この程度の事で根を上げるような訓練はしていない」

 

消え入りそうな潮の言葉に被せるように長門が話す。

 

「久しぶりだな、大佐。我らが来たからには、戦艦との殴り合いなら任せてもらおう」

「ああ、頼もしい限りだよ、長門くん」

「貴方なら、近づいてしまえば何とかしてしてしまいそうな気もするがな」

「そんなことはないさ、君達の艦砲射撃があれば心強いよ」

 

そして、大神は右に並ぶ艦娘たちに視線を向ける。

 

「後のみんなは初めて会うのかな?」

「隊長にとってはそうかもしれないけど、私達は遠目で訓練風景を見ていましたよ。それに、大臣に土下座したときの言葉も、渥頼提督に言ってのけた啖呵も、武蔵さんたちからちゃんと聞いてますから」

 

空母らしき和風の衣装に身を包んだ3人、その左端のやたら胸が豊かな艦娘が話し始める。

一つ一つのアクションの度にゆれるそれはとても柔らかそうだった。

 

「そ、そうかい、なんだか恥ずかしいな。えーと……」

「航空母艦、蒼龍です。空母機動部隊を編成するなら是非私を入れてね!」

 

続いて色違いの衣服に身を包んだ艦娘が頭を下げる。

 

「航空母艦、飛龍です。空母戦なら、おまかせ! どんな苦境でも戦えます!」

「飛龍くん、空の事は君達空母に任せるよ。でも一つだけ修正させて欲しい」

「え? 何でしょうか、隊長さん」

「隊長として約束する、君達をむやみにそんな苦境に追いやらないと。だからそんな悲しいアピールはしなくても良いんだ」

「隊長さん……」

 

飛龍の顔がほのかに赤面している。

そんな風に言われるとは思ってなかったようだ。

 

「航空母艦、鳳翔です。不束者ですが、よろしくお願い致します」

「こちらこそ。空の戦いは君達空母頼りだからね」

「はい、隊長」

 

最後に穏やかな雰囲気の艦娘が頭を下げる。

 

「ここからは重巡になる、そう言えば警備府には重巡は配備されていなかったな」

「そうだね。けど、そう云うのには慣れてるからね。これからは仲間だ、一緒に訓練しながらコンビネーションを磨こう、みんな」

 

帝國華撃団、巴里華撃団、共に予備訓練なしでの戦闘指揮だったし、警備府にいたっては襲撃された状態からの反攻作戦だった。

慣れたくはないが、すっかり慣れてしまっているのが今の大神である。

 

「こんにちは。高雄です。貴方のような素敵な隊長で良かったわ」

「え? い、いや、そういってもらえるとは思わなかったよ。こちらこそ宜しく」

「うふふ、重巡で分からないことがあったらなんでも仰ってくださいね」

 

開口一番の「素敵な隊長」に面食らった大神。

高雄はそんな大神の様子を見て微笑んでいる、それは隣の重巡娘にしても同じだったようだ。

 

「んもぅ、意外と可愛いのですね。私は愛宕。大神隊長、覚えてくださいね」

「かわっ!?」

「うふっ、どうしました? 大神隊長?」

 

更に大神を翻弄する愛宕。どうやら高雄と愛宕の二人は、大神の苦手とするタイプのようだ。

 

「大丈夫、わたしが力になってあげるわ♪」

「ああ……よろしくお願いするよ」

 

やり辛い、そう思いながら愛宕に答える大神。

 

「次はアタシか、摩耶ってんだ、よろしくな」

 

一方、次の艦娘である摩耶はそっけない。

だが、高雄と愛宕の二人に調子をくじかれた大神には、ちょうど良かった。

 

「ああ。摩耶くん、宜しく」

「色々話は聞いてるけど、実際に目で見たものしかアタシは信用しない。ま、頼むぜ、隊長」

「もう、摩耶ったら。私が鳥海です。隊長さん、よろしくです」

「こちらこそ宜しく、鳥海くん」

 

姉二人に調子をくじかれた様子を見て同じくかわいいと思ったものの、大神が応対しやすいよう手短に挨拶を済ませる鳥海。

 

「残りは軽巡・駆逐艦になる。ふむ、ちょっと時間を取りすぎたかな。みんな手短に済ませるように」

「ちょっと、いきなりそれはないじゃない! 7駆だけずるいわよ!」

 

ソワソワと自分の順番を待っていた駆逐艦が大声を上げる。

 

「武蔵くん、こっちの事は気にしなくてもいいよ、時間は取ってある。初対面だからこそ、丁寧にしよう」

「まあ、隊長が良いと言うのなら構わないのだが」

「それじゃあ、君の事を知りたいな」

 

そういって大神は先ほど大声を上げた駆逐艦へと視線を向ける。

 

「ええっ、私!?」

 

いきなり自分に話を振られ、狼狽する駆逐艦。

先ほどまで如何に自分を大神にアピールしようか必死に考えていたのが全部吹き飛んでしまう。

 

「え、あ……あんたが隊長ね!? ……ま、ま、まあ、せいぜい頑張りなさい!」

 

自己紹介なのに、何も自己紹介していない。

やってしまったと思うが、時既に遅し。

 

「えーと、君の名前は?」

「特型駆逐艦、5番艦の叢雲よ! 知らないって、全く、ありえないわね」

 

大淀や曙、周りの視線が若干厳しくなっていくのが分かる。

 

「数々の作戦に参加した名艦の私を知らないって、あんた、もぐりでしょ!」

 

半分泣きそうになりながら自己紹介になっていない自己紹介を続ける叢雲。

もう自分が何を言っているのか、自分でも分からなくなり始めている。

そして、

 

「――こんな筈じゃ! こんなんじゃ、鎮守府で戦っている隊長を見て一目惚れしましたなんて、もう言えないじゃない!!」

「叢雲ちゃん、言っちゃってるよ」

「――え?」

 

隣の磯波のツッコミでようやく我に返る叢雲。

 

「…………」

 

周りの生暖かい視線に耐えられなくなり、

 

「うわあああああああん!!」

 

顔を真っ赤にして叫びながら司令室を飛び出る叢雲であった。

駆逐艦たちが止めようと追いかけていく。

 

 

 

 

 

「……えーと、大佐、途中ではあるがそろそろ切り上げて良いかな? 私も追わねば」

「……そうだね。流石に俺は混じらない方が良いんだろうね、こういう場合」




横須賀艦娘との挨拶書いてて思った、死ねるw
これがあと3鎮守府分。次はもう少し考えねば。

あと、叢雲が暴走して他の駆逐軽巡は割を食いましたwww

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。