艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第一話 4 反撃開始!

現在進行形で深海棲艦に蹂躙されている警備府。

その近傍の海上では、一つの水雷戦隊が遠征から急ぎ警備府に戻ろうとしていた。

 

「おいっ司令官! 龍田っ! チッ、司令官たちと連絡が取れねぇ」

 

既に一戦交えたのか、衣服は乱れ、流れ落ちる汗もそのままだが、軽巡洋艦――天龍は表情に浮き出る焦りを隠そうともしない。

左目を眼帯で覆ったその姿は常ならば凛々しいが、今は殺気さえ身に忍ばせている。

 

「仕方ねえ、敵を突破して行くしかなさそうだな。付いてこいよ、8駆!」

「旗艦である天龍さんがそういうなら、朝潮、ご一緒いたします!」

「司令官が困ってるこのときこそ、大潮の出番です!」

「うふふふふ、敵中突破。楽しみねぇ~」

 

天龍同様に既に戦闘を行い、疲労を残しながらも軽快に答える朝潮、大潮、荒潮たち。

 

「ちょっと待ちなさいよ! 突破するって言っても太陽も高いし、敵艦隊には戦艦が二隻も居るのよ? 無茶じゃない!」

 

だが、満潮だけは容易に想像できる戦闘の苛烈さに姉妹が晒されることを思い、反論した。

 

「ああ、確かに満潮の言うとおり無茶だろうな」

「だったら――」

「けどな、満潮。このまま攻撃を受けている警備府を見捨てるって言うのか。

既に敵戦艦が一隻陸上に上がっているこの状況で躊躇ったら本当に警備府が壊滅するぞ」

 

天龍の叱責にも近い指摘に、満潮が項垂れた。

自分で分かっていながら反論したらしい。

 

「……分かってる、そんなの分かってるわよ」

「満潮、私達の心配はいいわ。今は警備府のみんなの方が大事」

「べ、別にそういうんじゃないんだからぁ!」

 

朝潮は項垂れた満潮の肩に手をかけ慰めの声をかける。途端真っ赤になって満潮は声を荒げた。

問題はないと、満潮の様子を見て天龍はそう判断する。

 

「よし、じゃあ行くぞ!」

「「「「了解!」」」」

 

先陣を切って飛び出した天龍に続き、第8駆逐隊も警備府への道を急ぐ。

 

「オラオラ! 天龍様のお通りだ! 道を開けろっ!!」

 

こちらに気がついた敵水雷戦隊の一隻、駆逐イ級に天龍は手にした14cm単装砲を向ける。

今は、警備府に戻るのが先決だ。こいつらとまともに戦闘をするつもりはない。

イ級にどけとばかりに、単装砲をぶっ放すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪に先導されて大神が建物の外に出ると、警備府は惨憺たる有様であった。

多数の施設が砲撃で破壊されており、基地としての機能が著しく低下しているのは間違いない。

先ずは――

 

「大神さん!」

「この砲撃の元を断つ! 砲撃の中心は……あそこだ!!」

 

悲鳴にも似た吹雪の呼び声に大神は、港から砲撃を打ち放つ二つの大きな人影を指差し答える。

 

「あれは……戦艦ル級と、重巡リ級です!」

「戦艦と重巡洋艦か。暁くん、君たちで戦艦と重巡洋艦の撃破は可能かい?」

「……夜戦ならともかく、昼戦は無理よぉ。暁たちの主砲じゃ装甲を抜けないもの」

 

暁の言う通り、駆逐艦の火力では無謀もいいところだ。

先程イ級に敗れそうになった吹雪に聞かないのは武士の情けか。

 

「そうか、無茶振りして済まなかった。なら、比較的見晴らしの良い左側から敵に接近して戦艦たちの注意を引いてくれないかい?」

「構わないわ。臨時司令官はどうするの?」

「勿論俺も戦う。けど分からないことがあるから、こうするのさ」

 

大神は鞘に収めた神刀滅却を抜き、弓矢を引く様にして構えて、霊力を高め始めた。

 

「臨時司令官、何を――!?」

 

大神の身体から立ち上る霊気を目の当たりにして暁たち第六駆逐隊の表情が驚愕に彩られる。

司令室で聞いた人による駆逐イ級撃破の報だったが、やはり常識外れすぎて話半分であったのだ。

 

「狼虎滅却! 天地一矢!!」

 

大神は矢を放つが如く踏み込み、視線の先、彼方の戦艦ル級に対し届かない筈の刺突を放つ。

だが次の瞬間、刀から稲妻が放たれ、ル級に向かって走る!

 

「ガアァッ!」

 

稲妻をその身に受けたル級から苦悶の声が上がった。

更に発射間際だった炸薬が誘爆を引き起こし、爆炎がル級を包み込んだ。

爆音に振り返ったリ級も炎に包まれる。

 

「「「え」」」

 

あんまりな光景に唖然とする六駆。

 

「戦艦まで倒しちゃったっていうんですか?」

「いや、流石にそこまでは無理だと思う」

 

呆然とした吹雪の問いに、霊力を解き放ち大きく息を吐いた大神が答える。

はたして大神の言うとおり、炎が消え去ると怒り狂うル級とリ級の姿が見えた。

 

が、ル級からはくすぶる煙が見え、少なくない手傷を負っていることが遠目にも分かった。

そして、怒りに燃えた瞳で周囲に視線をやるがこちらには未だ気づいていない。

どこから放たれたものか気づいていないようだ。

 

「けど手ごたえはあり。俺なら戦艦、重巡どちらも撃破できる筈だ。だから、暁くんたちが敵の注意を引き、俺がその隙に撃破する!」

「少尉さん、シンプルだけど良い作戦じゃない!」

 

手を叩いて、大神の作戦に賛同する雷。

 

「ただ、雷くん。敵にはむやみに接近しないでくれ。注意をひきつけてもらうだけで良いんだ」

「それくらい分かってるわ、少尉さん。私たちに任せてよ!」

 

自信ありげに胸を張って、答えるのだった。

 

「あと吹雪くんは俺についてきてくれ。敵戦艦に近づくまで注意を引き付けずに済む道が知りたい」

「はっ、はい。分かりました、大神さん!」

「よし。それじゃ、陸上での行動となるが作戦を開始する」

 

 

 

「臨時司令官、良い人みたいですね」

 

瓦礫の中を進みながら、電は呟いた。

 

「そうよね。自分から敵を撃破する役を買って出たり、私達のこと心配してくれたり、」

「司令官と一緒で普通の海軍の人とは違う感じなのです」

「こらっ、無駄話しないのっ。一人前のレディは作戦中にそんな事しないんだからねっ」

 

暁は雑談を始めた妹たちをたしなめる。

 

「ほらっ、もう少しで敵戦艦の注意を引き付けられそうなポイントよ」

 

今歩いている建物――誰も居なくなってしまった戦艦寮の影から出れば、砲撃を繰り返す敵ル級の視線から暁たちを遮る物はもうない。

戦艦とまともに撃ちあうなんてバカな真似をするつもりはないけれど、注意を引き付けないといけないからには砲撃は必要だ。

少なくとも、本当に撃破するつもりで砲撃しないと、囮と気づかれてしまうかもしれない。

 

「海の上のように軽快には動けないけど、行くわよっ!深海棲艦!!」

「了解なのです!」

「分かったわ!!」

 

せーので戦艦寮の影から駆け出すと、三人は自らの主砲である12.7cm連装砲を撃ち放つのだった。




天地一矢は本来接近戦の技なのですが、名前が遠距離攻撃に相応し過ぎるので、
敢えて遠距離攻撃技としています。


あと分かり難かったかもしれないので敵戦力についての補足を。

警備府を攻めている敵戦力は計二艦隊。
具体的には以下の艦隊になります。

第一艦隊
 戦艦ル級 陸上
 戦艦タ級
 重巡リ級 陸上
 重巡リ級
 駆逐イ級 陸上(撃破済み)
 駆逐イ級

第二艦隊
 軽巡へ級
 軽巡ホ級
 駆逐ロ級
 駆逐ロ級
 駆逐イ級
 駆逐イ級

他に外洋からの帰還を妨害する為の艦隊もあり。


さーて、日曜日投稿できなかった分、帰宅後にもう一話頑張って書くぞ~。

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