艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

36 / 227
説明会その2となります。



第四話 4 『華撃団』、発動!

「本題、ですか――」

「ああ大神。お前、この世界をどう思う?」

「どうって――」

 

大神は警備府での、深海棲艦との戦闘に明け暮れた日々を思い出す。

あれでは自分が来るまで、近海の掃討も出来ていなかった筈だ。

 

「深海棲艦に海を奪われた、危険な状態だと思います」

「そうだな、やつら深海棲艦のせいでシーレーンはずたずただ」

「ですが閣下たちが居られて、ただ手をこまねいていたとは――そうだ、深海棲艦については自分と神刀滅却は通用しました! なら、米田閣下たちの剣が通用しない筈が!」

 

大神の指摘に、米田たちが苦笑いを浮かべる。

 

「まあ、当然そう思うだろうな。けどよ、今の俺たちの霊力は一般人と同レベルなんだよ」

「そんなことが――なら、加山、お前は」

「俺も同様だ、霊力は一般人よりはマシってくらい、妖刀苦肉を振るっても深海棲艦相手だと傷つけるのがやっとって所だ。お前みたいに一刀両断は無理だ」

 

「では、まさか――」

 

「そう、『太正会』のメンバーといっても、霊子機関を起動し、深海棲艦を討つ事が可能なレベルの霊力を持っているのはお前だけなんだよ、大神。多分お前が持つ『触媒』の影響だろうな」

「自分だけ……そうだ、花組のみんなは? みんなはここに居ないのですか?」

 

図星を突かれたのか、米田たちが顔を見合わせる。

 

「花組か、確かにあいつらには霊力はある。だが、あいつらを戦わせることはできねぇ」

「何故ですか? 彼女達は俺と共に戦った仲間です、戦うことにためらいがあるとは――」

「まあ、あいつら本人にためらいはないんだがな――一つ問題が――」

 

言葉を濁す米田たち、と奥の部屋から2~3歳の一人の幼女が大神に近付いてくる。

 

「しょうい! やっぱりしょういですわ!」

 

しょうい、しょういと舌足らずな言葉で大神の足元を回る、何処か見た面影のある幼女。

だが、はっきりとは思い出せない。

 

「ええと、君は?」

「ひどいですわ、しょうい。わたしをわすれてしまったの?」

 

名を問う大神の言葉にヨヨヨと大げさに崩れる幼女。その姿を見て大神はピンと来る。

 

「まさか!? すみれくんなのかい!?」

「ええ、そうですわよ! おさないすがただからってしつれいですわ!」

 

気性は変わらないらしく、大神に食って掛かるすみれ。

だが、このままでは話が進まない。

 

「すみれ、大事な話の途中だ。向こうの部屋に戻ってなさい」

 

神崎会長がすみれをなだめる。

 

「わかりましたわ。しょうい、またあとで」

 

幼い姿で色気のないウインクをすると、すみれは奥の部屋に戻っていった。

 

「あれが花組の連中の問題だ――いくらなんでも、あの年齢の娘は戦いに出せねえよ」

「花組全員がそうなのですか?」

「ああ、巴里も、紐育も全員そうだ」

「そうですか――」

 

神崎会長が大神をじっと見据える。

 

「まさかとは思うが、あの年頃のすみれに何かしようとは思わんよな、大神くん?」

「いえっ、決してそのようなことは!」

 

眼光に押され一歩下がった大神の肩を真宮寺が掴む。妙に力が入っており正直痛い。

 

「大神くん、うちのさくらも同年代なのだが――分かっているよな?」

「はいっ、勿論です!」

 

 

 

 

 

「響ちゃん、暁ちゃん、睦月ちゃん、どうしたの?」

 

響、暁、睦月は自分の身体を改めて見やる。

理由もなく、勝利感が湧いてくる。

 

――まだ大丈夫、多分彼の守備範囲だ――

 

明石に至っては余裕さえ感じられた。

 

 

 

 

 

「話が脱線しちまったな。はっきり言おう、この世界で現在、深海棲艦とまともに戦える人間はお前だけなんだ、大神」

「それに、艦娘とも花組のときと同様に、霊力を同期させた攻撃を繰り出したようだね、大神くん」

「はい、間違いありません」

 

大神のその言葉を聞いて、米田、山口、花小路の三人は顔を見合わせ、大きく頷く。

 

「やはり、そうするしかないようだな。計画を進めよう」

「何をでしょうか?」

 

疑問に思う大神に山口が問いかける。

 

「大神くん、艦娘のことをどう思う?」

「共に戦う、大事な仲間です」

 

間髪入れず、迷いなく答える大神。

その姿に嬉しそうに頷く山口たち。

 

「そうだ、本来はそうあるべきなんだ、大神。だが、今現在の海軍はそうではない」

「ブラックダウンが起きて、艦娘を消耗品扱いする人間は表向き減ったんだよ、大神くん。ブラックダウンを招いたとして我々の前代の大臣達も退職したしね。だが考えても見たまえ。仕官学校時代から染み付いた考えがそう簡単に変わると思うかね?」

「それは――」

 

渥頼大佐のことが思い出される。

艦娘のことを物品として、消耗品として、自分に逆らえないのをいいことにやりたい放題していた。

 

そして、それは自分の記憶にあった士官学校においても過半の人間がそうだった。

 

「俺たち陸軍側で憲兵による取締りの強化もした。海軍側で講習や規定の制定もした」

「それでも、対症療法にしかなっていないのが現状なんだ。実際には警備府の司令官のように一部の良心的な者だけが艦娘たちを大切に扱っていて、大半の提督は裏では前と変わらず艦娘を扱っている」

「貴重な戦力であるはずの艦娘は、肉体的にも精神的にも磨り減り、使い潰されようとしているのが現状だ」

「ブラック提督を摘発し、左遷したところで、次にその職に就くものが同じような人間だ。なら事態は変わらない」

 

半ば諦観を含んだ三人の言葉に大神は思わず激昂する。

 

「しかし、それでは艦娘たちが! 彼女達が不憫すぎます! ブラックダウン後に士官学校に入学した、自分達より下の年代のものが提督となるまで、この状況を受け入れさせ続けるなんて納得できません!!」

 

「その通りだ、大神。だから俺たちは『お前がここに来た』と聞いてから動き続けていた」

「艦娘たちを解き放ち、その真の力を発揮させられる人間。大神くん、君の下で戦ってもらうためにね」

「どういうことでしょうか?」

 

疑問に思う大神の肩を米田が叩く。

 

「分からねーか、大神。華撃団だよ。この国にもう一度華撃団を作るんだ! 艦娘の、艦娘による、艦娘のための華撃団をな!」

「そう。全ての艦娘たちを華撃団に所属させるんだ、政府直属の陸海軍のいずれにも属さない華撃団にね」

「もっとも今度は秘密部隊ではないし目的も帝都防衛ではない。日本を、日本近海の全ての国を守る、『東アジア防衛思想』に基づいた華撃団となるがね」

 

「!?」

 

あまりに巨大な話に、大神は強張る。

 

「そして、大神よぉ。お前が提督、いや隊長になるんだ!! 全ての艦娘によって構成された華撃団、『提督華撃団』の隊長に!!」




やっとタイトル名が出せました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。