艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第三話 4 記憶の欠片

「響くんの記憶、望みがあるかもしれない」

「「「え?」」」

 

大神の発言に部屋にいた艦娘全員の疑問の声が上がる。

暁に至っては大神に迫り寄っている、当然だろう。

 

「隊長、ど、どういうことなの?」

「隊長のことだから、ヘンなウソ言ってる訳じゃないよな。早く話してくれよ」

「そうだよ、勿体ぶった言い方しないでよー」

 

天龍、川内たちも大神を疑った様子はない。

電、雷も早く聞かしてくれと目で訴えていた。

 

「ああ、勿体ぶった言い方になってすまない、みんな」

 

勿論大神に話さない理由はない。

いや、暁たちのことを思えば今話さないでいつ話すというのだ。

 

「響くんは……暁くんたちのことを知らないといってた、それは確かだ」

「……うん」

 

話題が話題だけに若干話しづらそうな大神、暁も苦々しい表情で頷く。

 

「けど、響くんが、暁くんたちのことを知らないと否定するとき、僅かに顔を歪めていた。自分に刻み込む、言い聞かせるように話していたんだ」

「本当か? オレには見えなかったぞ」

「大神さんの見間違いじゃないの?」

 

天龍たちが訝しげな視線をしている。

だが、大神はそれをやんわりと否定する。

 

「それは間違いないよ。俺は響くんたちのすぐ横にいたから。確かに見えた」

「そうなんだ。でも、それがどうしたのさ?」

「知らない相手と話すとき、そんな表情するかな?」

「……ううん、本当に知らない人相手ならしないと思うわ」

 

雷が頷く。大神が何を言おうとしているのか分かったらしい。

 

「と言うことは響ちゃん、電たちのこと完全に忘れたわけじゃないってことなのですか?」

 

電も声を上げる。希望が垣間見え気力が戻ってきたらしい。

 

「そう。忘れたと言っても、彼女には記憶が残っているんじゃないかな」

「……でも、響の記憶、どうしたら取り戻せるのかな?」

 

しかし、暁の声は沈んだままだ。

記憶が残っているとは言っても、表に出てこないのでは記憶喪失のようなものだ。

 

「艦娘の記憶喪失か、オレもそこまでは知らないや。明石なら知っているかな?」

「大神さん~、大神さんの霊力とか必殺技でどうにかできないの?」

 

川内が頼み込んでくる、が、いくら何でも霊力はそこまで万能ではない。

 

「記憶喪失の対処か。霊力によるヒーリングは損傷には効くけど、それはやったことがないな」

「なら、いいじゃない! ダメで元々。やってみようよ、ね?」

「分かったよ、明石くんの検診が終わった後にやろう」

 

川内が再度懇願する。軽い口上とは違って視線は本気だ、6駆が心配らしい。

大神にとっても断る理由などない。

 

「暁ちゃん。私たちもどうしたら響ちゃんの記憶が取り戻せるか、考えないと?」

「そうよね、隊長にばっかり頼ってたらダメよね。取り戻せるかもしれないんだし」

「お。6駆も少しは元気が出てきたみたいだな」

「よかった、これなら3人でも大丈夫そうだね」

 

響との今後について考えだす暁たちを見て、天龍と川内が安堵する。

 

「ありがとうなのです、皆さん。まだ、全快じゃないですけど。とりあえずは平気なのです」

「よし、それじゃ夕飯食べにいこーぜ」

「はーい、分かったわー」

 

発破をかける天龍に元気に答える雷。

 

「隊長も食べようぜ、それとも一人でここに残って何かするってのか? 下着漁りとか?」

「いいっ!? そんなことする訳ないじゃないか、天龍くん!」

「え? でも、隊長が欲しいっていうのなら……」

「だから違うって、暁くん!」

 

からかわれてワザとらしく焦る大神の様子に笑い出す6駆。

悪いな、と頭だけ下げる天龍に、いいさ、と視線で大神は答える。

とりあえずは大丈夫だ。

 

そう考えた天龍たちと共に大神は食堂へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

だが、大神はもう一つ可能性があることを敢えて言わなかった。

 

(どうして響くんはうなされていた? 『何に』うなされていた?)

(そして、何より、響くんはどうして俺の名を知っていたんだ? いつ知ったんだ?)

 

 

(……もしかして、響くんは、記憶が――)

 

それは6駆にとって、いや、響にとっても、残酷な可能性だったからだ。

6駆にも、目覚めたばかりの響にも、おいそれと云ってしまえるものではなかった。

少なくとも確信を得られるまでは。

 

 

(響くんのことについて、みんなに聞く必要があるな)

 

大神は響について、警備府のみんなに聞いてみる必要があると実感していた。




今回は話が重くなりすぎてボツったり、軽くなりすぎてボツったりと結構難産でした。

あと次話の展開について、活動報告でちょっとお聞きしたいと思います。

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