大神たちのお風呂場でのすったもんだは明石や救出した艦娘が帰ってきて一先ずの決着を迎えた。
そう明石が帰りの車の中で気が付いたのだが、よくよく考えたら化け物と化した火車の触手の粘液がどんな成分か分かっていないのに洗ってそれでおしまいにするのは不味い。
下水道にどんな影響を与えるか分からないし、もしかしたら、完全に陵辱されていなくても陵辱行為と同じ効果があるのかもしれない。
それを聞いた雲龍は蒼白になって昏倒しそうになった。
曙にいたっては思いつめた顔でならばと大神におねだりをしようとしたが、鹿島をはじめとする大神LOVE勢(好感度100軍団)のどぎつい視線を浴びて沈黙した。
まあ、明石の成分調査結果は火車の触手の粘液はいわゆるローションと同じようなもので、特段問題はないということであったので、とりあえずホッとする二人だった。
続いて、木喰により機艦娘にされていた艦娘の明石、夕張による検査が行われようとしていた。
だが、明石たちが検査の準備をしようとしていた間に、今度は渾作戦の為にパラオ方面へと出向いていた艦隊が救援のために来訪した欧州艦娘と共に戻ってきたのであった。
大神を欧州に再派遣させるだの、させないだので揉めていた欧州艦娘と帝國の艦娘であったが、共に大神の指揮下に帰属する事となって、轡を並べて戦って一先ず落ち着いたようだ。
しかし、帰還後の鈴谷や大井たちが感極まって、出迎えた大神に抱き付いた事で今度は居残り組との雰囲気が俄かに悪くなる。
「大神さん、無事だ……良かったよぉ」
それはパラオに居た大神を涙と共に見送った鈴谷や大井、ビスマルクなど同じ意見を持っていた艦娘にしてみれば当然の行動なのだが、他の艦娘にしてみればたまったものではない。
バチバチと火花と共に視線が交差し始める。
あわやこのまま正妻戦争が、と思われた場面であったが、
「はいはい、艦娘爆弾にされてた艦娘も一緒に検査しますから争わないで下さいねー」
と、艦娘爆弾にされていた山風たちも、元機艦娘と一緒に検査したほうがいいだろうと明石が連れ去る事で毒気を抜かれてしまった。
明石たちにつれられて保健室へと向かう艦娘たち、検査が終わるまでは時間はかかるだろう。
しかし、その間、何をしたものかと悩む暇は有明の艦娘には与えられなかった。
間宮、伊良湖たち主導で準備されていた欧州艦娘の歓迎会を、山風たち、酒匂たちの歓迎もかねて行う為に拡張準備を手伝って欲しいと、飾り付けなどの人手として借り出されて行ったのだ。
となると残るは歓迎される側の欧州艦娘となるが、
「あの、ザラもお料理は出来ます! 自己紹介代わりにお料理を作らせてもらっても宜しいでしょうか?」
「プリンツも一般的なドイツ料理ならお手伝いできます!」
「それなら、イタリアも参加させていただいてもいいでしょうか、うふふ」
「おお、そう言うことなら、私も腕をふるってロシア料理を振舞おう!」
「皆さんが参加するのなら、美食の国、フランスが黙ってるなんて出来ません」
と、料理の出来る各国の艦娘たちが間宮に直訴。
間宮、伊良湖としても準備した各国の料理の味付けが、本場の人間の口に合うものか確認するチャンスであるし、把握してない料理があれば覚えておきたい。
そこまで行くと欧州艦娘の歓迎会といっていいものか多少微妙なものであるが、今後有明で生活して貰う上で欧州艦娘の食事をどうするかは、一つの問題であったのでちょうどいいだろう。
結果、大神の他には、料理の出来ない欧州艦娘、ビスマルクとU-511、アクィラ、リベッチオ、ルイージが残されるのであった。
さて、時間までは休憩室で何かみんなで出来るゲームでもしようかと思う大神だったが、
「ねえ、イチロー。歓迎会まではまだ時間があるわよね、剣道場を見せてもらってもいいかしら? 有明鎮守府にはあるんでしょう、剣道場」
「ああ、いいよ。そういえば、トゥーロンでの訓練では地中海奪還戦のスケジュールの都合もあって剣術は教えて上げられなかったよね。見るだけじゃなく、少し練習でもするかい?」
「ホント!? 是非、お願いしたいわ!!」
「リベも教えてもらいたい!!」
ビスマルクの熱烈な要望もあって、剣道場での剣術の演舞や、練習を行う事と成るのだった。
先ずは剣道着に着替えて剣術の演舞を披露する大神。
「はぁー、やっぱりイチロー、カッコいいわ~」
「すっごーい、綺麗な剣舞~」
「すごい、ゆーもこんな風に、なりたい」
やはり欧州の公園で見る剣術の練習と、剣道場で見る剣術の演舞では全く受ける雰囲気が違う。
一言で言うと大神に惚れ直すビスマルク、リベたちにも概ね好評なようだ。
次は練習である、ようやく川内や鳳翔のように、手取り足取り教えてもらえると期待を表情いっぱいに表すビスマルク。
「それじゃ、前からお願いされていたビスマルクくんから教えていくよ。先ずは――」
そして、ビスマルクは歓迎会が開かれる時間まで、思う存分大神に剣を教えてもらう至福の一時を味わう。
「うん、ビスマルクくんは結構筋がいいね。俺としても教えがいがあるよ」
「本当っ! そうでしょ。やっぱりそうでしょ、イチロー♪ もっと褒めて♪」
しかも、終始大神に気付かれないように他の艦娘への威嚇を忘れず、大神との至福の一時を少しでも長く味わおうとするのだった。
今回で終わりにするつもりだったのですが、
歓迎会、自己紹介の前段が思いの他長くなったので、分割します。
次回歓迎会+新艦娘の自己紹介で終了予定。