「ハイ、ダーリン♡ 一口召し上がれ、あーん」
そう言って私は彼氏の大神さんに自分のパフェをすくって、食べさせようとする。
今日は天気も良いから、オープンテラスで学校帰りのデート。
同じ学校の子とかが、阿賀野たちの事を遠巻きに見てる。
「いいっ!?」
「阿賀野のパフェ食べてくれないの? お願い……」
当然のように驚く大神さんだけど、そんなところが可愛くて好きなの。
でも、こうやって阿賀野が上目遣いでお願いすれば――
「――分かった。うん、阿賀野くんのパフェ頂くよ。あーん」
大神さんはお願いを聞いてくれる、えへへ。
ゆっくりとスプーンを大神さんの口元にもって行くと、大神さんがパクついた。
「やっぱり、生クリームたっぷりのパフェは甘いや。ちょっと口直ししたくなってきたよ」
甘いものがそこまで得意ではない大神さん、目元にちょっと皺がよってる。
「そうかなあ? 阿賀野はもっと甘くても良いくらいなんだけど」
と呟きながら大神さんの間接キスを堪能しようとパフェを一口食べる阿賀野。
うーん、もっと甘くてもいいくらいなんだけどな。
と、大神さんから目を離していたら、
「じゃあ、お互い口直ししようか」
と顔を横に向けられた。
ちょ、ちょっと待ってと言う間もなく、大神さんの凛々しい顔が近づいてくる。
そして、そのまま唇を奪われる阿賀野。
「ん……」
やんっ、大神さん、舌まで絡めてきた、大神さん口直しどころか阿賀野を全部味わう気だよ~。
「んぅ……」
あ、でもパフェよりもこっちの方がずっと甘いかも。
大神さんの舌が阿賀野の中をくまなく蹂躙していく。
もう息をする事すら惜しくて阿賀野も大神さんの唇を、口内を舐るように味わう。
あ、阿賀野があーんして食べさせたクリームが少し残っている、舐めちゃお。
でも、そうこうしていくうちに、阿賀野の息が続かなくなって意識が朦朧としていく。
ようやく大神さんが唇を離してくれた頃には、阿賀野は椅子にへたり込んで顔を赤らめ深呼吸。
もう、ダメ。
大神さんの事しか考えられない。
パフェの味も忘れちゃった、それくらい大神さんとの甘い甘いキスが頭に残っている。
ちょっと汗もかいちゃったから、制服の胸元緩めたほうがいいかな。
「ダメだよ、阿賀野くん。そんな姿は、俺の前でだけにして欲しいかな」
大神さんの前で服を緩めるシチュエーション?
それって……そう言うことをするタイミングしかないじゃない!?
瞬時に顔を赤らめる阿賀野。
で、でも、そう言う事を言うって事は、大神さんもそのつもりはあるって事なのかな。
俯いた顔を大神さんの方に向けると、大神さんはニッコリ微笑んでいた。
うえーん、大神さんがどう考えてるのか分からないよー。
なんて事を考えていると、
「また甘いものが欲しくなってきたかな。もう一度口直ししようか。阿賀野くん?」
「…………はい」
一度攻めに回った大神さんは結構容赦ないのでした。
そして、その夜、阿賀野は実は大ピンチである事を知ったのです。
「うそ、体重○○キローっ!? なんでー?」
答えは考えなくてもわかっている、食べすぎだ。
食べなきゃいいのは分かってるのだけど、でも食欲の秋と言うし、食べたいしな~。
「ぴゃん♪ 阿賀野姉がこのままだらし姉と化したら、酒匂にもチャンスが」
「ないわよ、そんなの!」
酒匂は大神さんを家に連れてきたときからとんでもない勢いで懐いている。
と言うか、妹3人は確実に大神さんをターゲッティングしている。
危険極まりないのだ。
「でも阿賀野姉ー、このまま太ったら流石に振られちゃうかもしれないよ?」
「う……どうしよう」
自分だけではどうにも出来そうになかったので、翌朝登校中に大神さんに相談する。
え? 彼氏に体重の事隠さないのかって?
だって大神さん察しがいいんだもん、こんなの一緒に居たらすぐばれちゃうよ~。
「あれ? でも阿賀野くんのお弁当は、そんなに量多くないよね?」
「え……と、物足りないので実はパンを買って食べています」
「それだけでも減らせば、大分違うんじゃないかな?」
分かる、大神さんの言う事は死ぬほどよく分かる!
だけど……
「でも、もう習慣ついちゃって……」
「そうか……うん、よーしいい手を思いついたよ。今日から昼食も公園で一緒にしよう」
「ええっ!? 大神さんこっちの方まで来るの大変だけど大丈夫なの?」
「阿賀野くんのためならこれくらい軽い軽い。12時に○△公園で待ち合わせしよう」
そしてお昼になって大神さんとの待ち合わせ時間が近づく。
えへへ、まだ学校が終わってないのに待ち合わせってちょっとドキドキするかも。
同じ学校の妹3人がどこからか見ているかもしれないけど、もう気にならない。
「阿賀野くん、待たせたかな?」
そんな事を考えていたら、大神さんがお弁当を持って現れた。
「ううん、ぜんぜんっ。大神さんが来るの楽しみだったよ!」
そして、二人でベンチに並んで話しながら昼食を食べる。
それはとても楽しい時間だったのだけど、お弁当だけじゃ、やっぱりお腹が物足りないなー。
「まだ食べたいって顔してるね、阿賀野くん」
「うん、やっぱり、もう少しおなかに入れたいかなー」
「じゃあ、これからとっておきの物を食べさせてあげるよ」
そう言って、大神さんは阿賀野の顔を横に向ける。
って、え?
これ昨日と同じ構図!?
そう思う間もなく、そのまま阿賀野は唇を奪われた。
「んんっ!?」
やんっ、大神さん、いきなりすごく激しい!?
舌を絡めてくるだけじゃない、唾液のやり取りまでしようとしてる!?
「んぅ……」
あうう、大神さんの唾液が阿賀野のお腹の中に入ってくるよぉ。
すごい、パンなんかじゃ満たせないくらいにお腹が熱くなってくる。
その間も、大神さんの舌が阿賀野の中をくまなく蹂躙していく。
もう息をする事すら惜しくて阿賀野も大神さんの唇を、口内を舐るように味わう。
大神さんがしたように阿賀野の唾液を大神さんに飲み込ませようとする。
大神さんはコクリと阿賀野の液を飲み込むと、再び阿賀野を蹂躙する。
でも、そうこうしていくうちに、阿賀野の息が続かなくなって意識が朦朧としていく。
大神さんが唇を離してくれた頃には、阿賀野はベンチに倒れこんで顔を赤らめ深呼吸。
もう、ダメ。
大神さんの事しか考えられない。
小腹が満ち足りてない事なんて忘れちゃった。
大神さんとの甘い甘ーいキスのことしか頭に残っていない。
「阿賀野くん、お腹いっぱいになったかな?」
でも、大神さんはそれほど堪えていないようだ、それがちょっとだけ悔しい。
だから、阿賀野は起き上がって大神さんに上目遣いで言った。
「もう一回……して…………」
二度目のキスはもっと激しかった。
『おなかいっぱい』
ディープキスを交わす阿賀野と大神の二人から眩い光が照射される。
火車であった醜い肉塊はその光を受けて浄化され蒸発していく。
トラックを満杯にしても余りあるほどの量であった肉塊はあっという間に浄化され、元の火車の身体を取り戻そうとしていた。
だが、それは身体中のあちこちに穴が開いた醜い死体であった。
やがて、火車の振りまいた炎が火車自身の死体に燃え移る。
脂ぎっていた肉塊の脂のせいか、火車の死体はあっという間に燃え広がり、燃え尽きていく。
それは余りにもあっけない火車の最後であった。
死ぬがよい