艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第一話 遠き果ての警備府にて
第一話 1 着任


「……駆逐艦?」

 

自らを駆逐艦と名乗った眼前の少女。

しかも吹雪といえば、我が帝國が誇る特型駆逐艦の一番艦ではないか。

何故女の子が駆逐艦を名乗るのか、いわゆる軍事嗜好なのだろうか。

大神は思わず、眼前の少女に問いかける。

 

「はい!駆逐艦の吹雪です!

少尉さんと同じで、まだ警備府に配属になったばかりなんですけど……

でも、頑張りますから!」

「ええ、こちらこそよろしく頼みます」

 

こぶしを握って気合を入れる吹雪に、大神は握手をしようと手を伸ばした。

分からないことだらけだが、こうなっては流れに従うしかない。自分の疑問はその後だ。

一瞬怪訝そうな表情を浮かべる吹雪だったが、すぐに大神の意図に気づくと大神の手を握った。

 

「では、警備府まで案内いたしますね。敬語は使わなくて良いですよ、少尉さん」

「分かった。こちらこそよろしく頼むよ、吹雪くん」

 

吹雪の手の感触は柔らかく、やはり駆逐艦らしさを感じる武骨さはかけらも存在していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官、大神一郎少尉をお連れいたしました」

「入りたまえ」

 

警備府の重厚な建物の奥、司令室の前でドアをノックすると、吹雪は中へと大神を導く。

 

「失礼します」

 

入ると、恰幅のよい初老の男性が居た。軍人には珍しく険しさはなく、人のよさそうな笑顔を浮かべている。

傍には秘書らしき女性の姿もあった。髪を額で左右に分け、胸を強調する服装をしている。体の線が浮き彫りになるその服装はやはりスカートの丈は短かった。

 

「は?」

 

居たのだが、司令室の中はカウンターバーの様相を呈しており、更には幼いといっても良い少女たちがジュースらしきものを片手に雑談していた。

壁紙からして、シックな佇まいを見せており、先ほどまでの重厚さはかけらも存在しない。

ここは、本当に警備府の司令室なのだろうか?

驚きで思わず声が口に出る。

 

「どうしたのかね、大神少尉」

「いえ、何でもありません!」

 

司令官の声につい大きな声で返答する大神。

雑談をしていた少女たちが反応し、びくりと身を震わせるとこちらに視線を投げかける。

 

「少尉、ここには駆逐艦が居るのでな、大きな声は控えてくれないかな」

「そうだよ~、6駆の子達が驚いちゃうよ~」

「失礼いたしました」

 

司令官と秘書にたしなめられ、頭を下げる大神。

 

「まあ、良いだろう。大神くん、着任報告を聞こうか」

「はっ。大神一郎少尉。本日○月○日付けで、警備府に着任いたしました。

粉骨砕身の覚悟で努力していく所存です。

ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします!」

 

「宜しい。警備府は君を歓迎する。あとは、そうじゃな。吹雪」

「はい、何でしょうか? 司令官」

 

満足げに大きく頷く司令官。

続いて、大神の傍らに立ち続けている吹雪を呼ぶ。

 

「大神少尉の案内ご苦労じゃったな、引き続きで悪いが、少尉に警備府を案内してもらえんかの?」

「分かりました、司令官。任せてください!」

 

胸を張り、新たな任務に目を輝かせる吹雪。

大神は自分にもそんな時期があったなあと相好を崩し微笑んだ。

 

「では、早速ですが警備府内を案内いたしますね、少尉さん」

「失礼いたしました」

 

敬礼を行い、司令室を後にする大神たち。

だが、少女たちを前に着任報告を行って問題なかったのだろうか?

見た目では吹雪よりも更に幼い少女のようだったが。

司令官たちも少女たちを駆逐艦と呼んでいたが、駆逐艦とは何かの略語なのだろうか。

帝國華撃団としての経験?から表情には出さなかったが、大神の脳内は現状をなんとか認識しようとフル活動中だった。

 

 

 

 

 

「では、先ず少尉さんも使用すると思います酒保から案内いたしますね、明石さーん」

「はいはい、こんな時間に何のようですか? 吹雪さん」

 

屋内を歩くことしばし、通路の先に売店らしきものが見える。荷物の整理をしていたのかうずくまっていた人影が吹雪の声を聞いて、立ち上がった。

 

「新任の少尉さんの案内です。あ、こちら工作艦の明石さんです、少尉さん」

「初めまして、少尉さん。工作艦の明石です。酒保に御用の際はよろしくお願いしますね」

 

桃色の髪を耳元で大きく結わえ、セーラー服らしき衣服に身を包んだ少女がこちらを振り返る。

吹雪のセーラー服とも異なるそれに大神は目をやり、

 

「んなっ!?」

 

スカートの横から覗く腰のラインに赤面し、大神はロウ人形のように固まった。

振り返る際に翻ったスカートから覗く、艶かしい身体の線から慌てて視線を逸らす。

 

「ん? どうしたんですか、少尉さん? いきなり顔が赤くなっちゃいましたが、風邪ですか? なら、任せてください。艦娘の修理、健康面をサポートするのも私の役目ですから」

 

大神が照れて赤面していると気づかない明石は、酒保の中から出てこちらへと歩いてきた。

歩くたびに色々と見えそうになる、恥ずかしくないのだろうか?

 

「い、いや、違うんだ! これは風邪とかそういうのじゃなくて……」

「大丈夫ですよ、少尉さん。明石さんは人間の修理も得意なんですから」

 

聞き捨てならない台詞に、大神の背中を冷や汗が流れ落ちる。

というか修理って何だ。

 

「そうですよー。人間の方は専門ではありませんが、司令官の健康面もサポートしていますから」

「そうじゃなくて、明石さん、その格好!」

「格好、私の格好がどうしたんですか?」

 

キョトンとした顔の明石は、自分の手足に視線をやる。

明石からすると、服装も髪も特に乱れていない。ごく普段の明石の服装だ。

 

「普通だと思いますが」

「いやいやいや! スカートの丈もそうだけど、腰周りがそんなに見えて普通なわけな――あっ」

「――腰周り。あぁっ!?」

 

思わず発言してしまった大神の言葉に、意識してなかった自分の服装を見慣れぬ男性に見られていることの恥ずかしさに気がついたらしい。

明石も赤面すると、スカートの脇を隠そうとセーラー服の上着を引っ張る。

 

赤面した二人の間に、気まずい空気が漂う。

 

「ええと、明石さんお仕事の邪魔してごめんなさい! 大神さん次の場所を案内します――」

 

気まずい雰囲気を察した吹雪は、大神を連れ酒保を立ち去ろうとした。

 

 

だが、次の瞬間。警備府を揺るがす衝撃と爆裂音が響き渡るのだった。

 




一日に何回も投稿してよいものか考えましたが、
早いところ大神さんを戦わせたかったので、それまではハイペースでかければと思います。

大神さんには一部艦娘の格好は刺激的過ぎる気がするんだよなー。

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