艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第十四話 12 反撃! パラオ強襲艦隊撃滅戦2

敵深海パラオ泊地強襲先遣艦隊は大神と時雨との合体技によって全滅した。

欧州艦娘から不満そうな視線が少々大神に向けられはしたが、それはそうとして自分達の役割は一先ず終わった。

 

「ねぇ、提督。私達はこのまま敵主力を迎え撃つの?」

 

ザラの問いかけに一瞬考えをめぐらせる大神。

しかし自分ならともかく、このまま敵主力を迎え撃つのは流石に艦娘の燃料、弾薬が心許ない。

 

「いや、一度パラオに帰還して補給しよう。このままでは万全な状態での戦いも出来ないし、榛名くんたちが敵主力の情報を得て、水上打撃か空母機動のどちらを選ぶか判断した方がいいからね」

「そう言う事ならわかりました、ポーラも分かったわね。一度戻るわよ」

「やりました、一休憩ですね~。ポーラも水分を補給したいと思っていたんです~」

 

懐から瓶を取り出すポーラ、勿論それはワイン瓶だ、と言うか何処に隠し持っていたんだ。

 

「女にはヒミツの隠し場所が何箇所もあるんですよ~。さて、一つの勝利には一杯の美酒を、と」

「えーと。ポーラくん、まだ敵主力艦隊との戦いが残っているから、飲むのは流石に……」

「いいじゃないですか~。せっかくの合体技の機会なのに提督に選ばれなかった残念さ、飲まないとやってられないのです~」

 

まだ酒を飲んでいないはずなのに、ポーラは微妙に絡み上戸だ。

ナチュラルハイと言うべきか。

 

「こら、ポーラ! 提督の言う通り、まだ飲んじゃダメ!」

「お姉さまもそんな事言わずに呑みましょうよ~。お姉様も大神さんと合体技したかったんでしょ? ビスマルクさんとか、時雨ちゃんみたいに大神さんとラブラブして~、キスして~」

「……そ、そそ、そんな事考えていないんだから!」

 

どうやら図星だったらしく、いつもの語気がザラからは感じられない。

 

「あ~、お姉さま。合体技じゃなくて『合体』したかったんですか~? 流石にそれは見せられませんよ、青少年の皆様方には~」

「――っ!? ポ、ポーラーっ! 何言ってんの~!!」

「あ、やば。からかい過ぎました~。撤退、戦術的撤退なのです~」

「待ちなさい! ポーラ!!」

 

激昂したザラがポーラを追いかけていく。

この様子ではそう時間はかからずに、ポーラはお縄となるだろう。

となれば、やっておく事べきをやらなければならない、時雨が横から大神の顔を覗き込む。

 

「ねえ、お兄ちゃん。僕達は帰還前に浄化した敵艦隊から新たな艦娘が見つかるか確認した方が良いんじゃないかな?」

「え?――時雨くん、その呼び方は……」

 

その呼び方は先程の合体技の延長線上のもの、よほど時雨は気に入ったのだろうか。

 

「ダメ――かな? こう呼んだら? お兄ちゃんがダメって言うなら止めるけど」

 

上目遣いの時雨に一瞬躊躇う大神だったが、一部欧州艦はイチローとまで呼んでいるわけだし、呼び名くらい艦娘の自由にさせても良いかと思い直す。

 

「いや、時雨くんがそうしたいなら構わないよ」

「ホント!? じゃあ、これから大神さんの事は『お兄ちゃん』って呼ぶねっ」

 

喜びのまま、ふわりと大神に笑ってみせる時雨。

そのあまりの可憐さに大神は一瞬言葉を失って見入った。

 

「イチロー、時雨ばっかり構ってずるいわ! 私達も頑張ったのだから褒めてちょうだい!!」

「アドミラルはロリコンだったのか!? 私の身体に触っていたから違うと思っていたのに」

 

が、その仲良さげな様子に今度はビスマルクとグラーフが機嫌を損ねたようだ。

正に無限ループになるかと思われたが。

 

「ビスマルクさん、グラーフさん。お兄ちゃんには帰還する途中で構ってもらえばいいんじゃないかな。まずは海域の捜索をしようよ?」

「……分かったわ」

「……そうだな、まずはそうしよう」

 

渋々承諾するビスマルクたち。

その後の海域捜索で波間に漂う一人の艦娘を発見する。

もちろん、彼女を救出した後にパラオ泊地へと帰還する大神たちであった。

 

 

 

パラオ泊地到着後、最初に起きた事は救出した艦娘の目覚め、そして自己紹介だった。

 

「香取型練習巡洋艦一番艦の香取です。はい、練習航海の指揮は、お任せください。必ずや貴艦隊の練度向上にお力添えできると思います」

『香取姉ぇっ? 香取姉なのっ!?』

 

自己紹介を行おうとする香取だったが、自分の姉の着任と知って、鹿島が通信で乱入してきた。

 

「あらあら、鹿島の方が先に着任していたのですね。二人で練習航海もいいかもしれませんね」

『香取姉、事前情報なしに遠洋航海するのは危険だよ。鎮守府に帰還したら、私の使っている練習航海のルートとか教えてあげるね』

「そうですね、そこは素直に教えていただきましょうか」

『うん、任せてっ。制服とかも用意しておくから』

 

そう言ってルンルン気分で鹿島は通信を打ち切る。

目の前には二人のトークに呆気に取られた大神たちが残されていた。

 

「私ったら、ごめんなさいね。妹の鹿島が居ると分かって、つい嬉しくなってしまって……」

「いや、艦娘とは言え肉親が居れば、嬉しくもなるだろうさ。気にする必要はないよ」

「そうだね、僕もお兄ちゃんが居ればそれだけで嬉しくなってくるし」

『大神くんっ! 時雨ちゃんに『お兄ちゃん』って呼ばせるなんて、何をしたんですかっ!?』

 

危険ワードに黙っていられぬぞとばかりに、再度通信で乱入する鹿島。

うん、この方が彼女らしい。

 

「いいっ!? 俺は何もしていないよ、時雨くんとはちょっと――」

「そうよねー、イチローはちょっと時雨と合体技をぶっ放しただけよねー。そのまま流されただけよねー」

 

ビスマルクが不機嫌そうに呟く。

 

『ああ、また……大神くん! トゥーロンでやったと言う合体技の特訓は、これから有明鎮守府でもするようにして貰いますからね!! 欧州艦ばかりずるいです!!』

「なん……だと…………」

 

鹿島のプラン、練習における嬉し恥ずかし恐怖のメニュー追加に愕然とする大神。

トゥーロンでの地獄が有明でも再現されると言うのか。

 

と、そうこうしているうちに各方面の敵を撃退に出ていた艦娘たちが帰還する。

 

「大神さん、北方の敵機動部隊を撃破しました、褒めて下さい」

「戦艦扶桑、南方の敵水上部隊を撃破致しましたわ、ああ……隊長、そのお顔をよく見せて下さい」

「お姉さま!? この山城と言うものがありながら、隊長に何をするつもりですの?」

「大佐! 敵西方の艦隊は撃破したぞ! これから主力に対してどう抗するのか決めるのだろう!? 是非とも我らを指名するが良い!」

 

これで、敵の遊撃偵察に出た榛名たち以外は帰還した。

あとは、榛名から情報が齎されれば――

 

『榛名たち、遊撃偵察部隊より連絡します! 敵主力部隊の存在を確認しました! 敵主管艦隊は水鬼級、姫級を擁する水上打撃艦隊となります! 但し、その護衛に多数の敵機動部隊を確認!』

「榛名くん、よくやった! 敵主力との直接の交戦は避け、パラオへ帰還するんだ!」

『了解しました!!』

 

榛名からの情報を聞いて、大神は補給中の艦娘たちに向き直る。

 

「みんな聞いたとおり、敵艦隊は機動部隊と水上打撃部隊の二重構成で成っている」

「大神さん私達は敵主力にどう対抗するの? 水上打撃? 空母機動?」

 

川内が手を上げて、大神に質問する。

 

「主管艦隊の撃破のみなら水上打撃が望ましいが、主管の撃破のみでは、パラオ泊地に危険が残る。だから、今回はここに居る日欧の艦娘たちで空母機動と水上打撃の二つとも連合艦隊を作る!!」

「「「えーっ!?」」」

 

連合艦隊二艦隊による同時反撃など聞いた事がない。

艦娘たちにどよめきが走る。

 

「その上で南ルートと北ルートから同時に反撃、敵艦隊を完全に撃破する! 空母機動部隊は敵機動戦力を! 水上打撃部隊は敵主管水上打撃艦隊を撃滅する!!」




15冬最終マップの始まりです。

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