艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第十四話 10 反撃! パラオ強襲艦隊撃滅戦0

欧州艦隊の名乗りに続く、ビスマルクの爆弾発言。

一瞬時が止まった日本の艦娘たちの中、いち早く復活したのはやはりLOVE勢筆頭の金剛だった。

 

『いきなり何言うデスカー! 隊長は私達の隊長なのデース!』

「その服装……あなたが金剛ね。あなたは英国製なのだから、欧州に戻ってきてもいいのよ? 美味しい紅茶もあるし」

 

さらりと、ビスマルクが日本の艦娘に揺さぶりをかける。

しかも本場英国のティーパーティー付きだ。

 

『え? 美味しい紅茶……そ、そそそ、そんな誘惑には負けないのデース!!』

『お姉さま! おもいっきり揺さぶられてどうするんですか! 一人だけ隊長と一緒だなんて行かせませんからね!!』

 

比叡、それはどっちの意味だ。

 

『そうです! あの観艦式の日、金剛型四姉妹で、日本の艦娘全員で誓い歌った提督……いいえ! 大神さんとの絆はどうするんですか!?』

『ハッ! 確かに!! そう、隊長はもう任務を果たして帝國に戻って来たのデース! 正式に艦隊の指揮権も移行したのデース! もう隊長は! 私達の隊長なんデース!!』

「違うわ! だって私達の指揮権もまだイチローにあるんですもの!!」

『それ、やめるデース!! 隊長の事を名前で呼ぶなんて失礼デース!!!!』

 

再度、大神の事を名前で呼ぶビスマルクに噛み付く金剛。

 

「あら、イチローは認めてくれたわよ」

『ぐぬぬぬぬ! なら! 私も! 名前で呼ぶデース!! Hey、隊長! これから『イチロー』と呼んでもいいデスカー?』

 

上がったテンションのまま、大神に問いかける金剛。

 

「え? ああ、俺は構わないけど」

『えぇっ!? じゃ、じゃじゃじゃあ、呼びますヨー! い……い、いち…………やっぱりダメデース! こういうのは、時間と場所と、ムードとタイミングをわきまえるものなのデース!』

 

顔を真っ赤に染めて、イヤンイヤンする金剛。

普段は積極的だが、結構土壇場では乙女だったりする。

 

「ふっ、『イチロー』と呼んでるのは私達、欧州艦娘だけのようね! その程度の絆だと言うのなら私たちには勝てないわよ!!」

『怖気づいちゃダメです、金剛さん! ビスマルクさん、そうは問屋がおろしませんよ!! 逃がしませんからね! 『一郎くん』!!』

「か、鹿島くんまで!?」

『私を浚いに来てくれるって言ったのに、約束してくれたのに……一郎くん酷いです…………』

 

そう嘆く鹿島の目元には涙が光っている。

急に罪悪感に襲われる大神。

 

「鹿島くん……」

『隊長ー! 騙されちゃ駄目デース! 鹿島ー! 目薬差して泣き真似しちゃ駄目デース!!』

『ちょっと金剛さん、今いいとこだったんですから邪魔しないでくださいよ!!』

 

予想通りの仕込みをしていた鹿島に突っ込みを入れる金剛。

しかし、

 

「ふふふ、こんなときに同士討ちだなんて、日本の艦娘敗れたり! ね、プリンツ?」

「はい。勿論です、ビスマルクお姉さま♪ アドミラールさんは共有しちゃいましょう。帰りのシベリア鉄道での旅行、楽しみですね~♪」

 

ビスマルクとプリンツは仲良く共有する事に決めたようだ。

だが、最後の言葉を黙って聞いては居られない艦娘が居た。

 

『シベリア鉄道……もしかして、あなたたち欧州の艦娘は知らないのですか? シベリア鉄道で何があったのか…………』

 

勿論神通だ。

 

『何があったかですって? イチローが川内、鳳翔とモスクワまで行ったんでしょう? それ以外に何があったの? パリでのティーパーティでも、トゥーロンでの生活でも聞いてないわよ』

 

川内と鳳翔が秘密にしようと話していないのだから、ビスマルクたちに知る術はない。

加山を罠にはめて白状させた有明鎮守府とは違うのだ。

 

『そう、貴方達は知らないんですね。今現在における、最大の敵はそこに居る川内姉さんと鳳翔さんだと言う事に』

「ちょっ! 神通!? なんでそんな事を知ってるのよ!!」

 

シベリア鉄道で過ごした大神との素晴しき、でもバレたら命の危険な日々が晒される。

そう感じた川内は慌てて神通を止めようとする、鳳翔は思い出して顔を真っ赤にしている。

だが、その態度こそが加山から白状させた事が真実なのだと神通に確信させた。

 

『蛇の道は蛇と言いまして、川内姉さんと鳳翔さんは――』

「ひーっ! やめて、やめてよ、神通!!」

『やめてあげません、川内姉さん。いいですか、欧州の艦娘の皆さん、姉さんたちは――』

 

そして、二人の罪状が次々と明らかになっていく。

有明鎮守府で行われる筈だった魔女裁判がここに開幕した。

 

「一つ屋根の下どころか同室で一週間も過ごした……」

「夕焼けの綺麗な湖で鳳翔さんとアドミラールさんが抱き合いながらデート……」

「川内がイチローに抱かれて一晩を過ごした……」

「川内がイチローを騙して、『結婚しよう』と云わせた……」

「寝惚けた川内がアドミラールさんを抱きまくらにした……」

「鳳翔たちがイチローの着替えを余すことなくバッチリ見た……」

「鳳翔とイチローが同じシャワー室で一緒に洗いっこ……」

「鳳翔だけずるいと川内ともシャワー室で洗いっこ……」

 

罪状を次々と読み上げる神通の言葉を淡々と繰り返すビスマルクたち。

俯いたビスマルクたちの顔からは表情が失われていく。

当然といえば当然だ。

トゥーロンで大神とビスマルクたちは一つ屋根の下で暮らしてはいたが、そこまでイヤーンな事は合体技の練習くらいだ。

それ以外はそこまで密着に接する事などなかった。

なのに。

 

「なのに、川内と鳳翔はそこまでイチローとの密着生活を満喫していたなんて……」

「「「ひぅっ!?」」」

 

ゆらーりと、顔を上げ、川内と鳳翔を見やるビスマルク。

はっきり言って怖い、川内と鳳翔が悲鳴を上げる。

ついでに時雨や山風たちも悲鳴を上げている、勿論それはとばっちりである。

 

『ねえ、ビスマルクさん? 私達はお互いに争う前に最大かつ、共通の敵を殲滅した方が、罪には罰を以って対応した方がいいと思いません?』

「そうね、私も同じ事を考えていたわ。目には目を、歯には歯を、とも言うし」

 

神通とビスマルクが通じ合ったようだ。

もし同じ場所に居たのであれば、がっちり握手をしたに違いない。

 

『川内姉さんたちが帰ってきたら、姉さんたちにはウルトラスペシャルベリーハード訓練をしてもらう予定だったんです。先ずは帝國の全艦娘による飽和砲撃を避ける訓練だったんですが――』

「勿論、欧州艦娘もそれに参加させてもらうわ。いいわね、みんな?」

 

ビスマルクだけではない、欧州の艦娘全員が頷いていた。

 

「お、大神さん! 助けてーっ!!」

「私達を欺いていたなんて。ザラ、ちょっとお冠かな」

「ポーラもです~」

 

恐怖のあまり、川内は大神に抱き付いて助けを求めようとしたが、別の意味でやる気全開のザラとポーラに両腕を拘束される。

海上を引きずられ、川内は大神から引き離される。

その姿はまるで、地球人に捕まった異星人のようだった。

 

 

 

一方、鳳翔は無駄な抵抗はしなかった。

それは後日の第二次制裁、もとい正妻戦争――シュラバヤ沖海戦での扱いの大きな違いとなるのだが、それはまた別の話。




深海棲艦「お前ら戦え」

そういや、今年の艦これ観艦式はビッグサイトで行われたけど、それも前に自分が書いてたな。
やはり自分は預言者(ないない)

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