艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第十三話 18 戦いの趨勢

「狼虎滅却! 震天動地!!」

 

艦娘の霊力を、欧州の人々の願いを受け、天が震えんばかりの裂帛の気合を込めて大神の二刀が振るわれる。

それはかつて太正時代において、大久保長安の怨霊に奪われた空中戦艦ミカサの砲弾さえ切り捨てた、大神の奥義中の奥義。

大神一郎の持つ多彩な技の中でも秘奥義といっても過言ではない。

 

「バカナ……」

 

その一撃は果たして、地中海水姫の巨体をも吹き飛ばし、全てを雲散霧消させる。

そして、深淵の門のあった地点には一人の深海棲艦、欧州の全ての深海棲艦を束ねていた深淵旗艦 欧州水姫の姿が残されていた。

 

「ソンナバカナ……ワタシガ、オロカモノタチゴトキニ……」

 

剣とも弓とも付かない装備を持ち、エイのような新型艦載機を従わせた欧州水姫は、大神たちを睨み付ける。

 

「コンナコトマデ、シテモ……モウ、ムダナンダカラッ!!」

 

その言葉と共にその装備を持ち上げる欧州水姫。

多数の新型艦載機たちが装備から射出され蠢き始める。

 

「無駄などではない! みんな、あれが地中海――いや、欧州の深海棲艦を束ねる要の旗艦だ!!これで戦いを終わらせる、行くぞ!!」

「「「了解!!」」」

 

大神の声に艤装を構えなおす艦娘たち。

そこに欧州の各基地から到着した基地航空隊の攻撃が行われようとする。

 

『待たせたね、ムッシュ! 遅れてしまったけど、欧州基地航空隊はムッシュを支援するよ!!』

「グラン・マ! 鳳翔くんたちは基地航空隊と力を併せ航空戦を頼む、制空を掌握してくれ!!」

「分かりました! グラーフさん、アクィラさん、ここが正念場なのです!!」

 

大神の声を受け、航空母艦たちに檄を飛ばす鳳翔。

このために、トゥーロンで訓練を行ったのだ。

 

「了解だ、全艦載機、発艦始め!! 敵艦載機を蹴散らすぞ!!」

「攻撃隊各機、カタパルトへ! 一斉射出するわ! 今度ばかりは真面目にやるわよ!!」

 

訓練の末、日本の艦載機も自らの国のものと同様に扱えるようになったグラーフとアクィラが、鳳翔と同様に艦載機を射出し、基地航空隊と併せ敵艦載機群との航空戦を演じる。

常であれば、この航空戦が終了した後に砲撃戦が開始となるだろう。

 

「今ならば、欧州水姫の意識が航空戦にも割かれている。攻めるなら今を以って他にはない!」

「クッ、ココデムダニ……シニナサイ!!」

 

だが、もはや欧州水姫と大神たちの距離はないに等しい。

航空戦の終了を待たずして、両者は激突する。

 

「クラエ!!」

 

欧州水姫に、接近戦を仕掛けようとする大神と川内。

いや、此度の攻撃にはレーベたち駆逐艦、プリンツたち巡洋艦も加わっている。

 

「させるものか!!」

 

欧州水姫の刃が川内に振り下ろされようとするが、それを大神は二刀で受け止める。

両手で構えた剣を防がれ、欧州水姫に決定的な隙が現れる。

 

「みんな、訓練でやった通りいくよ!!」

 

その隙を逃してなるものかと、川内が片手に小刀ではなく魚雷を持ち、欧州水姫の首筋に魚雷を叩きつける!

 

「コノテイドデ!!」

「まだまだ、これで終わりじゃないよ!!」

 

そして、魚雷が炸裂する一瞬前にその場から一足飛びで離れつつ、砲撃を首筋に行う。

両者の連携攻撃が相乗効果を引き起こし、欧州水姫に僅かながらとは言え打撃を与える。

 

「ガッ!?」

 

この連携攻撃によって、川内の攻撃力は昼戦でありながら一時的に夜戦火力に肉薄する。

これこそが、川内たちがトゥーロンでの訓練の末に獲得した特殊攻撃法――

 

「昼間夜戦術――大神さんのためなら、もう昼も夜も関係ない! 私は、私に出来る全ての力を大神さんに捧げる! 全力で戦う!」

「ワタシだって川内さんには負けないもん! アドミラールさん!」

 

欧州水姫の隙を付き、川内に続きプリンツたちが昼間夜戦術を仕掛ける。

次々と全身に攻撃を受けダメージが蓄積していく欧州水姫。

 

「クソッ! オロカモノドモガ! カンムスドモガーッ!! 『アビスレイ――」

「その手は二度と食わない!! 狼虎滅却 紫電一閃!!」

 

大神から間合いを取り、全体攻撃をしようとする欧州水姫だったが、大神はそれを許さない。

霊子タービンで亜音速に加速しながら、大神はすれ違いざまに全力の斬撃を欧州水姫に叩き込む。

 

そして、航空戦を終えた各艦の攻撃隊の爆撃が、基地航空隊の攻撃が欧州製姫へと殺到する。

 

「ガアアアッ!! デモ……オマエタチニハ、ワタシヲタオスコトナド……デキナイ!!」

 

それでも膝を突くことなく剣を振りかぶる欧州水姫。

確かに大神たちの攻撃はダメージとして欧州水姫に蓄積されては居る。

しかし、決定打とはなっていない、このままでは撃破は難しいだろう。

 

この戦いを終わらせられる攻撃があるとするならば――

 

「破邪の一撃を以ってするしかない! 破邪滅却――」

 

大神が二刀を構え破邪の剣風を放とうとする。

しかし、既に剣を振りかぶっていた欧州水姫のほうが早かった。

 

「オソイ! 『アビスウェーブ!』」

 

剣を振り下ろした欧州水姫から全方位へと、怨念の波動が放たれる。

艦娘たちの被害を考え、大神はこのまま破邪の一撃を放つ事に一瞬躊躇する。

だが、ここで一度守勢に回れば今までの努力は水泡となりかねない。

 

「イチロー! 私たちの事はいいから欧州水姫にとどめを!! 私たちだって艦娘、敵の一撃くらいみんなで耐えて見せるわ!!」

 

そんな大神にビスマルクが声をかける。

ビスマルクのそれは100%強がりだと、大神にもわかっている。

だが、この瞬間を以って他に必殺のチャンスはない、大神は決断する。

 

「分かった、ビスマルクくん! 行くぞ、欧州水姫!! 破邪滅却! 悪鬼退散!!」

 

大神の二刀から放たれた破邪の剣風。

だが、それは欧州水姫の怨念の波動を打ち消し進みながらも、その威力を減じさせてしまった。

このままでは、この一撃は必殺のものとはならない。

欧州水姫にとどめを刺す事は出来ない。

 

その事を悟った欧州水姫が再び剣を振りかぶりながら笑い声を上げる。

 

「アハハハハ! オマエタチノ……マケダ!!」

 

流石に怨念の波動を二発も食らえば、艦娘たちはただではすまない。

しかし、アビスウェーブを放とうとした欧州水姫に、巨大なシルスウス鋼弾が直撃し爆炎がその身を包む。

 

「ナニ……マサカ!?」

 

この砲撃を放てる施設は一つしかない、そうリボルバーカノンしかない。

半壊したリボルバーカノンと凱旋門支部、その司令室にその男は居た。

血まみれになり、一度は意識を失いながらも再度リボルバーカノンを発射してのけたダニエルが。

 

『いいや、ミーたちの!!』

「そう、俺たちの勝ちだ!!」

 

今こそと、大神は霊子タービンをフル稼働させて自らの放った剣風に向かっていく。

そして、その身を破邪の剣風に同化させる。

一時的に飛躍的に出力の増した霊力に大神の身体が、光武が、そして二刀が悲鳴を上げる。

だが、チャンスは今しかない。

 

「おおおぉっ!」

 

幾度の戦いで磨き上げられた戦士の勘が、敵の攻撃にも減じない必殺の一撃とは何か指し示す。

その勘に従い、大神は二刀を逆手に構える。

 

「ナニィッ!?」

 

そして、二刀を以って破邪の剣閃を繰り出す。

二刀を振り下ろす事で放たれた破邪の剣風と、二刀を振り上げる事で生じた破邪の剣閃は、合一し一つの破邪の一撃と生まれ変わり、欧州水姫へと炸裂する!

それは並び立つもののない程の至高の一撃と化す!!

 

「破邪滅却! 無双天威!!」

「キャアアアァッ! ワタシは……もう……沈まない!」

 

破邪の一撃によって半ば浄化されながら、艦娘の姿を半ば取り戻しながらも、その身に宿す深淵の門によって再び欧州水姫の姿へと戻ろうとする艦娘。

今こそ全てを浄化するべき時、大神は決意し彼の人へと手を伸ばし、名を呼んだ。

 

「―――――くん!!」




欧州水姫のグラは欧州棲姫に準じます。
新規デザインまで考えるのは流石に無理です(^^;

みんなに見せ場をとか考えてたら、戦闘が別の意味で悲惨な事にw
フルボッコとか言わないでねw

後、今回に関しては次回の合体技相手をアンケートで決めます。
詳細は活動報告にて。


ボソ……元ネタ、ストラッシュクロス

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