艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第十三話 16 堕ちた地中海、狂える艦娘

深淵の門が開かれる。

そして地中海は闇に閉ざされ、怨念に満ちた世界へと反転した。

 

「こ、これは……一体、どういうこと?」

 

まだ日差しも明るい昼間であったにもかかわらず、辺り一面が闇に閉ざされた異様な状況を見て、艦娘たちに驚きが走る。

しかし、大神はこの状況下で迷うことなく、その二刀を深淵の門へと振り下ろそうとした。

この闇の塊、深淵の門こそがこの状況を作り出してる元凶と確信して。

 

「――なっ!?」

 

が、深淵の門からほとばしる怨念に阻まれ、二刀を振り下ろしきる事が出来ない。

 

「退魔の刃の頂点である二剣二刀をもってしても、切り裂けないというのか?」

 

濃縮された怨念が壁のように二刀とせめぎあっている。

二刀が軋む悲鳴を感じ取り、大神は剣を引き一度間合いを開く為に飛びのこうとする。

その隙を逃すまいと、深淵の門から出た怨念の波動が衝撃となって大神を打ち据える。

 

「かはっ!」

 

一撃。

たった一撃で、光武・海Fの霊子障壁は破られ、胸甲には大きな傷痕が刻まれた。

もう一撃受ければ装甲が持たないだろう。

 

「アドミラルさん!」

「イチロー!?」

「オオガミ!!」

 

艦娘たちは、深淵の門からの一撃を受けた大神を心配し集まろうとする。

だが、大神はそれを制止し、消耗している駆逐艦を除く艦娘に指示を行う。

深淵の門がうごめき、手らしきものがそこから現れたからだ。

 

「みんな、隊列を戦闘隊形に組みなおすんだ! 敵が、地中海における本当の敵拠点が来る!!」

 

そして、それは深淵の門を通って現れた。

 

その体長は人間と同サイズだった深海棲艦と異なり、10メートルほどもある。

恐ろしいほどの美貌を持ちながら、瘴気に満ちた微笑は耐性のないものを即座に狂気に誘う。

肌の色は白に近かった深海棲艦と異なり、海の青が混ざった蒼白。

地中海棲姫同様、ワンピースを翻しながらも、その巨大さゆえにそこには見るものを圧倒するものしかない。

一つ深海棲艦と異なるものがあるとするならば、彼女は一切の武装を纏っていない。

『深淵拠点 地中海水姫』は無手でその場に現れた。

 

「ウフフフフ……タノシイ、タタカイニ、ナリソウネ……」

 

怪しい微笑みを浮かべながら、大神たちを一瞥する地中海水姫。

だが、そこから離れた位置に消耗した駆逐艦が固まっているのを見て、地中海の各地を、各地の艦娘たちを見渡して不満そうな表情を作る。

駆逐艦を見て、何故地中海水姫が不満そうな表情をしているのか、考える大神。

その答えはすぐに出た。

 

「アラアラ……デモ、ヒツヨウナイ……モノガイッパーイ……」

「レーベくんたちを、狙っているのか!? 不味い! 狼虎滅却! 金城鉄壁!!」

 

地中海水姫はその腕を、手をゆっくりと空へと伸ばす。

庇うことでは複数対象を同時防御できない為、防御技を以って対応する大神。

 

「スコシ……マビキ、シヨウカシラ……『アビスレイン』!!」

 

そして、その手から莫大な瘴気を天へと注ぎ込む。

やがて瘴気を注ぎ込まれた天から、瘴気の塊が雨――否、弾丸のように降り注ぐ。

大神だけではない、全ての艦娘に瘴気の雨が降り注いでいる。

しかし、金城鉄壁で守られた大神指揮下の艦娘たちには瘴気の弾丸による影響はない。

 

「みんな、大丈夫か!? レーベくん!」

「うん……ボクたちも大丈夫。ゴメンね、隊長……」

「気にしないでいい! みんな、この攻撃が止んだら攻勢に転じるぞ!」

「「「了解!!」」」

 

敵の攻撃は未だ続いている為、防御技の影響下から離れて攻勢に転じる事は出来ない。

一方、戦いに参加できない、消耗した駆逐艦を間引こうとした地中海水姫は意図を遮られ若干不満そうな表情をしている。

 

「ソンナコト、スルンダー……マア、イイワ……マビキハ、ホボ、スンダシ」

「何だと? それはどういう事だ!?」

 

その答えは大神たちにも、やがて分かった。

各方面で戦っている筈の艦娘たちの悲痛な叫びによって、混乱する公邸の状況によって。

 

『いやあああああああああっ!!』

『ぐあああっ!? 何なのだ、この雨は!?』

『各地の艦娘に被害だって、何が起きたって言うんだい!?』

 

そう、この雨は、攻撃はマルタ島付近だけに行われたではない。

地中海に展開して戦う全ての艦娘に対して行われたのだ。

 

「地中海全体に対する――全体攻撃だって!?」

 

合体技でもそこまでの広範囲を同時に浄化する事は出来ない、呆然とする大神たち。

 

「ソウヨ……デモ、ソレダケジャ……ツマラナイデショ? ダカラ、オマケ」

「どういうことだ!?」

 

答えは各地の艦娘が教えてくれた。

その悲鳴に、絶叫によって。

 

『いやああああっ!? 私の、私の腕がああああああああっ!? 何で深海棲艦の腕に!?』

『助けてぇっ!! こんなの、こんなのいやぁァアハハハハッ!! サイコウノ、キブンダ!!』

『嘘でしょ!? 艦娘が生きたまま、深海棲艦化すると言うの!?』

『サア……タメシウチ、シヨウ! ネエサン!!』

『そんな! 妹を撃つなんて、出来ない!!』

 

艦娘が徐々に、場合によっては即座に深海棲艦化する、異常極まる事態によって。

 

「バカな……艦娘を、即座に、深海棲艦化させる、攻撃だと……」

 

スペインに集結したスペイン・イギリス艦娘によるジブラルタル海峡、及び海峡に築かれた深海棲艦要塞の制圧も、

フランス海軍によるサルデーニャ・コルシカの奪還も、

イタリア海軍によるシチリアへの侵攻。アドリア海の奪還も、

ロシア海軍による黒海・エーゲ海の奪還も、

トルコ海軍によるスエズ運河・運河要塞の制圧も、

 

全ての成果が混乱し狂える艦娘たちの悲鳴、絶叫の前に水泡に帰した。

 

もはや、誰の目にも明らかだった。

 

地中海奪還作戦は破綻した。

 

 

 

 

 

深淵ーエリア効果:全ての深海棲艦の能力が2倍になる。

 

 

深淵拠点 地中海水姫

 

      素    補正後

耐久:2943 → 5886

火力: 294 →  588

雷装: 294 →  588

対空: 294 →  588

装甲: 294 →  588

 

特殊攻撃

アビスレイン   :火力100の『地中海全体』への全体攻撃。

          この攻撃を受けた艦娘は、徐々に深海棲艦となる。

          この攻撃で大破以上の損害を受けた艦娘は、即座に深海棲艦となる。

 

真の地中海の拠点基地。

陸上型深海棲艦ではないため対陸装備の特効なし。




地中海における真のボス登場。
ちょっと能力盛りすぎたかも、反応が怖い。

あと、ヒント:深淵の門→(直球直訳)→アビスゲート

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