艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第十三話 14 マルタの遺志を継いで

地中海のほぼ中央、イタリア・シチリア島の南に位置するマルタ。

カルタゴ、ローマ時代から地中海貿易で繁栄した島。

 

しかし、食料自給率が20%であり、飲み水すらイタリアから購入せざるを得なかった資源の乏しさが、深海棲艦の出現後にこの島を飢餓地獄と化した。

 

マルタが所持する1600名前後の兵員と哨戒艇は瞬時に殲滅させられ、このままでは島民を待ち受けるものは飢餓に苦しんだ上での死のみ。

それでも島民は第二次世界大戦の頃を思い、数少ない飲食物を分け合い耐え忍んできた。

イタリア、イギリス、各国の支援を待ち望んで。

 

しかし、そんな彼らを待ち受けていたのは、マルタ島を地中海における拠点として使用するため、マルタ島を制圧しようと上陸を始めた深海棲艦であった。

無論、上陸する深海棲艦にとって人間は不要の長物でしかない。

そして、人間と深海棲艦に交渉の余地など存在しない。

結果、マルタに住まう人間は異物として、狩りつくされた。

マルタに住まう人々も自らの島を護る為、立ち上がりはしたが戦闘と言うほどのものすら起こらなかった。

起きたのは、ただの、一方的な殺戮。

そして、マルタ島に住まう人――40万人は、その時他国に赴いていたごく僅かな一部の者を除き、全て虐殺された。

 

これが深海棲艦によって、マルタ島で行われた虐殺である。

 

深海棲艦が出現した頃、戦力を持たぬ島国で多く見られた大虐殺の一つである。

 

 

 

苦々しげな表情をしてダニエルが怒りを噛み殺しながらマルタ島の現状を説明する。

 

「だから、今回の戦い、民間人への被害は一切考えなくて良い、生き残りの保護の事も考えなくて良い。速やかにマルタ島を本拠地とする深海棲艦を殲滅するんだ」

「しかし、誰かが生き残っている可能性は……」

 

大神も想像していた事態とは言え、あまりの非人道的な結果に怒りで声が震えている。

 

「ない。深海棲艦によるマルタ島の制圧からもう数年以上立っている。それにマルタ島の全滅に先立ってマルタ大統領から最後の電信があった、『マルタ島住民、最後の一人として各国に望む! いつの日か! いつの日かマルタを、私たちのマルタを深海棲艦から取り戻してくれ! 頼む!!』と。オオガミ、ユーはその遺志を!」

「分かった、ダニエル。マルタに住んでいた人々のその遺志、確かに受け取った! マルタは必ず開放してみせる! 川内くん!!」

「分かってるよ、大神さん! リボルバーカノンでの展開直後に合体技で殲滅するよ!」

 

ここはパリ―巴里華撃団の凱旋門支部。

リボルバーカノンは展開済みであるが、各地での戦線の状況を聞きながら、リボルバーカノンでのマルタ島への展開のタイミングを伺っている。

 

艦娘たちも今は弾頭に乗り込んでおらず、水を飲みながら訪れる戦闘のときを待っている。

 

 

 

現状、各方面の作戦経過は以下の通りである。

 

1、スペインに集結したスペイン・イギリス艦娘によるジブラルタル海峡、及び海峡に築かれた深海棲艦要塞の制圧。

 

 要塞棲姫の熾烈な攻撃により押され気味ではあるが、海での戦闘は有利に進められている。

 海を制した後の要塞への集中砲火が始まれば、形勢はこちらに傾くだろう。

 

2、フランス海軍によるサルデーニャ・コルシカの奪還。

 

 トゥーロンにおける合体技の特訓の影響で深海棲艦は著しく弱体化。

 もはや大勢は決している。

 

3、イタリア海軍によるシチリアへの侵攻。アドリア海の奪還。

 

 アドリア海の奪還は順調であるが、シチリアの侵攻に手間取っている。

 それでもシチリア北部の海戦においては優勢を保っており、このままではシチリア近傍の海は人間のものとなるだろう。

 

4、ロシア海軍による黒海・エーゲ海の奪還。

 

 展開している敵の戦力が少ない事もあり、ほぼ完遂。

 

5、トルコ海軍によるスエズ運河・運河要塞の制圧。

 

 運河要塞が頑強であり、十分な打撃を与えられず。

 対陸戦隊の再編成が必要であり、一艦隊を対陸専用に組み替え再攻勢を仕掛けようとしている。

 

 

 

順調といえば、全ての方面において作戦は順調である。

だが、マルタがまだ動く気配がない。

何故だ。これだけの艦娘による大攻勢、マルタからの各地への援軍は必要な筈。

まさか作戦を気取られでもしたか? 司令室に焦りが若干立ち込める。

 

と、司令室に電文をもって隊員が駆け込んでくる。

 

「マルタに動きあり! マルタから北、東への援軍の出撃を確認。艦隊数はそれぞれ4艦隊!」

「よし! もう少し敵艦隊がマルタを離れるのを待つぞ! リボルバーカノンによるマルタへの展開は二時間後とする! オオガミ!!」

「分かった、艦娘のみんなはリボルバーカノン射出に向けて準備を! 装備の最終確認もしておいてくれ! 今回は対陸戦が主要となる。三式弾、WG42、対陸妖精隊の準備は出来ているね?」

「「「了解!」」」

 

そして、二時間のときを待ち、大神たちはマルタ島へと射出された。

これから本当の戦いが始まる。

 

 

 

なお、各院の装備は以下の通りである。

 

第1艦隊

大神 :神刀滅却、光刀無形、光武・海F、探照灯

ビスマルク :38cm連装砲改*2、Ro43水偵、徹甲弾

ウォースパイト :38.1cm Mk.I連装砲*2、Ro43水偵、徹甲弾

イタリア :381mm/50連装砲改*2、Ro43水偵、三式弾

ローマ :381mm/50連装砲改*2、Ro43水偵、三式弾

グラーフ :Ju87C改、FW190T改、烈風、彩雲

アクィラ :流星改、流星改、烈風、烈風

鳳翔 :流星改、烈風、烈風、烈風

 

第2艦隊

川内 :15.2cm連装砲改、20,3cm連装砲(3号)、WG42

レーベ :12.7cm単装砲、WG42、対陸妖精隊

マックス :12.7cm単装砲、WG42、対陸妖精隊

リベッチオ :120mm連装砲*2、WG42

ザラ :203mm/53 連装砲*2、Ro43水偵、三式弾

ポーラ :203mm/53 連装砲*2、Ro43水偵、三式弾

プリンツ :SKC34 20.3cm連装砲*2、Ro43水偵、三式弾


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