艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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な、長い一日だった……


第十三話 13 トゥーロンでの一日 終

自室に戻った大神は夕食の時間までベッドでグッスリ寝込んでいた。

いつもであれば、ウォースパイトとのティータイムを楽しんだり、リベッチオたち駆逐艦と遊んだりしていたのだが、疲労困憊な今日は話が別。

周囲の艦娘たちも大神が如何に疲れているかは今更考えるまでもないので、夕食のときまでその眠りを邪魔する人間は居ないだろう。

 

酒は午後の特訓である程度醒めたし、この仮眠の間に完全に酔いは完全に飛んでしまうだろう。

夕食は美味しくいただけそうかな、そんな事を虚ろに思いながら大神は昏々と眠りに付いていた。

 

 

 

一方、その間、夕食の調理を頑張っているのはザラ。

パスタは確かに得意料理ではあるが、それだけでは本格的なイタリア料理の夕飯には物足りない。

他にも料理を準備しないといけないだろう。

 

「ええっと、モッツァレラチーズとトマトのカプレーゼを冷蔵庫で冷やしているから、それと生ハムを薄く切ったものを別の皿に用意してアンティパストにして、プリモ・ピアットは……ペペロンチーノかな?」

「え~、ザラ姉様~、もっとワインに合うパスタさんにしましょうよ~。ペペロンさんよりもトマトさんとか~、魚貝系とか~」

 

台所で慌しく動いているザラに、ポーラが注文をつける。

 

「ポーラ、あまり飲みすぎちゃダメなんだからね? だからお酒の合わせにくい料理に……」

「良いんですか~、ザラ姉様がファーストキスを捧げた相手に、そんなある意味手を抜いたものを出して~」

 

うぇっへっへっと薄気味の悪い笑いを浮かべながら、ポーラはザラを小突く。

けれども、ザラにはファーストキスを誰かに捧げた覚えなどまるっきしない。

 

「何言ってるのポーラ? 私はキス未経験よ、ポーラだって知っているでしょ? 私はキスはこれと決めた人にしたいの」

「うふふふふふふふふふっふっふ~、違うんですよ、ザラ姉様~。ザラ姉様の唇の純潔は既に奪われているのでした~」

 

ポーラがニヤニヤしながらザラを冷やかす。

だが、ザラには心底、心当たりがない。

もしや、寝ている隙に奪われたとでも言うのだろうか、そう考えるとザラの表情が蒼褪めていく。

 

「……そんな、誰が……一体」

 

どこかの誰かに奪われてしまうのであれば、せめて、せめて気になっている人に捧げたかった。

ザラの目じりに涙が浮かぶ。

 

「あ~っ! 違います違います! 勘違いして泣かないでください、ザラ姉様! ザラ姉様のキスの相手は大神さんです!!」

「提督? でも提督とキスした覚えなんてないわよ、さっきまであまり接触だって――」

 

そう言いながら、大神の顔に唇をぶつけた事が思い出される。

 

「まさか、まさか、あの時私の唇が触れた場所って――」

 

思わずザラの顔が紅に染まる。

 

「えっへっへ~、その通りですザラ姉様! 膝枕で耳掃除した後に起き上がりの大神さんとキス! これがラブラブじゃなくてなんていうんですか~」

「やっ、あの、そ、そんなのただの事故よ!」

「じゃあ~、大神さんにもそう伝えてきましょうか~、『うちのザラ姉様の純潔奪ってどないしてくれるんや』って~♪ 大神さんなら間違いなく責任とってくれますよ~、合体技できるかも」

「ダメダメダメダメ! 作戦前の大事な時期にそんな事で提督の心を乱しちゃダメ!」

 

台所から大神の部屋へと向かうポーラの服を引き止めるザラ。

 

「じゃあじゃあ~、料理の見直しお願いしても良いですか~?」

「う~、分かったわ。プリモ・ピアットはプッタネスカにして、セコンド・ピアットはアクアパッツァと子羊のグリルのりんごソースにする、それで良いでしょ?」

「おお~、ザラ姉様の得意料理の数々が! ザラ姉様本気ですね! 本気で料理を作って大神さんに褒められるつもりですね!!」

「う、うるさいっ! これから作るとなるともう時間ないんだから、気を散らさないで!!」

「は~い、夕飯が楽しみです~」

 

ザラの怒声から逃れるように、ポーラが自室に逃げ込んでいく。

これだけの料理をするとなると、時間的に余裕はもうない。

ザラは袖まくりをして気合を入れなおすのだった。

 

 

 

そして夕食時、広間に下りてきた一同はテーブルに並べられた料理の数々に驚いていた。

前菜のカプレーゼにはザラ特製のドレッシングがかけられており、その風味は食欲をそそる。

また、主菜のプッタネスカ、アクアパッツァ、子羊のグリルからは全て湯気が立ち上っており、全てを暖かい状態で提供すると言う基本にして離れ業を成し遂げている。

 

以前ザラの食事当番のときにパスタを食べたときも美味しいとは思ったけれど、ここまで料理上手だったとは。

 

「さあ、提督。みんなも料理が冷めないうちに召し上がって下さい」

 

にこりと笑うザラ。

その隣に大神が座ると、ザラはカプレーゼの美味しい食べ方から指導していく。

 

「本当だ。トマトとチーズを一緒に食べると、こんなにも口の中で広がる味が変わるなんて。美味しいよ、ザラくん!」

「どう致しまして、では、今度はプッタネスカを食べて見てください、ちょっと辛いですけど美味しいですよ」

 

腕を振るって作った料理に大神の心からの賞賛を受け、ザラはニコニコしている。

ポーラの言ったとおり得意料理であることには違いないが、それだけに大神の口に会うか心配だったのだ。

でも、この様子ではザラの心配は杞憂だったようだ。

しかし、それだけの美味なる料理を食して、ポーラが黙っている訳がない。

 

「あ~、ザラ姉様の持てる必殺料理の数々に、大神さんが奮発した良い赤ワインと白ワイン~。最高です~、パスタとお肉料理に赤ワインが~、アクアパッツァに白ワインがよく合います~」

 

赤ワインの入ったワイングラスを傍において、パスタと子羊のグリルを幸せそうに食べるポーラ。

そのあまりの美味しそうに飲み食いするさまに、他の艦娘たちも少しワインを呑みたいな、と思う。

 

「ねぇ、ポーラ……」

「ダメです~、この二本は大神さんとポーラ、あとザラ姉様だけが飲んで良いワインなんです~。すいませんが~、皆さんは私たちが二本目以降に飲む予定だったワインを飲んでくださいね~」

 

けれども、二本目とは言え大神が奮発したワインであることには違いない。

川内たちも肉料理とパスタに赤ワインを、アクアパッツァに白ワインをあわせて飲む。

 

「お、これは、確かに美味しいね!」

「ふむ、ビールとは違うが、食事によくあったワインだな。これは食が進む」

「日本酒と違い大半の料理に合う訳ではないですが、合った料理とワインもなかなかですね」

 

そんな風に全員が食事を楽しみながらワインを開けていく。

気が付けば一本二本、三本四本と空瓶が転がっていく。

全員が酔っ払いになっていく。

 

「もう流石にぐでんぐでん、今晩の夜戦練習は流石になしかな」

「お~、お酒のパワーで鬼教官を撃沈した~。やった~、今晩はもっとお酒が飲める~」

 

「うにゅー、アドミラルさん。私、もっと料理も頑張るー」

「私も負けていられないわね。明日は私がザラに負けない料理を作るわ、褒めても良いのよ」

「ビスマルク、悪い事は言わないから、それはやめておけ。アドミラルを殺す気か」

 

そんな風に食後の会話を楽しんでいる。

すると、隣のザラがそわそわとした様子で大神を見上げている。

 

「提督提督、ザラのお料理は如何でした?」

「ああ、美味しかったよ。イタリア料理楽しませてもらったよ、ありがとうザラくん」

「じゃあ、一つお願い聞いてもらってもいいですか、提督?」

「ああ、こんなに美味しい料理を食べさせてもらったからね、俺にできる事なら」

 

夕食前のお願いが耳掃除なのだから、今回もそんなに大した事はないだろう。

そう思った大神は安請け合いする。

 

「やったー! それじゃ最後にザラ特製の口直しをしますね。ちょっと目を閉じて下さい、提督」

「ああ、わかった」

 

「「「ちょっ!!」」」

 

それでピンときたウォースパイトや、ビスマルク、プリンツ、グラーフ、果ては川内、鳳翔がザラを止めようとするが、その前にザラは大神の唇に自らの唇を重ねた。

 

「――っ!?」

「提督、グラーチェでしたっ! やっぱりキスは事故じゃなくてちゃんとしたのが良いから」

 

そう言ってザラは身を翻すと酔いもあってか、足取りも軽やかに後片づけを始める。

 

 

 

そんな事もあり、翌日以降、合体技の特訓候補にザラとポーラが加わった事は言うまでもない。

そして、そんなトゥーロンでの3週間の訓練が終わった。

 

これからパリに戻り、地中海奪還作戦が始まる。

 

 

 

 

 

作戦直前の好感度一覧

 

川内    100

鳳翔    100

 

ビスマルク 100

プリン    95

グラーフ   85 

レーベ    65

マックス   55

ウォースパイト 95

イタリア   60

ローマ    50

アクィラ   60

ザラ    80

ポーラ    80

リベッチオ  60




んまぁぁぁ~い、とは言いません。
特訓で容量とりすぎて覗かせる暇がなかった(^^;
やっぱお約束として、覗かせないといけないかな。

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