艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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今まで花組は幼児であることを強調する為ひらがな喋りとしてきましたが、欧州編では、話に関わる事が増えます。
よって現状のままでは読みにくすぎると考え通常の喋り方に致します。
すいませんが、ご承知おきください。


第十二話 7 その頃ドイツでは

イルクーツクからモスクワ、そしてパリへと向かう大神たち、大神のいやんばかんな日々を白状させられ吊るし上げを食らっている加山、そして川内が帰るXデーに向け魔女裁判の様相を呈してきている日本の艦娘たち。

 

と、常日頃とは少し異なる日々を送っている華撃団。

しかし、欧州でも個々の国においては地中海奪還に向けた訓練が行われていた。

 

ドイツもその一国である。

 

ドイツの領海であった海は北海とバルト海であり、ドイツそのものは地中海と接しては居ないが、地中海の奪還はヨーロッパ全体としてみれば明らかに利益であり、念願でもある。

今までの艦船と異なり、艦娘の移動は陸路でも可能であり戦力の集結・再配置の自由度が高いことを考えれば、今後の発言権確保の為にも参加させない理由がない。

そのような思惑もあり、軍港でもあるヴィルヘルムスハーフェンでは艦娘が北海での実戦を伴った演習に向け準備をしていた。

 

その艦隊は、

 

戦艦  ビスマルク

空母  グラーフ・ツェッペリン

重巡  プリンツ・オイゲン

駆逐艦 Z1(レーベレヒト・マース)

    Z3(マックス・シュルツ)

潜水艦 U-511

 

の6艦で構成されている。

 

そして、ヴィルヘルムスハーフェンにはもう一人の少女、いや幼女の姿があった。

イザベラ・ライラックことグラン・マのフランス大統領就任と併せ設立された霊力研究機関『巴里華撃団』より派遣された霊力についてのオブザーバー、レニ・ミルヒシュトラーセである。

本来、ドイツ国籍のレニであったがグラン・マに保護された為、ある意味里帰りともいえる。

当初こそ、幼女の意見を聞くことに疑問を持っていたドイツの艦娘であったが、日本での華撃団の活躍を耳にして、負けられないとレニの意見に基づいた霊力による自らの強化にも勤しんでいる。

と言うか、今現在トレーニングルームで艤装を外した艦娘たちが霊力の訓練を行っていた。

今は未だ基礎訓練、瞑想に近い状態で自らの霊力を探り自覚・運用しようとしている。

 

レニに霊力の発現を見せてもらっている為、霊力とは何なのかはもう分かっているが、それを自らの中から探るとなると難しいものがある。

例えるなら、自らを構成する数多の細胞の中から、意図的に一つだけピックアップし機能させようとしているようなものだ、並大抵のことでは出来ない。

 

大神と日本の艦娘のように、大神を好きになり魂のつながりを持つだけで強くはなれないのだ。

 

「う~ん、眠くなってきたよ~」

 

目を閉じて瞑想することに慣れていないプリンツが眠そうに目をこすり始める。

もちろんそれを見逃すレニではない。

 

「プリンツさん、集中力が切れかけている。もう一度集中して、貴方の中にある霊力を自覚して」

「レニちゃん、スパルタですよぉー。ん~~~~、霊力出て~……Fire!」

「プリンツ、その掛け声で出るのは砲弾よ、霊力じゃないわ」

 

半分ヤケになったプリンツを嗜めるビスマルク。

とは云うものの、ビスマルク自身も霊力の運用に関しては思うように出来ていない。

レーベとマックスにいたっては既に寝息を立てている、これ以上は時間の無駄かもしれない。

グラーフだけは艦載機の運用で若干慣れているせいか順調であるが。

 

「未だ先は長そうだね。今日はこの辺で終わりにした方が良いかな」

「うーん、海の上の訓練とは違って頭が疲れたよ~。あ、そうだ。レニちゃん、休憩代わりにお話聞かせて♪」

「何の話をすればいいのかな?」

「もちろん、レニちゃんの大好きな、『隊長―Leutnant zur See』さんについて♪」

 

それだけでレニの頬は赤くなり、冷たい雰囲気が霧消する。

 

「そんな、ボクの隊長のことだなんて……」

「うふふっ、赤くなったレニちゃんかわい~」

 

辛抱たまらなくなったプリンツがレニを抱き締める。

幼女となったレニはプニプニしていてプリンツがいたく気に入っているようだ、暇さえあればこうして抱き締めていた。

 

「プリンツ、レニは幼いんだからあまり弄んじゃダメよ」

 

そう釘を刺すビスマルクたちも隙があればレニを抱き締めている。

レニはドイツ艦娘にとってマスコットのような存在でもあるらしい。

 

「プリンツさん、やめてよ」

「やめてあげませ~ん、さぁ、観念して、隊長さんのことを話して♪」

「分かった、話すよ――」

 

隊長のことについて語ることは尽きないが、何を話すといわれたらこれしかない。

 

レニの中で珠玉の輝きを持つ思い出。

 

『なぜ……なぜ……攻撃してこない? 敵なのに……』

『違う! レニ、人は信じられる存在なんだ!!』

 

全てに対して心を閉ざしていたが故に水狐に心を囚われ、自分以外の全てを敵とみなして、戦闘機械として、攻撃しようとしたレニを救った隊長を、花組のことを。

 

『俺たちは、自分が愛する大切な人を守るために戦うんだ!』

『君は機械なんかじゃない。自分の意思で戦えばいいんだ! 君の……大切なものを守るために!』

『戻ってこいレニ! 俺たちのところに……仲間のところに……花組の、みんなのところに!!』

 

「……そうして、ボクは救われたんだ――隊長に」

 

話し終えた後、レニが見上げるとプリンツがボロ泣きしていた。

他の5人も涙ぐんでいる。

 

「ううう……良い話だよ。レニちゃんよかったね~、戦闘機械じゃなくなって……みんなのところに戻れて……ぐすっ」

「こんな幼い女の子を戦闘機械扱いしてたなんて信じられないわ! 非道なことよ! ……でも、私たち艦娘も同じようなものに、戦闘機械になってしまうのかしら」

 

ビスマルクがレニの身に起きた事に憤るが、自らの身を省みて語気が小さくなる。

 

「大丈夫だよ、隊長なら――隊長なら、艦娘を戦闘機械としてなんか絶対に見ない。みんなのことも仲間として、人として、女の子として扱ってくれるよ」

「いいわね、私もそんな隊長の下で戦いたいわ。地中海奪還作戦では私たちの指揮をする為に日本から新しい提督が派遣されるそうだけど、そんな話を聞いてしまったら余計期待できなくなってしまうわ」

 

レニから受けている霊力訓練もあり、自分たちが並の艦娘より強いと自負しているビスマルク。

レニが大神のことを『隊長』としか言っていないせいもあるが、自分が根本的に勘違いしていることに気付かず、言葉を続ける。

 

「新しい提督ですって? そんなの必要ないわ、むしろ私が日本の艦娘に一から教えてあげる」

 

大神と合流するまでにその勘違いが修正されればよいのだが。




大神さんが未到着なので、ドイツでは花組と艦娘は円満です。
レニの説得シーンはもっと詳しく神回にふさわしいシーンを書きたかったのですが、長々と書くと原作コピーになってしまうので割愛。

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