艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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閑話 8 白露型特訓します? 3

「次の特訓の場所はここよ!」

 

足柄が白露たちを引き連れてやってきた場所は、保健室であった。

今は大神が狙撃から回復した後の後遺症がないか、検査の為に入院している筈だ。

 

「入院中の大神さんのお世話をするのよ! その格好で!」

 

足柄が振り返ると、白露たちはいわゆるメイド服を着ていた。

足柄はメイド服を着用しているが正直微妙に似合ってない、お世話する前に襲われそうだ。

と言うか、どこからこんなの持ち出したのだろうか。

 

「あのー、何でメイド服なんですか?」

 

恥ずかしそうにしている時雨が手を上げて質問する、白露たちも頷いている。

まあ、当然の疑問と言えば当然の疑問だろう。

 

「そんなの決まっているじゃない! お世話、ご奉仕と言えばメイド服だからよ!」

「……それだけ?」

「それ以外に理由が必要なの? 発声特訓が足りなかったかしら?」

「いいえっ! もう、分かりました! 十分です! 大神さん、大好きー!!」

「イイネ」

 

ハンドサインをしている時の大淀の顔を振り返って一瞬見てしまった時雨にしてみれば、もう一回特訓だなんてとても冗談ではない。

あの表情だけで深海棲艦を撃破出来そうな位に、怖かったのに。

恐怖を思い出し反射的に犬のように叫ぶ時雨。

もはやパブロフの犬状態である、ああ白露型の良心よ、恐怖に飼いならされてしまったか。

 

「しょうがないじゃないか、怖いものは怖いんだよ!」

 

誰に宛ててかは分からぬが応える時雨。

あんまりヒス起こすと胃痛起こして禿げるぞ。

 

「うるさいよ!」

 

「でも、メイド服なんてちょっとした切り札使ってもいいのかな?」

「なんでですか? 切り札だからこそ、特訓で使うべきなのではないでしょうか?」

 

時雨の天との応酬を完全に無視して、呟く村雨に応える朝潮。

 

「いやー、なんとなくなんだけど……居ない筈の妹の怨みの篭った声が聞こえるんだよね、『私の切り札、メイド服を奪うなー!』って」

「ここに居ないとなると五月雨さんか、涼風さんでしょうか? なら呼んで来ましょうか?」

「いや、どっちでもないんだけど……」

「それって、もしかして……」

 

村雨と朝潮の表情に蒼が指す。

MIで新たに救出された艦娘が居ることは、今はまだ海に、深海に囚われっ放しの艦娘が居ることの証拠に他ならない。

いずれは大神の力を借りて救出しなければならないのだろうが、その怨念がここまで届くということはただ事ではない。

大神が検査中で動けないのが辛い。

 

「どっちかっていうと、救出忘れられた怨みっぽい?」

「でも、構成上ほっぽとの二択だったらしいよ?」

「うさ○○仮面に続く、第二の没ネタではわる○○ちゃんが来る筈だったらしいよ~、そしてそれを魔法に目覚めた魔法熟女の空母さんが浄化するって流れだったんだけど、収拾付かなくなるのと、いくら閑話とは言え悪ノリし過ぎで設定破綻するのでボツになったみたいだけど」

 

そこの残りの白露姉妹、メタ発言は禁止だってば。

ボツなものはボツなの。

そんな設定はありません。

 

「「「はーい」」」

 

その返事を足柄が全員の了承と捉える。

 

「よろしい、じゃあ全員保健室に突入するわよ!」

 

と、足柄が扉を開けた。

丁度大神が明石の検診を受けている最中だった。

 

「大神さん。次は問診をしますね。最近生活の中で何か変わったこととかありますか?」

 

相手が医者ということもあってか、唇がいささか緩くなった大神。

その手の主人公としては言っちゃいけない本音を白状しようとする。

 

「うーん。やっぱり四方八方艦娘だから最近溜まってきたと云うか、辛くなって来たと言うか、ちょっと加山や米田閣下とかと飲みたい気分かな」

「大神さん……ごめんなさい、医師の私がそのことに気付けなくて! 私がその辺りバッチリメンテナンス致します!」

 

大神の発言をそう捉え、そう言って大神をベッドに寝かせようとする明石。

 

「あ、明石くん? 問診だから寝る必要はないんじゃないかな?」

「緊急の施術の必要ありと判断いたしました! 大丈夫、先っちょだけですし、痛くしません! ちょっと目を瞑っている間に終わりますから!」

 

かなり鼻息が荒い明石。

はっきり言って説得力がまるでない、正しく公私混同の純粋体。

そのまま大神の服を脱がせようとする。

 

「あ、明石くん? 次は胸部X線写真じゃなかったっけ? 下腹部は脱ぐ必要はないんじゃないかなー!?」

「大丈夫、すぐ終わりますか――あべしっ!?」

 

大神に迫る魔の手を、足柄は後頭部への一撃で沈黙させる。

気絶した明石を物陰に運び去るその手口は正に熟練者、ダンボール箱を被れそうだ。

 

「あ、足柄くん? 助かるけど明石くんの扱いが酷くないかい?」

「私は隊長最優先です! 良かったわー、犯行前で。でも、大神さん大丈夫! 大神さんのメンテナンスは私達が致しますから」

 

そう言って大神の前に並ぶ足柄たち。

 

「さあ、隊長! 私達の中から一人を選んで下さいな!」

「いいっ!? いやいやいや、俺は気分転換がしたいだけだよ!?」

「大丈夫! 言わなくても分かってるわ! 隊長、私達がご奉仕致しますね!」

 

大神の制止にも足柄は全く止まる気配がない。

これは誰かを選ばないと収まりが付きそうにない。

かと言って、足柄は危険すぎる、あらゆる意味で、と言うか即絞られそうだ。

朝潮も最近足柄に感化されていて危険だし……と考えた大神は一人を選択する。

 

「じゃあ、時雨くん、お願いしてもいいかな?」

「ええっ? 僕?」

 

驚愕の表情を露にする時雨。

この場で選ばれるということは、大神のそういう対象であることの証。

駆逐艦の自分が選ばれるだなんて思いもしなかったけど、ちょっと嬉しいかもしれない。

 

だとしたらしっかりお世話しなければ。

 

いや、大神の判断基準はこの場で一番まともなことをしてくれるか否かだったのだが。

 

「大神さ――隊長、僕が隊長のお世話をするね」

 

そう言って、脱がされかけた服を再度着せようとする時雨。

一方、エプロンのすそを噛み締めて悔しがる足柄たち。

借り物の服なのだからあんまりオイタはよくありません。

 

 

 

しかし、足柄は大事なことを忘れていた。

明石の検診は司令室の全員が分かっているのだ。

スケジュールに滞りがあれば気が付かないはずがない。

 

「足柄さん――」

 

自分を呼ぶ声に足柄が振り向くと、ニッコリ微笑む大淀がいた。

でも目が全く笑っていない。

 

そして大神のお世話をする時雨に気付かれないようにハンドサインを送る。

 

『チョット、ツラ、カセヤ』

 

そして、足柄たちは保健室を追い出された。

大神の入院中は、再度入り込むのは難しいだろう。

 

だが、足柄は諦めない。

 

諦めないったら諦めない。

 

 

 

「こうなったら最後の手段! 夜這いよ!!」

 

 

 

いい加減諦めたら。




春雨を完全に忘れてた鬼作者
次回で終わります

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