ビッグサイトキャノンで射出された大神たちは硫黄島近海の海上へと降り立つ。
硫黄島からの連絡に寄れば敵の艦隊数は6、更に本土から一隻合流したと言う。
恐らく大神を狙撃した空母棲姫だろう。
それ以外の艦隊は確認されていない、これが敵侵攻部隊の全てだ。
「俺たち敵主力撃滅艦隊は敵潜水艦を完全無視して、前衛部隊から主力部隊を順次殲滅する。だから、長門くんたちは潜水艦隊や巡洋艦隊の殲滅を頼みたい」
「任せておけ、一匹たりとも逃しはしない!」
「硫黄島の基地隊の調べでは、北側に存在しているのが敵主力になるようだ。だから、俺たちは前衛艦隊殲滅後北寄りのルートで向かう」
そして、赤城たちの索敵の結果が伝えられる。
「大神隊長! 敵前衛部隊を発見いたしました!!」
「よし、総員戦闘用意! 総がかりで敵を殲滅するぞ! 赤城くんと瑞鶴くんは必殺技は温存していてくれ!」
「「「了解!」」」
そして、大神たちは侵攻部隊前衛艦隊を13隻14人がかりで鎧袖一触で撃滅する。
その後邂逅した敵潜水艦部隊を長門たちに任せ、大神たちは北よりのルートを辿る。
その後に待っているのは情報が正しければ空母棲姫が率いる敵空母機動部隊。
瑞鶴にとって、なんとしてもリベンジしなければならない相手だ。
今度は見逃さない、大神の行く空は汚させない、確実に見つけて撃滅する。
索敵機を発艦させてなお弓を握り締めて、気合を入れなおす瑞鶴。
いや、気合が入りすぎて、最早瑞鶴の体は緊張で強張っていた。
「瑞鶴くん、そんなに緊張しないでいい。大丈夫、今度は正面からのぶつかりあいだ。負けはしない」
そんな瑞鶴の様子に気がついた大神が瑞鶴に並走し声をかける。
それでも瑞鶴の緊張はほぐれない。
「隊長さん、分かってはいるんだけど、今度こそはって考えたら……」
瑞鶴は次の戦いに気負いすぎているようだ、このままだと逆に変なミスをしかねない。
以前のW島での睦月のことを思い返し、どうしたものかと大神が考えていると瑞鶴がもじもじし始める。
「……えと、隊長さん。緊張がほぐれるとっておきのおまじないがあるんだけど、してくれる?」
「とっておきのおまじないって? 俺でよければいいよ、って瑞鶴くん? ――んんっ!?」
瑞鶴は大神の真横に並走し、爪先立ちになって両手を大神の首に回し抱きつく。
驚いた大神が瑞鶴の方に顔を向けたところで、瑞鶴は大神の唇を奪った。
大神の目が点になる。
以前、朝潮がしたように瑞鶴は大神の口の中へ舌を伸ばし、大神とディープキスを交わす。
初めて味わう大神の唾液の味に、瑞鶴の緊張は精神ごとほぐれると言うか蕩けていく。
どうやら瑞鶴は、以前朝潮がやらかした一部始終を聞いて知っていたようだ。
「ん……んぅ……んっ」
熱望さえした事のある大神とのキス、それを瑞鶴は心から堪能する。
自らの舌に絡む大神のそれを瑞鶴は歓喜と共に求める。
やがて瑞鶴が唇を放すと、交じり合った互いの唾液が軽く糸を引いていた。
瑞鶴は大神の首に手を回したまま、トロンとした目で大神を見上げている。
一方、朝潮にも以前されていたことだけに、大神はある程度耐性が付いていたらしい。
汗を一滴流しながらも瑞鶴に尋ねる。
「えーと、緊張はほぐれたかな、瑞鶴くん?」
「……はい…………」
真っ赤な顔でコクリと頷く瑞鶴。
確かに瑞鶴の頭の中から、緊張は完全に吹き飛んでどこかに行ってしまった。
こうかはばつぐんだ。
だが、大神を慕う艦娘たちが目の前でそんな光景を見せられて、納得できるだろうか?
勿論そんなわけがない。
「い、いてぇぇぇぇぇぇっ! 赤城くん!? 睦月くん!? 何を?」
赤城と睦月が嫉妬に駆られて大神を抓っていた。
「大神隊長。もうすぐ因縁の戦いだというのに、瑞鶴さんと何乳繰り合っているんですか? 私も緊張してきましたのでキスして下さい」
「大神さん。睦月のときは抱き締めてくれるだけだったのに、瑞鶴さんにはキスもセットだなんてずるいのにゃしぃっ! 睦月も緊張してきたから大神さんとキスしたいよ~」
ただどこぞの鬼嫁と違う点は、自らの望みもはっきり主張すること。
こうまではっきり言われてしまうと、大神に拒む術はない。
「ふむ、大佐とのキスか。悪くない」
「隊長、よろしければ大和にも……」
「うふふっ、隊長、もちろん私にもして下さいますよね♪」
「隊長、私にもディープキスしてくれますよね? キラキラ」
これ幸いにと艦隊の艦娘たちも大神に迫る。
そうして索敵機からの報告が訪れるまで、大神は味わいつくされた。
艦娘たちはみんなツヤツヤしてキラキラしている。
そんなキャッキャウフフな時間が流れることしばらく、やがて戦いの始まりを告げる報告がもたらされる。
「隊長さん、敵侵攻空母機動部隊を確認したわ!」
「みんな一気に殲滅するぞ! 作戦『火』で行くぞ!」
「「「了解!!」」」
大神の言葉に頷くと、自分達の力が底上げされていくのを感じる。
瑞鶴たちは矢を弓に番えると、霊力を矢にこめる。
「赤城さん、制空は私が取ります!」
「分かりました、敵への第一撃は私の方が主導します!」
「隊長さん! 艦載機発艦! 航空戦開始します!」
『五航戦! 瑞鶴! 一の舞! 烈風怒涛!!』
『一航戦! 赤城! 二の舞! 追魂奪命!!』
瑞鶴から放たれた矢は、一瞬の時を転じて艦載機の大編隊へと姿を変え、敵艦載機との航空戦を演じる。
いや、航空戦というほどの戦闘も発生しなかった。
瑞鶴から放たれた烈風達は敵機を次々と撃墜していく。
僅かな間に壊滅していく敵艦載機群。
「隊長さん! 赤城さん! 制空権、完全に掌握したわ!」
その直後、赤城が天に放った矢は天より無数の爆撃雷撃となって驟雨の如く敵艦隊に打ち付ける。
あっという間に空母棲姫以外の5艦は轟沈する。
「大神隊長! 敵艦隊のうち、5艦を撃沈! 空母棲姫も中破状態です!」
そして、ズタボロになった空母棲姫の姿が目視可能範囲に入る。
「オオガミイチロウ! イキテイルダケデナク……センジョウデフザケオッテ! ナンドデモ……ナンドデモ……キスデモシナガラ……シズンデイケ!」
どうやら、敵側は索敵中に大神たちのキャッキャウフフな光景を目にしてしまった模様だ。
空母棲姫は深海棲艦にしては珍しく青筋を立てている。
うむ、今度ばかりはお前が正しい。
「コレデカッタト……オモッテイルノカ!?」
「いや、これで終わりだ! 空母棲姫! 瑞鶴くん、いくぞ!!」
「はい、隊長さん!!」
そして大神は瑞鶴を後ろから抱き締める。
大神に後ろから抱き締められて、赤面した瑞鶴。
そわそわしながら瑞鶴は後ろの大神へと視線をやり、お願いする。
「隊長さん。さっきの続き、したいよ……」
「さっきって何のことだい?」
そうとぼけながら、大神は瑞鶴のうなじにキスをする。
大神の腕の中で身体を震わせる瑞鶴。
「ひゃうっ!? 隊長さん、そこはちがっ……!」
「じゃあ、こっちかな?」
「きゃんっ!」
今度は瑞鶴の耳を甘噛みする大神。
瑞鶴は身をくねらせるが、腰に回された大神の手は力強く逃れることは出来ない。
いや、瑞鶴も本気で逃げるつもりはないのかもしれない。
それを良い事にもう片方の耳も甘噛みする大神。
「やっ! 隊長さん……あんまり……意地悪しないで……」
「意地悪なんてしていないよ。瑞鶴くんが可愛いからちょっと悪戯してるだけさ」
「やぁんっ!」
さらに瑞鶴の首筋を吸い上げ幾つもキスマークをつくり、鎖骨を舐め上げる大神。
「あんっ! はぁはぁ……ひぅぅ……」
肌蹴て胸が覗く衣服をそのままに、全身を朱に染めた瑞鶴。
力が抜けて、大神に寄りかかり荒い息を吐き出す。
だが、大神の悪戯は止まらない。
やがて、ぽろぽろと瑞鶴は涙を流し始める。
「ひどいよぅ……大神さん。ちゃんと言うから、もう悪戯しないで……キスしてほしいの……」
「ごめん、瑞鶴くん。ちょっと意地悪しすぎた」
そう言って大神は正面から瑞鶴を抱き締めなおすと、瑞鶴の涙の痕にキスの雨を降らせる。
「大神さん……」
「瑞鶴くん……」
そして泣き止んだ瑞鶴がゆっくりと目を閉じる。
大神が瑞鶴の唇を奪った。
『キスの続き』
二人の声と共に、霊力が最高点にまで増幅される。
瑞鶴と大神を中心に霊力が膨れ上がり、純白の光を帯びて鶴の群れが飛んでいくように拡散する。
霊力の嵐に包まれ、空母棲姫の視界が奪われる。
「コンナフザケタオワリ! ナットクデキルカー!!」
身も蓋もない断末魔を上げながら空母棲姫は浄化されていく。
そして空母棲姫に囚われていた一人の艦娘の姿が現れるのだった。
お前ら戦闘中に何やってんだw
瑞鶴の合体技は構成上少なくともおまじないより甘めである必要があったので、かなりはっちゃけてます。
多分今までで一番酷い
追記:合体技については変えませんが、キャッキャウフフについては主従を入れ替えました。
まあ、大神さんらしくないことについては自分でも多少感じてた所でもあるので。
ただ合体技はパターンを可能な限り増やさないとネタが尽きるので、すいませんが変えません。
そこはご承知置き下さい。