艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第九話 7 MI奪還、そして

MI島の砂浜に波が打ち寄せる。

 

艦娘たちは、合体技による敵撃破後の恒例行事、海域調査と艦娘救出を行っていた。

海域そのものが浄化されている為、艦娘が再度深海に囚われる心配はない。

けれども、彼女たちは素っ裸で波間を漂っている、出来れば大神には見せたくはない。

救出される艦娘にしても同じことを思うだろう。

 

だから、大神はMI島にて秋雲とお留守番。

中間棲姫に囚われていた艦娘の様子を見ていた。

タオルケットを駆けられ、安らかな寝息を立てる黒髪長髪の艦娘。

有明に確認を取ったが、彼女の鎮守府の着任履歴はないらしい。

 

「初めて確認された艦娘か……これからはそういう娘達を助けていくのか」

「大神さん、秋雲さん居ない方が良かったりする~? この子に悪戯出来ないし」

 

意地悪そうな声で尋ねる秋雲だったが、大神がそんな事する訳ないと信頼の眼差しを向けている。

 

「そんなことしないって。容姿からすると駆逐艦だと思うから、目が覚めたら秋雲くんが色々教えてあげてくれるかい?」

「もっちろんさ~、秋雲さんにお任せあれ~。あ、その前にイラスト描こうかな」

「ダメだよ、秋雲くん。そういうことは本人の了承を取ってからだよ」

 

隙あらばと、筆記用具を取り出す秋雲を嗜める大神。

 

「はーい」

 

秋雲もそのつもりはサラサラなかったらしい。

あっさりと引き下がる。

 

「ん……」

 

秋雲とそんなじゃれ合いをやっているうちに、艦娘の意識が戻ってきたようだ。

少し身じろぐ艦娘、タオルケットが肌蹴る。

 

「見ちゃダメ、大神さん! 全く油断も隙もあったもんじゃ……」

 

しかし、秋雲が大神の目を塞ぐ前に艦娘の目が開かれ、大神と視線が合う。

じっと大神を見る視線に、目を逸らす事の出来ない大神。

 

「……見られましたか?」

 

やがて、僅かに頬を赤らめながら大神に尋ねる艦娘。

中間棲姫が浄化された際、彼女の裸を見ているのは事実だ。

ゆっくりと頷く大神。

 

「夕雲型駆逐艦早霜です、隊長。見られるのも悪くないですね、フフッ……ウフフフッ……」

 

だが、発言とは裏腹にタオルケットでその身を隠す早霜。

それで、ようやく大神も視線を早霜から逸らす。

桃色の沈黙が二人の間に漂う。

 

「ん~、なんか微妙にいい雰囲気? 秋雲さん、無視されるのいやなんですけどー」

 

不満を露にした秋雲が、大神の腕に抱きつく。

 

「いいっ!? 秋雲くん、そういうわけじゃ……」

「あら、隊長。乙女の柔肌を見ておいて、そういうことを言われるのですか?」

 

負けじと早霜もまた、大神の腕に抱きつく。

両腕を取られ、どうしたものかと途方にくれる大神。

 

 

 

だが、状況はそれに留まらない。

 

「大神隊長、私達が海域調査と艦娘救出をしている間に、救出したばかりの駆逐艦となに乳繰り合っているのですか? 流石に気分が激怒します」

「そうですよ。そんなに胸の感触がお好きなのでしたら、後で私の胸、触られますか?」

 

海域調査から戻り、艦娘を救出した加賀たちが大神に詰め寄る。

って言うか蒼龍、大胆だな。

 

「フフッ、モテモテですね。隊長」

「そう思うのなら、そろそろ手を放してくれないかな? 早霜くん。秋雲くんも」

「そうですね、隊長の困った顔をもう少し見ていたかったのだけど……」

「はーい、このままだと加賀さんに爆撃されそうだし」

 

そう言って、ようやく二人は大神から離れる。

一息吐いて、隊長としての表情を見せる大神。

 

「それで、早霜くん以外の艦娘は救助できたのかい?」

「そうです! 聞いて下さい、隊長さん! 5人も救助できました、大漁ですよ!」

「いやいやいや、飛龍くん! 大漁って魚じゃないんだから!」

 

5人全員、既に意識を取り戻しているようだが、流石に魚扱いされるのは嫌なようだ。

何とも言えない表情をしている。

 

「有明には確認を取りました、全員が初確認の艦娘です。皆さん、大神隊長に自己紹介を」

 

加賀の言葉に従い、艦娘たちが自己紹介を始める。

 

「こんにちわぁ。潜水母艦大鯨です。不束者ですが、よろしくお願い致します」

「こちらこそよろしく頼むよ、大鯨くん」

 

「雲龍型航空母艦、雲龍、推参しました。隊長、よろしくお願いしますね」

「正規空母の着任は有難い。雲龍くん、よろしく」

 

「隊長、谷風だよ。これからお世話になるね!」

「君たちに世話になるのはこちらの方だよ、谷風くん」

 

「どうも! 夕雲型の最終艦、清霜です。到着遅れました、よろしくお願いです!」

「遅れただなんて、そんなことないよ、清霜くん」

 

そう言って、4人の艦娘と順番に挨拶と握手をしていく大神。

そして、最後の艦娘と相対する。

 

「駆逐艦、浜風です。これより貴艦隊所属となります」

「え……駆逐艦?」

 

呆然と浜風を見やる大神。

浜風のスタイルは駆逐艦離れしていたのだ、特に胸が。

大神の予想通りの反応に、加賀たちの冷たい視線が突き刺さる。

 

「はい、駆逐艦ですが、何か問題がありますか?」

「いや! 何も問題ないよ。君の着任を歓迎するよ、浜風くん」

 

浜風とも握手をする大神。

 

しかし、全員で6人の艦娘を連れ帰るとなると、有明鎮守府への帰還プランを見直す必要がある。

少なくとも当初予定していた大神と護衛艦程度では無理だ。

かと言って、艤装のない彼女たちに敵増援艦隊が来るまでMI島で待てというのにも無理がある。

それに正規空母を6隻もMI島に集結させた状況が続くのも良くないだろう。

自分が直接指揮を執らないからには連合艦隊の条件を満たさなくなってしまうし。

人員を送ってもらう必要がある。

そう考え、有明鎮守府へと連絡を取る大神。

 

『こちら、大神。大淀くん、良いかい?』

『はい、隊長。帰還プランの件ですね』

 

流石に筆頭秘書艦だけあって、救出した艦娘の人数から大神がどう考えるか予想していたらしい。

 

『そこまで分かっていてくれるなら話が早い、救出した艦娘を連れ帰る為に艦娘を送ってほしい』

『了解いたしました。隊長の裁可を頂ければ、ビッグサイトキャノンの射出が速やかに出来るように下準備は一応済ませております』

『それは助かる。さすが大淀くん』

『いえ、筆頭秘書艦としてこの程度のことは当然です』

 

「むー、相変わらず仲がよさそうデース」

 

多くを語らずとも通じ合っている様子の二人に金剛が不満の声を上げる。

 

『自分が帰還した後のMIの艦隊編成にも手を入れる必要があるから、これから指示する艦娘を送って欲しい。榛名くん、霧島くん――』

 

そして増員到着後、大神はMIに残る艦隊を再編成し、救出した艦娘たちと共にMIから帰還の途についた。

 

 

 

救出した艦娘

早霜 大鯨 雲龍 谷風 清霜 浜風

 

増員

榛名 霧島 鳥海 妙高 那智 羽黒

 

MI残存艦隊

翔鶴 加賀 蒼龍 飛龍 榛名 霧島

金剛 鳥海 筑摩 神通 朝潮 秋雲

 

帰還護衛艦隊

赤城 瑞鶴 利根 妙高 那智 羽黒




小倉唯いい

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